タイラーが、マリアに想いを告げ、マリアが居室から出て行くと、部屋にはタイラーとロドルフだけが残った。 部屋は静まり返り、沈黙が二人を覆う。 僕はきっといつかこんな日が来ることをわかっていた。 だから僕は無意識に、この邸に戻り兄とマリアを会わせるのを、できるだけ後回しにしていたんだ。 マリアを失うのが、怖かった。「タイラー様、どうしてマリア様に、これからのことを好きに選んでいいって言ったんですか? 今はタイラー様と婚約中なんだから、何も言わなければ、マリア様は、このままタイラー様の婚約者でいてくれたかもしれないのに。」 そう言うと、ロドルフは悲しげに僕を見つめ、目に涙を浮かべる。「どうして、ロドルフが先に泣くの?」「だって、僕ですよ。 タイラー様を、ずっと見てきた僕ですよ。 タイラー様が、マリア様に相応しい男になるために、陰でどれだけ運動も、領地経営も頑張ってきたかを、ずっと見てきた僕ですよ。 こんなにもマリア様を大切にしてきたって、僕ならいくらでも語ることができます。」「そうだったね。 ロドルフ、泣いていい。」「タイラー様~。」 ロドルフは、椅子に腰掛けているタイラーに抱きついて泣きだした。 長い付き合いだけど、ロドルフがこうやって泣く姿を見せるのは初めてだった。 以前は一人で僕を看病し、負担に感じていた時もあっただろう。 その時だって、僕の前でこのように感情を見せることはなかった。 なのに今、僕のために涙するロドルフは僕より僕の心に正直だ。 それに、いつも僕とマリアがうまくいくように、手助けしてくれていた。 そんなロドルフの気持ちを僕は裏切ってしまったのかな。 でも、頑張っても手が届かないこともあるし、変えられないものもある。 それでも、感謝だけは伝えないと。「マリアとのことをいつも応援してくれたね、ロドルフ、ありがとう。」「タイラー様、かっこつけないで、マリアは僕のものだって、言えば良かったじゃないですか。 絶対に誰にも渡さないって。」 泣きつくロドルフの背中を撫でながら、静かに口を開く。「僕は、かっこつけたわけじゃない。 本当にただ、マリアの幸せを優先したかっただけ。 僕は、彼女と知り合ってから、たくさんのものをもらった。 この動くようになった体も、皮膚がボロボロでも、受け入れてくれる女性がい
Terakhir Diperbarui : 2025-04-25 Baca selengkapnya