剛史くんたち若者集団も、あれから我慢強くなって反抗するようなことはない。だが「最終日にこれかよ」というのがもろに表情に出ていた。いままでちゃんとした人ばかりに当たっていたのもあって、この不快さを無視できない。 皐月がらみの時以外は基本的に温厚で落ち着いているはずの夏山さんも眉をひそめて不快感をあらわにしている。 にもかかわらず蛇男はそれら視線をまるで意に介さない。というよりも、そういう風に他人の気持ちを軽んじて踏みにじることに恍惚としているようですらあった。 皐月の第一印象も決して良くなかったが、こんな不快さは絶対に彼女にはなかった。「そんじゃま、ダンジョン入るけど。スキル持ちは誰よ?」 へらへらした態度で蛇男が尋ねる。夏山さんら三人は、それにしぶしぶ手をあげた。「三人だけかよ……めんどくせぇな。ってかおっさんそのなりでスキル覚醒者かよ! ウケる。……んで? その選ばれし三人様は何ができんの?」「い、いちおう……アナライズと範囲防御が……」「攻撃バフだ」「……回復が……少し……」 蛇男は三人の言葉にため息をつく。「はー、使えねーーーー! だれも殴れる奴居ねぇじゃん! おっさんもそのなりでヒーラーなんかやってんなよ、気色わりいな」 もう聞いていられないという風に、夏山さんが表情を変える。「さっきから聞いていれば、いくらなんでも言葉が過ぎます!」「あ? んだよ、芋女のくせによ」「お前!! なっつんさんを馬鹿にするのは……!!」「なんなんだよ、どいつもこいつもめんどくせーな! へいへい、悪かったよ! 俺が悪かったです! お前らとはまた会うかもしれねーしな。ここは大人な俺が折れてやるよ」 かけらも反省の見られない態度。あれでもC級クリーナーなのだから、俺たちの誰よりも強い。スキル覚醒の都合上、こんなのでも辞めさせられないというのは……協会も手を焼いていることだろう。 蛇男はその名も告げず、言いたいことだけ吐き捨ててゲートに潜ってしまう。その姿が消えた後、夏山さんが俯いて言った。「みんな……その、すみません」「いやいや……夏山さんが誤ることじゃないですよ」「……うん。ありがと……水瀬くん……」 他のメンバーも夏山さんを元気づけるようにして言葉をかける。そうして、俺たちも遅れてゲートに突入して行った。◇◇◇ ダ
Last Updated : 2025-04-19 Read more