Semua Bab 貴方の願いを叶えたい: Bab 21 - Bab 30

64 Bab

遺恨 3

「ディアナ嬢が君に恨みを持つ理由は⋯彼だね」トラッシュ公爵はそう言ってロットバリーを見た。ティアナがロットバリーを見ると彼は悔しそうに頷いた。「まぁその辺は君たちで話せばいいから私から話す必要はないかな。兎に角私達の目的は二つだった。無届の魔力持ちを見つけて捕縛する事とその後直ぐに君を速やかに救出する事、でも君は助け出す前に倒れてしまって少し混乱しちゃったけどね」「⋯⋯」「じゃあ、取り敢えず経緯は話した。後はメリーナが私へ頼んだ事を伝える為に来たんだ。ティアナ嬢、君は一ヶ月後に王立学園に編入できる。それ迄体を厭いなさい」「手を回して頂きありがとうございます」憮然とした表情でメリーナが述べるとトラッシュ公爵は苦笑した。「まぁまた何かあれば私を頼っても⋯ハハハもう頼らないかな?気が向いたらお茶でもしよう」そう言って公爵は部屋を後にした。暫く沈黙の時間が続いたがメリーナが口火を切った。「ティアナ疲れたでしょう、お腹は?空いてない?取り敢えず私のアパルトマンに行きましょう」そうしてティアナとロットバリー、そしてモリナはメリーナの家に付いていった。◆ティアナはメリーナの家で軽く食事をして案内された部屋で早々に休むことになった。思ったよりも回復していなかった体が悲鳴を上げたように発熱したからだ。ベッドに寝かされ呼ばれた医者に見てもらっていたが、その頃にはティアナの意識は朦朧としていた。「ティアナ、ティアナ」「誰?」「届いたね私の声が⋯⋯」「貴方は?」「守ってあげられなくてごめん、君の側にいられなくてごめんよ」「⋯⋯大丈夫⋯ロットもメリーナ様も居るの⋯」「彼女は⋯⋯」「彼女?」「気持ちを強く持つんだよ⋯⋯」「⋯⋯貴方は⋯誰?⋯」目が覚めるとベッドサイドの明かりのオレンジが室内を照らしていた。そのまま起き上がりそこから見える窓の外はまだ暗い。(何か夢を見ていたような⋯男の人?)ふと頬を触ると乾いた涙の跡が手に感じる。自分が夢を見ながら泣いていた事は解ったが、夢の内容を思い出す事は出来なかった。ただ男の人と会話をしたような気はする。喉が乾いた気がして明かりの灯るサイドテーブルに再び視線を向けると、水差しが置いてあった。水を飲もうと手を伸ばすとそこに手紙が置いてあることに気付く。一杯の水はティアナの乾いた心を潤そう
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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遺恨 4

女学園の退寮の手続きから帰ってきたメリーナは憤慨していた。たった一日でティアナの部屋に誰かが侵入してクローゼットの中身をズタズタにしていたそうだ。直ぐ様、学園長のグリーン女伯爵に訴えたメリーナは、そのまま騎士団にも連絡して捜査をしてもらい犯人逮捕まで見届けてから帰ってきた。どうりで朝早く出かけたのに帰りがこんなに遅かったのかとロットバリーは思った。「あまりにも遅いからなんかあったのかと思ってたけど想像以上だった。犯人って?」「ユアバイセン侯爵の息女よ、寮長も連れて行かれてたわね。勝手に鍵は開けられないもの」「ナタリーヌ様ですか⋯⋯」「様なんか付けなくてもいいわよ!」メリーナに言われてティアナはつい笑ってしまった。その笑顔を見てメリーナは安堵する。「良かった、まだ笑えたわね」「!⋯⋯はいまだ笑えます」ティアナは温かい場所に帰ってこれたんだと実感する。◆その日は少し遅めの夕食のあとに珈琲を飲みながら三人で話しをした。「ディアナ嬢とはユアバイセン侯爵家の茶会に招待された時に初めて会ったんだ」ロットバリーは今回の原因であるだろう事を話し始めた。ロットバリーが10歳の時、その招待状が届いた。普段侯爵家の茶会の招待状が知り合いでもないのに、スティル男爵家に届く事はない。メリーナも不思議に思ったが、格上の侯爵家からの正式な誘いに断りを入れることは出来ずに招待に応じた。そこでディアナ嬢を紹介された。ただその紹介の時メリーナは偶々席を外していた。ルースト公爵家とメリーナの遺恨など知らないロットバリーは、さしてディアナに興味は惹かなかった。彼女の事は沢山紹介された女の子の中の一人だったからメリーナに報告する事もしなかった。ディアナとはそれから度々、色々な茶会で会うが特別親しく話す事もなかったが、一度だけティアナと婚約した後に偶々街中で会った時「酷い!」と言われた事があった。でも訳がわからなかったこともあったし、興味がないからロットバリーは忘れていた。今回ティアナの件で調べて久しぶりにその名を目にしてメリーナに報告した。そしてよくよく調べると以前メリーナに魔法省の上司を通じて縁談の話しを持ちかけたのがディアナだったと解った。その当時は上司の遠縁の娘としかメリーナは聞かされていなかったし、直ぐにマリソー前侯爵からティアナとの話しが来て
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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急逝 1

王立学園に編入したティアナは久しぶりの平穏な日々を過ごしていた。王立学園は男女共学の全寮制で寮は一人部屋と二人部屋があった。ただ侍女、侍従の伴いは認められているので二人部屋でも実質4人の様なものだ。建物は校舎を基準に男子寮が西側、女子寮は東側に位置しており其れは院生も同じであったので、ティアナとロットバリーもなかなか気安く会うのは難しかった。それでも以前に比べたら段違いの近さであるから週に一度、少なくとも10日に一度はランチを共にした。ただ休みの日は院生になったロットバリーが、学友や研究を優先するのでティアナは少し寂しさを感じていた。女学園の時と同様にティアナを遠巻きにする子女もいたが、ミランダやルルーニアと常に一緒にいるので悪意の標的にはならなかった。ルルーニアがサリバン公爵家の子女という事も大きいだろう。充実した学園生活を送る日々が続き何時しか二年の月日が流れていた。ティアナは学園の三年生になり、ロットバリーは魔法省に勤め始めた。ロットバリーの住まいは魔法省の職員寮へと移った。魔法省の仕事は多忙を窮める、何故なら少ない魔力持ちの人数で仕事を熟さなければならないからだ。勿論魔法省にも魔力の無いものは働いている。此方は主に研究の雑用だったり、事務だったりだ。なかなか会えない二人を気遣い、ある日メリーナが自身のアパルトマンに招待した。久しぶりに会う三人は近況報告などをして過ごしていた。「貴方達そろそろ婚姻の日取りでも決めなきゃね」メリーナの提案にロットバリーが頷いたが「だけど仕事が片付かないんだよ、来月はちょっと隣国の会議にも出るように言われたんだ、俺も母上と同じ研究職にすれば良かった」「まぁ!今年入省したばかりで扱き使われてるわね」「まあね、なかなかティアとも会えないし⋯」「ではティアナが卒業して直ぐは無理かしら?」「えー俺としては直ぐにでもしたいけど⋯」「さっき自分で今は忙しいって言ったばかりじゃない、ティアナ貴方は卒業したら如何する?男爵家で待つのもねぇ、今でさえ禄に会えないんだから。あまり離れるのは良くないわ」「⋯男爵家に帰るのだとばかり思っていたので考えていませんでした」親子二人のやり取りの中突然話しを振られたティアナは、返事を用意していなかった。「ティアナ魔法省の事務とか如何かしら?」「⋯⋯事務ですか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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急逝 2

其れは突然知らされた。学園で二限目のチャイムが鳴った直後、事務方の職員が教師と連れ立って教室に来た。その人に名指しで呼ばれて事務室へ行くと、案内されたのはその奥の応接室。見知った顔がそこには居た。「ティアナ嬢」「お久しぶりですトラッシュ公爵様」ティアナがカーテシーで挨拶するのを途中で遮られた。「今はその挨拶は不要だ、ティアナ嬢よく聞いて」慌てたようなその声にティアナは不審を抱く。訝しげに公爵を見つめているとその口からは信じたくない言葉が発せられた。「メリーナが事故にあって意識不明なんだ」「は?」信じたくない言葉はティアナの耳を素通りしようと藻掻いていた。「メリーナが危ないんだ」再びその声が耳に届いた時、ティアナは目の前がボヤケて倒れそうになった。おそらく公爵の側近か侍従であるだろう人に支えられた。「ロットバリーは今隣国に行っているからね、急ぎの知らせは飛ばしたが、君にも知らせないといけないと思い来たんだ」「は⋯い」「病院へ行こう案内するよ」公爵に連れられて急ぎ向かったのは王立病院。その一室でメリーナは眠っている様に見えた。「⋯間に合わなかったか」「いえまだ息はあります、ですが⋯もう手の施しようがありません。治癒魔法を使える者も懸命に治療を施しましたが、内臓がグチャグチャで追いつきませんでした」公爵と医師の言葉はティアナの耳に聞こえてはいるが扉一つ分くらいの遠さに感じていた。そろそろとベッドに近付きティアナはその手を取る。するとメリーナの|顳顬《こめかみ》がピクリと反応した。その様子に医師が驚く。「⋯⋯もう反応など返せなかったのに⋯⋯」ティアナはメリーナの手を包みそのまま話しかけた、いや叫んだ。「メリーナ様、お願いします。起きて!目を覚まして!私をまだ⋯導いて⋯お願いします⋯⋯笑ってくだ⋯お願いします⋯こんなの⋯酷い⋯⋯お願い⋯メリーナ様」くぐもる様に叫ぶティアナの声は、腹の底から絞り出すように公爵達には聞こえた。すると奇跡か、それともティアナへの愛情ゆえかメリーナの目が開く。「「⋯!」」驚く医師とトラッシュ公爵。ティアナはメリーナに齧り付くように縋る。「メリーナ様!」「⋯⋯ティ⋯⋯あり⋯⋯が⋯と⋯しあ⋯ロッ⋯」メリーナが言葉を発したけれど小さくてよく聞き取れなかった。それでも必死に紡ごうと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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横⋯恋慕 1

メリーナの葬儀の後、ロットバリーは男爵を継いだが仕事は変わらず忙しそうだった。スティル男爵家は領地を持たない文官貴族であったから、ロットバリーの表向きは何も変わらない。ただ一つ違うとするならば魔法省での地位であった。メリーナは省庁の長官の次にあたる次席の位にあったが、ロットバリーは今年入省したばかりの平の職員だった。発言権も下ならば貰う給金もメリーナには遥かに及ばない。男爵家と名乗っているのならば王都の家を売りに出すわけにも行かず、其処を生活拠点にする他なかった。メリーナが住んでいたアパルトマンは賃貸であったから維持するのが難しかったのだ。その部屋を片付けた時、ティアナは自然に涙が溢れる。メリーナの思い出がそこかしこからティアナに微笑みかけているように見えた。そんな遺品整理をする中でもロットバリーは仕事に忙殺されていた。ティアナやトーマス、ミリーが手分けして整理していたが片付ける度にロットバリーの無念さを思い胸が痛かった。ロットバリーの魔法省の仕事はティアナには知らされていなかった。どんな部署に配属されどんな仕事をしているのか、ティアナは何も知らなかった。ただ度々、王国内の他の地方や隣国に駆り出されることはロットバリーからの手紙で知らされていた。忙しいロットバリーに学生のティアナが合わせる事は難しく、会えぬまま手紙だけの日々が続く。それでも一言でも送ろうとしているロットバリーの誠実な気持ちがティアナは嬉しかった。メリーナの葬儀から一ヶ月ほど経ったある日ティアナはルルーニアの謝罪を受ける。◆学園の夏期休暇をティアナは毎年ロットバリーと男爵家で過ごしていた。寮とは違いロットバリーに毎日会えるからティアナはいつも夏期休暇を楽しみにしていた。ロットバリーもティアナも偶にはそれぞれの友人に会いに出かけて別行動の時もあったし、魔法省に内定していたロットバリーが手伝いに駆り出されることもあったが、概ね二人は一緒にいる事が出来た。だが今年の夏期休暇は何時もと違っていた。正式にトラッシュ公爵の養女になったティアナは今年の夏期休暇を利用して公爵家に訪う予定になっていたからだ。そしてそのままそこで過ごすようにと公爵から言われていた。ロットバリーに手紙で相談したら、自分も仕事があるからその方がいいと返事が帰ってきた。今迄と違いロットバリー
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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横⋯恋慕 2

「⋯⋯お慕い?」ティアナの呟きにルルーニアが頷いた。「私も最近になって気づいたの、噂はお姉様が仕事を始めて慣れた頃にはもう上がっていたの」「そんなに前から?」「えぇでもお姉様は笑い飛ばしてたわ、男爵には皆と打ち解ける機会を作ってもらっただけだと言っていたのだけど⋯」その後メリーナが亡くなって暫く落ち込んでいたロットバリーはそれでも仕事を熟さなければならず、そんな彼をマリアンヌは支えて来たと本人が言っているらしい。その姿がただの同僚を超えているようにルルーニアは感じたそうだ。「思い切って聞いてみたの、そうしたらお姉様は男爵の気持ちは解らないけれど自分は好きだと思うとハッキリと答えられて⋯⋯」「⋯⋯」「お姉様は好きだと言っているけれど、でも本当にそうなのかしらって思う気持ちも私にはあるの、だってまだお会いして数ヶ月しか経ってないのよ?」その言葉はティアナには聞こえていたが、その時、自分とロットバリーとの出会いを思い出していた。ティアナこそがロットバリーと会って数日で彼に恋をしたのだから。「マリアンヌ様がお慕いしてると言うならそうなのだと思うわ」ティアナの言葉にルルーニアとミランダは息をのみ頷きながら続く。「辛い時に優しくされて執着してるだけだと思っていたのだけど⋯ティアナがそう言うなら⋯そうなのかしら」だからといってじゃあ如何するのかと思っても三人には如何することもできない。其れはロットバリーとマリアンヌの気持ち次第なのだから。「ティアナごめんなさいお姉様が⋯⋯」「何故ルルーが謝るの?大丈夫、私はロットを信じているもの、マリアンヌ様には申し訳ないけれど⋯」「お姉様にその恋を止めなさいと言ったのだけど、お姉様は聞いてくれなくて⋯」ルルーニアにしてみれば婚約破棄からやっとの思いで立ち直ったマリアンヌの恋心を止める言葉をかけるのが憚られたが、やはり身内であるから姉にも幸せになってほしい、だから婚約者のいる相手に横恋慕するのは止めろと言ったがマリアンヌは聞く耳を持たなかったそうだ。「ルルー」ミランダがルルーニアに声をかける。「ティアナまだ続きがあるの⋯⋯」「?」「お父様がその噂を聞いてお姉様に問いただしているのを私⋯聞いてしまって」サリバン公爵にマリアンヌは叱責されていたそうだ。そんな公爵にマリアンヌが叫んだのが扉の外にい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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横⋯恋慕 3

虚ろな目でティアナは《《其処》》を凝視した。ロットバリーの腕に添えられるマリアンヌの手。その場に居た皆が開いた扉を振り返り佇むティアナを見る。「ティア」「⋯⋯」「⋯ティアも招待されていたんだ!良かった!姿がないから」ロットバリーの言葉にティアナは息を呑んだ。ティアナは招待など受けていない。「いや⋯これは⋯その⋯」ロットバリーの友人であるヒラリー子爵家のリッドがティアナに途切れ途切れに話すのを不思議そうにロットバリーは見る。「リッド?」「バリーすまないティアナ嬢は招待していない」「!⋯⋯どういう事だ?」「ロット落ち着いて⋯」「その呼び方は止めてくれと言ったよねマリ」5人ほど居たその場の者は皆がそのロットバリーの言葉に目を瞠った。ティアナは訳が解らなかったが解ることはロットバリーの腕に添えられたマリアンヌの手であった。何時までも其処から目が離せない。その視線に気付いたロットバリーは自分の腕を見て慌ててマリアンヌの手を解く。その様子からティアナはその行為が無意識の物だと解った。「違っティアこれは違うんだ」ロットバリーが必死に弁解を始めようとしたがティアナはゆっくりと首を横に振った。「よく解らないけれど⋯ロットはお休みだったのね」そう言って踵を返し食堂を後にした。暫く呆然としていたロットバリーは「ハッ!」と気付きティアナを追いかけた。後に残ったロットバリーの友人達はお互いに目を合わせながら困惑していた。今日のロットバリーの休みは昨日突然決まったものだった。魔法省の同僚でもあるリッドが急遽計画して、ロットバリーの男爵継承のお祝いをする事にしたのだ。メリーナが亡くなった事で継承式などはしていなかったからだ。昨夜から計画を練りロットバリーにサプライズを仕掛けた。食べ物や飲み物なども持ち込んで簡単なパーティーをしていた所にティアナが入ってきたのだった。この計画を魔法省の休憩室で話している時に偶々通りがかって、参加することになったマリアンヌを気遣いティアナを招待しなかった事がリッドは悔やまれた。本来なら当然婚約者であるティアナは招待するべきだ。極々近い仲間内だけでするならばマリアンヌは仲間に入れるべきではなかった、ティアナを呼ばないのであれば尚更だった。そんな事は解っていたのにリッドはマリアンヌの恋慕に同情してしま
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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婚約の行方 1

その日の夜トラッシュ公爵家に訪ったロットバリーの口元にはテープが貼られていた。丁寧に公爵に挨拶をするロットバリーへ向けて彼は訊ねた。「如何したんだ?男前になって」「いえちょっと友人と口論を⋯」「ハハ報告は上がってるよ」その言葉にティアナは驚く、何故なら彼女は何も話していないからだ。何処から漏れたんだろう。「何だティアナは知らなかったのか?公爵家から使用人を三人スティル男爵家に送っているよ」「⋯どうして⋯」「まぁ取り敢えず部屋に行こう。久しぶりに客人を出迎えて緊張したよ」公爵ともなれば王族以外に出迎えなどはしない。ロットバリーの訪いは公爵にとって歓迎するものであったようだ。「本日は訪問の許可を頂きありがとうございます」トラッシュ公爵家の応接室は重厚かつ絢爛な作りと内装であった。其処に置かれた家具も装飾はスッキリとしてはいるが上質な革が張ってあることは一目瞭然であった。その一つに進められて座る前にロットバリーは公爵へ頭を下げて礼を述べた。「娘の婚約者が来るんだ当然歓迎するよ」そう言う公爵は上機嫌だった。まだ婚約者であるから当然ティアナは公爵の横に座る。対面に座って此方を見るロットバリーの口元が痛々しい。「一つは人手不足、もう一つは娘の将来の旦那の健康管理のためだ」公爵が開口一番、話し始めたのは先程のティアナの疑問についてだった。「男爵家は文官貴族だ、ティアナ文官貴族は当主の地位によって大きく変わるんだよ。其れはわかるだろう」「はい」「だから彼は先ず経費の削減をしなければならなかった。其れをするのは致し方ない事だ。先ずは使用人に辞めてもらった」「⋯⋯」「スティル男爵家は他の文官貴族よりも今までは裕福だったからね、メリーナは割と多く雇っていたんだよ、普通の男爵家にあんなに使用人はいない。でも急に人手不足になったら残る使用人も困るだろう、そして残ったのは年配の使用人が多かったしね。だから十分に家が快適になるように考えて手配したんだ。家が上手く回らないと不健康になるからな」トーマスやミリーは残ったがその他数人も残っていた、だが彼らは若かりし頃からのメリーナに付いていた者たちだ。それなりに年も重ねている。「そうなれば其れは婚約者の出番だ、だろうティアナ」「⋯そうですね、私が手配しなければならなかったのに」「おいおいテ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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婚約の行方 2

三人で晩餐を囲んで楽しい時を過ごしロットバリーは帰っていった。帰り際、ティアナを抱き締めて公爵に苦言を呈されたが、どこ吹く風で却って力を込めていた。「ティア俺を信じて」ロットバリーの言葉に頬を朱に染め上げたティアナは頷いた。寝支度をしてベッドに入る前にティアナは窓際に立ち外を眺めながら、応接室での遣り取りに思いを馳せる。「少しでも早く婚姻を結びたいです」それがロットバリーの気持ちだった。(嬉しい)養父のトラッシュ公爵にハッキリとそしてキッパリと言い切るロットバリーが頼もしくキラキラと耀いて見えた。だが現実は甘くない。二人の思いにトラッシュ公爵は待ったをかけた。「フム、君の気持ちはよくわかったし解っているつもりだ。だがね現実的に考えて今直ぐ婚姻は出来ない。理由は幾つかあるね」トラッシュ公爵を見つめる二人。「一つはまだティアナが学生という事だ、私の庇護下にいるのに君と婚姻したら君はティアナの学園生活を維持出来るかい?」「其れは⋯」「まぁティアナにはメリーナが預金を残しているからね、其れを使えば問題はないんだが君は其れでいいのかな?妻が自身の金で通う事に抵抗はない?」「あります」「うん、無いって言ったら婚約者失格だったけど良かったよ、解ってくれて」「他にも?あるんですか?」今度はティアナが公爵に問うた。「あるよティアナ、君は貴族の子女としての勉強しかしていない、当然家事など出来ないだろう?」「⋯はい」「今ロットバリーに嫁ぐという事は、家事も行う事も視野に入れて動くべきだ」「⋯⋯」「まだ魔法省の下っ端の彼には君を十分に養うほどの力がないんだ。その基盤が出来ていない、勿論援助は出来るよ。でも其れで二人ともいいのかい?親に援助してもらいながらの結婚生活を望んでいるのかな?スティル男爵にもティアナにもまだ早いだろうと私は思うよ。言っても詮無いことだがメリーナがいたらまた話しは違っていたけどね」公爵は容赦なく若い二人に現実を突きつける。「では私の生活の基盤が出来るまでは認めて貰えないのでしょうか?」「そんなことはない、ティアナが学園を卒業したらまた話しは変わってくるんだ。ティアナは君と婚姻したいだろうからきっと働く事は厭わないだろう?」「はい!働く事に抵抗はないです」ティアナの力強い言葉に公爵は苦笑する。「うん、そうすれ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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父 1

父親の|魔法念写《写真》がある部屋は邸の奥まった所に位置していた。部屋の中は真ん中にラグが敷かれロッキングチェアが一つ。出窓が一つあり重厚なカーテンが備えられていた。其処には小さな花瓶が存在するが花は飾られていなかった。壁際には一つのソファと小さなチェスト。チェストに少しの本とスケッチブックらしき物が数冊。ロッキングチェアに座ると壁にかけられているその|魔法念写《写真》がよく見える。この|魔法念写《写真》を飾る為に在る部屋なのだとティアナは思った。この部屋はティアナの部屋からほど近い。おそらくこの部屋の近くにティアナの部屋を用意してくれたのだと考えられる。家令の名前はラスリスと教えてもらった。父の侍従だった彼はきっと父と母の事をよく知る人物なのだろう。ティアナは小さな花瓶を手に取り部屋を出た。先程庭で切ってもらった花を活けて部屋に置かれた様子を想像する。満足したその顔には笑みが浮かび側にいたモリナも安堵した。先日男爵家での出来事はモリナにとって衝撃だった。モリナはサリバン公爵家に赴いたティアナに付いては行ったが、話しの内容などは聞いていない。だから帰り際の馬車に乗る前に行き先が男爵家と聞いて不思議に思ったのだった。口数の少ないティアナを心配していたが、男爵家に着き久しぶりに会えた弟のアルトと庭先で話しをしている途中で、ティアナが邸から出てきて驚いた。あまりにも早かったので何かがあった事もすぐに解った。ティアナを追いかけてきたロットバリーとの会話を邪魔しないように、アルトとの会話もそこそこに直ぐに馬車に乗り込んで待っていた。待っていたが馬車の小さな窓から外を伺うことも忘れなかった。そして木の影にマリアンヌが居たのを気付く、マリアンヌの後方に弟のアルトも居た。(あの女の人は誰なんだろう?)ティアナからは何も聞いていないので女の正体はモリナには解らない。だがなんとなく嫌な予感もしていた。そんな事があったから少しティアナの様子を心配していたのだが、花を活けるティアナの微笑みは憂いが無いようだったので安心したのだ。「お嬢様」声をかけてきたのはラスリスだった。「その花瓶は⋯」「お父様の部屋にあった物だけど⋯あっ!持ち出しては駄目だったかしら?」「いえ花を活けたのですね」「えぇお父様にも見えるかしらと思って、お花が
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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