◆◆◆「ティアごめん」目の前にはロットバリーとマリアンヌが手を繋いで此方を見ている。「如何して?」「観劇に行っていたんだ」「何故二人で行くの?ロットは私と婚約しているのよね、何故マリアンヌ様と一緒に行くのかしら?」「そっそれは⋯俺達の婚約は子供の頃に結ばれたからな親によって。別に俺は君じゃなくても良かった。でもティアの事は好きになったしそのまま結婚してもいいと思ったけれど、母上が儚くなったあと俺を支えてくれのはマリアンヌだ。マリアンヌの思いに俺は答えたいと思ってる」「婚約は解消するの?」「それが出来ればとっくにしてるよ、男爵の俺が公爵家に逆らえるわけ無いだろう。君の方からしてくれると助かるよ。じゃあ俺達は予定があるから」「⋯ロット待って!」「あっもうその呼び方も止めてくれ。マリアンヌが気にするから、悲しませたくないんだ」ロットバリーとマリアンヌは繋いだ手を離し、今度は腕を二人で絡ませながらティアナの前から立ち去った。「嘘⋯⋯ロット。嘘⋯よ」《《また》》休みの日にスティル男爵家に行くとまたトーマスが明らかに狼狽していた。ロットバリーの部屋に行くと彼は出てこなかった。一緒に来たモリナが弟のアルトから街に行ったようだと聞いて、ティアナも馬車を出してもらったのだ。途中で降りて街中をロットバリーを探していて二人に会ってしまった。こんなにあっさりと別れを告げられるとは思っても見なかった。12歳で婚約してもうすぐ6年。卒業したら結婚式だったはずなのに、ついこの間まで仲睦まじくしていたのに⋯如何して?気付いたら大通りの噴水前のベンチに座っていた。行き交う人々が皆ティアナを見ているようだ。“ティア”愛称の無かったティアナに初めて愛称を作ってくれたのはロットバリーだった。そしてその愛称を呼んでくれる人もたった一人だったのに、今日はもう呼んではくれなかった。俯いていると足元の煉瓦にポツンと水滴が落ちた。(雨かしら?)空を見上げてもティアナの心に反して青空が広がっている。雲がゆっくりと流れて⋯ティアナの頬を涙が伝っていく。(あぁ泣いていたのね私)思う存分泣こうと思いたち枯れるまでその場で泣き崩れた。◆◆◆カフェにモリナと入った。ミランダやルルーニアとは最近話しをしないから専ら二人でお茶をしている。ジロジロ見られるのが嫌で個
Last Updated : 2025-04-03 Read more