Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 51 - Bab 60

129 Bab

2-35 明日香の不在の夜 1

結局、この日朱莉は明日香と翔の件ですっかり落ち込み、食欲が薄れてしまい折角の魚料理をあまり食べる事が出来なかった。エミは折角の料理だからと言ってお店の人にコンテナボックスを頼み、今夜のおかずにするから気にしないでと言って笑ったが、朱莉は申し訳ない気持ちで一杯だった。「本当に折角連れ出して貰ったのに、申し訳ございませんでした」ホテルまで送って貰うと朱莉は何度も何度もエミに頭を下げた。「あら、いいのよ。全然そんな事気にしないで。それにしても本当に大丈夫? 顔色が悪いから心配だわ。そうだ! 何か栄養のあるものを後で届けてあげるわ!」「いえ、そんなそこまでしていただくわけにはいきません。エミさんも今日は私の事は構わず、お休みください」恐縮する朱莉。「何言ってるのよ、アカリ。夕方6時に迎えに来るわよ。2人で出かけるからね」「え……ええっ!? 出掛けるって……一体何処へ!?」「アカリはまだ若いんだから、もっと羽目を外すこともするべきなのよ。いい? 18時にホテルの部屋に迎えに行くから、体調管理をして待っていなさいよ? 約束だからね?」エミは朱莉に無理やり約束をさせると、車に乗って去って行った。****ホテルの部屋に戻り、ベッドに横たわると朱莉はポツリと呟いた。「ふう……エミさんて意外と強引なところがある人なんだな……」でも、正直嬉しかった。まだ会って数日しか経っていないのに、明日香の前に立ち塞がって朱莉を守ってくれたこと……。あの時、本当は涙が出そうに成程朱莉は嬉しかったのだ。(本当は欲を言えば、翔先輩に庇って貰いたかった……)でも……それは夢のまた夢。鳴海翔の一番は高校時代から常に明日香だったのだ。今更と言われても、どうしても朱莉は期待してしまっていたが、その結果は……? 翔は朱莉を見る事すらしなかったのだ。「もう翔先輩には何も期待したら駄目なのかな……?」朱莉はいつの今にかそのままベッドの上で眠りに就いてしまった—―****その頃、明日香と翔の部屋では――「悔しい!! 何故私がたかがガイドごときに馬鹿にされなくちゃならない訳!?」高級ブランドのショルダーバックを乱暴にベッドに投げつけた。「おい、明日香! 少しは落ち着けって!」翔は明日香を宥めるのに必死である。「煩いわね! 元はと言えば翔がいけないんでしょ! 突然あのレスト
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-13
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2-36 明日香の不在の夜 2

「そんな誹謗中傷を書き込んで、正体がバレたどうするつもりなんだ? もう少し俺達の社会的立場を考えて行動してくれ」「うるさい! 翔!」明日香は吐き捨てるように言うと、隣室に入って強くドアを閉めてしまった。「明日香! 明日香!」翔がドアをドンドン叩いても中から返事は返ってこない。「ふう……」翔は疲れ切った表情でため息をつくとソファに崩れるように座り込んだ。ここ数日、明日香のヒステリックが起きる頻度が増えてきている。やはり精神安定剤を一時的に中断しているのが良く無いのだろうか?2人でモルディブへ観光に来れば明日香の機嫌も直ると思ったのに……それは大きな間違いだったのかもしれない。しかし、翔の頭の大半を占めていたのは明日香ではなく、実は朱莉の方であった。(可哀そうな事をしてしまった。まさか彼女がガイドの女性とあの店に来ていたなんて。あらかじめ連絡を取り合って、鉢合わせしないようにもっと配慮すべきだったのだろうか……)いや、そうじゃないなと翔は思った。明日香のヒステリーが酷くなっても止めて、朱莉に謝罪するべきだったのだ。あの時の朱莉の怯え切った目と、青白い顔に小刻みに震えていた小さな身体が脳裏に焼き付いて離れない。今の段階の契約では朱莉との結婚生活は6年だ。契約書を見直して、もっと渡す現金を増やしてあげるべきなのかもしれない……。そこまで考えていた時、突然ドアが開けられて明日香が部屋から出てきた。「! あ……明日香。お前、一体なんて恰好をしているんだ? 何処かへ出掛けるつもりなのか?」翔は声を震わせて尋ねた。胸元が大きく開いたベアトップの真っ赤なフレアーワンピースに派手なメイクをした明日香が現れたのである。そして小さなボストンバッグと手にしている。「ええ、そうよ! 私達、今夜は同じ部屋に居ない方がいいと思うの! ついさっき、ネットでこの島から少し離れた小島の水上ヴィラを予約したのよ。今夜はそこに泊るから、翔は1人この部屋にいるといいわ!」そして部屋を出て行こうとする。「待て! 明日香! ここは日本じゃないんだ! 1人で行動するなんて危険な真似はやめてくれ!」翔は必死に懇願して明日香から荷物を奪おうとしたが、次の瞬間――パンッ!乾いた音が部屋に響く。明日香に平手打ちをされてしまったのだ。「あ……明日香……」明日香は冷めた目で翔
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-13
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2-37 明日香の不在の夜 3

「ほらアカリ。動いちゃダメよ、メイクが出来ないでしょ?」朱莉は今、部屋を訪れてきたエミに化粧をされていた。「で、でも……こんな姿。は、恥ずかしくて……」朱莉は消え入りそうな声で俯くと、エミに顔を上げられた。「コラ、下向かないの。メイクが出来ないでしょう?」それから約20分後――「はい、出来た。完成~! あっちに行って鏡を見てごらんなさい?」無理矢理エミに手を引かれ、朱莉は全身が映る鏡の前に立たされて息を飲んだ。「こ……これが私……?」大きな花柄のブルーのノースリーブのワンピースに、緩く巻き上げた髪、そしてアイシャドウにグロスを塗った顔はとても自分とは思えなかった。「ほら~もともと貴女は美人だったけど、3割増し位美人になったわ。さ、それじゃ行くわよ」朱莉の細い腕を掴むエミ。「え? ええ? 行くって……一体何処へ!?」「勿論! 素敵な大人が行く店よ?」エミはパチリとウィンクした。****「あ、あの……私、こんなお店来るの初めてなんですけど……」朱莉はエミに耳打ちした。エミが連れてきたのは高級ショットバーの店であった。客は全て外国人観光客ばかりで、誰もが高級そうな服をみにつけている。「ほら、アカリ。貴女すごくキュートだから皆に注目されてるわよ?」「え? そ、そんな……!」朱莉の顔が真っ赤に染まる。「さあ、アカリ。何を飲む? ……あ、そうだったわね。英語表記だったから……いいわ、私が適当に頼むからね!」エミの注文で、あっという間に2人のテーブルは様々なカクテルで埋め尽くされた。「さあ! ジャンジャン飲んでね!」エミはグイグイと朱莉にアルコールを進めてくる。素直な朱莉は言われるままにカクテルを飲み続け……とうとうテーブルに突っ伏してしまった。「ねえねえ。アカリ……大丈夫なの?」エミが心配そうに朱莉を揺する。「あ……ハイ。大丈夫ですよ~」しかしその目はトロンとし、頬は赤く染まっている。「う~ん……困ったなあ。アカリ、ちょっとだけ電話してくるから、じっとしてるのよ?」エミはタクシーを手配する為に店の外に出た。そして朱莉が1人になった所を男性客が近付いて行く……。その外国人客は舌なめずりをしながらテーブルに突っ伏している朱莉の肩に手を置こうとして、1人の東洋人観光客に止められた。『お前……その女性に何をしようとし
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2-38 サザンクロスに願う 1

 あの日の夜から数日が経過していた。朱莉は日本に帰るまでの残りの数日をガイドのエミと楽しく過ごした。2人で海に泳ぎに行ったり、シュノーケリングをしたり。ボートに乗って初めてイルカと遭遇した時は感動のあまり中々眠りにつく事すらできなかった程だった。 そして今夜がモルディブ最後の夜。朱莉はエミに夜のビーチに誘われた。「アカリ、モルディブに来たなら絶対にビーチで星空を見ておかなくちゃね。考えたら今まで一緒に夜空を見上げた事が無かったじゃない」エミは持参してきた缶ビールを朱莉に手渡した。2人で乾杯をして、良く冷えたビールを飲み、ため息をつくと朱莉は夜空を見上げた。「すごく星が綺麗ですね。あんまりこの島へ来てから星空を眺める事が無かったので。まるでプラネタリウムを見ているみたいで最高の気分です」朱莉は笑った。「あら、中々良い表現をするのね?」エミはビールをゴクリと飲み干して星を眺めている。「それにしても……すごくこれって日本では贅沢な事かもしれないですね。この島だから出来る事なんですよね……」満天の星空から、朱莉は目が離せずにいた。「ねえ……アカリ。私、いいものを持ってきてるんだ」「え? いいものって何ですか?」「ほら、これよ」エミがカバンから取り出したのは星座表だった。「え……? これって確か星座表ですよね?」「うん。これで2人で一緒にサザンクロスを見つけましょ!」エミは目をキラキラさせている。「サザンクロスって……もしかして南十字星ですか? 素敵……あの日の夜から数日が経過していた。朱莉は日本に帰るまでの残りの数日をガイドのエミと楽しく過ごした。2人で海に泳ぎに行ったり、シュノーケリングをしたり。ボートに乗って初めてイルカと遭遇した時は感動のあまり中々眠りにつく事すらできなかった程だった。 そして今夜がモルディブ最後の夜。朱莉はエミに夜のビーチに誘われた。****「アカリ、モルディブに来たなら絶対にビーチで星空を見ておかなくちゃね。考えたら今まで一緒に夜空を見上げた事が無かったじゃない」エミは持参してきた缶ビールを朱莉に手渡した。2人で乾杯をして、良く冷えたビールを飲み、ため息をつくと朱莉は夜空を見上げた。「すごく星が綺麗ですね。あんまりこの島へ来てから星空を眺める事が無かったので。まるでプラネタリウムを見ているみたい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-14
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2-39 サザンクロスに願う 2

「昔ね……私には日本にいた時恋人がいたのよ。彼は海がすごく好きな人でサーフィンが得意な人だったの。そしていつかモルディブでサーフィンをしたいってよく言ってたっけ……」エミはいつしか遠い目をしながら星空を眺めている。「ある日、2人でサーフィンに海に出たんだけど、波がすごく高かったのよね。私はまだサーフィンが得意じゃ無くて、波に乗るのに失敗して……」エミは瞳を閉じた。「彼は必死になって溺れた私を助けてくれたんだけど……私を助けた為に力尽きちゃったのかな……。気付いたら彼の姿が消えていたのよ」「!!」朱莉は思わずエミの顔を見た。しかし、そこには何の感情も見せずに淡々とした表情のエミがいた。「彼は結局3日経っても見つからなくて、遺体が無いままお葬式をあげる事になってしまったの。だけど、私はどうしても彼が死んでしまったなんて信じられなくて……ひょっとすると、モルディブにサーフィンをしに来てるんじゃないかなって馬鹿な考え迄持ってしまったのよ」エミは俯いた。「彼はよく言ってたの。いつか南十字星が見える場所で2人で一緒に見つけようって。彼はね、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の小説が好きだったのよ。それで、私もその小説を手にして、サザンクロスの話が目に止まったの」「エミさん……」朱莉も銀河鉄道の夜の話はよく知っていた。主人公ジョバンニと彼の親友カムパネルラが銀河鉄道に乗って旅をする話……。(物語の終盤で、銀河鉄道に乗っていた乗客が天上と呼ばれるサザンクロスの駅で降りてしまうんだっけ……。そして結局、カムパネルラは現実世界で友人を助ける為に川に入って、溺れて死んでしまった……)「彼が行きたがっていたこの島で、サザンクロスが見えるこのモルディブに来れば……彼に会える気がして私は1人でこの島へやって来たの。でも本当の事を言えば死に場所を求めていたのかもね」「!」朱莉はあまりにもショッキングな話に言葉を無くしてしまった。「だけど、そんなボロボロになってしまっていた私を救ってくれたのが今の主人って訳よ」突然エミはそれまでのしんみりした様子から、明るい笑顔になる。「あのね、アカリ。私、少しだけ、クジョウタクマって人と電話で話したのよ。だから貴女の複雑な事情も少し知ってる。その上で話をさせて貰うけど。アカリ、貴女……本気で偽装結婚の相手のこと、好きなんでしょう? 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-14
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3-1 旅行の代償 1

「はあ~……」モルディブ旅行から帰国して5日目、翔はPCに向かいながら大きなため息をついた。「何だよ。そんな幸せが逃げていきそうな大あくびをして。そんなだらしない姿を取引先に見られたらどうするんだよ。この会社は景気が悪いのかと思われるだろう?」同じくデスクで仕事をしていた琢磨が顔を上げ、翔を咎めた。「そんなこと言ったって、今俺は非常にまずい立場に立たされているんだよ」そして再び深い溜息をつく。「仕事で何か困ったことでもあったのか? だったら秘書の俺にまず相談するのが筋だろう? さあ、何だ。もしかして取引先と何かトラブルでもあったのか?」琢磨は翔のデスクに近付くとPCを覗き込む。「うん? 画像加工プリントサービス『フォトグラフ』……何だ、これは?」それは写真を修整、加工してくれるサービス会社のHPであった。「ああ……ちょっと写真を加工してくれるサービス会社を調べていたんだ」翔は頭を抱えながら再びため息をつく。「ふ~ん……。お前ひょっとすると今度は映像加工サービスの業界にも乗り出すつもりなのか?」琢磨の質問に否定する翔。「何言ってるんだ。そんなんじゃない。まあゆくゆくはそっちの業種に手を伸ばすのもありかもしれないが、今は全く関係ない」「じゃあ何の為に調べていたんだよ」すると、途端に翔の顔が曇った。「実は……」「うん?」「会長から……メールが届いたんだ」翔は重そうに口を開く。「メール? どんな内容なんだよ。その表情からすると厄介な案件なのか? ひょっとするとこの間の特許志願が通らなかったとか?」「違う! そんなんじゃないんだ……。個人的なことだよ」「個人的なこと……? お前自身についてか?」「ああ」「そうか、なら問題解決に向けて頑張れよ」琢磨が背を向けてデスクに引き返そうとするのを翔が引き留めた。「琢磨! お前に頼みがあるんだ……聞いてくれるか?」「はあ~。ったく……またかよ。お前の頼みはいつもろくな頼みじゃ無いんだからな……」「そこを何とか頼む! 朱莉さんについてのことなんだ……」「朱莉さんについてのこと?」「以前言ってくれただろう? 朱莉さんを紹介したのは自分にも責任があるから協力するって」「おまえなあ……俺は確かに責任はあると言ったが、協力するとまでは言ってないぞ? 勝手に話の内容を変えるなよ」「駄
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-14
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3-2 旅行の代償 2

「ちょっと待てよ、翔! そもそも2人でモルディブへ行った証拠を会長に見せる為に行った旅行じゃ無かったのか? 何故お前と朱莉さんのツーショットが無いんだよ!」「明日香が……常に一緒だったから朱莉さんとの2人で映る写真を写す事が出来なかったんだ……」「朱莉さんにはお前と明日香ちゃんのツーショットの写真を何枚も撮らせて? 挙句には2人のキスシーン迄写させたんだろう? お前、一体何やってるんだよ!」琢磨は流石に我慢の限界で声を荒げてしまった。「ああ、そうだ。俺は本当に最低な男だ。明日香の御機嫌取りばかりして彼女を……朱莉さんを傷付けてしまった」「く……! ま、まあ過ぎてしまったことはもうどうしようもないが……。うん? 待てよ。もしかしてお前がさっき見ていたHPってまさか……!?」「ああ。朱莉さんの写真を借りて、そこの会社に画像の加工を依頼しようかと思ってるんだ。最短2日で仕上げてくれるそうなんだが……。それで琢磨から朱莉さんのモルディブで撮影した画像ファイルを送って貰えないか頼めないかと思ってって……琢磨、どうした?」琢磨が肩を震わせている事に気が付いた。「お、お前なあ! ふざけるな! いいかげんにしろよ! 自分が今何をやろうとしているか分かってるのか!? 会長に2人がモルディブ旅行へ行った証拠写真を見せなくてはならないので、朱莉さん。申し訳ありませんが、モルディブで撮影した朱莉さんの写真を拝借出来ないでしょうかって俺にその台詞を言わせる気かよ!」「そのまさかなんだ……」琢磨は怒りで顔が赤くなり、翔の顔色は青ざめている。何とも対照的な2人は暫く視線を交わしていたが……琢磨の方が折れた。「分かったよ……。俺から朱莉さんに頼んでみるが……いいか? 翔。後で必ず何らかの形で朱莉さんに詫びるんだぞ?」「ああ……分かってるよ」「全く、俺もどうかしてると思うよ。お前や明日香ちゃんのような奴と関わって……まるで悪魔の手先にでもなったかのような気分だよ。本当に朱莉さんが気の毒で堪らないよ……」琢磨の言葉に翔は項垂れた。「ああ……だから琢磨。お前には悪いが……朱莉さんに優しくしてあげてくれないか?」「翔、自分で何を言っているのか分かっているのか? 本来優しくするのは俺じゃなくてお前の仕事だろう? それを普通秘書の俺に言うか?」「悪いと思ってるよ。お前にも…
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3-3 明日香と琢磨の口論 1

 朱莉から自撮り写真の画像を受け取り、写真を加工編集して貰った翔は写真が出来上がったその日のうちに、祖父にメールに添付して送った。祖父からはモルディブのハネムーンを楽しめたようで良かったなと後日メールが入ってきたので、翔は一安心していたのだが……。****「おはよう……って何だよ! 朝っぱらから辛気臭い顔して……」オフィスに入って来た琢磨は難しい顔つきでデスクに座っている翔を見ると驚いた。それ程翔は髪が乱れ、酷い顔色をしていたのである。「あ、ああ……おはよう、琢磨」翔はぼ~ッとしていたが、琢磨に気付くと、顔を上げた。「おいおい……しっかりしてくれよ。今日は取引先と商談があるんだろう? あんまり聞きたくは無いが、一応聞いておく。……昨夜、明日香ちゃんと何かやりあったな?」琢磨は背広を脱ぐと、椅子に掛けた。「まあな、多少は……。だが、問題はそこじゃないんだ」翔は溜息をついた。「何だよ、だったら早く言え。それで何があった。早いとこ今抱えている問題を解決しなければ、午後の大事な商談に影響が出てしまうだろう?」バンと机を叩く琢磨。「そうだな……言うよ。実は会長が1週間後……日本に一時的に帰国してくるんだ」「え? そうだったのか? 初耳だな。それは昨夜決まったことなのか?」「ああ。……そうだ」「ふ~ん……それで明日香ちゃんが荒れたわけか。明日香ちゃんは子供の頃から会長とは反りが合わないって言ってたものな」「いや。明日香が荒れていたのはそれだけが原因じゃないんだ……」「何だ? まだ何かあるのか?」「会長……祖父が俺と朱莉さんの新婚生活の様子を見たいから……新居に遊びに来ると言ってきたんだよ。ひょっとしたら、あのモルディブでの写真に何か違和感を感じたかもしれない……だからだろうか?」翔は両手を組んで、顎を乗せると考え込んでいる。「だから俺はお前が写真を画像加工に出すとき言ったんだ! 会長は勘のいいお方だ。下手な小細工をしても嘘はバレるぞって。何か怪しいと思われたんじゃないのか? でもな、翔。それはお前の自業自得だからな? 最初から明日香ちゃんが文句を言おうが何しようが、モルディブでちゃんと朱莉さんとの写真を撮っておかなかったお前の責任だ。明日香ちゃんの矢面から朱莉さんを守る為に、波風立てたくないって一度俺に言った事があるが……俺から言わせ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-15
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3-3 明日香と琢磨の口論 2

――ピンポーン インターホンを押すと、ドアが開けられて不機嫌そうな明日香が顔を覗かせた。「……随分早かったのね。琢磨」明日香は露骨に嫌そうな視線を琢磨に向けるが、それを気にも留めずに琢磨は言った。「ああ、急いでここへ向かったからな。それじゃ中へ入らせて貰うよ」「ちょ、ちょっと……!」明日香の非難する声も、ものともせずに琢磨は部屋に上がり込むと、翔の衣服やらスーツを片っ端からクローゼットから出していく。「な……何するのよ! 琢磨!」明日香は琢磨が翔の背広に手をかけた時、片側の袖を掴んで引っ張りながら抗議した。「翔の服を何処へ持って行くつもりよ!」「それを俺に聞くのか? 明日香ちゃん。翔から聞いたぞ? 昨夜会長から連絡が入ったそうだな? 近々日本に一時的に帰国するそうじゃないか。それで朱莉さんと翔の新婚生活の様子を見たいって言言われたんだろう? 恐らく朱莉さんは翔の日用生活品は用意してるだろうが流石に服までは用意していないはずだ。だからこの部屋から翔の服を朱莉さんの部屋に移動させるのさ」琢磨はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。「な……何ですって……! 彼女の部屋に翔の服をですって? 嫌よ! そんな事させないわ! 翔の服なら彼女が適当に買って用意すればいいでしょう?」「随分無茶な事を言うんだな? 女性が1人だけで男性用の服やら下着をほんの数日で揃えきれると思ってるのか? 何せ、お前達兄妹が着ている服は全てブランド品ばかりだしな?」「ちょっと! 私と翔を兄妹って言わないでよ!」明日香はヒステリックに叫んだ。「何がいけない? 世間的には明日香ちゃんと翔は血の繋がりは無いが、戸籍の上では立派な兄妹だ。会長だってそれを分ってるからお前達の結婚を認めていないんだろう? いいか? 今から俺がやろうとしていることに文句を言ったり、この件で朱莉さんに言いがかりを少しでもつける様なら、俺は全て会長に報告するからな? 2人の結婚が偽装だと言うことも、偽造結婚に関する契約書だって全てな。あれを作ったのはこの俺だ。それらを全て会長に証拠として提出する。そんなことになれば明日香ちゃんも翔も終わりだぞ? きっとそれらが知れたら会長はお前達を許さない。翔に会社を継がせるって話も消えて無くなるかもしれないぞ?」(尤も俺自身だって終わりには違いないだろうけどな……)琢磨は
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-15
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3-4 用意周到 1

 部屋でPCを前に通信教育の勉強をしていた朱莉のスマホに電話がかかってきた。着信相手は琢磨からだったのだ。「え……? 九条さん? すぐに出なくちゃ」朱莉はスマホをタップすると電話に出た。「はい、もしもし」『ご無沙汰しています、九条です。この間は写真の件で無理を言ってしまい、大変申し訳ございませんでした』「いえ、別にそれ位はどうということはありませんから。あ、もしかしてその件でわざわざお電話を?」『いえ、違います。実は大変急な話で申し訳ございませんが、今ご自宅の前におります。もしご都合がよろしければ少々伺ってもよろしいでしょうか? 奥様に大切なお話があります」(え? もう家の前に……? どうしたのかな?)いつも用意周到な彼にしては珍しい事だと朱莉は思った。だが……。「はい、大丈夫です。今玄関を開けますね」玄関へ向かい、念のためにドアアイで確認すると、大きな紙袋を手にした琢磨の姿があった。(え? あの荷物何だろう……?)朱莉は急いでドアを開けた。「こんにちは、お会いするのはお久しぶりですね。突然訪問してしまい、申し訳ございません」琢磨は深々と朱莉に頭を下げた。「い、いえ……。大体は部屋におりますので、どうぞ気になさらないで下さい。それで、今日はどのようなご用件でしょうか?」「ええ。じつは会長が近々日本に一時帰国されるそうです」「え? 会長って……翔さんの御爺様ですよね?」「はい、そうです。それで一度、副社長に自宅を訪問したいと伝えてきたそうなんです」「! そ、そうですか……」ああ、ついにこの日がやって来てしまったのかと朱莉は思った。いずれは翔の親族が客として訪れるだろうと言うことは覚悟していたが、いざそれが現実化されるとなると、朱莉は不安な気持ちで一杯になった。思わず俯く朱莉に琢磨は謝ってきた。「申し訳ございません」「え?」「いずれ会長がこちらにお越しになるのは分かり切っていたことだったのに……問題を先送りしておりました」「問題……?」「はい。恐らく会長はお2人の新居での生活の様子を知りたいと思っているはずです。しかし実際にはお2人は一緒に住んだことも、それどころか副社長はこのお部屋にすら入ったこともありませんよね?」「は、はい。その通りです……。あの、それは私が翔さんにあまり良く思われていないから……だと思います
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-15
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