モルディブ時間の午後8時—―翔のスマホが鳴っている。部屋にいた明日香が気付き、手に取った。「誰かしら……あら?」着信相手は琢磨からだ。早速明日香は電話に出ることにした。「はい、もしもし」『もしもし…って明日香ちゃんか?!』「ええそうよ、何? 仕事の話かしら?」明日香はベッドの上でワインを手に取ると優雅に飲んだ。『いや……別にそういうわけじゃないが……。翔はどうしたんだ?』「シャワーを浴びに行ってるわ」『そうか。という事は食事は済んだのか?』「ええ、そうよ。今日はモルディブでも有名なレストランに行ってきたのよ。やっぱりこの国の魚料理はおいしいわね」明日香はその時の事を思い出し、笑みを浮かべる。『ああ、そうかい。それは良かったな』電話越しに琢磨のイラつきを感じとる明日香。「あら、何よ。随分イラついているじゃない? さては私達だけモルディブで羽を伸ばして自分だけは日本で仕事をしているから、八つ当たりでもしてるのかしら? なら貴方も来月休暇を取ってここに来ればいいじゃない。海は綺麗だし最高よ?」そしてもう一杯、ワインを飲み干す。『おい……明日香ちゃん。もしかして酒でも飲みながら話してるのか?』「あら、良く分かったわね?」『当り前だろう? さっきから会話の合間合間に何か飲み干す音が聞こえてくるんだから……おい、電話中に酒はやめろよ。気が散る』「ほんとに琢磨って昔から遠慮なしにずけずけと言いたい事言ってくれるわね? この私にそんな口聞くの貴方くらいよ?」『おお、そうかい。それは良かったな? 明日香ちゃんに物申せる人物がいてさ』「……切るわよ? 何よ。文句を言う為にかけて来た訳?」明日香はムッとして通話を切りかけ……。『おい、待てよ! おかしいだろう? そもそも俺は明日香ちゃんの携帯じゃ無くて、翔の携帯に電話してるんだぞ? 勝手に人の電話に出て、挙句に切ろうとするなんて滅茶苦茶な話だろ?』「……それじゃ、何の為に電話してきたのよ」すると、はああ~と電話越しに琢磨の溜息をつく声が聞こえてきた。『ああ……もういいや、電話の相手が明日香ちゃんでも』「何よ? 私でもいいって?」『いいか? 俺は朱莉さんの事で電話をかけてきたんだ』朱莉と聞いて、明日香の眉がピクリと動く。「な、何よ。私はちゃんとやるべきことはやったわよ? 彼女の
Terakhir Diperbarui : 2025-03-09 Baca selengkapnya