翌朝――朱莉はスマホを握りしめ、重い足取りでパスポートセンターを出てため息をついた。どうせモルディブへ行くなら、いっそ一人で行きたかった。密かに朱莉は心の中で旅行に行けなくなることを期待していたのだが……。(この時期だから航空券等取れるとは思っていなかったのに……) 結局、昨日朱莉は明日香に説得されてやむを得ずモルディブへ行く事を承諾させられてしまったのだ。午前中の内にパスポートセンターに行って発行手続きを済ませれてくるように言われた朱莉は憂鬱な気持ちのまま手続きを済ませてきた。そしてその帰り道、明日香からモルディブへ行く飛行機の手配とホテルも予約することが出来たので必ず一緒に行くようにとのメッセージが送られてきたのだ。 翔からは現地に着いたら自由行動をして構わないと言われているが、英語もフランス語も話せないような自分が一人で行動する事等出来るのか不安だった。現地のガイドを雇う事は可能だろうか? 明日香に頼んでもそれ位一人でやりなさいと言われそうだし、翔に頼めば恐らく明日香に知れてしまうだろう。それに明日香の手前、翔に直接頼みごとをするのは良くない事をしている気分になってしまう。そうなると、思い浮かぶ相手は1人しかいなかった。「九条さん……あの人にお願いしてみよう……」朱莉はスマホをタップした―― 着信音と共に、琢磨のスマホにメッセージが届いた。いつものように翔のオフィスで仕事をしていた手を止めてスマホに目を通し、驚いた。(え? 朱莉さん……? 何故突然俺のスマホにメッセージを送ってきたんだ?)思えば朱莉とのメッセージのやり取りはPC設置の時以来、実に3カ月ぶりだった。琢磨は翔の様子を伺った。広々としたデスクの上に何台ものPCを並べ、画面を食い入るように見ている翔にスマホでメッセージが届いた様子は無かった。と言う事は翔には連絡せずに直接自分にメッセージを送ってきた事になる。(何か困ったこ事でもあったのだろうか? 翔にも相談出来ないような何かが…?)琢磨は翔に気づかれないように背中を向けるとメッセージを開いた。『お久しぶりです、九条さん。お忙しいところ、メッセージを送ってしまい、申し訳ございません。実はハネムーンと言うことで翔さんと明日香さんとの3人でモルディブへ行くことが決定しました。ただ、現地に着いたら自由に行動してよいと言われたの
Terakhir Diperbarui : 2025-03-06 Baca selengkapnya