ここは鳴海翔のオフィス。ノックの音がして琢磨が部屋に入って来た。「ほらよ、お待たせ」来客用のガラステーブルの上に2人分のランチボックスを置くと琢磨はソファにすわり、奥にある小型冷蔵庫から缶コーヒーを取りだし、プルタブを開けた。「温かいうちのほうが美味いぜ」「ああ、分かったよ」琢磨に促され、翔もランチボックスの置かれているテーブルに移動してソファに座るとボックスを開けて中を見た。「ふう~ん。美味そうじゃないか」「そうだろう? 丁度こっちに戻って来る時に会社の前でキッチンカーが何台か来ていてな。一番行列が出来ている列に並んで買ってきたのさ」琢磨が買って来たのはケバブのランチボックスだった。ソースが良く馴染んだ肉が乗せてあり、サラダやフライドポテトも付いている。「よし、それじゃ食べるか」翔の言葉に琢磨もランチボックスを開けて、2人で食事を始めた。「翔。昨夜、あの後どうしたんだ?」食事をしながら琢磨が尋ねる。「あの後?」「会社の帰り、明日香ちゃんとオフィスビルの外で待ち合わせをして二人で食事して帰ったんだろう?」「それがどうした?」「朱莉さんに何か連絡はいれたのか?」一瞬、ピクリと翔は反応したが、すぐに食事を続けながら答えた。「もちろんだ。メールを入れたよ。一度時間がある時にお互いの事を知る為に一緒に食事でもどうでしょうか? ってな」「おお! お前にしては中々気の利いたメールを入れたじゃ無いか? それで朱莉さんは何だって?」翔は黙って朱莉から届いたメールの内容を琢磨に見せた。<はい、勿論です。よろしくお願いします>「随分シンプルな内容だと思わないか? この俺がわざわざ連絡を入れたって言うのに」どこかつまらなそうに翔は言う。「恐らく気を使っているんじゃないか? 明日香ちゃんにさ。親し気な内容のメールを送って中を見られでもしたらまずいと思ったんじゃないかな?」「え? なんだって明日香に……? 大体明日香が彼女のスマホを……」そこまで言いかけて翔は昨夜の明日香との食事の時の会話を思い出した。<須藤朱莉さんのスマホに私の連絡先を登録しておいたわ。これからは何か困った事があったら連絡を入れてちょうだいと伝えてあるのよ>「そういえば明日香が彼女のスマホに自分の連絡先を登録したと言っていたな……」翔の言葉に琢磨は顔をしかめる。
Last Updated : 2025-02-28 Read more