Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 91 - Bab 100

139 Bab

4-11 奪うもの、奪われるもの 2

「そうなの。餌も水もろくに上げていなかったし、平気であんな小さい子犬にしつけの為だと言って手を上げていたのよ? 子犬は可哀そうにキャンキャン鳴いていたっけ……」「そ、その話……本当なのか……?」翔の声は震えていた。「あら何よ? 私が嘘をついているとでも?」明日香が口を曲げる。「いや。しかし……見間違いと言うことは……?」「そんな訳無いでしょう!? とにかく朱莉さんは子犬を虐待していたのよ? だから私は言ったの。今から1週間以内にその子犬を手放しなさいって! さもなくば私から保健所に虐待の疑いがありますって通報するからと言ってきたわ」明日香は興奮を抑えきれないかのように激しい口調でまくし立てる。「あ、明日香。それ……本当のことなんだよな……?」翔は明日香の目をじっと見つめた。「ええ、そうよ。まさか朱莉さんがあんな人だとは思わなかったわ。人って本当に見かけじゃ分からないものね。でもきっとこれで朱莉さんも目が覚めて犬なんか飼うべきものじゃないって身の程を知ったんじゃないの? そう思わない翔? これで良かったのよ」まるで全てを見透かすような視線の明日香に翔は頷くしかなかった。 食事の終わった後、翔はリビングのソファの隙間に藍色の毛糸の編み物を見つけた。拾い上げてみるとそれはアラン模倣が美しい藍色のマフラーであった。(このマフラーは……ひょっとして……?)翔は片づけものをしている明日香の傍へ寄ると尋ねた。「明日香……このマフラーはひょっとして……」「あ……そ、それは……」明日香が言い終わらないうちに翔は明日香を抱きしめた。「ありがとう! 明日香。これは俺へのプレゼントなんだろう? バレンタインの」「え、ええ。そうなのよ。今日……やっと編み上がったところだったの」「手編みのマフラーなんてくれるの初めてだよな? 大切に明日から使わせてもらうよ」「そう……。大切に使ってね……」明日香は翔の胸に顔をうずめた――23時――「マロン……。今夜から一緒に寝ましょう? あなたと一緒にいられる時間はもうあと僅かしかないから」朱莉はベッドの中にマロンを入れると、そっと身体を撫でなた。結局今日は新しい引き取り手を見つけることは出来なかった。さらに追い打ちをかける出来事があった。朱莉が一生懸命編み上げた翔へのバレンタインのプレゼントのマフラーが消え
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4-12 京極正人との出会い 1

 翌朝8時半――「おはよう。琢磨」先に出社して、デスクで仕事をしていた琢磨に朝の挨拶をしながら翔がオフィスに入って来た。「ああ、おはよう。翔」琢磨はPCから一瞬顔を上げ、翔の首元を見た。「あ、翔……そのマフラー……」「いいだろう? 実はこれ……」翔が言いかけた時、琢磨が笑顔で言った。「朱莉さんから貰ったんだろう? いい色合いじゃないか。お前の為に頑張って編んでいたからな」「……え?」琢磨の話を聞き、翔の顔が曇った。「何だ? どうかしたのか?」翔の顔が強張ったのを見て琢磨は怪訝そうに首を傾げた。「これ……朱莉さんが編んだのか?」翔はマフラーを手に取り、琢磨に尋ねた。「ああ。犬の動画が朱莉さんから送られてきた時、今お前の為にマフラーを編んでると言っていたからな。それに藍色のマフラーだと言っていたし。朱莉さんから貰ったんだろう?」「琢磨。もう少しその話……詳しく……」しかし、琢磨は椅子から立ち上がった。「悪い、翔。今日はこれから得意先の秘書と打ち合わせがあって、先方の企業に出向かないといけないんだ。話なら後にしてくれないか?」「あ、ああ……。分かった」琢磨はPCの電源を落とし、上着を着て鞄を持つと忙しそうに足早にオフィスを出て行った。琢磨がオフィスから出て行くと翔はハンガーにかけてあるマフラーをチラリと見た。「まさか……あのマフラーは朱莉さんが……?」(琢磨が社に戻ってきたら話を聞いてみるか)翔は溜息をつくと、PCを立ちあげた—―****「ふう……なかなか犬の引き取り手って見つからないんだな……」朱莉は溜息をついた。今朱莉は億ションに完備されているドッグランに来ている。ベンチに座ってじっとマロンの様子を眺める朱莉。マロンは楽しそうに芝生の上を走り回っている。愛らしいマロン……。だけどもうすぐお別れしなくてはならないのだ。マロンの姿を見ていると再び目に涙が浮かんできたので、慌ててハンカチを目に当てた。ドッグランにはマロン以外にもう1匹違う犬が遊びに来ていた。しかも偶然か、同じ犬種のトイ・プードルであった。始め2匹は離れた場所で遊んでいたが、いつしか2匹一緒になってお互いに走り回っていた。「え……? いつの間に仲良くなっていたんだろう?」朱莉は不思議そうにその光景を眺めていると、突然声をかけられた。「あの……すみ
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4-13 京極正人との出会い 2

「僕の犬とすごく仲良さそうに遊んでいたので、また二匹を一緒に遊ばせたいなと思って。でも……迷惑でしょうか? 別に怪しい者じゃありませんから。よければ名刺があるので」男性は胸ポケットから名刺を出して朱莉に手渡してきた。「京極……正人さん……ですか? えっと……リベラルテクノロジーコーポレーション代表取締……役……?」朱莉は名刺を見て目を丸くした。「どうかしましたか?」「あ、あの……代表取締役って……まさか社長さんですか!?」名刺を両手で握り締めながら朱莉は京極と名乗る男性を見た。「ええ……まあ一応は。でも2年前に独立して作ったばかりの会社なので、それ程大したことはありませんよ。IT産業の企業なので、僕も含めて社員の殆どは在宅勤務か必要に応じてレンタルオフィスを利用しているんですよ。ゆくゆくは自社ビル位は持とうかと考えていますけど……」京極の話を朱莉は呆然と聞いていた。やはりこの億ションに住む人達は自分とは住む世界が違うのだと思うと、何となく惨めな気持ちになってきた。今の状態で6年後の契約結婚が終わり、翔と離婚をすれば朱莉はこの億ションを出なければいけない。自分には何も残らないのだ。その為にはまず通信教育を頑張って、高校卒業の資格を得なければならない。一方の京極は突然朱莉が黙りこくってしまったので、再度声をかけた。「あの……何かありましたか?」「あ、いえ。何でもありません」「あの、宜しければ貴女の名前も教えていただけますか?」(名前……? 私に鳴海の姓を名乗る資格があるの……?)いくら翔と婚姻関係を結んでいるとは言え、所詮それは書類上だけのこと。だが……。「はい、鳴海朱莉と申します」「朱莉さんですか。良い名前ですね」何故か男性は苗字ではなく、下の名前で話しかけてきた。「ありがとうございます。あの、それではそろそろ失礼しますね」すぐに部屋に戻って勉強をしなければ……。朱莉は立ち上ると、京極に声をかけられた。「あ、あの」「はい?」朱莉は立ち上がったまま返事をした。「それで、ここで一緒に犬を遊ばせるという話ですが……」(ああ……そう言えばそんな話をしていたっけ……)「あの……今と同じ時間で、1時間位なら大丈夫ですよ?」朱莉はとてもでは無いが出会ったばかりの男性に、もうすぐ私の飼い犬はいなくなります。とは言えなかった。(
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4-14 バレた嘘 1

――16時「ふう~。今日の打ち合わせは中々ハードだった……」琢磨が疲れ切った様子でオフィスに戻って来た。「ご苦労だったな。琢磨」翔がコーヒーを琢磨に手渡した。「へえ……。副社長自らがコーヒーを淹れてくれるとはな」琢磨はらコーヒーを一口飲むと笑みを浮かべる。「うん、旨い」翔も自分にコーヒーを淹れると、琢磨に質問した。「なあ……琢磨。お前に聞きたい事があるんだが……」「その顔からすると会社の話じゃないな? 大方明日香ちゃんか朱莉さんのことだろう?」コーヒーをデスクの上に置くと琢磨は椅子の背もたれに寄りかかる。「……俺はまたヘマをしてしまったらしい」「ヘマ? 一体どんな?」「マロンの動画が明日香に見つかってしまった」翔は神妙な面持ちで言った。「え? ヘマってそれだけのことか?」「ああ……。そうだ」「何だよ。ヘマって言うからどれ程の物かと思った、、別にバレないだろう? 送り主だって俺なのに」「いや……。それが明日香に朱莉さんが飼っている犬だとバレてしまったんだ」「何だって!? ……ったく。明日香ちゃんはお前が絡んでくると、恐ろしく勘が鋭くなるよな? それで何があった? 明日香ちゃんは確か動物が嫌いだったよな?」琢磨はコーヒーに手を伸ばし、一口飲んだ。「明日香は……言ったんだ。朱莉さんが飼い犬を虐待しているって……」翔は沈痛な面持ちで琢磨に言う。「はあ……? 翔……お前、その話信じたのかよ?」琢磨は呆れたように翔を見た。「まさか! 信じるはず無いだろう!? だが……まだ明日香は精神が不安定なんだ……。だから信じざるを得なかった……」「お、お前なあ……! まあいい。最後まで話を聞かせろよ」「あ、ああ。それで明日香は朱莉さんに言ったらしいんだ。1週間以内に犬を手放さなければ……保健所に通報するって……」「……」琢磨は口をぽかんと開けたまま翔を見つめた。「どうした? 琢磨」「いや……あまりのことに一瞬言葉を無くしてしまっただけだ。翔、勿論そんな馬鹿な話やめさせたんだよなあ?」「……いや。止めなかった……」「お前、本当に止めなかったのか? それじゃ朱莉さんにあの犬を手放させるつもりなのか? 翔! お前朱莉さんが何故犬を飼いたがったのか分からないのか!?」琢磨は声を荒げて翔を見た。「犬が……好きだから……? いや
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4-15 バレた嘘 2

「お前なあ!」気付けば琢磨は翔の胸倉を掴んでいた。……がしかし、その手を降ろした。「琢磨……? 殴らないのか?」「馬鹿言うな。会社で副社長のお前を殴れるはずが無いだろう?」「そうだよな……」翔は自嘲気味いに笑った。「となると……きっとあの朱莉さんのことだ。今頃必死になってマロンの飼い犬を探しているはずだな……」「ああ、そうだ。多分な……」「俺達も協力して探してやるのがいいのかもしれないが……それだと何だかまるで俺達は早く朱莉さんに犬を手放させようと取られかねないし……」琢磨は腕組みしながら考えた。「なあ、琢磨。お前のマンションで飼えないか? そうすれば週末位なら朱莉さんとマロンを会わせることが……」そこまで翔が言いかけると、琢磨が顔を真っ赤にして怒り出した。「おい翔! お前、ふざけるなよ! 俺の住むマンションは第一ペット不可だ。バレたら追い出されてしまうだろう!? 大体、お前仮に俺が預かったとして……朝から仕事の俺がどうやって犬の世話が出来るって言うんだ!? そこまで言うなら、社内にペット専用ルームでも作れよ!」「うん……それは良い考えかもな……」「おいおい……冗談だろう?」琢磨はひきった顔で翔を見た。「いや……勿論冗談だ。だが明日香との約束まで後6日しかないからな……。何か対策を考えないと……」「ああ、そうだ。俺達には責任があるからな。だいたい、お前早目のバレンタインプレゼントを朱莉さんから貰ってるしな」琢磨の言葉に翔は反応した。「バレンタインプレゼント……? そう、それだ!!」「な、何だよ! 今度は! 急に大声を出すなよ!」しかし翔は琢磨の言葉に耳を貸さずに、ハンガーにかけてあるマフラーを持って来ると琢磨に見せた。「教えてくれ、琢磨。このマフラーを編んだのは朱莉さんなのか?」「多分な。以前朱莉さんからマロンの動画を送って貰った時に、お前へのバレンタインプレゼントに藍色のマフラーを編んでいると言ってたからな。ただ……どうやって手渡せばいいか悩んでいた。……おい、どうした? 翔」「そ、そんな……」翔は唇をかみしめている。「翔?」「昨夜……部屋に帰るとリビングのソファの隙間にこのマフラーが落ちていたんだ。それでてっきり明日香の手編みのマフラーかと思って尋ねたら……頷いたんだ」「それで、明日香ちゃんの手編みのマフ
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4-16 初めての翔からの電話 1

 21時―― 朱莉はペットショップからPCに送られてきたメールに目を通していた。そこには今日も新しく飼い主になってくれるような方は現れませんでしたとう内容のメッセ―ジが書かれていた。「やっぱり、そう簡単には見つからないんだな……」朱莉は犬用ベッドで丸くなって眠っているマロンを見ながら溜息をついた。マロンは今から30分程前にシャワーで身体を綺麗に洗った。ドライヤーで乾かしてあげた頃にはすっかり眠くなっていたようで、今は気持ちよさそうに眠っている。椅子から立ち上がると、そっと眠っているマロンの身体に触れる。(温かい……)マロンの温かい体温が、ドクドクと動く心臓の音が朱莉の掌を通して伝わって来る。朱莉の掌に涙がポトリと垂れた。マロンの身体に触れながら、朱莉は声も出さずにポロポロと涙を流していた。(マロン……離れたくない……。あなたを手放したくない……。ずっと側にいて欲しいのに……)その時、突然朱莉のスマホに電話の着信を知らせるメロディーが鳴り響いた。「電話……?」(珍しい。誰からだろう)ひょっとして母からだろうか……? 電話の番号は見たことも無い番号だった。(どうしよう?)電話に出ようか出まいか、朱莉は迷ったが……スマホをタップした。「もしもし……?」『朱莉さんか? 俺だ。翔だよ』電話の相手はなんと翔からだったのだ。今まで一度も翔から電話を貰ったことが無い朱莉はすっかり面食らってしまった。「あ、あの……本当に翔さんなんですか……?」『ああ、そうだよ。すまない、今まで一度も電話を掛けた事が無かったから驚かせてしまったね?』「あ……はい、少し驚きました」受話器越しから聞こえて来る翔の声に朱莉の心は自然と高まってきた。『何だか声の調子がおかしいみたいだけど……もしかして泣いていたのかい?』「!」翔の気遣うような言葉に思わず朱莉は息を飲んだ。その様子が翔に伝わったのだろうか。『すまなかった……。朱莉さん』「え……?」突然の翔の謝罪の言葉に朱莉は戸惑った。『明日香が朱莉さんにマロンを手放す様に言ったらしいな?』「! 知っていたんですか……?」まさか、翔にマロンの件の話が伝わっているとは朱莉は夢にも思わなかった。『ああ、明日香が自分から言ってきたんだ。本当にすまなかった……。俺がへまをして琢磨経由で朱莉さんが動画撮影してくれ
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4-17 初めての翔からの電話 2

『朱莉さん……俺には明日香を止めることが出来ない……』朱莉は翔の話を黙って聞いていた。(ええ。分かっています……だって翔先輩の一番は……明日香さんだっていうことは高校時代から……)「はい。今マロンの飼い主を探している所です。でも、ありがと「うございました」『何故お礼を言うんだい?』翔の声は何処か苦しそうだった。「それは……ほんの短い間でもマロンと一緒に暮らせたからです。感謝しています」目頭が熱くなり、鼻の奥がツンとなったが、朱莉は泣くのを必死で堪えながら言葉を綴った。(駄目……今ここで泣いたら翔先輩が気にしてしまう……)『朱莉さん。俺の方でもマロンを大事に育ててくれそうな人を探してみる。明日香の提示した期限ギリギリまではマロンの側にいられるように条件を提示して探してみるから……。すまない。それ位しかしてやれなくて』「いえ……。お、お仕事が忙しいのにそこまで考えていただき、ありがとうございます」朱莉は泣きたい気持ちを必死に抑えて翔にお礼を述べた。『朱莉さん……』翔の声が躊躇いがちに朱莉の名を呼んだ。「は、はい」『藍色のマフラー。俺の為に編んでくれたんだって? 大事に使わせて貰っているよ。ありがとう』翔の言葉に朱莉は驚いた。「え? ど、どうして……?」『明日香が朱莉さんの所へ行った時、マフラー無くなっていただろう?』「は、はい」『部屋に帰ったらマフラーがソファの上に落ちていたんだ……』「!」『てっきり、俺は明日香が編んだマフラーなのかと思って尋ねたら、明日香は頷いたんだよ。だけど、よく考えてみれば、明日香には編み物なんか出来ない』「あ……」『そして秘書の琢磨に聞いたんだ。朱莉さんが俺の為にマフラーを編んでくれていたって話をね』受話器越しから聞こえて来る翔の声は、今迄朱莉が聞いたこともない程に優し気なものだった。『ありがとう。誰かに手編みのマフラーを貰ったのは生れて初めてだったから本当に嬉しかったよ』「!」朱莉は思わずスマホを落しそうになってしまった。まさか翔からそのような言葉を貰えるとは思ってもいなかった。『本当に今回の件はすまなかった。いずれ改めて何らかの形で朱莉さんに謝罪させてもらうから……今回のマロンの件は……』(翔先輩だって……本当は動物が好きなのに、私の辛い気持ち……分かってくれてるんだよね……?)
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4-18 声を掛けた理由 1

 翌朝―――出社した翔は、先に仕事を始めていた琢磨に声をかけた。「おはよう、琢磨」「おはよう翔。お? 今日も朱莉さんが編んだマフラーしてきたんだな?」琢磨は顔を上げると、翔の首もとを見て目を細めた。「ああ。朱莉さんがせっかく編んでくれたマフラーだからな」「そうか。別に明日香ちゃんはそのマフラーをしても何も言わないんだろう?」琢磨は何所か面白そうに尋ねた。「そうだな。黙って見ているよ」「ククク……そりゃ何も文句言えるはずないよなあ? だって翔には自分がそのマフラーを編んだと説明しているんだからな」肩を震わせながら笑う琢磨。「まあ、そう言ってくれるなよ、琢磨。多分明日香は俺がこのマフラーを使っている姿を見るのは辛いはずなのに我慢しているんだから」翔の言葉に琢磨は肩をすくめた。「全く……またそうやってすぐお前は明日香ちゃんの肩を持つんだからな。俺には理解できないよ。そりゃ明日香ちゃんは美人かもしれないが、性格が強すぎる」「明日香がああなったのは仕方が無い。自分の立場を必死で守る為に虚勢を張らざるを得なかったんだから。お前だって知ってるだろう? 元の明日香はあんな性格じゃなかったことくらい」「……」琢磨は翔の話を黙って聞いていたが、やがて言った。「翔、今日の仕事のスケジュールを説明するぞ……」その後、翔と琢磨は仕事モードに切り替えた――**** 11時――朱莉はマロンを連れてドッグランへとやって来ていた。昨日知り合ったばかりの京極と約束をしていたからである。「朱莉さん! こっちです!」ドッグランへ着くと、もうすでに京極は到着しており、飼い犬をドッグランで遊ばせていた。「こんにちは。遅くなってすみません。まさかもういらしているとは思わなくて…」遅れてしまったことを京極に詫びた。「ハハハ……別にいいんですよ。何せ僕よりもショコラの方が早く遊びに来たがっていたので」京極は自分の飼い犬を抱き上げた。「ショコラ?」朱莉が首を傾げると、京極は笑みを浮かべた。「ああ。すみません。この犬の名前ですよ」京極は犬の頭を撫でた。ショコラは今にも尻尾がちぎれてしまうのではないかと思われるくらい激しく尻尾を振って喜んでいる。「すごい偶然だと思いませんか? 朱莉さんの犬の名前がマロンで僕の犬の名前がショコラなんて。美味しそうなスイーツの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-25
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4-19 声を掛けた理由 2

 少しの間、2人の間に沈黙が流れたが、先に口火を切ったのは京極の方だった。「朱莉さん、犬を飼うのは慣れているんですか?」「いいえ、つい最近飼い始めたばかりなんです」するとその言葉に驚いたのか京極が目を見開いて朱莉を見た。「ええ? そうだったんですか? てっきり朱莉さんは犬を飼うのが慣れている方だと思っていましたよ」「何故そう思ったのですか?」「それはマロンを見てみれば分かりますよ。とても手入れが行き届いている。愛情が無ければあそこまで綺麗に毛並みを整える事なんて出来ませんよ。マロンはとても大事にされてるんですね」大事に……本当にそうなのだろうか? 本当に大事なら、どんなに明日香に攻め立てられても身体を張ってでもマロンを守り抜くのが真の愛情なのではないだろうか?「私はそれほど立派な飼い主ではありませんよ……」今にも消え入りそうな声だった。京極は少しの間、沈黙してたがやがて口を開いた。「僕は最初ここに引っ越してきた当時……本当はここに住む人達とは誰とも交流を持つまいと思っていたんですよ」どこか遠いところを見るように京極は言った。「僕はシングルマザーの母の元で貧しい環境で育ってきたんです。僕の親戚は金持ちが多かったけれども、周囲の反対を押し切って結婚した母のことを良く思っていなかった。早くに亡くなった父は貧しい画家だったのでね。お金が無くて苦しい生活だったけど、誰も援助はしてくれなかった。皆お金持ちだったのに」京極は一体何を言いたいのだろう? 朱莉は黙って話を聞いていた。「だから、僕は必至で勉強を頑張って……いつかお金持ちになって彼らを見返してやろうと思っていた。そして僕が成功するとそれまで見向きもしなかった親戚たちが僕の元に集まるようになったんですよ。結局、金持ちは金持ちとしか付き合いたくないってことなんですよね」そこで一度京極は言葉を切ると再び続けた。「だからここに越してきた時も誰とも交流を持つのはやめようと思っていたんです。実際ここに住む人達は皆お高く留まった人間たちばかりだったから。でもそんな時、朱莉さん。貴女を見かけたんです」京極はじっと朱莉を見つめた。「私を……?」「ええ、貴女はここで働くフロントのスタッフ達に丁寧に頭を下げ、いつもお世話になっていますと声をかけてました」確かに言われてみればそうだったかもしれない。で
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4-20 明日香からの報告 1

「あ、あの……実は……」朱莉が京極に話そうとした時。「あら? 朱莉さんじゃないの? 何してるのこんな所で……ってああ。そこはドッグランだったのね」買物でもしてきたのだろうか? 全身ブランド物で身を固めた明日香がブランドのロゴマークが入った紙バックを持って立っていた。「あ、明日香さん。こ、こんにちは」朱莉は緊張の面持ちで明日香に挨拶をした。「それで? 新しい飼い主は見つかったのかしら?」明日香は朱莉の隣に京極が座っているのもお構いなしに話しかけてくる。「え……?」それを聞いた京極が小さく口の中で呟くのを朱莉は聞いてしまった。一気に朱莉の緊張が高まる。(どうしよう……。私から説明する前に京極さんに犬を手放すことがばれてしまった……!)一瞬朱莉は目を伏せ、唇をギュッと噛み締めた。そしてそんな朱莉を意地悪い笑みを浮かべて見つめる明日香。「ところで朱莉さん。御隣にいる方はどなたかしら?」明日香の問いかけに朱莉は一瞬ビクリと肩を震わせたが、すぐに答えた。「あ、あの……。この方は……」朱莉が言いかけると、京極が口を開いた。「いえ、僕から説明しますよ。初めまして、京極正人と言います。つい最近こちらに引っ越してきました。鳴海さんとは昨日このドッグランで初めてお会いしました。偶然にも同じ犬種でして、互いの犬が仲良さげに遊んでいたので本日もこちらで一緒に遊ばせていたんです」鳴海……ここで京極は初めて朱莉のことを苗字で呼んだ。そのことに少しだけ驚き、京極の横顔を見上げた。もしかして、京極は朱莉と明日香の張り詰めた空気に何か気付いたのだろうか? 朱莉の心臓の鼓動が早まってきた。(どうか……どうか明日香さん……今日はもう見逃してください……!)しかし、明日香と朱莉の2人の世界で朱莉に優しかったことは一度も無かった。「そうですか。私は鳴海明日香と申します。彼女……朱莉さんは私の兄嫁なんですよ?」明日香はにっこり微笑みながら京極に言った。兄嫁……今迄一度も明日香は朱莉をそんな風に呼んだこと等無かったのに、京極の前で明日香は初めてその言葉を口にしたのだった。「!」京極の息を飲む気配が朱莉にも感じられた。別に内緒にしていたわけでは無いが、今の自分の置かれた環境を京極に伝えるのは惨めだった。それ程親しい関係でも無かったので、敢えて言う必要などは無いだろうと
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