「そうなの。餌も水もろくに上げていなかったし、平気であんな小さい子犬にしつけの為だと言って手を上げていたのよ? 子犬は可哀そうにキャンキャン鳴いていたっけ……」「そ、その話……本当なのか……?」翔の声は震えていた。「あら何よ? 私が嘘をついているとでも?」明日香が口を曲げる。「いや。しかし……見間違いと言うことは……?」「そんな訳無いでしょう!? とにかく朱莉さんは子犬を虐待していたのよ? だから私は言ったの。今から1週間以内にその子犬を手放しなさいって! さもなくば私から保健所に虐待の疑いがありますって通報するからと言ってきたわ」明日香は興奮を抑えきれないかのように激しい口調でまくし立てる。「あ、明日香。それ……本当のことなんだよな……?」翔は明日香の目をじっと見つめた。「ええ、そうよ。まさか朱莉さんがあんな人だとは思わなかったわ。人って本当に見かけじゃ分からないものね。でもきっとこれで朱莉さんも目が覚めて犬なんか飼うべきものじゃないって身の程を知ったんじゃないの? そう思わない翔? これで良かったのよ」まるで全てを見透かすような視線の明日香に翔は頷くしかなかった。 食事の終わった後、翔はリビングのソファの隙間に藍色の毛糸の編み物を見つけた。拾い上げてみるとそれはアラン模倣が美しい藍色のマフラーであった。(このマフラーは……ひょっとして……?)翔は片づけものをしている明日香の傍へ寄ると尋ねた。「明日香……このマフラーはひょっとして……」「あ……そ、それは……」明日香が言い終わらないうちに翔は明日香を抱きしめた。「ありがとう! 明日香。これは俺へのプレゼントなんだろう? バレンタインの」「え、ええ。そうなのよ。今日……やっと編み上がったところだったの」「手編みのマフラーなんてくれるの初めてだよな? 大切に明日から使わせてもらうよ」「そう……。大切に使ってね……」明日香は翔の胸に顔をうずめた――23時――「マロン……。今夜から一緒に寝ましょう? あなたと一緒にいられる時間はもうあと僅かしかないから」朱莉はベッドの中にマロンを入れると、そっと身体を撫でなた。結局今日は新しい引き取り手を見つけることは出来なかった。さらに追い打ちをかける出来事があった。朱莉が一生懸命編み上げた翔へのバレンタインのプレゼントのマフラーが消え
Terakhir Diperbarui : 2025-03-23 Baca selengkapnya