All Chapters of 月神守は転生の輪舞を三度舞う: Chapter 21 - Chapter 30

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21.仲間になったのじゃ!

「おう、お疲れさん!」「いいチームプレイだったね! まあ、私はここでは何も出来てないけど」 2人はそんな俺に対し、親指を立て答えてくれた。 「さて、問題はコイツをどうやって連れて帰るかだな……」「え? そのまま乗って帰ればよくね? ファイラスの国民も喜んでくれると思うし?」(ま、学の奴、またそんな安易な事を……) 「あ、あのな……。そんなことして凱旋したら国民がパニック起こす大惨事になるわ……。それに俺らお忍びで来てるんだぞ……?」「あ、そうだったな。ちぇー……」 と言ったものの、さてどうしたものか……?「守君、あのね。擬人化して連れて帰るってのは?」「な……に⁈」 雫さんのそのナイスアイディアに歓喜の旋律が走る俺でした。(ぎ、擬人化だとお……? た、確か、こ、こいつメスだったよな……?)  この手の奴って、お約束ですっごい美少女になるのが鉄板であるからして……。 俺は大分前のピンクイベントと厳選キャワイイメイド100人衆案を何故か思い出してしまう。(……うん、擬人化いいじゃない!) 「こ、こほん。エンシェントフレイムよ。早速だが人の姿になって欲しいのだが」(『Cカップの露出が何故が激しい紅蓮のビキニ鎧を着た、のじゃ系美少女挑発系お姉さま』を超絶期待する、てかマジホントカモン!)「わかったのじゃ、マスター……」(マ、マスター……⁈ なんと甘美な響き。こ、これは期待するしかないっ!) 俺は最近引いたスマホゲーの当たりを何故か思い出し、ワクドキしながら期待にこか&helli
last updateLast Updated : 2025-03-08
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22.いざ秘湯へ

「あっ……! 忘れてた!」 「え? なに? 何の話?」「目的も果たしたし、そこでちょっと提案があるんだけどいい?」 「お、雫。もしかして、出かける前に言ってたアレか?」「え? ……アレって何?」 ちなみに俺同様にノジャも何のことか理解できず、可愛らしいく目をパチパチさせている状態だ。(何やら水面下で女性陣達に組み込まれているプランのようだが……。正直疲れがマックスに溜まってるので、早いとこ帰宅して、しばらくフッカフッカのオフトーンで療養したいんだけど?) 「えっとね……。実はここから少し離れた場所に秘湯の宿屋があってね! ほら、皆疲れがピークに達してるでしょ?」 「何でも特殊な効能があってな、傷も一瞬で治してくれるらしいし、持病とかにも良く効いてファイラスいや、世界で一番の秘湯らしいぜ? 宰相情報だけどな!」 (おお……温泉か……。どうせ帰宅途中、しばらくハンター生活が続くことだし、そんな良いとこがあるなら絶対寄るべきだよな) 「よっしゃ! じゃ、早速行こうぜ!」「おー!」 「なのじゃー!」 こうして俺らは秘湯の宿屋に行くことになったのだ。 俺達はユニコーンに跨り、青空が広がる晴天の最中アグール火山を下山し、深淵の森を抜け、広大な草原を駆け巡り突き進んでいく……。「……爽やかな風が気持ちいいね……」「ああ……そうだね」 「ああ! 最高だな」 「のじゃっ!」 目的は達成しているからか、更には色々な経験を積んだからだろうか?  それとも新たな仲間が増えたからだろうか……? 俺には来た時に見た景色とはまた違った風景に見えた気がした……。 それから数時間後、遠目にだが前方に何やら建物らしきものを発見する。 ふと空を見上げると、沈みかける太陽が見え、辺りはすっかりオレンジ色に染まっていた。 だからか、目的地の岩肌だらけの山のふもとの景色も橙色に染まり味が出て来ているし、俺の背中におぶっていたノジャも大人しく寝息を立てていた。
last updateLast Updated : 2025-03-08
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23.ピンクイベント再び

(お、女っ⁉ って、待てよ? ……この形の良いこの胸何処かで……?) 俺は自他ともに認めるおっ〇い職人、絶対に見間違えることは無い!「えっ、ま、守っ?」「……おまっ! ま、学か?」 声と顔を見て、予想が見事に的中したことを確信出来た俺でした。「う、うわああ……」 学はそのまま悲鳴とも絶叫ともとれる声を上げ、顔がみるみる真っ赤に染まり慌てて肩までお湯につかる。(と、というか、な、何がどうなって⁉)   俺達は2人してパニくる。「あっ、いたいた。おーい二人ともー!」 そんな俺達の前にしらもやの湯気がたちこめる中、雫さんはさも当然のように元気よく手を爽やかに振り、小走りでこちらにやって来る。 学と違うのは、体にタオルを巻いてるとこだけだ。「のじゃー!」 そして、追加でだがすっぽんぽんで元気のいい小動物のように走り回るノジャ公……。(え? えっと、これは一体?)  そんな事を考えていると、雫さんはそのまま湯船につかろうとするノジャをとっつかまえて、その体を綺麗に洗いだす。「ぎゃあー、嫌なのじゃー!」「嫌じゃないでしょ! ノジャちゃん、ちゃいするよっ、ちゃい!」 体を洗うのを嫌がってジタバタするノジャをしり目に、雫さんは力強くその体を掴み、まるで子犬をしつける様にたしなめる。「あ、あのー、雫さんこれは一体どうなってるんですか?」「ああ、ここ混浴だから」「え? 入り口に男女の敷居あったよね?」「ああ、あれはファイラスの法律で付ける義務があるだけだから」(……そ、そう来たか……。いや、それはそうとして……) 「あ、あの雫さんはそのなんというか、俺がここにいて大丈夫なんですか?」
last updateLast Updated : 2025-03-09
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24.会議は温泉地にて 

 それからしばらくして、此処は俺達の泊まる個室……。 「あーサッパリした!」  「のじゃー!」(きたきた……)  俺がフカフカの灰色のソファーでくつろいでいると、温泉から上がってきた女性陣達が部屋に入ってきた。 彼女達も俺同様に白い上下の麻布で出来た浴衣に着替えていた。 しっとりとした髪の毛、そして火照った肌はうっすらと赤身を帯び、いつもにもまして色気がただよっている。(うん、おこちゃま一人を除いて湯上りのこの姿はとても魅力的ですね……) 「お待たせー! じゃ早速だけど、例の話を始めましょうか」 「ですね!」 さて、真面目な話どう進めようか……。「ね、その前にベッドに移動しない?」 雫さんは髪をかき上げ、ドキッとするような事を言って来た。「え、えっと、な、何故っ?」 どぎまぎしながら俺は雫さんに答える。「守君、どうせそこのソファーで寝るつもりだったんでしょ? 私と学がこっちのベッドで一緒に寝るんで、そこのベッドでノジャちゃんと一緒に寝てあげて」(あ、ああ、ですよね。不覚にも一瞬ドキッとしてしまった……)  確かによく見ると、ノジャはあくびをしなんだか眠そうだ……。(成程雫さんはエスパーモードが発動して、俺達に気を使ってくれているってことか) 「あ、ありがとう、そうさせてもらうよ」 「わーい! 早速寝るのじゃー!」 ノジャはベッドのマクラに向かい勢いよくダイブし、そのままもそもそと丸くなってしまう。(ね、猫かお前は……)  うんまあ、元々ドラゴンだから習性として似ているところがあるのかもしれないけど。 そして、すり寄ったノジャの背中が俺の背とぴったりとくっつき、あっという間にすやすやと寝息をたてていく。(それにしても、あ、あったけえな。まあ、元々火龍だからってのもあるかもしれないけど……)  一方女性陣は、ノジャのその様子をニヤニヤしながら見ているのだが……。
last updateLast Updated : 2025-03-09
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25.晴天に飛び交う火龍達のワルツ

 ……翌日の朝、小鳥たちが元気よくさえずる気持ちの良い朝を迎える。 俺は寝ぼけ眼を擦りながら、窓から覗く陽光を浴び外を覗く。 すると雲一つない晴れた青空が見え、俺に良い帰宅日和を感じさせた。 それから色々済ませ、数時間後……。「また来てくださいねー!」「はーい、お世話になりましたー! また来ますねー」 元気よく手を振り、宿の女将にお別れの挨拶する俺達。(はー……朝風呂がとても気持ち良かった……。体を洗う時に暴れ回るノジャのお守が正直大変だったけどね……。うん、こんなことは孤児院時代で慣れてるからあっさりさばいてやったけどな!)  余談だが、幼子を子守歌三分で寝せれる俺は『子守歌の守』という異名を持っていた。 孤児院の職員から重宝され、『守の子守歌は2曲目いらず』と謳われたものだ(遠い目)……。 まあ、アホみたいな話は置いといて、俺達は再びユニコーンに跨りファイラスへ帰路に向かう。(うん、すっかり太陽は真上に上っていて、ギラついてるや)  ……しばらく移動していくと、開けた緑が広がる大草原にたどり着く。「よしここいらでいいか!」 学は素早く下馬し、両手を力強く天に掲げ強く叫ぶ!「うおおおおおおおおおっ! メタモルフォーゼっ!」 刹那、学の体は大きく膨れ上がり、巨大な火龍エンシェントフレイムに変身する!「おお! これだけ大きいとやはり見える景色が違うな……」 だからか、学はしばらくじっくりと左右を眺めていた。 しばらくして慣れたのか、変身した学はまるでジャンボジェットのような大きな翼を大きく広げ、その逞しい翼で力強く大空を飛び回る。 そうなのだ、学はこれからの事を考え火龍エンシェントフレイム時での飛行調整をしているのだ。
last updateLast Updated : 2025-03-10
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26.新生ザイアード攻略の一手

 それから数日後、此処はファイラスの城門前。 俺達は大人が並んで10人は通れそうな巨大で重厚な石造りの橋を歩き渡り終え、ふと目の前に人がいることに気が付き立ち止まる。「おお、守様達よくぞご無事で……! して、成果はいかがでしたか?」 不敵な笑みを浮かべ佇むは宰相のガウス、その人であった。 こちらを見るその眼光は素人目に見ても歴戦の猛者と分るくらい鋭い。 ガウスは質実剛健な家臣であり、くそ真面目な性格であった。 だからか宰相という地位にもかかわらず、体格の良い体つきをしていた。 ガウスの装備しているプレートメイルの上からでも分るくらいにね。  ちな、オールバックの白髪にきりっとした眉、ほほとアゴにも整った白い髭を蓄えているのが特徴だ。「ごめんよガウス。代理の影武者の件とか色々世話になったね! で、実はこの子が例のエンシェントフレイムなんだ!」 俺は背におぶっていたノジャをよいしょと降ろし、その頭を軽くポンとたたく。「のじゃっ!」 俺の行動に呼応するかの如く、胸を張りふんすとしているノジャ。 「……な、なんと⁈ そ、それは凄い!」 ガウスは目を大きく見開き驚愕している。(はは、初代王以外千年単位で歴代契約実例が無かったから、そりゃ驚くよな……。しかも人化は見た目キッズの角ガキだしね) だから、俺はそんなガウスの様子を見て思わず苦笑してしまった。「でだ、早速で申し訳ないんだけどガウス達にこの関係の相談があってね? あ、学達はさっき話した通り休憩しててな」「おう! じゃ、後でな!」「じゃ、ノジャちゃん、邪魔になるといけないから雫お母さん達と一緒にお買い物に行きましょうねー!」「えっ? い、いやじゃ! あ、ああっ!」 こうして雫さん達はノジャの襟首をつかみ忙しく城下町に消えていった……。(…&
last updateLast Updated : 2025-03-10
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27.次の訪ね先は工房ゴリ

 ……それから一月後、ここはお昼のファイラスの城下町。「ゴリさーん!」「おお、これはこれは守様とその御一行様、らっしゃい!」 俺と雫さんは城下町の鍛冶屋『工房ゴリ』に来ていた。 ちな、学とノジャには別件をお願いしており、ここにはいない。 鍛冶屋『工房ゴリ』……。 工房の中は学校の体育館くらいの結構な広さがあり、その中で複数の作業員が忙しそうにせかせかと働いている状態だ。 よく見ると中央には大人二人分くらいの大きさの製鉄炉が配置されていた。 ゴリさんはそこで真っ赤になった鉄を耐熱手袋をはめ、ハンマーで力いっぱい叩いているところだった。 棟梁であるゴリさんは、この工房の何代目かの『ゴリ』の名前を受け継ぐ腕利きの鍛冶屋であった。 体格も容姿も体毛も名前の通りゴッリゴリにいかついが、性格は対して温和でとても優しい超いい人である。(ただ、恰好がね。フンドシと裸エプロンなのだけがホントやめて欲しい……。もう見た目がさ、新種の裸族としかおもえねえ……)  本人は「どうせ汚れて汗まみれになるから」と豪語してますが。(確かにタワシの様に頑丈な体毛で守られている関係で、服はいらないかもしれないけどね……)  ちなみに雫さんはゴリさんのそんな見た目は全く気にしておらず、今もフレンドリーに話しかけている状態だ。(人を見た目で判断しないのが雫さんのいいとこだよなあ)「あ、そうそう! 例のもの出来てますぜ! おい、お前達!」「へいっ!」 ゴリさんの声に呼応し、作業員達がえっちらおっちらと何かを抱えこちらに運んで来る。 よく見ると、俺達が委託していた『ドラゴンライダー鞍』一式であった。 その鞍は俺達が道中倒し回収し持ち帰ったドラゴンの体毛や鱗などの素材を使い、ゴリさん達に加工して作ってもらったものだ。「んんっ! 少し説明を。座る部
last updateLast Updated : 2025-03-11
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28.我が国の財政難の理由

 で、それからしばらくし、ここはファイラス城内の会議室。「……という事で我が国の財政内容の報告は以上になります」「……なるほどね。説明ありがとう」 会議室の中央に何十人と座れる椅子、そして長方形の木目の入ったテーブルがある。 そこで俺と財務大臣ギールはただ2人、事前の打ち合わせをしている最中だったりする。 俺は書類に目を通しながら、正面に座っているギールをチラ見する。 ギールは中背の痩せた体形をしており、銀のメガネをかけた見た目通りの真面目なガリ勉タイプだ。  質素倹約タイプで、着ている服も同じ上下灰色のタキシードだったりする。 メガネチェーンを付けているのは、きっとメガネに対する本人のこだわりなんだろう。 そんな事を考えながら、俺はギールに疑問点をいくつか聞いて行く事にした。「質問なんだけどさ、ここ数年ファイラスの財政が枯渇してきている大きな理由ってなんなの? というのもね、支出は抑えてきているから収入が減小してる内容を解決しないとと、思うんだけど?」「そ、それなんですが、実はアグール火山のふもとの宝石鉱山が年々枯渇してきてまして……。はい……」(ん、アグール火山? ああ、そっか、ノジャがいたあの火山は宝石の鉱山でもあったんだな) 不思議と人気が全く無いし、当然作業員も見当たらなかったので全然気が付かなかった。「……頂上付近で作業は出来ないの?」「……その、あそこには手強いモンスターと主のエンシェントフレイムが生息してまして」 途端小声になるギールの言葉に、その申し訳なさ感がこちらにも思いっきり伝わって来る。 そう、ギールも真面目なんだよなあ。(そっか、ノジャの件はガウスからまだ伝わってなかったのか……。この人も多忙で全部の書類には目を通せてないだろうし、現場組じゃないから仕方ないよな)
last updateLast Updated : 2025-03-12
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29.民衆と心を一つに

 それから数日後、此処はファイラス城内の応接間……。 晴天の昼間、ザイアードに送った文書の返事をするために使者がファイラスに来訪する。 驚いた事に、使者はなんとあのシツジイだった!(うわあ、懐かしいなシツジイ……。元気してたかな?) 「……初めましてシツジイといいます」 シツジイは俺達に向かって流暢に辞儀をする。(うん、知ってるよ! でもシツジイは俺達のこと覚えてないんだね……)  俺と学はお互いを見つめ、シツジイのその返答に少し困惑する。 だって俺達は『初めまして』ではないのだから……。 とは言ったものの、無言で対応というものは相手に失礼であるからして、気を取り直しシツジイとの対応をしていく。 なお、雫さんには気を使って席を外してもらっている。「遠路はるばるお疲れ様です。立ち話もなんですからどうぞソファーにお座りください……」「……そうですね。ありがとうございます」 ということで、応接用のソファに腰かけるシツジイと俺達。「……では、早速本題に入らせていただきます。で、これが文書の内容になり、読み上げさせていただきますが、よろしいか?」「……どうぞ」 俺達は静かに頷き、その内容に耳を傾ける。 自身の心臓の鼓動がわずかに早くなり、緊張していることが自分で分かる。「ザイアードを束ねるスカード、貴国の申し出を有難く受け入れる。であるからしてファイラス代表を数名こちらに派遣して頂きたい。期日は特に設けておらず、いつでもお待ちしている」 (成程、いつでもいいから俺達から来いってことか)  想定内の返事であるし、仮に罠の可能性があったとしても直接話をするしか方法はない。「……以上です。では、私めはこれで失礼します……」 シツジイはソファーから静かに立ち上がり俺達に向い軽く一礼する。「……また後日なシツジイ!」(あ……、やっべ! つい口が滑ってしまった!)  学もこの俺の対応には目を大きく見開いて驚いている状態だ。「ふふ、貴方達はなんとも不思議な人ですね。その、何処かであった懐かしい感じがします……」 シツジイは少し微笑むと、懐から若干赤みかがった透明色の宝石のペンダントを取り出し俺達に見せる。 あ、あれは、ザイアードの家宝……。「天罰の涙!」 シツジイはにっこりと笑い、俺達に静かに一礼し、帰って行った。 だから、俺
last updateLast Updated : 2025-03-13
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30.鬼が出るか蛇が出るか

 そんなこんなで数時間後、俺達エンシェントフレイムのお陰であっという間にザイアードとファイラスの国境付近に到着する。「見て! 遠くにデーモン達の集団が見えるわ!」 雫さんの指さす方向を見下ろすと、漆黒の翼を持つ異形の集団が見えて来る。 よく統一されているようで、あの荒々しいザイアードの連中が何千もの横隊で鎮座している。 更にはよく見ると、先頭に2人の目立つ存在が確認出来た。 一人は頭に立派な三本角、髪は金髪、全身の服は派手で宝石が散りばめられた赤のフロックコートに黒のズボンを着ており、見た目は中世ヨーロッパの王族に見える。 もう一人は体格は人のそれであるものの、口から覗く鋭い牙に鋭い眼光は獰猛そうなトラそのものであり、金色と黒の見事なコントラストの立派な体毛に包まれていた。「2人ともただ者じゃないわね……」「ああ、きっとあの2人が新生ザイアードの大将だろうな」 両目を閉じ両腕を組んで威風堂々と仁王立ちしているその様は、魔王に相応しい圧倒的威圧感を放っていた!「うわあ、こりゃー数万はいるな……」「てことは、全軍総出ってことね」 味方にしていた時はとても頼もしく感じたが、敵に回すと厄介としか思えない。(真面目な話、一体一体が一騎当千の猛者だしな) 「……よし、じゃ早速ブレスで一掃するか!」「賛成なのじゃー!」  血の気が多い学とノジャはとんでも発言をしてますが⁉(はっはっは……、じ、冗談だよね?) 「っておい? 何本気で大きく息吸い込んでんだこのバーサーカー共はっ! 特に学っ、おまっ、元ザイアードの代表だろうがっ! 躊躇ないんかいっ!」  これには俺も言葉に出して流石に突っ込まざるをえなかった。「……うーん、実は私も賛成なのよね。なんだか嫌な予感がするし……」「えっ? ええええええええええええっ! し、雫さんまでっ、またそんな……」(も、もしかしてエスパーモード発動してんの? う、うーん、多数決では戦闘決定だけど……?)   正直交渉前にそんな話はやめて欲しい。「よく来たな! ファイラスの代表達よ! 俺がファイラスの代表にして魔王っ、スカードである!」 俺達の存在に気づいたスカードは大きく目を見開き、まるで荒々しい獅子のような大声で激しく吠える! その途端、不思議な事に俺達に向かって荒々しい突風が吹き荒れるではないか
last updateLast Updated : 2025-03-13
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