「え、ちょっと。何ですか皇羽さん」私の静止を振り切り、熱くなった手を私の肩に置く。そしてあろうことか、そのまま思い切り下へ力を込めた。ズルッ今にもずり落ちそうだったシャツは、皇羽さんの手で簡単に肩から外れる。すぐさま私のそれが露わになり、空気に当たってスース―し始めた。「きゃ!皇羽さん見ないでください!」 「……はぁ」私の悲鳴を聞いて、なぜか皇羽さんはため息をつく。丸見えの私の肩に自分の頭を乗せ、熱い呼吸を繰り返した。いやいや何に浸っているかは知りませんが、今すぐ私から離れてください。下着の紐が丸見えで恥ずかしいから今すぐ直させて!そう心の中で懇願する。だけど、「たまんねぇな……」 「ひゃっ」皇羽さんの吐息がくすぐったい。笑いそうになるのをこらえながら、上目遣いで皇羽さんを見た。「皇羽さん、それやめて?」 「……」 「もう。退けてくれないなら逃げるまでです」膝を折って座り込む。その隙に、肩から落ちたシャツを元の高さに戻した。皇羽さんに「なんで肩を隠すんだよ」ってグチグチ言われそう。だけど皇羽さんの口から出てきたのは、意外な言葉だった。「萌々は〝自分が可愛い〟って事をもっと自覚しろ」 「はい?」「必死で〝俺の俺〟を抑える俺の身にもなれよな」 「よく分からないですが、今こんな所で肩をむき出しにされた私の身にもなってほしいです……」こんなケモノみたいな人と衣食住を共にしている私の身がとても心配だ。もしもの時は股を蹴ってでも逃げよう――静かに決意表明すると、空から大きな何かが降って来る。バサッ「わ⁉」 「着替えろ」再び白いシャツが飛んできて、私の頭に引っかかる。今着ているシャツよりも、少し小さそうだ。「いま萌々が着ているのは、俺でさえ大きいサイズだからな。本当に貸そうと思っていたシャツは、そっち」 「なんでわざわざ大きいサイズを着させたんですか?」「そんなの」と皇羽さんはスッと目を細めて嘲笑する。「俺が見たかったからに決まってんだろ」 「……」そうですか――とはならなかった、その後。また口喧嘩を始めた私たちは各々の身支度に取り掛かる。そして必要な物を買い足しに、皇羽さんと初めてのお買い物に出発した。◇「お支払いはいかがされますか?」 「カードで」 「……」皇羽さんを「お金がない者同士、私と仲間かもしれない」
最終更新日 : 2025-03-03 続きを読む