Semua Bab アイドルの秘密は溺愛のあとで: Bab 21 - Bab 30

41 Bab

第21話

「ちょっと、苦しいです!」 「俺に何も言わず、一人でこんな所へ来た罰だ」「罰って……」 「うるさい。人の気も知らないで……。いいから、お前は黙ってこうされていろ」顔を上げると、ギュッとかたく目をつむる皇羽さんの顔が見えた。長いまつ毛が少し震えている。もしかして寂しかったのかな?それとも「何か事件に巻き込まれたかも」って怖かった?私が思っているよりも、皇羽さんに心配かけちゃったのかもしれない。小さな声で「ごめんなさい」と呟くと、私を抱きしめる皇羽さんの力がフッと緩む。するとさっきよりも隙間なく二人の体が密着した。大きな体に抱きしめられると安心する。まるで自分の心も体も全て、包み込んでくれる気がするからだ。〝私を必要としてくれる人がいる〟って思えるからだ。「……」ぶっきらぼうで口が悪くて、そして強引。私の言う事は聞かないくせに、自分のいう事は何が何でも聞かせようとする。そんなとんでもない人が私の同居人なんて「前途多難」だと思っていた。だけど……――萌々!!さっき焼け焦げたアパートから私を見つけて駆け寄った皇羽さんが、本当の王子様に見えた。絶望の淵に立たされた私を救いに来た〝運命の人〟だって……あぁ違う。そうじゃなくて。ダメだ、いま色んな感情が混ざっている。……そう。ただ私は、迎えに来てくれたことが嬉しかった。私を心配して探しに来てくれたことが嬉しかったんだ。これからの生活「前途多難だけじゃないかも?」って思えて、皇羽さんとの生活が楽しみになったんだよ。でもこんなことを本人に言ったら、有頂天になった皇羽さんがますます過保護になりそうだからやめておく。今だって過保護だよ。もう私は子供じゃないから、こんなに心配しなくて良いのに。だけど……少し見たかったな。〝私がいない〟と知った時の皇羽さんの慌てっぷりは、どんなものだったんだろう。想像すると、不謹慎だけどニヤニヤしちゃう。その時、抱きしめ合う皇羽さんの異変に気付いた。「なんだか皇羽さん震えていませんか?」ふと意識を戻すと、尋常ではない震え方で皇羽さんが揺れている。抱きしめられているから私も一緒に揺れ始めた。バイブみたいな振動がずっと続いている!慌てて体を離すと、顔面蒼白の皇羽さんが半眼で虚無を見つめている。「なんか寒ぃんだけど……」 「そう言えば皇羽さん、ついさっきまでお風呂に入っていました
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-13
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第22話

*皇羽side* 萌々と買い物から帰ってすぐ、ナンパしてきた奴らの香水の匂いが気になったからシャワーへ向かう。どれほど香水をまけば、あの距離で俺に匂いが移るんだよ。もし萌々が匂いをかいだら、変な誤解をされるだろうが。やや乱暴に服を洗濯機の上に置き、バスルームへ入る。熱いほどの温度で、頭からシャワーをかけた。「それにしても……」さっき萌々が俺の部屋へ入ろうとした。それだけはダメだと急いで制止したが、強く言いすぎたか?萌々の顔が若干くもったのが気になる。だけど、悪い萌々。あの部屋だけは見せてやれねーんだ。「はぁ……ん?」萌々へ申し訳なく思っていると、何やら音が聞こえた。急いでシャワーを止めて耳を澄ませる。すると聞こえてきたのは廊下を走る音。続いて、玄関ドアの開閉音。もしかしなくてもドアを開けたのは萌々だよな?なにか荷物が来たのか?俺、何かネットで買い物したっけ?「いや、宅配だとしてもマズイだろ」もしも配達員が萌々を見たら、絶対に惚れるに決まっている。そこで萌々が目をつけられたらどうする?なにか危ないことに巻き込まれたら――「まだ途中だけど出るか」体を流しただけだが、四の五の言ってられない。風呂はいつでも入ればいい。萌々の身の安全を一番に考えろ。「萌々!」バスルームを出て、バスタオル一枚を腰に巻き付ける。すぐに捜索を開始するも、リビングに萌々の姿はなかった。じゃあ玄関?ぬれた足で廊下を走り、玄関へ到着する。だけど姿はない。届いた荷物があるわけでもない。ということは配達は来てないのか。「萌々……?」痛いくらいに心臓がドクドクと音を立てる。海が時化(しけ)た時みたいだ。強風で海が荒れる時化、まさに今の俺と瓜二つ。「おい萌々、萌々!」姿が見えない時間が長ければ長い程、不安で声が大きくなる。早く萌々の顔を見て安心したいのに、ちっとも姿が見えやしない。寝室やキッチンも、さっき忠告したばかりだから入らないとは思うが一応俺の部屋も探した。だけどやっぱりいなかった。「そうだ、靴は……⁉」再び玄関へ戻って確認すると、萌々の靴だけがキレイになくなっている。ということは俺の部屋から出て行ったんだ。萌々は自ら俺から離れたんだ。「うそだろ、なんでだよ。萌々……」信じられない事実に頭は真っ白、その場に立ち尽くす。そんな俺に喝をいれるように、玄関に置いたままだ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-14
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第23話

勢いよく部屋を飛び出す。なりふり構わず走ったところで、玄関の施錠忘れに気付く。でも、もういい。家の中の物、何を盗まれても構わない。俺にとって大事なものは他にあるんだ。「……あーくそ!」なんで俺、今日の買い物で〝萌々専用のスマホ〟を買わなかったんだ。スマホなんて、下着より必要な物だろ。萌々を見つけたら、その足ですぐ買いに行ってやるからな。考えの回らなかった自分を恨みながら、必死に足を動かす。まだ寒い季節だ。夕日が沈んでいくと同時に気温も下がる。ハッハッと吐く息は、だんだんと白さを増していった。だけど寒さは感じない。唯一感じたのは焦り、それだけだ。ドクドクとうるさいくらい心臓が鳴っている。頭の片隅で「アパートに萌々がいなかったらどうする?」と嫌な想像をしてしまった。「頼む……萌々!」それらの恐怖を振り払いながら、やっとのことでアパートに到着する。そしてようやく見つけるんだ。一面まっ黒な灰のなか、一人ぼっちで佇む萌々を。荒野の中心に一輪だけ花が咲いているような、どこか神秘的な光景だ。俺を見た萌々が眉を八の字にした。そんな顔を見てたまらず「萌々!」と叫ぶ。無事な萌々を見て〝不安から解放された反動〟か、意図せず声が大きくなった。それにビックリしたのか、今度は萌々が不安そうに俺の名前を呼ぶ。『皇羽さん』その時の萌々が少しだけ嬉しそうで、今すぐにでも泣きそうで……なんだよ。出て行ったのは萌々の方だろ?それなのに、どうしてお前が泣きそうになっているんだよ。萌々がいなくて焦って不安になって、むしろ泣きそうなほど心細くなったのは俺の方なんだぞ。「くそ……」濡れた体に、冷たい風が容赦なく吹き付ける。寒さからか怒りからか、ぶるりと大きく体が震えた。あームカつく。いつも振り回されるのは俺だ。腹が立つことこの上ない。だけど〝まるで俺の登場を待っていたような萌々の顔〟を見たら全て許してしまう。……俺の希望的観測かもしれないけど。でも少なくとも俺の目には、萌々が嬉しがったように見えたんだ。だから、もういいや。怒りなんてなくなった。萌々が無事なら、俺はそれでいいんだ。「は~仕方ないな」黙って家を抜けたことはチャラにしてやる。だからもう黙っていなくなるな。またお前を見失うのは懲り懲りなんだよ。これ以上は許してやれないからな。二人して規制テープを出て、萌々についた灰を払って
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-15
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第24話

翌朝、不思議なことが起きた。「どこへ行く気ですか。いま皇羽さんは熱があるんですよ?」「熱だけだろ。大したことない」朝の七時。アパートと一緒に燃えてしまったため制服がないものの、とりあえず私は学校へ行く準備をしていた。そんな私の横を、顔を真っ赤にした皇羽さんが横切ったのだ。おかしいと思ってオデコに手を当てると、明らかに発熱している体温!それでも皇羽さんは玄関へ向かい、いつもの身バレ防止グッズを体にまとっていく。赤い顔に、黒いマスク。見た目は「完璧に病人」だ。「やっぱり風邪を引いたんですね。濡れた体で外へ出るから……」昨日、寒すぎてガタガタ震えていたもんね。それなのにマンションへ帰る時に皇羽さんは「今からスマホを買いに行くぞ」なんて言うから、慌てて止めたんだ。ブーブー文句を言う皇羽さんを引っ張って帰るの、本当に大変だった。「ん?」昨日を振り返っていると、驚くことに皇羽さんが靴を履こうとしている。どうやらお出かけらしいけど、マスクの下で聞こえる「はぁはぁ」という荒い息。既に限界を超えているのに外へ行こうとするなんて、どう考えても正気の沙汰じゃない。熱で正常な判断が出来ないんだ!「皇羽さん、あなた今日は学校へ行けませんよ?家にいてください。まずは熱を測ります。あとは薬を飲まないと」すると皇羽さんは、熱で潤んだ瞳を私へ寄こす。そして「ない」と首を振った。「今まで風邪ひいた事ないから、そんな物はウチにない」「えぇ。本当に人間ですか?」「お前なぁ……」はぁとため息を吐いた皇羽さん。近くにいたから分かるけど、吐息さえすごい熱さだ。猫毛の黒髪が少し濡れているのも、発熱による汗だろう。こんな状態でどこかへ出かけようとするなんて、倒れに行くようなものだよ。何がなんでも止めなくちゃ!「いま皇羽さんは外に行ける状態じゃありません。家で寝てないとダメです」「じゃあ萌々が添い寝してくれんのかよ」「そこは甘えないでください」「……チッ」眉間にシワを寄せた皇羽さんが靴を履き終える。そして何の根拠もなく「心配するな」と、よろめきながら立ち上がった。「体温計と風邪薬を買ってくるだけだ。萌々は学校だろ?制服やカバン一式はもう部屋に届いてるから、好きに使えよ」「へ?」「じゃな。遅れずに行けよ」バタンッ閉められた玄関を見て、しばらく固まる。だって皇羽さん、いま何
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-16
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第25話

どうして二つずつあるのか――不思議に思っていると、玄関に置いた時計が目に入る。もう七時半なの⁉急いで学校の支度をしないと!朝ごはんを食べている時間はあるかな?と冷蔵庫を漁る。幸いにも昨日買ったパンがあったから急いで口へ詰め込んだ。再び時計を確認。ひぇ十分後には家を出なきゃ!「そういえば……」さっき皇羽さんは「体温計と薬を買って来る」って言った。でもこんなに朝早く開店するお店ってあるの?まだ七時だよ?それに皇羽さんはまだ?いくらなんでも遅い気がする。「……まさか!」どこかで倒れているかも。さっきフラフラだったし!「もう皇羽さんってば手がかかるんだから!」昨日勝手にマンションを出た自分を棚に上げて、皇羽さんに文句を言う。でも本当、学校に行くどころの騒ぎじゃないよ。もしも倒れているなら助けなきゃ!とりあえず制服とコートに着替え、皇羽さんを探索するため玄関へ急ぐ。「待っていてくださいね皇羽さん!」靴を履いてヤル気いっぱいで立ち上がった、その時。ガチャ玄関の扉が開く。皇羽さんが帰って来たんだ!履いたばかりの靴を脱ぎ、再び玄関へ上がる。「皇羽さんおかえりなさい!遅いから心配しました。今から探しに行こうとしていたんですよ?どうでしたか。体温計と風邪薬はありましたか?」「え?」「ん?」「えぇ……?」目の前には、全部の髪が隠れるくらい深くニット帽をかぶった皇羽さん。なぜか両目を開いて私を凝視している。あ、私が制服を着ているからかな?皇羽さんの前で初めて着るもんね。だけど皇羽さんに違和感を覚える。例えば帽子。いま皇羽さんがつけているニット帽を初めて見る。それにさっき出かける時は、いつもの帽子を被ってなかった?あと皇羽さんの表情がいつもと違う気がする。獰猛な野獣のオーラから、可愛い小動物へ変わっているというか。この人、本当に皇羽さんだよね?一瞬だけ警戒したけど、顔を見れば一目瞭然。こんなにカッコイイ人は、皇羽さん以外いない。外の風に当たってスッキリしたのかな?赤い顔じゃなくて、いつもの顔色に戻っている。「ちょっと熱も下がったんじゃないですか?さっきより楽な表情になっていますし」「……」「皇羽さん?」「わ!そうか俺か……。ごめん何?」え?〝ごめん〟⁉信じられなくて耳を疑う。だって皇羽さんが私に謝ったよ⁉〝あの皇羽さんが〟だよ⁉さっき覚
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-17
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第26話

◇そして一時間後。私はたくさんの荷物を引っ提げマンションへ戻った。バタンッ「はぁ~帰りましたぁ」風邪薬も買った、体温計も買った、学校にも電話した、少しずつでも皇羽さんにお金を返すために働こうと求人誌ももらった。そしておかゆを作るための材料も買ってきた。これで完璧。ぬかりはない。だけどリビングに足を踏み入れて愕然とした。膝から崩れ落ちるかと思ったけど何とか踏みとどまれたのは、卵がゆを作ろうと思って卵のパックを買っていたからだ。膝から崩れ落ちたら、卵は割れるに決まっている。それはもったいない。何が何でも死守しなければ……。だけど、もしかしたら卵がゆの出番は来ないかもしれない。なぜなら私が東奔西走している間に、この男。皇羽さんはソファに寝転んで、あろうことか私が嫌いな Ign:s のテレビを見ていたからだ。「外で頑張った私にその仕打ちですか皇羽さん……」 「わ!ビックリした。おかえり。すごい荷物だね?」 「誰のせいだと思っているんですか」キッチンで荷物を降ろし、手を洗う。ちょっとぷんすかした状態で体温計と薬の用意をしていると、皇羽さんが「俺のためにごめんね」と謝った。「え」この私に、皇羽さんが謝った。しかも今日だけで二回目だ。カターン!衝撃で体温計を落としてしまう。うわ、やっちゃった。壊れていないかな?でも皇羽さんが〝私に謝る〟という事実が衝撃的すぎて。動揺せざるを得ない。朝とは打って変わってしおらしい。というか喋り方も変だし。風邪って人格まで変えるんだね、怖すぎるよ……。体温計と薬を持ち、皇羽さんの所へ運ぶ。「調子が狂っちゃうので早く風邪を治してくださいよ」「調子が狂う?」「皇羽さんじゃないみたいで落ち着かないんです」 「……はは、わかった」いまだニット帽をかぶったままの皇羽さんが諸々を受け取る。そういえば薬を飲む時って、お腹になにか入れてからの方がいいって言うよね?そう思って一瞬だけキッチンへ目をやる。だけど皇羽さんは、私が目を離したわずかな時間に薬を飲んだらしい。「にがー」と言いながら、自分が買って来た水をゴキュゴキュ飲んだ。「もう飲んだんですか?早業ですね」「だって早く飲まないと、いつまでも圧をかけられそうだし」「私を怖い人みたいに言わないでください」チラッと机上を見る。転がっているのは唐揚げの紙パックとグミの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-18
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第27話

画面に表示される数字は最初こそゆるやかに上がっていたのに、だんだんとスピードを増していく。そしてついに38度を超えた。「えぇ⁉やっぱり高熱じゃないですか!」ついさっきまで普通だった顔色が、今じゃ真っ赤になっている。一時的に体調が良かっただけ?どちらにしろ、やっぱり皇羽さんは風邪を引いてるんだ!「ソファじゃなくて、ちゃんとベッドで寝てください!」だけど皇羽さんは「いやいやいや」と、この期に及んで抵抗してくる。「きっと今だけだから放っといて。君が離れたら落ち着くと思うし……」口をモゴモゴ動かす皇羽さん。よく聞こえない。後半なんて言ったの?ズイッと顔を近づけるも、皇羽さんに手のひらで押し返される。「それよりガッコ―はいいわけ?行かなきゃいけないんじゃないの?」「もう休み連絡を入れましたよ。皇羽さん一人を置いておけませんし」「子供じゃないんだから、余計なお世話だって」カチンさすがの私も、ここまで言われたら腹が立つ。言動が怪しい皇羽さんを心配して休んだのは、そりゃ私の独断だけど。だけど皇羽さんを心配しての事だもん。そんな風に言わなくてもいいじゃん!それなのに、あの言いぐさ!もう頭にきた!キッチンに戻って氷枕を作り、ソファに寝転ぶ皇羽さんを引きずり降ろしてベッドへ移動させる。まずは氷枕、次は皇羽さんを次々にベッドへ放り投げた。「ごちゃごちゃ言わずに寝てください!」「は、はい……」皇羽さんの目が白黒している。どうやら私の鬼の形相が効いたらしい。それ以上は何も言わず、大人しく横になっている。時々「さむっ」とうめく声が聞こえる。まだ熱が上がっているのかな。でも風邪薬は飲んでもらったから、もう私に出来ることはない。治ることを祈りつつ、皇羽さんが食べ散らかした後片付けでもしよう。だけどリビングに入って、ギュッと眉根にシワが寄る。今まで皇羽さんのことばかり考えていたから頭に入ってこなかったけど、そういえば私が帰宅した時から、ずっと Ign:s の番組が流れているんだった!『レオくん今日もカッコいいねぇ!どうやったらそんなにかっこよくなれるのか教えてほしいよ~。いつも元気だしさ。体調は崩さないの?』 『元気だけが取り柄なんで!風邪も俺を嫌って寄ってこないんですよ、はは』 『またまた~レオくんになら風邪だって何だって飛びついちゃうよ!』ドッと笑いが起き
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-19
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第28話

◇「ねぇ、ちょっと」「……あれ、私いつの間にか寝ちゃっていたんですね」肩を揺らされて目を開ける。ソファの後ろに立つ皇羽さんは、ソファに座ったまま寝る私を呆れた顔で覗き込んでいる。だんだんと意識がハッキリしてきた。確か、おかゆが出来たけどあまりにも皇羽さんが気持ちよさそうに寝ていたから「起こすのは可哀想」と思って声をかけなかったんだ。私は休憩したくてソファに座って……。あぁ、やっちゃった。窓から少し傾いた太陽が、責めるようにジリジリと私を照らしている。「すみません、久しぶりに料理をしたら疲れちゃったみたいです。私が寝ている間に、体調が悪くなりませんでしたか?」「別に平気だよ」「それなら良かったです。ならば、おかゆ食べますか?温めますよ?」だけど皇羽さんは「いらない」の一点張り。もうお昼が近いから何か食べててほしいんだけどな。食欲がないのかな?すると皇羽さんは「聞きたい事あるんだけど」と真剣な顔。何を言うのかと思えば、「 Ign:s が嫌いなの?」「は?」「さっきのテレビ、すごい怖い顔で消していたから……」「今さら何を言っているんですか。その件については昨日お話したでしょう?嫌いな Ign:s が出ていたら、誰だって険しい顔になりますよ」「! そうなんだ……」明らかにショックを受けている皇羽さん。昨日も話した内容だよ?どうしてショックを受け直しているんだろう?うーん、やっぱり今日の皇羽さんは変すぎる。記憶がごっそり抜けているから、まるで別人みたいだ。でもこんなに顔のイイ人が他にいるわけないし……。なんだか狐につままれているみたい。妙な違和感に、胸がザワザワする。すると皇羽さんのスマホがいきなり鳴った。私から目を離し即座にメールを確認した皇羽さんは「遅いよ」と口にして、いきなり立ち上がった。玄関に向かうところを見れば、どうやら出て行くらしい。ん!?”出て行くらしい”⁉「ちょ、ちょっと待ってください!どこに行くんですか!熱があるんですよ⁉」「散歩だよ、すぐ帰るから」「行かせられません!」キッと睨みを聞かせて皇羽さんを見る。いつもは口をへの字にしそうな物なのに、なんと今日はニコニコ笑顔。皇羽さんの周りにバラの花びらが飛んでいる。しかも大量にだ。更にありえないことに、皇羽さんは私の手をとり甲にキスを落とした。優しく、控えめに
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-01
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第29話

「……ねぇ、さすがに傷つくんだけど」 「だ、だって!」皇羽さんからのキスを逃れるため、仕方なく最大限に顔を逸らした私。首が痛くなるくらい逸らせば、さすがの皇羽さんも「キスしよう」とは思わないはず!それに忘れたとは言わせない。いつか私と交わした、あの約束のことを!「皇羽さん、私とした約束を覚えていないんですか?口にはキスしないって、そう言ってくれたじゃないですか」 「は?」 「もう忘れたんですね、最低です。もう話すことはありません。これで失礼します」皇羽さんの手が緩んだ隙に、力いっぱいもがいて脱出する。そして寝室に逃げ込んだ。だけど逃げ込んだ先が悪かった。うつ伏せになっていた私は、ギシッというベッドが軋む音がして、初めて自分の過ちに気づく。「なんだか背中が重い……え、皇羽さん?」 「んー?なに」私の背中。その上に皇羽さんが乗っている。密着した体が皇羽さんのゴツゴツした胸板を捉えた。耳元にかかる息遣いもそう。二人揃って全部が近すぎる。「……っ」どうしよう。未だかつてない、とんでもない状況だ!動揺してバクバク鳴る心臓を押さえ、ひとまず深呼吸。うろたえてはダメ、落ち着いて。きっと皇羽さんは私の反応を見て楽しんでいるだけ。その手には乗らないんだから!焦りを皇羽さんに悟られないよう、背中に乗る彼をキッと睨む。「早く退いてください。ここは寝室ですよ?冗談にもなりません」 「ココが寝室って知っているよ、だから来た。誘われたのかと思って」 「誰が!」文句を言ってやろうと、グルンと向きを変える。そして秒で後悔した。だって目の前に皇羽さんの整った顔があったから。前髪を通り越して、まつ毛が当たる距離にお互いがいる。吐き出す息と、かかる息。もうどちらがどちらのものか全く分からない。「……ッ!」ここにきて私は動揺を隠せなくなった。顔に熱がカッと集まるのが嫌でも分かる。虚勢で釣り上げていた眉毛が、困惑してどんどん下がる。男の人とこんな距離になるのは初めてだ。「ど、どけてください。皇羽さんっ」 「例えば、俺が君にキスをしたとする」「へ?」 「そうしたら君はどうする?」いきなり何の話?それは「今からキスをするから覚悟して」ってこと?それとも本当に「例えば」の話?皇羽さんの真意が分からなくてしばらく黙り込む。だけど、どちらにしろ私の答えは変わらな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-02
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第30話

◇その後。スキップしながら部屋を出た皇羽さんは、なぜかそのまま外へ出た。とうとう戻ることなく、現在は午後七時。これだけ帰ってこないということは、結局は仮病だったってこと?私がおかゆを作った意味も、学校を休んだ意味もなかったということだ。「なんて無駄な一日……いや、それよりも」キスだよキス!なにちゃっかりキスしているの!いくら唇じゃないとはいえ、勝手にキスするなんて許されるものじゃない。あの時の羞恥心を思い出し、唇がワナワナと震える。どっぷり日が暮れた空を見る。窓には、すっかり鬼の形相になった私が写っていた。帰って来たら、絶対に一言文句を言ってやるんだから!すると玄関からガチャと音がする。皇羽さんが帰って来たんだ!「はぁ、しんど……」皇羽さんの独り言。「しんどい」って……はは~ん。さては風邪をぶり返したな?まだ本調子じゃないのに外に行って遊ぶからだ。自業自得だよ。……あ、そうだ。このまま「お帰りなさい」と出迎えるのもシャクだから、トイレに隠れることにした。って言ってもすぐに見つかるだろうけど。でも私だって、少しくらい皇羽さんを「ギャフン」と言わせたい。私がいないことを知った皇羽さんが、一秒でも焦ったら私の勝ちだ。静かにトイレのドアを閉める。同時に、皇羽さんがリビングに入って来た。「萌々? 寝てるのか?」午後7時に寝る高校生がいたら、かなりの健康重視派だと思う。しかも生憎わたしは夜型だ。両手で口を覆って笑い声を我慢する。その間も皇羽さんは私を探していた。「おい、萌々ー」返事なんてしてやるもんか。せいぜい私がいないと知って焦ってよね。今日一日、どれだけ私が皇羽さんを心配したと思っているの。人の気も知らないで、挙句の果てにキスだよ?病人のくせに、そういう下心だけは元気なんだから。「ふふ、いい感じに困ってる」トイレのドアをソッと開けて覗いて見る。ちょうど皇羽さんが寝室から出てきた。あれ?コートを着たまま、マスクも帽子もつけたままだ。いつもなら玄関で脱ぐのに、珍しい。だけどもっと珍しい光景を見る。帽子とマスクの間からのぞく皇羽さんの目が、所在なくキョロキョロしているのだ。不安そうに揺れているのだ。「萌々」と、私の名前を口にしながら。「どこにもいない。まさか、またアパートに?もしそうなら迎えに行ってやらないと……」言いながら、皇羽さんは急
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-03
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