「ちょっと、苦しいです!」 「俺に何も言わず、一人でこんな所へ来た罰だ」「罰って……」 「うるさい。人の気も知らないで……。いいから、お前は黙ってこうされていろ」顔を上げると、ギュッとかたく目をつむる皇羽さんの顔が見えた。長いまつ毛が少し震えている。もしかして寂しかったのかな?それとも「何か事件に巻き込まれたかも」って怖かった?私が思っているよりも、皇羽さんに心配かけちゃったのかもしれない。小さな声で「ごめんなさい」と呟くと、私を抱きしめる皇羽さんの力がフッと緩む。するとさっきよりも隙間なく二人の体が密着した。大きな体に抱きしめられると安心する。まるで自分の心も体も全て、包み込んでくれる気がするからだ。〝私を必要としてくれる人がいる〟って思えるからだ。「……」ぶっきらぼうで口が悪くて、そして強引。私の言う事は聞かないくせに、自分のいう事は何が何でも聞かせようとする。そんなとんでもない人が私の同居人なんて「前途多難」だと思っていた。だけど……――萌々!!さっき焼け焦げたアパートから私を見つけて駆け寄った皇羽さんが、本当の王子様に見えた。絶望の淵に立たされた私を救いに来た〝運命の人〟だって……あぁ違う。そうじゃなくて。ダメだ、いま色んな感情が混ざっている。……そう。ただ私は、迎えに来てくれたことが嬉しかった。私を心配して探しに来てくれたことが嬉しかったんだ。これからの生活「前途多難だけじゃないかも?」って思えて、皇羽さんとの生活が楽しみになったんだよ。でもこんなことを本人に言ったら、有頂天になった皇羽さんがますます過保護になりそうだからやめておく。今だって過保護だよ。もう私は子供じゃないから、こんなに心配しなくて良いのに。だけど……少し見たかったな。〝私がいない〟と知った時の皇羽さんの慌てっぷりは、どんなものだったんだろう。想像すると、不謹慎だけどニヤニヤしちゃう。その時、抱きしめ合う皇羽さんの異変に気付いた。「なんだか皇羽さん震えていませんか?」ふと意識を戻すと、尋常ではない震え方で皇羽さんが揺れている。抱きしめられているから私も一緒に揺れ始めた。バイブみたいな振動がずっと続いている!慌てて体を離すと、顔面蒼白の皇羽さんが半眼で虚無を見つめている。「なんか寒ぃんだけど……」 「そう言えば皇羽さん、ついさっきまでお風呂に入っていました
Terakhir Diperbarui : 2025-03-13 Baca selengkapnya