下の階からエミルさんの大きな声が聞こえる「ヨール、起きろ! 飯にするぞ!」 ゆっくりと起き上がり、リビングへと降りていく。 もう外はすっかり暗くなっており。ロウソクの明かりがぼんやりと家の中を照らしていた。「すみません、寝すぎちゃいました。でも、おかげさまで体調はばっちりです。助かりました」 すでに椅子に座っていたエミルさんとマチルダさんに頭を下げる。 いい匂いに釣られて視線を動かすと、4人掛けのテーブルに料理が並べられていた。マチルダさんが焼いてくれたピザ生地のようなピーのパンと、野菜とソーセージのスープが美味しそうな湯気を立てている。「いい香りですね! 寝食ともお世話になってしまい申し訳ありません。このご恩は必ずお返しします!」 見ず知らずの自分のために、寝床とご飯まで用意してくれているのだ。いくら感謝を伝えても足りないくらい。俺にできるのは、明日から行動で示すことのみ。「素直な子ね、エミルが森で子供を見つけてきたって言うもんだからびくりしたのよ。可愛らしい顔をしているのね。まだ若いんじゃないの?」 マチルダさんが話しかけてくれた。癖のある栗色の髪に薄い青色の瞳。少しふくよかで、笑顔が素敵な朗らかな女性だ。 小さい時は、よく女の子に間違えられていた。背は170cmを超えているんだけど、童顔で色白な見た目から、友人からはよくからかわれていた。お嬢様なんて呼ばれたりね。「おそらく17歳くらいだとは思うんですが、記憶が無くなってしまっていて……」「ヨールに何があったのかは分からないが、俺たちに出来ることなら力になってやる! 何でも相談しろよ! 2週間と短い間だが遠慮は要らないからな!」 こんないい人たちに嘘をつくのは忍びないけれど、異世界から来たと正直に言うことでさらに変人だと思われるよりマシだろう。 ……でも、エミルさんもマチルダも優しすぎる。こんな俺の力になってくれるなんて。 右も左も分からない新世界での生活で、罪悪感と温かい感情に包まれて、自然と涙がこぼれていた。
최신 업데이트 : 2025-02-13 더 보기