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冒険者ギルド

last update Last Updated: 2025-03-02 21:57:53

 ギルド長のエバンスさんとエミルさんの話し合いが続く。

「……で、だ。エバンス殿、なぜ俺は呼ばれたんだ? 調査が済んだら伝令を寄越してくれれば良かったんじゃないか?」

「その件だが、今回は火急の事態のため、こちらで指揮を取る必要があった。オークの大群が村を襲えば全滅もあり得るからな。まあ、何が言いたいかというと、ギルドも仕事だ。当然、人を動かすには金が発生する。早い話しが支払いの相談さ」

 エミルさんは、顔を顰め眉根を寄せ、これでもかというほど眉間に皺を寄せている。骨折した事を忘れてしまったのか、両の手は硬く握られワナワナと震えている。

 納税時期が迫ってるし、自給自足のジョール村に蓄えなんてあるのだろうか。そもそも、俺がエミルさんの家で世話になっていたことから、あの村に宿はない。外からやって来た旅人が金を落とす想定なんてしていないんだろう。

「……どれ程の金額になるんだ?」

「本日中に調査は終了するだろう。冒険者が5チームに伝令や騎士、その他とギルドの手数料も含めたら金貨10枚が妥当なところか」

「エバンス殿の言うことは当然だ、理解は出来る。しかし、我々は近日中に納税を控えている! 村に戻って相談させてくれ!」

 金貨10枚、100万円相当になる。確かに金額は大きいが、1日仕事でこの大人数だ。高すぎるとは言い難い。吹っかけている訳ではなさそうだ。

 こういうとき、納税が発生しているなら、この辺りを統治している人がお金を出すべきだと思うんだけど。村として成り立たせてやるから税を納めろ、村の周辺が危ないなら金を払えって、みんなの生活を追い詰めかねないよね。

「エミル殿、怒らないで聞いて欲しい。この金額はあくまでもコロニーが無かった場合の値段だ。オークの集落の殲滅。さらににハイオークがいた場合、いま提示した金額の3倍は請求することになるだろう。森は村の所有では無いので、ジョール村がコロニー殲滅の金額を払う必要は無いと思われるかもしれない」

 ただでさえ苦しいと難しい顔をしているエミルさんに対して、エバンスさんがさらに続ける。

 それほどオークのコロニーが厄介で、ハイオークが恐ろしいモンンスターだというのは分かるんだけど……でも、納得はできない。

「しかし、村を守る城壁も、冒険者も居ないジョール村は、真っ先に危険に晒される。ジェプラを使ってギルドに連絡していたのだから、
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    「いい膝も頂いたことですし、そろそろいきましょうか! レストラン『サルバトーレ』ってところです。」「へー、あそこは人気でかなり並ぶみたいだよ。それと、堅苦しいから敬語はやめようか」 大通りを通ってレストランに向かうと、すれ違う人の視線がイズハさんに集まっている気がする。俺のファッションに釘付けって可能性も否定できないけどね。「クスクスッ……。なぁにあの格好?」「どうせ売れ残りでも掴まされたんじゃないの? 流石にアレはないっしょ?」 こちらを指差してるカップルは間違いなく俺の悪口を言ってるな。 今日の俺はそんな小さな事気にしないよ……と言いたいが、少しは傷つくんだぞ。 馬鹿みたいな格好をしてるのは自覚しているけど。 さて、ここで問題です。手を繋ぐべきでしょうか、繋がないべきでしょうか。 ……答えは簡単! 手を握ろうとしたら人差し指の骨を折られそうになったので、二度と変な真似をしてはいけません!「なあヨール、お前いくつだ?」「そろそろ17歳かなぁ。イズハさんは……いつから冒険者をやってるの?」 危ない危ない。年齢を聞こうとしたら右の拳を握りしめるのが見えた。年齢と体重を聞いた時、俺は死ぬだろう。「あたしは3年くらい前かな? 兄貴と一緒に始めたんだ。居ただろ、青髪のでかいのが。アレがあたしの兄貴。で、あんたは?」「へぇ、ダズさんと兄妹なんだ! あんまり似てないね。俺は1週間くらい前からかな?」「は? そんなんであの赤髪達とダンジョンに潜ったってこと!?」「いや、パトリックさん達は知り合いなだけで俺はソロだったよ。俺が裸で落とし穴からセーフゾーンに落ちた時は、話を作って庇ってくれたんだ。」「な、なおさらおかしいだろ! あたしより弱いのにどうやって……」「まあまあいいじゃない。ちょうど到着したし、続きは店の中で話そうよ!」 サルバトー

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    「そうだ、先にお店を決めないとだ!」(デートマスター黒川ともあろうものが、とんでもないミスを犯すところだったぜ。宿に戻る前にレストラン『サルバトーレ』に寄っていこう) デートではないのだが、勝手に盛り上がってしまっている。 太陽の位置的に10時を過ぎたくらいだろう。少し早足で向かう。こういう時は余裕を持って行動しないといけない。デートマスター黒川は余裕のある男なのだから。 30分もかからずレストランに到着した。既にお店の半分近くの席が埋まっている。早速ウエイトレスさんに声をかける。「すみません、マルコスさんはいらっしゃいますか?」「少々お待ち下さい」 ウエイトレスさんは可愛らしく背中のリボンを揺らしながら、店の奥へと入っていった。 しばらくすると、マルコスさんがにこやかに微笑みながらこちらへやってきた。「これはこれはヨール様。今日はどうされましたかな?」「今日お昼をこちらで頂きたいのですが、席の予約はできますか?」「おや、デートですかな? 他でもないヨール様の為ならお安い御用です」「ま、まあそんなところです。お昼の鐘から30分後くらいに伺いますね。コースメニューがあればそれでお願いします!」「かしこまりました。お待ちしております」 これで食事はばっちりだ。小さくガッツポーズをすると、握りしめた拳の辺りを見てふととんでもないことに気がついた。そう、服装だ。 通りを歩く人々の半数以上は同じように村人の服を着ているが、これから行くのは少し敷居の高いレストランである。 冒険者らしく防具を揃えるか、少し質の良い服を買うかで迷ったが、前回サルバトーレに寄る前に買い物をした古着屋に立ち寄ることにした。「すいませーん、イケイケのオシャンな服を下さーい!」 店に入り、店主に服を見繕ってもらう。だんだん緊張してきているため、語彙力が酷いことになっていた。「はい、社交的な場であればこちら、デートなどであればこちらなどいかがでしょうか」 少しごわついた黄ばみがかった白い

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