All Chapters of 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい: Chapter 51 - Chapter 60

65 Chapters

寝かせてくれ

「朝だ!」 目を覚ますと、跳ね起きるようにベッドから飛び出す。 今日の俺は気合が入っている。何故かって? そう、今日は初ダンジョンに挑戦するからだ!「ダンジョンに挑戦するぞ! 興奮するー!」 ジンバさんには見学だと嘘をついちゃったけど、俺は今回で攻略するつもりだ。 夜間にモンスターを倒しまくってレベルを上げ、ゴールド級の基準値まで持っていく。その為に保存食も買ったし、飲み水も追加した。準備は万端だ! まだ時間には余裕がある。身支度をしてラシードさんのお店でゆっくり食事をする事にしよう。 黒川 夜のモーニングルーティーンを済ませ、目的地へと向かう。 ちなみに宿からラシードさんの店までは歩いて30分くらいだ。 店に着くと、ウエイトレスさんが席へ案内してくれた。今日はテラス席じゃないので一安心だ。何にしようかじっくりと悩む。俺は余裕のある男黒川だ。「モーニングセットをお願いします。ドリンクはレモネードにします。オムレツも付けて下さい!」 冒険者たるもの朝の栄養補給を軽んじてはいけない。食べれる時に食べる、これぞ鉄則なり。(結構食事抜いちゃってるんだけどね……) モーニングセットは厚めのトーストにソーセージに目玉焼きだ。ここにレモネードとオムレツが来るって寸法さ! ご機嫌だろ? お味はもちろんパーフェクトだ! 最高の朝食だね! 持ち帰りにパンを6つ購入し、大銀貨18枚を支払い店を後にする。(皮製の水筒にすればレモネードを大量に持ち込めたな。検討しておこう!) ギルドの受付に到着の連絡をして、乗合馬車を待つ。今日は俺と、他に2組しか乗らないみたいだ。朝一の馬車を利用する人が多いのだろう。 ギルドの掲示板に残った依頼を眺めて時間を潰していると呼び出しがかかった。昼の鐘の前にもう出発するみたいだ。 馬車乗り場には、4頭立ての大型の馬車が4台停車していた。最大で8人も乗れるらしい。 俺は先頭の馬車に乗り込むと、既に3人
last updateLast Updated : 2025-04-05
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大活躍?

 会話の流れで2階のセーフゾーンまで連れて行ってもらえることになったので、お言葉に甘える事にした。俺の眠りを妨げたことはこれでチャラにしてやろう。 赤髪の剣士はパトリックという名前らしい。ちなみにこいつの仲間は道中ぐっすり寝れていた。 ダンジョンの入り口で木札を渡す。 さあ、初ダンジョンに挑戦だ! ダンジョン入り口は祠のようになっていて、巨大な生物が大きく口を開き、こちらを飲み込もうとしているかのような迫力がある。 そこから地下へと伸びる石畳の階段は、黄泉へと誘う冥府への通路のような禍々しさを感じさせる。 灯りの心配など頭になく、カンテラ等の照明を持ってきていなかったので、入り口の暗さに少々焦ったが、中に入るとうっすら壁が青緑色に光っており、問題なく先を見通す事ができた。 中はひんやりと冷たく、薄暗いダンジョン内は、先程までの春の陽気を感じさせる麗かな日和と対比され、肌に纏わりつく冷気が鳥肌立たせるかのように、緊張感に包まれる。 まるで迷路のように時折枝分かれする通路は、幅が5メートルほどあり、慎重に歩を進めると、かなりの頻度でゴブリンに遭遇した。 ゴブリンはティーダさんに聞いていた通り、小柄だが筋肉質な体をしており、素早い動きで棍棒やナイフを振り回して攻撃をしてくる。 パトリックパーティーの連携は素晴らしく、次々にモンスターを葬っていく。 炎を剣に纏わせ、パトリックが先行すると、槍を持った栗色の髪の女性が槍から電撃を放ち援護する。 そこに後方から、スキンヘッドで風属性の魔法使いの男性が、仲間に射線が被らないよう位置取りながら、離れた位置にいるゴブリンの首を狙いウインドエッジを放つ。 炎に体を焼き切られ、雷の閃光に体を貫かれ、鋭利な刃物で刎ねられたかのように首を落としたゴブリン達は、次々と地面に崩れ落ち、溶けるように迷宮へと沈み、消えていった。(この人たちは誰なんだろう……) 俺はというと、魔法使いの後ろに隠れて戦いを見守っていた。今のステータスだと瞬殺されちゃうからね。 ごく稀に
last updateLast Updated : 2025-04-06
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ナイトメア

「知らない景色だ……」 壁にもたれ、片膝を立て、両手はだらりと下ろしている。 遠くを見るような目線で、言ってみたかったカッコイイセリフを呟き、目を覚ました。「肌寒くてすぐ起きちゃった気がするよ」 朝に買ったパンを2つ手に取り、腹ごしらえをした。(ステータス) 黒川 夜 レベル:17 属性:闇 HP:1120 MP:1120 攻撃力:410 防御力:385 敏捷性:580 魔力:900 スキル ・シャドークロー レベル2 ・ダーク レベル1 ・ナイトメア レベル1「おおお!? レベル上がってるしスキルも増えてる!」 ステータスが上がっているので、夜になった事が分かる。 ジャイアントルーパーの討伐と、パトリック達に同行していたおかげで、最後にステータスを確認した時からレベルが6も上がっていた。「ナイトメアか、カッコイイね! さてさて、どんなスキルなのかなー?」(ナイトメア レベル1:影に潜り、対象の影へと瞬時に移動する。対象の影は自身の影と繋がっている必要がある。範囲:自身を中心に半径3メートル以内。)「瞬間移動きた! 暗闇なら好きな場所に移動できるってことか! ここなら壁際に居れば良さそうだな」 壁沿いの少し離れた場所を指定し、スキルを発動した。(ナイトメア) スキルを使うと目の前が一瞬だけ暗闇に包まれ、視界が戻るとスキル発動前とは目線が変わっていた。 先程まで座っていたはずが、移動先では直立していたのだ。「さっきまで座ってたよな? あれ、もしかして……」(ナイトメア) 視界が闇に包まれ、明るさを感じると目の前には壁があった。 スキル発動時に、移動先で壁の方を向いている自分の姿を想像していたのだ。「やっぱり! 移動先の自分の姿を
last updateLast Updated : 2025-04-07
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危ない

(シャドークロー) 両手にスキルを発動させ、疾風の如く敵に接近する。昼間は素早く感じたゴブリンの動きが、今やスローモーションのように遅く感じる。 駆け抜けるついでとばかりに右手の一撃で1体の頭を消滅させ、その勢いのまま裏へ回ると、ゴブリンたちは何が起こったのか分からない様子で狼狽える。 その隙を見逃さず、残る2体も一閃二閃と漆黒の斬撃を振り下ろし、一瞬のうちに葬り去った。「体が凄く軽いや、これなら問題なさそうだね!」 カバンを背負っているだけでもステータスが低下してしまうので、戦闘の度にカバンを下ろさなければならないのは面倒だが仕方ない。 通路を右へ左へ思うがままに進んでいくと、次から次にゴブリンの集団が襲いかかってくる。 攻撃を躱しながら、狙いやすい頭を狙い、敵の群れを1体ずつダンジョンへと帰していく。「お!? 初ドロップ品ゲット!」 20体ほど倒しただろうか、ゴブリンの死体が消えると、そこには小さな金属塊が残っていた。「鉄……かな? ま、どんどん行きましょう!」 カバンにしまうと、駆け抜けるように迷宮を進んでいく。ゴブリンはまったく相手にならず、2時間程度で5階へと到着してしまった。「順調だね、ここからは弓を使うゴブリンがでるんだっけ。」 気を引き締め、慎重に歩を進めていくと、直進、左、右に分かれた分岐点に差し掛かる。 直進を選択し少し行くと、何かを弾くような音が聞こえ、その直後に弧を描くように飛来する矢を視界に捉えた。 素早く左に移動して矢を避けると、地面を強く蹴るように前進する。「見えない位置から撃ってくるなんて……。」 元いた場所から10メートル程離れた場所から矢を放っていたようだ。ゴブリン4体にゴブリンアーチャー1体を視認する。(ダーク シャドークロー) 弓を引く動作をとっていたゴブリンアーチャーの視界を闇が包み込む。急に視界を失い驚いたのか、弓から手を離し、闇を払うように顔を手で拭っている。
last updateLast Updated : 2025-04-07
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大当たり

 鈍く光る金属のナイフが俺の脇腹に深く突き刺さ……らなかった。 チクリとした痛みが走り、ナイフは皮膚を少し傷つけただけで、それより深く突き刺さることはなかった。ステータスが上がっているおかげで、普通なら刺し殺されていてもおかしくないような攻撃でも耐えられるらしい。「ゲヒヒ! ゲヒヒ!」 ゴブリンは涎を垂らしながら、野蛮な薄ら笑いを浮かべ、両手でグリグリとナイフを押し込もうとしている。「いたたたたたた! この野郎!」 素手で殴りつけると、吹っ飛ばされたゴブリンは壁に叩きつけられ、骨が折れたのかおかしな角度に首を曲げ、そのまま地面に吸い込まれていった。「危なかった! 今のは危なかったでしょ!」 コマ送りのように、ゆっくりと自分の体にナイフが迫る体験に、体中から冷や汗が止まらない。 レベルが上がりステータスがかなり上昇している為、ゴブリン程度の攻撃では致命傷を与えられないようになっていた。 急ぎその場を立ち去り、6階への階段を探す。 途中、左右の分岐を左に曲がると、奥は行き止まりになっていたが、ダンジョンらしい物を発見した。通路の真ん中にポツンと置かれた、古びた趣のある赤茶色の木箱。「これは……。宝箱じゃないか!?」 早速開けてみようと近づくが、直前で思い留まる。(こいつぁ臭うぞ、罠の臭いがプンプンしやがる……) 罠の心配を考慮し、足でフタの部分をちょこんと蹴り上げ、バックステップで距離を取る。 宝箱は一瞬かぱっと口を開き、その後沈黙する。「ふふ、罠検定2級の黒川様にかかればこんなもんよ!」 自信満々に宝箱を開けると、中には真鍮のように角度によって虹色に光る指輪が入っていた。「これは……。俗に言うステータスアップ系のやつか?」 指輪を右手の中指にはめ、ステータスを確認する。(ステータス) 黒川 夜 レベル:21
last updateLast Updated : 2025-04-08
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変態

 早速収納を試そうとするが、やり方が分からない。カバンを地面に置き、右手で触れてみるが何も起きない。「不良品? 返品はきくのかこれ?」 もう一度カバンに触れ、今度は頭の中で(収納)と念じてみると、先程までそこにあったカバンが目の前から消えた。「できた! さて、お願いします!」(ステータス) 黒川 夜  レベル:21  属性:闇 HP:2900  MP:2470  攻撃力:1860  防御力:2020  敏捷性:2750  魔力:4190 スキル  ・シャドークロー レベル2  ・ダーク レベル2  ・ナイトメア レベル1 装備  ・冒険者証  ・収納の指輪「よし、思った通りだ! これで朝まで戦えるぞ!」 今来た道と逆方向に進んで行くと、すぐに階段が見つかった。5階は少し広く、攻略には90分以上かかってしまった。(もしかすると、5階、10階、15階以降は広くなっているのかもしれないな) より早く進む為に、常にシャドークローを発動させることにした。視界が広がり、弓の射程外からダークをかける事ができるからだ。 また、ダークがレベル2になったことで、ゴブリンアーチャーが複数体出現しても対応が簡単になるだろう。 それから6階、7階と順調に攻略し、8階へと到達した。「ダークがこんなに便利だったとは……。アーチャーを完全に無力化してしまったぞ」 鏃が当たったとしても、皮膚を突き抜ける事は無いだろうが、毒が塗られている可能性がある。用心は必要だ。 しかしここまで肝を冷やす場面はあったが、ソロとは思えない早さで進んでいる。ダンジョンはパーティーで攻略するのが冒険者の常識で、小ダンジョンとはいえ1人での攻略は異例である。 どんどん進んで行くと、明るい光の漏れる通路を発見した。(お、セーフゾーンか? ちょっと休憩もありだな) 中を覗くと広い部屋になっ
last updateLast Updated : 2025-04-08
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レッツゴー

「なんだなんだ!?」 次々と周囲から声があがる。 落下時間から考えると、ここは多分10階のセーフゾーンだろう。 3組のパーティーが部屋の3隅に分かれていたので、俺は残りの角へ行き、収納の魔道具からカバンを取りだし、何事も無かったかのように着替え始める。 収納の魔道具から物を取り出すのは結構簡単だった。 指輪を意識すると、指輪の中に収納されている物のリストが頭の中に表示される感覚があり、カバンのところを指差すようにイメージすると、何もない空間にポンと出現した。 まだ夜明けまで時間はあるが、10階からはゴブリンメイジが出現する。初見相手では梃子摺る可能性があるので、今日はここまでとしよう。 ゴザを引いてブランケットを掛け、横になって目を瞑る。(おやすみなさい)「ちょっと待て! 何普通に寝ようとしてんだよ!」 怒声とともに誰かが近づいてくる音がする。(ですよねー……) 観念して起き上がると、青髪の2メートルはありそうな大男が眉間に皺を寄せ、怒りを露わにしていた。「いや、あの、そのですね……。えへへ」 なんて説明したらいいのか分からない。属性の説明からするべきか、宝箱の罠の話をするべきか、どうしようか。「えへへじゃねえぞ! こっちは休んでたんだ!」 がしっと胸ぐらを掴まれる。足がバタバタするので俺は今空中にいるのだろう。凄い力だね!「それに関しては申し訳ないですけど、事故なんですよ」「どんな事故がありゃあ裸で股間に角が出来るんだこら!」 言われてみればその通りだ。手で隠しておけばまだマシだったか? いや、結局深夜のダンジョンのセーフゾーンに裸で現れてる時点で変わらないか。「手を離してやってくれよ、ソイツはうちのパーティーなんだ」 思わぬ助け舟に声の方へ視線を向けると、赤髪の剣士がこちらに近づいていた。「パトリックさん!」 そういえば、悲鳴をあげていたの
last updateLast Updated : 2025-04-09
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狩りの時間

(早速お出ましか!) ゴブリン3体にゴブリンアーチャー1体、ゴブリンメイジが1体だ。 体毛が無い緑色の肌で、汚れたボロ布を腰に巻いている。中学生くらいの身長だろうか。痩せ細り、お腹だけがぽっこりと膨れたみすぼらしい体型。目が細く、鷲のクチバシに似た大きな鼻をしており、耳の先端が尖っている。(ダーク) 漆黒の闇がゴブリンアーチャーとゴブリンメイジの視界を奪う。アーチャーは顔面を掻きむしるようにもがいている。「ゲギ、グギギ!」 ゴブリンが何か呟くと、ゴブリンメイジは手に持った杖の先を光らせた。すると、ゴブリン達の体がバチバチと放電するように雷の衣に包まれ、上階の2倍近いスピードでこちらに向かってきた。「なるほど、連携してくるわけね!」 こちらも相手に接近すると、先頭のゴブリンが右手に持つナイフを突き刺すようにして俺の腹部を狙ってきた。 拳1個分の余裕を持ち躱し、カウンターをお見舞いしようとしたその時、強い静電気が発生したかのようにバチッという音とともにナイフから青い光の線が俺の体に放出される。「痛っ!」 いたずらに使用される電流がビリリと流れるおもちゃのような鋭い痛みに驚き、一瞬体が硬直してしまう。 後ろに続いていたゴブリン2体も飛び上がり、左右から挟み込むようにして頭を狙って棍棒を振り下ろしてきた。 潜るように相手の後ろに回り込もうとすると、棍棒からもバチンと鳴り電流が流れてくる「いてっ!」 ドッキリに使用されるビリビリペンのような痛みにびっくりして動きが止まってしまう。「ゲギャッ!」 隙ありとばかりに棍棒が振り下ろされ、右肩を殴打されてしまう。「これは痛くないんかい!」 肩に手を置かれたような感覚に思わずツッコミを入れてしまった。 一度電気を放つとバフが解除されるらしく、動きの遅くなったゴブリンの頭を一撃のもとに跳ね飛ばし、無力化された遠距離2体も同様に消滅させた。「なんだこの嫌がらせは! いたずらが過ぎるぞ!」 ガム
last updateLast Updated : 2025-04-10
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走り回る

「宝箱じゃーん!」 また行き止まりに宝箱を発見した。 黒川式罠検知術を発動する。「ちょいっとな」 先程まで自分の頭があった場所目掛けて、左の壁から槍が飛び出してきた。「はいはいお見通しでーす」 運良く罠を回避すると、再度黒川式罠検知術を発動した。 するとまた槍が飛び出した。「なるほどねー、宝箱破れたり!」 体を屈めて宝箱の蓋を開けると、頭上で槍が通過した。 宝箱の中には金属製のダガーが入っていた。「刃も綺麗だし、これは高く売れそうだぞ!」 手を叩いて喜ぶと、さらに迷宮の奥へと進んでいく。 分岐を3箇所ほど経て、14階への階段を発見した。「かなり広いや、13階も2時間はかかっていないだろうけど、90分くらいはかかってそうだなー。そうだ!」(ステータス) 黒川 夜 レベル:27 属性:闇 HP:3660 MP:1820 攻撃力:2620 防御力:3090 敏捷性:3975 魔力:5880 スキル ・シャドークロー レベル2 ・ダーク レベル2 ・ナイトメア レベル1 魔法 ・レイヴン レベル1「魔法が増えてる! どれどれ効果はー?」(レイヴン レベル1:対象1体に漆黒の鳥が襲いかかる)「やっぱり1体かー。多数相手には微妙か? とりあえずいっちょ使ってみますかー!」 通路を進むといましたよ、モルモットの皆さんが。ゴブリン2体にアーチャー1体にメイジ3体か。 まだこちらには気付いていないようだ。(レイヴン) 目の前で闇が凝縮するようにカラスを模した鳥となり、バサッと羽ばたくような音がすると、疾風の如き速さで一直線にゴブリンに飛来し、胸を貫き命を奪うと暗闇に溶け込むように消えた。(つええええ…&hell
last updateLast Updated : 2025-04-11
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ナマハゲ

「悪い子は居ねがー! 階段はねえがー!」  ナマハゲと化したヨルハゲは、疲れなどどこ吹く風とばかりに両手を広げて疾走し、モンスターを見つけては、「言うこど聞がねゴブリンはいねがー!」 と蹂躙を繰り返した。何故ナマハゲをチョイスしたかは気分である。 そろそろナマハゲごっこが飽きてきた時、16階への階段を見つけた。2時間以上は探しただろう。「そろそろヘトヘトだ。早く休みたいよ」 さすがに疲れの色が見えてきたのか、肩を落として溜息を吐く。トボトボとした様子で階段を降りると、先程までと代わり映えのしない16階の景色が視界に広がる。「お花畑とか山岳地帯とか風景が変わってくれると盛り上がるんだけどねー……。セーフゾーンまであと少し、気合入れていきましょ!」 深夜なので叫び声はあげなかったが、あと少しとばかりに更にスピードを上げ、セーフゾーンの明かりを目指して突き進む。30分ほど経っただろうか、ひときわ明るい光の漏れだす通路が見える。(黒川選手、ゴールです!) 着替える事など頭から抜け落ち、ただただ目的地にたどり着いた嬉しさから、ゴールテープを切るようにバンザイしながらセーフゾーンへと飛び込んだ。「は?」 ゴブリン20体、ゴブリンリーダー10体、ゴブリンアーチャー10体、ゴブリンメイジ10体が突如出現した。そう、モンスターハウスだ。「ゲヒャゲヒャ!」「ギヒィギヒィ!」 ゴブリンたちは醜悪な笑みを浮かべ、罠に獲物が飛び込んできたことを心底喜んでいるようだ。 ステータスを確認すると、MPは500を切っていた。「俺を嵌めたのがそんなに嬉しいか……。 怒ったかんなっ!」 慣れていないため、プリプリと可愛らしく怒ると、まるで鬼でも乗り移ったかのように怒気を発し、弾丸のようにモンスターの集団に突撃した。「オラッ! スカタン! おたんこなす!」 聞き慣れない悪口を吐きながら、質量を持った左右の影の爪が、弧を描く
last updateLast Updated : 2025-04-12
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