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体を洗う

last update Last Updated: 2025-02-14 19:10:15

 ……まぶたの裏が明るい。鳥のさえずりが聞こえる。

「ふぁー。朝か」

 学校に通う習慣で、いつも同じくらいの時間に目が覚めてしまう。体感てきには朝の7時くらいだろうか。

(そういえば、この世界の1日は何時間なんだろうか? 後でエミルさんに聞いてみるか! 2日過ごしてみたところ、地球とそう変わらないように感じるんだけど……)

 エミルさん夫妻がまだ寝ている可能性もあるため、そっと部屋を出る。

 しかし、キッチンのほうから軽快な包丁の音が聞こえる。マチルダさんが朝食の準備をしているのだろう。

「おはようございます、マチルダさん」

「あら、ヨール君おはよう。まだ寝ていてもよかったのよ? 昨日はお昼寝もしていたから、早起きしちゃったのかしら?」

 挨拶すると、手を止めたマチルダさんが棚の扉を開く。

「自然と目が覚めてしまいました。柵作りに遅れなくて良かったです。何かお手伝いしましょうか?」

「大丈夫よ、外の井戸で顔を洗ってらっしゃい。着替えがあったほうがいいわね、息子のお古が着れるかしら? 桶に水を汲んでこれで体を拭くのよ」

 桶の中にスポンジのような物とあまり水を吸わなそうなタオルが入ったお風呂セットを手渡される。よく見ると、そのスポンジは何かの植物のようだった。

 マチルダさんいわく、この世界では体を洗うのにサボンというトゲのある植物を使うらしい。乾いた土地に生える植物で、体内に水を溜め込むために、スポンジのような性質を持っているのだとか。サボテンとかヘチマとかそういう種類なんだろうな。

 表皮を剥いて中身を乾かすと、フワフワで網目状の物体に変わる。なんどか水を吸わせたり干ししたりしていくうちに、体の汚れを落とすのにちょうどいい硬さになるらしい。たしかに何度か握りしめてみると、ゴワゴワした感触がハードタイプのボディタオルみたいだ。

 さっそく外に出て、井戸に向かう。

 この世界の習慣なのか、他の村人も集まっていた。自己紹介を交えつつ頭を下げながら水を汲む。

 周りを見習いながらサボンに井戸水を含み、軽く絞って
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     扉を開けば、カランカランと木製のベルが鳴る。 カウンターには誰もいない。左右に通路があり、カウンターの隣に2階へ続く階段があった。「すみませーん、月貸で部屋を借りたいんですが」 大きな声を出してみる。 すると、カウンター奥のドアがギィと軋む音を立てながらゆっくりと開く。「おう、いらっしゃい。1部屋なら空きがあるぞ。大銀貨30枚だけどいいか? 朝は銀貨2枚、夜は銀貨4枚で食事も出来る。予約制だから事前に言ってもらう必要がある。ということで、今日の食事は締め切りだけどな」 姿を見せた店主は凄かった。アメリカのトップボディビルダーのような体つきで、腕なんか俺の太ももより太い。肩幅なんて俺2人分はありそうだ。 跳ねるように大胸筋を動かす店主に大銀貨30枚を支払い、部屋へと案内してもらう。 3畳ほどの狭い部屋には、木の床と天井、土の壁、ふすまのような入口……以上!  あ、鍵もあったよ。つっかえ棒にするための木だけどね……。 内側からは鍵をかけれるけど、出かける時はウェルカム状態だ。 建物の中をとりあえず区切って空間にしましたよって感じ。「贅沢は言ってられないか」 床に座り、明日からの事を考える。 とりあえず、布団と着替えが欲しいところ。ずっと同じ服というのは、元日本人として気持ち悪い。何着か予備を買っておくべきだろう。それに、しばらくここで暮らすのだ。何よりも優先すべきは布団。1日の三分の一を過ごす大事な場所だからな。 起きたら街で必要な物を買い足すことにしよう。「あ! そういえば……試したい事があったんだ!」 レベル2になったシャドークローを思い出し、変化を検証してみる事にした。 さっそくステータスを開いてみる。(ステータス) 黒川 夜 レベル:11 属性:闇 HP:620 MP:620 攻撃力:230 防御力:210

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    「ちょっと早く着いちまったか。ヨール、明日の初心者講習でも予約してきたらどうだ?」 人だかりから逃げるようにラシードさんのパン屋を後にした為、約束よりも早くギルドに到着してしまった。「そうですね、予約してきます」 冒険者達は今頃依頼をこなしているのであろう。 朝の喧騒が嘘のようにギルドは静まり返っていた。「あのー、さきほど冒険者登録をしたヨールです。初心者講座を予約したいのですが、次の開催はいつでしょう?」 朝と同じ受付嬢に声をかけた。「はーい。最短ですと、明日の夕方になりますがどうされます?」 感じのいいお姉さんだ。それに美人ときた。冒険者からの人気も高いんだろうな。 お金もそんなに持っているわけじゃないし、講座を受けるのは早いほどいい。「では明日でお願いします。何か準備するものはありますか?」「そういったことも踏まえての初心者講座ですので、手ぶらで構いませんよ。今くらいの時間には来ておいて下さいね」 俺は、なるほどと横手を打って感心した。 一から教えてくれるなんて、ずいぶんと手厚いんだな。せっかく冒険者になってくれた人が、何も分からず無茶をして死んじゃったら大変だもんね。「さて、ギルド長に会いに行こう」「では、ご案内致しますね」 冒険者の数が少なかったからか、受付嬢がギルド長の部屋まで案内してくれた。 予定よりは早いが、何か動きがあったかもしれない。遅れるよりはいい。「エミル殿、丁度良かった! さあ掛けてくれ」 俺達がソファーに座るとギルド長が話を続ける。「調査が終了したよ。森にオークの集落は無かった。しかし、計13頭のオークが見つかってね、何らかの異変が起きているのは間違い無いと思う。例えば、新しいダンジョンが発現する前触れ……とかね。可能性を挙げだしたらキリがないが、しばらくは森のパトロールが必要となりそうだ。ということで、森にあった5頭分のオークの素材を差し引いて、請求は金貨9枚と大銀貨50枚でどうだろうか」

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   パンが美味すぎる

     メイド服のウエイトレスさんからテラス席に案内され、焼きたてなのか、いい香りのするパンを興奮気味に頬張る。「んーーー! な、な、何これ! ピーの香ばしさが全然違う、この新作のパン、サックリと焼き上げられたピーの香りが素晴らしいよ! そして中のビーフシチューが凄いんだ、パンと一体となるよう具材の大きさが計算され、ホクホクの野菜とよく煮込まれたお肉がホロホロと溶ろけるように混ざり合う」 あまりの美味しさに、思わず感想が口からこぼれてしまう。 ――ザワザワ そんな俺を見て、通りを歩く人が足を止めている。「そうか! 野菜が煮崩れないようお肉と別で煮たんだ! このお肉もハーブと塩のシーズニングに漬け込んでいたのか? いや、それだけじゃない……すりおろした野菜だ、揉み込んであるんだ! シチューのスパイスと肉の漬けダレが味に深みをだしているぞ!」 しかし、食レポコメンテーターと化した俺の口は、勝手に無数の言葉を紡ぎだす。 完成度の高いパンが舌を楽しませてくれている。黙って食べるなんて無理だよ。 ――ザワザワザワ 大はしゃぎしている俺を珍しく思った、通りを歩く人々が観衆となり、俺たちが座るテラス席の周囲には人集りができ始めていた。「おい、あのパン新作らしいぞ!」「あそこのパン評判いいのよね、私も1つお願いしようかしら」「言われてみたらピーのいい香りがするな!」 普通に食事をしているつもりなのだが、いつの間にか客寄せピエロと化していたらしい。 観衆たちがお客さんとなり、次から次に店の中へと入っていく。「ふぁー、このドライフルーツの凝縮された甘味ったら砂糖のそれとは全く違う! 天日でしっかり干しているんだろうな、水分が飛んで芳醇な香りが脳を刺激するようだよ! ん?これは……、お酒だ! 果物のお酒がパンに練り込んであるんだ、これが一層味を引き立たせているのか! おいおい、待ってくれ、ピーの種類がさっきと違うのか? さっきのパンより甘い香りがするぞ! 硬めのパンを噛めば噛むほど口の中が幸せに包まれてい

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