All Chapters of エリートな彼と年の差恋愛婚〜恋した彼は15歳年上の旦那様です〜: Chapter 1 - Chapter 10

42 Chapters

【プロローグ】

 それは、ある夏のかなり暑い日の出来事だった。 いつものように大学へ行くため、わたしは電車に乗っていた。 時間は朝8時15分、満員電車の通勤ラッシュの時間帯だった。 その日は友達と遊びに行く約束もしていたため、いつもよりも薄手の格好をしていた。   そう満員電車だから、乗れるわけもなく、通学時間40分ずっとたちっぱなしだった。 そして電車に乗り始めて10分後くらいだった。゛それに゛気付いたのは。 わたしのお尻に、サワサワと何か違和感があった。 ……これってもしかして。―――え、痴漢? その予感は、的中した。 だけどこんな満員の電車の中で、声も出せる訳もなくて……。 できることならいっそのこと、今すぐその手を掴んで「この人、痴漢です!」って口にしたい。 だけど、こんな状況で、口に出来る訳がない。 そう思った時だった。「ゔっ……!?」「すみませ。この人、痴漢です!」「……えっ?」 急にその手が離れて、違和感が無くなった。 振り返って後ろを見ると……。 痴漢していたおじさんの右手を掴んでいたのは、背の高いスラッと人だった。 ……わっ、イケメン。  そして駅に着いた途端、彼はおじさんの手を掴んだまま電車から引きずり降ろして、駅員さんに引き渡した。……た、助かった。 本当に怖かったし、声が出せないって辛いんだなと、改めて思ってしまった。  こういう時、ちゃんと言える人だったら良かったのにって……思ってしまった。  わたしも急いで電車を降りて、助けてくれたあの人の所へと走った。「あっ、あの……!」「ああ、大丈夫?」「は、はい!あの……助けてくださって、ありがとうございました」「いや、別に」 その人は本当にイケメンな人だった。……会社員さんかな?「本当に、なんてお礼をしたらいいか……!」「気にしないで。何もなくてよかったよ」その人は、優しく微笑んでそう言った。「あ、あの…」「ん?」「本当に、何かお礼させてもらえませんか?」「いいって。本当に気にしなくていいから」「えっ、でも…」 痴漢から助けてくれたのにお礼もしないなんて……礼儀正しくない気がする。「……どうしてもお礼したい?」「は、はいっ。このままだと、わたしが申し訳ないので……」「そう?」「は、はいっ……その、迷惑でなければ、ですけど……」 だってこんな
last updateLast Updated : 2025-01-25
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【大人な彼と一夜だけの関係】

「……あ、あのっ……」「ん?」「……ほ、本気、ですか?」「本気だよ。 だって、それが俺が望んだ゙お礼゙だからね」「……で、すよね」 なんでこうなっているんだろう……。お礼をしたいと言ったら、なぜかその日の夜、ラブホテルに来てしまっていた。 彼が放った言葉は、わたしの身体でお礼をしろってことだった。 まさかとは、思ったけど、やっぱり……。 あの時は通学途中だったため、夜また駅で待ち合わせをしようと言われた。 連絡先の書いた名刺を渡され、その番号に終わったら連絡してと言われて、現在(いま)に至る。 今いるのは、ラブホテルの一室。 ちょっと高級そうなラブホテルで、少しゴージャスな感じの雰囲気だった。「……お酒は飲める?」「えっ、お酒、ですか?」「うん。飲める?」「は、はい。飲め、ますけど……」「じゃあとりあえず、俺たちの出会いに乾杯しようか」「えっ……。あっ、はい……」 シャンパンの入ったグラスを渡され、お互いにグラスを合わせて乾杯した。「ん、美味しい……」 このシャンパン、今まで飲んだ中で一番美味しい。口当たりが爽やかというか、飲みやすい……。「よかった。気に入ってくれたみたいだね」「は、はい……」 なんていうか、ちょっと緊張する。 こんなオシャレな部屋でシャンパンを飲むなんて、今までしたこともなかったし。 大人な雰囲気に、なんとなく慣れなくて、ちょっと緊張する。「……大丈夫?」「へっ!? あ、だ、大丈夫です……」 なんかわたし、挙動不審……?「もしかして、緊張してる?」「……あ、はい。少しだけ」「大丈夫だよ。リラックスして」「そんなこと、言われても……」 こんな大人な方と一緒に過ごすなんて、初めてだから、緊張しちゃうよ……。「そういうとこ、可愛いね」「……え?」 そして彼の大きな左手は、わたしの頬にそっと触れた。 ―――ドキッ! なぜだか分からないけど、すごくドキドキしてるのが自分でも分かる。 こんなにもドキドキするなんて、初めてで……。 思わず、顔を背けたくなる。 優しく撫でられた頬が、真っ赤になるのがわかって、熱を持つのもわかる。 ……ど、どうしよう。 なんかもう、目を反らせない……。「……そんなに可愛い顔されると、もう我慢出来ないんだけど」「えっ……?」 そう思った時にはもう、わたしは
last updateLast Updated : 2025-01-25
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【発覚した妊娠】

―――それは、それからしばらくした時のことだった。 夏もそろそろ終わりを迎えて、季節が移り変わろうとしていた時のことだった。 いつもより体調が優れなくて、頭痛や微熱などが続いた。 ただの風邪かと思ったけど、季節の変わり目ということもあり、大学終わりに念の為病院に行った。 そしたらそこで、衝撃的なことを言われるのだった。「麻生実来さん、診察室へどうぞ」「はい」 診察室へ入るなり、問診票を見て、先生が一言言った。「麻生さん、あなた……生理はきてる?」「えっ? 生理……?」 そう言われると……。 あれ、しばらく生理……来てない。 もともと不順な方ではあったから、また遅れているだけかと思っていた。「……いえ、そういえば、来てないです」 でもどうして、そんなことを聞くのだろうか……。「それはいつからかわかる?」「えっと……多分、この時くらいから、ですけど……」 カレンダーを指差して、一言そう言った。「ちょっと、調べたいことがあるんだけど、いいかしら?」「……調べたいこと、ですか?」 わたし、もしかしてどこか悪いの……?「―――麻生さん、あなたもしかして、妊娠してるんじゃない?」「……え?」 妊娠……? 最初、先生が何を言っているのか分からなかった。「生理がしばらく止まってる。しかも妊娠の症状というのは、風邪に似ていることが多いから、風邪だと勘違いする人もけっこう多いのよ」「……わたしが、妊娠?」 まさか、あの夜の日じゃ……ないよね? でも最近エッチをしたのは……あの人しかいない。 そんな……。「その様子じゃ、身に覚えがあるみたいね」 わたしはその言葉に何も、言えなくなった。 あの日からは彼のことを忘れてたつもりだけど、心のどっかでは、忘れられてなかった。「……さ、調べてみましょう。ここに横になってくれる?」「あ、はい……」 言われたとおり、ベッドへと横になった。  ―――すると。「……ほら、見える?あなたの、お腹の子よ」「……これが、赤ちゃん?」 かすかだけど、お腹の中に見えた、小さな命。   やっぱりわたし、妊娠していたんだ……。先生の言うとおりだった。「妊娠ニヶ月ってところかな」「……ニヶ月」 わたしは、お腹に新しい命を宿していた。 その子は、あの日結ばれた、名前も知らない大人な彼との間に出来
last updateLast Updated : 2025-01-25
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【二度目の再会】

「おはようミク」「おはよう、彩花(あやか)」「あれ、どうしたの?」「えっ?」「なんか、顔色悪くない?具合でも悪い?」 それから何日かして、大学で親友の彩花と一緒になった。  だけど、変化ってすぐに気が付くもので……。「だ、大丈夫。何でもないよ」「……なんかあった、でしょ?」「な、なんで……?」「実来のことは、なんでも分かちゃうよ」「……ま、参りました」「で、何があったの?」 わたしは観念して、昼休みに彩花に全てを話すことにした。 彩花は昼休み、黙ってわたしの話を聞いてくれた。そして一言、こう言った。「……実来はもう一度、その人に。お腹の子の父親に、会いたいんだ?」「……うん」 あれから何日も考えていたけど、やっぱり、わたしは彼のことが忘れられなかった……。 もう、出会ったあの時からわたしは、彼に恋をしているんだとその時気付いた。 会いたい。もう一度、彼に会いたい。 だけど、会うのが怖い。 会って妊娠していると告げた時、彼がどんな反応をするのか想像しただけで、体がビクビクする。「ねえ、実来」   「……ん?」「わたしは、ちゃんと話すべきだと思うよ」「……でも、少し怖い」 どうしても不安と怖さが勝ってしまう。「それでも、逃げちゃダメだよ。これは……実来だけの問題じゃないんだよ? 実来のこれからのためにも、ちゃんと話すべきだと思う」「……でも、わたし、どうすれば?」「素直に言うんだよ。自分の気持ちを」「……自分の、気持ち」そうだ。言わなきゃ……。だってわたしは、彼のことが好き。 彼にもう一度会って、ちゃんと今の気持ちを話したい。「……わたしもう一度、連絡してみる」「うん。頑張って。応援、してる」「ありがとう……」「大丈夫。妊娠のことは誰にも言うつもりないから、安心して」「……ありがとう、彩花」 彩花が親友で本当によかった。 誰にも言うつもりなかったけど、彩花だけにはやっぱり話せる。……話してよかった。  その日わたしは、講義が午後までだったので、思いっきって彼に連絡してみることにした。 カバンの中から取り出す、あの時もらった彼の名刺……。 スマホを取り出して、また番号を打つ。 そしてゆっくりと、発信ボタンを押した。 プルルルル……プルルルル……。 何回かのコールの後、「はい」という声が聞
last updateLast Updated : 2025-02-06
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【年の差恋愛のはじまり】

 その後、森嶋さんがお会計をしてくれた。 わたしも払うと言ったけど、奢らせてと言われてしまい、それ以上何も言えなくなった。  そして駅の近くにある公園で、ふたり腰掛けて座った。「……実来ちゃん」「はい……?」 わたしは森嶋さんの方へ振り返る。「俺との子、産んでくれないかな」「……え?」 それは、予想外の言葉だった。 産んでほしいと言われるとは、思ってなかった。 なんで、産んでほしいなんて……。「……勘違いしないでくれ。責任を取りたいから産んでほしいと言ってるんじゃない。 本気で、本気で、そう言ってるんだ」「……でも、わたし……」 わたしは怖くなって俯く。「聞いてくれ。 俺が今一番守りたいのは、実来ちゃん、君なんだ」 わたしは森嶋さんに「……それは、赤ちゃんが出来たから、ですか?」と問いかける。「違う。そうじゃない」「……じゃあ、なんで……そんなこと……」 わたしは責任をとってほしいなんて思ってない。「―――君を好きなんだよ」「……えっ?」「君のことが……実来ちゃんのことが好きなんだ。 本気でそう思ってる」 そんなの、ウソだよ。だって大人は、ウソを付く。「……でも大人の人は、すぐにそうやってからかいますよね? そうやって甘い言葉で……んん……っ」 なのにわたしの言葉が遮られた。 でもそれを遮ったのは、言葉なんかじゃなくて、森嶋さんのその唇だった。「えっ……。森嶋、さん……?」「冗談なんかじゃない。本気で言ってるよ」 その瞳(め)が本気だと物語っていた。「……あ、あの、わたし……」 どうして、キスなんてするの……。どうして……。「俺は本気で、君のことを守りたいんだ。 君のお腹にいる子も、俺が守りたいんだ。……ダメか?」「……いや、あの……」 ダメかと言われても……。「君のお腹にいる子の父親は、俺だろ? だったら、俺はお腹の子の父親として、君たちを守る権利がある」「それは、その……」 確かに、そうかもしれないけど……。「そうだろ? それなのに実来ちゃん、君は何を躊躇っているんだ?」「何を……躊躇ってる?」「そうだ。俺は確かに35だよ。君は20歳くらいだろうから、15も年の差があるけど」 わたしは何も言えなくなってしまう。「だけど年の差なんて関係ないだろ?年の差があるなんてのは、今は普通のことだ。 
last updateLast Updated : 2025-02-07
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【あの夜のあの子〜森嶋目線〜】

 あの日の夜、あのベッドで過ごしたあの子はどうしているだろうか。   あの日から何故かあの子のことばかり、気になって仕方なかった。 だってあの子を抱いた時、初めて愛おしいという気持ちになった。 あんなにも誰かを、心の底から抱いたのは初めてだった。    あんなにも情熱的に求めてくる彼女を、俺は何度もあのベッドの上で抱いてしまった。 彼女とのセックスは情熱的で、そして快感を覚えるほどに気持ちいいものだった。 彼女の中で俺がどういう存在になったかはわからないが、少なくとも俺にとっては、とても忘れられない存在だった。 彼女の口から漏れる甘い声に俺の理性は崩壊して、何度も抱いてしまった。……きっと俺自身もセックスが久しぶりだったというのもあって、舞い上がっていたのだろう。 だけど、ただひとつ失敗したのは……避妊をしなかったことだ。 そう、あまりにも欲望が出すぎてしまい、避妊していなかったのだ。 最初は避妊しようと思っていたのに彼女に触れた途端に、あまりにも欲望が深すぎてしまった。 本当にあれは、失敗だった……。 だけど彼女の温もりと体温が溶け合ううちに、それがもう心地よくなってしまって……。彼女がベッドの中で甘えた声を出しながら、俺との情事を受け入れていたから、俺も本気になってしまった。 彼女との情事は、本当に気持ち良くて俺も止められなかったのは事実だ。……いや、あれは本当にもう反省しかない。 俺ももういい大人なのにな……。失敗した。 そしてそれからしばらくして、彼女から久しぶりに連絡が来た。 その声ですぐに、彼女だと分かった。 麻生実来(あそうみくる)。彼女は電話越しに名前を教えてくれた。 実来(みくる)いい名前だ。 彼女にピッタリの名前だと思う。 でも彼女は、女子大生だ。年齢は多分二十歳くらい。 お酒を飲んでいたし、多分そうだろう。 俺は仕事に全うする三十五で、彼女は二十歳。……いや、どう見ても年の差がありすぎる。 下手したら、彼女に訴えられたりしないか……? そんな考えまでも、頭の中をよぎっていた。 そんなことを考えていても、仕方ないと分かっている。 だけど彼女から大事な話があると言われた時、俺は確信した。 ああ……きっと、俺を訴ると言うんだろうなって思い不安に狩られた。……だけど違った。 彼女と食事をしていた時、彼女から母子
last updateLast Updated : 2025-02-08
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【彼の想いと母の想い】

 わたしたちの年の差恋愛が始まってから約一ヶ月が経とうとしていたけど、森嶋さんは仕事が忙しいなかでも、必ず一日に数回連絡をくれた。 身体は大丈夫かとか、つわりは大丈夫かとか、とても心配している様子だった。 森嶋さんは今、とても仕事で大事な取引先との契約があるから、毎日遅くまで仕事をしているらしい。 それでも、しっかりと忘れずに連絡をくれる。 本当に森嶋さんは紳士的で、優しくて、気遣いが出来て、わたしにはもったいない人だ。 だけどお腹の子の父親として、精一杯のことをやろうと頑張ってくれている。 これからは、検診も一緒に行くと言ってくれた。 お腹の子の成長を一緒に見守りたいと、そう言ってくれた。……本当にありがたい。 交際を始めてから一ヶ月が経って、わたしは日々の中で森嶋さんのことをどんどん好きになっていた。 わたしの中ではもう、かけがえのない人になっていた。 それは、いないと困る人。 だからわたしは、森嶋さんのそばで、ずっと一緒に過ごしていきたいとさえ思った。 この先何が起こるのか分からない未来を想像するのは、悪くないし、楽しいと思える。  交際を始めたと同時に、まだ入籍はせずに、お互いを理解しあってから結婚したいと言ったのはわたしの方だけど……わたしはまだ、彼の半分も知れていない。 これからもっと、森嶋さんのたくさんのことを知りたい。 森嶋さんのすべてを知りたい。 これ以上、知れることがないってことくらいに、知っていきたい。 そしてわたしも、彼にすべてを知ってほしいと思う。「彩花、おはよう」「おはよう〜実来。体調、大丈夫?」「うん、平気だよ。ありがと」「あまりムリしないでよ〜介抱するの、わたしなんだからね」「分かってる」 親友である彩花には、全てを話した。 彩花も結婚しないんだ〜なんて言ってて驚いていたけど、なんだかんだ応援してくれている。 わたしのことを一番に応援してくれる、親友。彩花になら、なんでも話せる。 わたしがもし迷ったり、悩んだりしたら、彩花に一番に相談するって決めてる。  そもそも、まだ交際してから間もないし、デートなんてしてないし、彼は仕事が忙しい人だから。 なかなか会いたいなんて、言えない……。会いたいし、話をしたいけど、彼のために少し控えている。「で、森嶋さんから連絡きたの??」「うん。きたよ。体に
last updateLast Updated : 2025-03-13
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【紅葉デート】

 次の日わたしは、森嶋さんに連絡を取った。【あの、森嶋さん、今度母が森嶋さんに会いたいと言ってくれてるんですけど、会っていただけますか?】 スマホを見ると返事はすぐに来た。【本当に? もちろんだよ。ぜひ、挨拶させて欲しい】 よかった……会ってくれるみたい。【ありがとうございます。母も喜ぶと思います】【ところで実来、今日何してる?】【今日は特に何も……】【時間があるなら、会えないかな】【はい。ぜひ】 森嶋さんと会えるのか……。嬉しいな。【せっかくだから、紅葉を見に行かないか??】【紅葉?え、行きたいです】【じゃあ車で、実来の家まで迎えに行くよ。住所教えてくれるかな】【いいんですか?】【ああ、構わないよ。実来の体が心配だけど、大丈夫?】【行きたいです。連れてってください】 わたしはメッセージに住所を送った。 五分後、森嶋さんから【今から家を出る】と連絡が入った。 妊娠しているこの体で、とにかくつわりが心配だけど……でも、森嶋さんがせっかく誘ってくれたのだから、どこへでも行きたい。森嶋さんと一緒に。 30分後に着くと連絡が入ったので、わたしは急いで支度をした。 服は歩きやすいようにジーパンとスニーカーにした。 紅葉を見に行くとは言っていたけど、何かあると大変だから、スニーカーじゃないと。 絶対ヒールなんて履いたら、森嶋さんきっと怒るだろうし……。妊娠しているんだから、転んだら危ないだろ?とか言われそうだから、やめておこう。「お母さん、わたし出掛けてくるね」「あら、どこに行くの?」「ちょっと、紅葉を見に行ってくる」 お母さんはわたしを心配してくれて「それはいいけど……。体、大丈夫なの?」と聞いてくる。「うん。つわりもそんなにないから、大丈夫」「そう。 気をつけるのよ、絶対にムリはしないこと。いいわね?」「うん、分かった。 行ってきます」「行ってらっしゃい」 肌寒くなった時のためにちょっと厚めの上着とカバンを持ち、家を出た。 家を出るとクラクションが鳴り、森嶋さんが来たんだとすぐにわかった。「森嶋さん!」「実来、会いたかったよ」「わたしも、会いたかったです。……待ちくたびれて、しまいました」「すまない。 さ、隣乗って」「はい。よろしくお願いします」 森嶋さん、相変わらずカッコイイな……。いつ見てもカッコイ
last updateLast Updated : 2025-03-13
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【紅葉デート〜森嶋目線〜】

【森嶋さん目線】「実来、寒くないか?」「はい。大丈夫です」 実来と久しぶりにデートというか、紅葉を見に行こうとデートに誘った。   実来はとても嬉しそうで、終始笑顔が耐えなかった。 実来の笑顔は、俺を幸せな気持ちにしてくれる。 実来はつい可愛いことばかりする。 おっちょこちょいというか……なんとも可愛らしいというか。 そういう実来の良さが、俺は好きなんだと思う。 こういう自然体で接してくれる女の子のほうが、俺にはあってるのかもしれない。 今まで何人かと交際はしてきたし、それなりに恋愛はしてきたつもりだ。  デートだって色んなところに行ったし、セックスだってそれなりに経験してきた。 もちろん、結婚を考えた人もいたけど、結局すれ違って別れた。 その後は仕事が忙しくなり恋愛をする暇もなくなって今に至る。  気が付けば昇進して、恋愛どころではなくなっていた。   まさかこの歳になって20歳の大学生と一夜を共にして妊娠させてしまうとは……と思ったが、これも何かの縁だと思う。 実来と出会わなければ、俺は今何をしていただろうか……。きっとせかせかと仕事をしていただろうな。 そんな中でも、こんなに愛おしいと思う人に出会ったのは、初めてだった。 実来、俺は実来のことを本気で愛している。 でもそれは、子供が出来たからじゃない。 たぶん初めて会ったあの時から、俺はきっと実来のトリコになっていたのかもしれない。……知らぬ間に、体だけじゃなく、心まで支配されていたのかもしれない。 隅々まで、俺はきっと実来のことで埋め尽くされていたんだな、きっと。 実来、俺の愛おしい人。なくてはならない存在。 実来がいるから、今の俺がある。 実来がいてくれるから、俺は実来のため、お腹の子のため、何事も頑張れる。「……森嶋さん?」「ん?どうしたんだ?」「あの……写真、撮りたいです」 実来が写真を撮りたいと言うので「写真?撮ってやろうか?」と聞き返すと、実来は照れたように「あ、あの……その、そうじゃなくて……」と口にする。「なんだ?」「森嶋さんと一緒に、写真が撮りたいんです」「……えっ?」 俺と写真を……?「や、やっぱり……ダメ、ですか?」 実来……それは反則だ。 可愛すぎる。「……いや、いいよ。撮ろう」「えっ、本当ですか?」「ああ、せっかくだ。一緒
last updateLast Updated : 2025-03-13
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【挨拶とバームクーヘン】

 紅葉デートをしたあの日から早くもニ週間が経った。 そして日曜日。 今日は、京介さんがわたしの家に挨拶に来る日だ。 もう緊張して緊張して、仕方ない。 お母さんも京介さんに会えるのをとても楽しみにしているのだ。 京介さん、まだかな……。 そしてピロンと、わたしのスマホに連絡が入った。【もうすぐ着く】「お母さん、京介さん、もうすぐ着くってよ」「あら、そう?じゃあお茶淹れる準備するわね」「うん」 京介さんが挨拶に来るって分かっているから、なんだかとても緊張する〜。 どうしよう……。 わたし不安だけど、だけどね。 京介さんが隣りに居てくれるって思うだけで、心がなんだか落ち着く気がした。 京介さんの魔法って、不思議……。【着いたよ】【今行きます】 わたしは京介さんを迎えに玄関を出た。「……えっ?」 その姿を見て、とてもときめいてしまった。「すまない。遅くなった」「い、い!時間通りなので、大丈夫です」 京介さんのスーツ姿、初めて見たけど、とてもカッコいい……!しかも今日は、メガネ……! メガネ姿、本当にステキ。 ギャップ萌えというか……なんというか。「実来……?」「あ、す、すいません。 どうぞ、中へ入ってください」「ああ、お邪魔します」「どうぞ。お母さん、京介さんが来たよ〜」「はーい」 お母さんはリビングから出てきて、京介さんを迎え入れてくれた。「京介さん、どうぞ。 そこに座って」「ありがとうございます。では、失礼致します」 京介さんはお母さんに「あ、これ、よかったら皆さんで食べてください」と紙袋を手渡す。「あら〜ありがとう。 しかもこれ、並ばないと買えないバームクーヘンのお店のじゃない!?」「えっ!そうなの!?」 もしかして京介さん、並んだってこと!?「そうなんですか?たまたま買えたので、知らなかったです」「そうなの? 嬉しいわぁ。では、みんなで食べましょうか。美味しい紅茶があるから、すぐ淹れるわね」「あ、じゃあわたしも手伝う」「いいわよ。実来は座ってなさい」「そう? ありがとう」 お母さんはキッチンへと向かっていく。「よかった。喜んでもらえたみたいで」「京介さん、流行りのお店のお菓子を持ってくるなんて、さすがですね」 わたしがそう言うと京介さんは「そうかな? 普通だと思うけど」とさらっと答える
last updateLast Updated : 2025-03-14
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