All Chapters of エリートな彼と年の差恋愛婚〜恋した彼は15歳年上の旦那様です〜: Chapter 11 - Chapter 20

42 Chapters

【京介さんと検診】

 それからしばらくが経ち、わたしは無事に安定期に入った。「お母さん、検診、行ってくるね」「今日は森嶋さんが着いてきてくれるんだっけ?」「うん。京介さんと検診は、初めてだからちょっと、緊張するけど……」「大丈夫よ。行ってらっしゃい」「うん。行ってきます」 検診に行く日、京介さんが迎えに来てくれた。 平日だったから、京介さんもお仕事があるから、ムリをしなくても大丈夫だと言ったのだけど。 午前中に半休を取るから大丈夫だと言ってくれて、着いてきてくれる。 本当に優しくて、思いやりがある京介さん。「実来」「京介さん」「遅くなってすまない。乗って」「はい。よろしくお願いします」 京介さんの運転で、そのまま病院へと向かった。「なんか俺、初めての検診だから、ちょっと緊張するな」「それはわたしもですよ? 毎回毎回、検診に行くたびにとても緊張します。赤ちゃんに何かあったらどうしようって、いつも思いますし」「そうだよな。母親は大変だな。何もしてやれないのが申し訳無いくらいだよ」「そんなことありません。そばにいてくれるだけで、わたしは十分ですから」「ありがとう。……そうだ、実来」「はい。何でしょうか?」「今度実来を、俺の両親にも紹介したいんだ。あと兄貴と妹にも」「えっ? 紹介、してくださるんですか?」「当たり前だろ。実来は俺の婚約者なんだから」 婚約者……。なんか嬉しい響きだ。「ありがとうございます。嬉しいです」「俺の両親も、実来に会いたがってるし」「嬉しいです。 でもわたし、大丈夫ですかね……」 なんだか心配になってしまう。「なにがだ?」「わたしみたいな彼女というか……。わたしみたいなのが婚約者として、認めていただけるのかどうか、不安です」「大丈夫だよ。きっと認めてくれるはずさ。 心配するな」「はい……」 京介さんはそう言ってくれるけど、だけど不安になる。 だってわたしはまだ20歳で、彼の両親からしたら、わたしなんてまだ子供だ。 こんなわたしを婚約者として認めてくれるのかどうか、不安になるのは当たり前かもしれない。「実来、ここを左に曲がるんだっけ?」「そうです」 ウィンカーを出して左に曲がる京介さん。 その横顔はとてもハンサムでカッコよくて、わたしにとっては現実だと思えないくらい夢心地のような出来事なのだ。 駐
last updateLast Updated : 2025-03-14
Read more

【俺の大切な人〜森嶋目線〜】

「課長、こちらチェックお願いします」 部下から確認してほしい書類のチェックをお願いされたら、今度は「課長、すいません。こっちもお願いします!」とまた別の部下からひっきりなしに呼ばれていく。「ちょっと待て。順番に行く。 書類ならそこに置いておいてくれ」「はい」 俺は仕事上、課長という立場にいる。部下を束ねる課長というのは、本当に難しい役職だ。 俺が今の会社に入社したのはちょうど20歳くらいの時だ。 ちょうど実来と同じ年齢の時だった。 最初は右も左も分からない俺に色々と教えてくれたのは、当時課長だった俺の上司だ。 その課長という役職を、30歳を過ぎてから俺が担うことになり、今に至る。課長になって早五年、俺は何時の間にか35歳になった。 課長という立場になって分かったのは、人を束ねるって、チームをまとめるって、とても大変なことだっていうことだ。 でも今は、俺は実来という大切な人が出来て、守りたいものが出来た。 いや、守らないといけない人が二人も出来てしまった。 だから俺は、どんなことがあっても二人のために頑張っていかないとならない。 実来とお腹の子を生涯守ると誓ったのだから、死ぬ気で頑張るしかない。「課長、この後の会議なんですが……。先方の都合で明日に変更してほしいそうです」「そうか、分かった。報告してくれてありがとう。変更の件、先方に連絡しておいてくれ」「はい。分かりました。では失礼致します」 この歳になって守りたいものが出来たとはいえ、なかなかうまく行かないことのほうが多い。 実来に会いたいと思う気持ちもあるのに、仕事が忙しくて会うことも出来ない。俺が時間を作らないとならないのに、それが出来ない、 実来に寂しい思いをさせているのはわかっているし、本当に申し訳ないと思ってる。 だけど実来は、そんなことを口にはしない。 本当は、寂しいと思ってるに違いない。……きっと実来に我慢させてるのだろうな、俺は。「課長、お茶どうぞ」「ああ、ありがとう」 お茶を淹れてくれた部下は、俺のことを気にしているのか「大丈夫ですか? 課長、何かあったんですか?」と聞いてくれる。「……いや、別になんでもない」 しかし、そんなことを気にかけているのは嬉しいけど、今は仕事に集中しないと……。「そうですか?……そういえば、課長は今お付き合いされてる人がいる
last updateLast Updated : 2025-03-14
Read more

【ご両親との対面】

「おい!実来、こっちだ」「京介さん!すみません、お待たせしてしまって」 慌てて京介さんの元へと走った。「実来、危ないから走らなくてもいい。転んだら危ないだろ?」「す、すみません。遅れてしまったので……」「気にするな。時間までは後五分もあるし、急ぐ必要はないよ」「ありがとうございます、京介さん」 わたしは京介さんに微笑む。「ああ、それより今日は、こんな場所で申し訳ない」「いえ。大丈夫です」 今日は京介さんのご両親に合う日だ。 とても緊張してしまい、今から心臓がバクバクだ。 服を選ぶのに手間どってしまって、家を出るのが少し遅くなってしまった。  「実来、緊張してるのか?」「そりゃそうですよ……!」 こんな大事な日に緊張しない訳がない。「そんなに緊張することはないよ。うちの両親は結構フレンドリーだから、話しやすいと思うよ」「ええ?そんなこと言われても……。緊張してしまいますよ。会うの初めてですし」「そっか、大丈夫だよ。 さ、行こうか」「は、はい」「それより、ブーツなんて履いてきて大丈夫なのか? 妊娠中なんだから、ブーツじゃなくてもよかったのに」「いえ。でもせっかくご両親に会うので……。少しでもキレイに見せたくて」「何言ってる。そんなことをしなくても、実来は充分キレイだよ」「そ、そうですか? ありがとうございます……」 京介さんがかけてくれる言葉は全部が優しくて、本当に心に刺さる。 京介さんだからこそ、本当に嬉しく思うんだ。 ありがとう、京介さん。「さ、実来、ドアを開けるよ」「は、はいっ」 待ち合わせ時間の十五時ちょうど。 ドアの向こうで待っている京介さんのご両親と、ついに対面する時がきた。 京介さんはドアをノックしてから、静かにドアを開けた。「父さん、母さん、入るよ」「どうぞ〜」「し、失礼します……」 やばい。緊張が止まらない……。どうしよう……。「京介、待ってたわよ〜」「母さん、紹介するよ。 今交際してる彼女だ」「は、初めまして。麻生実来と申します! よ、よ、よろしくお願いしますっ……!」 やだ〜噛んじゃった……! は、恥ずかしい!「あなたが実来さんね? 初めまして。京介の母の小百合(さゆり)です。よろしくお願いしますね」「こ、こちらこそ……よろしくお願い致します!」 お母様はわたしを「京
last updateLast Updated : 2025-03-15
Read more

【幸せな夜】

 その日の夜、わたしは京介さんの部屋にいた。京介さんの部屋に遊びにこないかと言われて、二つ返事をした。「お、お邪魔、します……」「どうぞ、入って」 ブーツを脱ぎ、恐る恐る部屋の中へと入った。 京介さんの部屋の中はとても整理整頓されて、本当にキレイな状態だった。 何よりも、必要な物以外は何もなかったので、スッキリして見えた。「適当に座ってて。今ルイボスティー淹れるよ」「は、はい。ありがとうございます」「ルイボスティーはカフェインが入ってないみたいだから、妊婦さんにいいと友人から聞いたんだ」「そうだったんですね」 京介さん、ちゃんと調べてくれてるんだ。 嬉しいな、本当に。 ありがとう、京介さん。「はい。お待たせ実来」「ありがとうございます。あっつ……」「熱いから気をつけて」「はい。すみません」 まだ湯気が出ていて熱いルイボスティーを、フーフーしながら飲んだ。「ん、美味しいです」「そう。良かった」「なんか、少し心が落ち着きました」 ルイボスティーを飲んで少し心が落ち着いたのか、ちょっとだけ気持ちが楽になった気がした。「良かった。かなり緊張してるみたいだったから、少し楽になればいいなと思ってさ」「ありがとうございます。なんだか、気を遣わせてしまってすみません」「いいんだよ。気にしないで」「京介さんがいると、本当に安心感があって。……なんだかこのまま、京介さんとずっと一緒にいたい気分です」 そう話した時、京介さんは「俺もだよ、実来。俺も実来と、同じ気持ちだよ」と言ってくれた。「……はい」 京介さんはわたしの隣に来ると、優しく頬をなでて、その後髪の毛を撫でてくれた。「……愛してるよ、実来」 そのまま、キスをしてくれた。 それは、触れるだけの優しいキスだった。「……実来、今日はこのまま一緒にいないか、朝まで」「……え?」「今日は実来と、このまま一緒に朝まで過ごしたいんだ。……実来が、イヤでなければ」 わたしはそう言われてすぐに「イヤな訳がないです。イヤなんかじゃないです。……わたしも、京介さんと一緒に朝まで過ごしたいです」と伝えた。「嬉しいよ」 今度は啄むように何度もキスをくれた。 京介さんがしてくれるキスは本当に優しいのに、時々激しくて、息が出来なくなりそうだった。 わたしは、キスをしながらそのままソファに押
last updateLast Updated : 2025-03-15
Read more

【幸せな夜〜森嶋目線〜】

「実来……」「んっ、やっ……京介さん……」 実来の首筋に、ふっくらとした胸に静かにキスを落としていく。 実来に触れるたびに、感じているのに声を抑えようとする実来のその姿に、俺はますます理性が抑えられなくなりそうだった。 あの日の夜、実来を抱いた時と同じように、理性が狂いそうになっていた。 あの日の夜を思い出してしまいそうになる。「あっ……やぁ……っ……」「声、抑えないでもっと聞かせて。俺だけの実来なんだから」「京介さんっ……」 顔が真っ赤になっている実来を見て、もう限界だと思った。「……実来、早く実来が欲しい」 俺の理性が持ちそうにないとわかって、急かしてしまう。「京介さん……わたしも、京介さんが、欲しい……です」「じゃあ遠慮なく、実来の中に入るよ」 避妊具を身に纏った俺は、実来のその言葉を合図に、実来の中にゆっくりと入っていく。「んんっ……あっ」 実来の中に静かに入ると、実来は恥ずかしそうに俺の背中に手を回してきた。 その行動はもう、俺の理性を軽く飛ばしていく。「可愛い……実来。俺だけの実来……」「……ん、京介さ……っ」 実来の唇を啄むように奪っていくたびに実来から漏れる色っぽい声に、俺はさらに理性を抑えられそうになかった。「ずっとこうしたかった……実来……」 ようやくまた、実来と深く繋がることが出来た。 少し膨らんできた実来のお腹を見て、本当に子供がいるんだと実感した。 だけど俺は、あの日の以来ずっと、実来のことをずっと女として抱きたかった。酔った勢いでのセックスじゃなくて、実来との愛を確かめるために抱きたかった。「なるべく優しくするからな」 またこうして実来を抱ける日が来るのを、俺はどこかで待ち望んでいたんだ。「ダメ……お腹、出てます……から……。今、ぽっちゃりに、なってますからっ……」 そんな潤んだ俺を見つめる実来に、俺の理性はさらに飛びそうになる。  可愛すぎて、もう二度と離したくない。「大丈夫だよ。気にならないから。 実来は本当にキレイだよ」 実来をこうして腕の中でやっと抱けるというのに、こんなにも嬉しいことはない。「んんっ……京介さんっ」 実来のその潤んだ瞳(ひとみ)で見つめる俺を見て、さらに俺の理性は限界を超えそうだった。  実来の中を優しくゆっくりと深く動いていくと、実来は「京介さん
last updateLast Updated : 2025-03-15
Read more

【新居探し】

「……実来、新居を探さないか?」「え、新居……ですか?」 妊娠して7ヶ月に入った所で、京介さんから新居へ引っ越そうという提案があった。「ああ。俺たちが住む新居だよ。見ての通り、この家では結構狭いし。 子供が産まれるんだから、そうなると大きくなった時のために、子供部屋なども必要だろ? だから今よりも、もっと大きな部屋に引っ越そう」「……はい。そうですね」 そう言われると、わたしの部屋も狭いし子供のことを考えると、もっと立地のいい所へ越したほうが子供のためにもいいかもしれない。 産まれてくる子には、のびのびとすくすくと育ってほしいから。 引っ越そうという提案には、わたしも賛成だ。「……よし、今度、新居を探しに行こう」「はい」 新居探しか……。いよいよな感じがしてドキドキする。「俺も土日なら休みだし。今度の土日に、新居でも探しに行こうか」「はい」 七ヶ月にもなってくると前よりもだんだんとお腹が大きくなってきて、動くのが大変なくらいになってきた。 立ち上がるだけでも大変になってきて、前よりも動きにくいと感じた。「どうせなら、駅の近くにあるタワーマンションでもいいかとは思ってるんだけどね。あそこなら立地もいいし、駅から家まで徒歩圏内だし」「えっ、タワーマンション!?」 いや、タワーマンションなんて無理だよお……! 絶対に高いっ!「しかも部屋も結構広いだろうから、子供も健やかに育てられそうだしね」「えっ、でも……タワーマンションって家賃が結構高いですよね……?」「なに、お金の心配ならしなくてもいい。貯金ならたくさんあるし。……まあ、まだそこにするかは見てから決めるけどね」「そ、そうですね」 大学生であるわたしには、タワーマンションの家賃なんて到底、払えるわけがない。それにまだ大学の学費も残っているし。 お母さんに払ってもらっている身分だから、どうしようって感じ。 大学は結局、お母さんと話をして時期を見て辞めることにした。 復帰したいと思うし、また通いたい気持ちもあったけれど。 子供を抱えたまま大学に行くっていうのは、なかなか難しいと思うから。 しかも妊娠中とはいえ、わたしはまだ社会人でもない。 ただの学生で、しかもまだ籍を入れてないから未婚のままで。 この先どうやって生きていくかなんて、考えられない。 京介さんがもし隣にいなかっ
last updateLast Updated : 2025-03-16
Read more

【たった一つの特別な太陽】

「実来?」「はい?」「大丈夫か? 寒くないか?」「はい。大丈夫です」   「そうか。ついでだし、カフェで温かい物でも、飲んで帰ろうか」「はい」 物件が決まった後は、少しカフェでお茶をした。  わたしは身体を冷やさないように、温かい黒豆茶にした。 黒豆の香りと風味が口いっぱいに広がって、とてもおいしかった。 京介さんは温かいホットコーヒーを飲んでいた。「な、実来」「はい?なんですか?」「こうやって新居も決まったことだし。……そろそろ、結婚しないか」「……え?」 突然の話だった。 だけどわたしは、見つめられたその京介さんの目から、目を逸らすことが出来なかった。 答えに迷っていると、京介さんは「いや、しないか……じゃないな。俺と結婚しよう」と言った。 それは京介さんからもらったちゃんとした【プロポーズ】だった。「……はい。わたしも京介さんと、あなたと、結婚したいです。 これから先の人生、京介さんと共に生きていきたいです。……わたしはあなたと、家族になりたいです。ぜひわたしを家族にしてください」 わたしの気持ちなんて変わる訳がない。 ずっとこうして京介さんとの時間を過ごしてきたのに、しない訳がないよ。「ああ、共に生きていこう。家族になろう」「……はい」 京介さんが握ってくれた手はとても温かくて、優しくて。そして安らぎがあった。 この手を取って、わたしは生きていきたい。 一人ではムリかもしれないけど……だけどね、二人でなら、必ずどんな試練も乗り越えて行けると信じてるんだ。 京介さんがわたしを信じてくれているように、わたしも京介さんのことを信じていきたい。 家族になりたい。本気でそう思える、たった一人の人だから。 そんな最高な人に、わたしは出会ったんだから。「……お茶、冷めちゃったかな。新しいの頼もうか」「いえ、大丈夫です。ちょうどいいですから」「そうか?」「はい」 こうやっていろんな所まで気を遣ってくれるのが、京介さんの優しい所で、わたしが大好きな所でもある。 35歳だからそれなりに大人かもしれないけど、わたしにはそれすら、最近は心地よく感じる。 わたしたちだからこそ、二人だからこそ、作れる関係なんだと思う。「京介さん、ごちそうさまでした」 「気にしないで」 お茶を飲んだ後、カフェの近くにあった公園を二人で手を繋
last updateLast Updated : 2025-03-16
Read more

【愛おしい存在】

 そして新居が見つかってから早一週間が経過した。今日は月に一度の検診の日だ。 そして京介さんは今日も、検診に一緒に着いてきてくれる。 お仕事があるからいいと言ったのに、心配だからと言って、聞いてくれはくれずまた午前中に半休を取ってくれた。 7ヶ月も経つとさすがに動きにくくなり、重い体がさらに重く感じて、なんだか歩きにくいと感じてきた。「お母さん、検診、行ってきます」「そう。気を付けるのよ」「うん。行ってきます」 京介さんは時間通りに迎えに来てくれた。「実来、お待たせ」「いえ。よろしくお願いします」「さ、乗って。出掛けよう」「はい」 京介さんの運転する車に乗り込み、病院へと車を走らせた。その間、わたしはずっとお腹に手を当てていた。「……実来、大丈夫か?」「え……?」「いや、ずっとお腹に手を置いてるから」 やだ、心配させちゃったかな……。「あっ……その、赤ちゃんがちゃんと動いてるから、嬉しくて……」「……そっか。ちゃんと元気に成長してるみたいで、良かったよ」「はい。……早く会いたいです。わたしたちの子に」「そうだな」 こうして動いているのを実感すると、わたしも母親なんだと感じる。「はい。……赤ちゃんが産まれるって、とても偉大なことなんだなって、本当に思います」「そうだな。早く会いたいな」「はい」 この子に会える日を、とても楽しみにしているのはわたしだけじゃなかった。京介さんも、とても楽しみにしてくれている。 そのことがとても嬉しくて、もう本当に微笑みが止まらなかった。……今日の検診、楽しみだな。 病院に着くと受付を済ませ、名前を呼ばれるのを待った。  「……実来、お腹触ってもいいか?」「はい」 服の上から、わたしの大きくなったお腹に優しく手を当てた。「……本当に、動いてるな」「はい。だって赤ちゃんが、いますからね」「そうだったな」「はい」   その時看護師さんから「麻生実来さーん。一番の診察室へどうぞ」と声をかけられた。「はい。……京介さんも、一緒に行きましょう?」「え……俺も?」「はい。よかったら、一緒に赤ちゃんの顔を見ましょう」 わたしがそう話すと、京介さんは緊張しながら「……じゃあ、行こうかな」と言葉を口にした。「はい」 京介さんも一緒に、診察室へ入った。「麻生さん、元気だった?……
last updateLast Updated : 2025-03-16
Read more

【俺はこの手を決して離さない〜森嶋目線〜】

「課長、これチェックお願いします」「ああ。後でチェックするから、そこに置いといてくれ」「はい。分かりました」「課長、外線一番、風倉(かざくら)様からです。お願いします」  「わかった。……お電話代わりました。森嶋です」 俺は忙しない中、取引き先との電話対応に追われていた。「そうですか、ありがとうございます。 ぜひこちらこそ、よろしくお願いします」 良かった、契約成立だ。 粘った甲斐があった。「はい。では、失礼致します」「失礼致します」 俺は電話を切った。「課長、こちら明日の会議の打ち合わせ内容です。確認をお願い出来ますか?」「わかった。そこに置いといてくれ。 後で確認するよ」「お願いします」 次から次へと仕事が増えてきてもうてんやわんやしてしまう日々が続くが、実来という存在のおかげで今の俺はバリバリ働けている気がする。「課長、彼女さん、今妊娠七ヶ月なんでしたっけ?」 昼休み、部下から何気なくそう聞かれたので、俺は「ああ、そうだよ。間もなく八ヶ月になるかな」と答えた。「え、もうそんなになるんですね〜」「ああ。本当にあっという間だよ」 実来の妊娠がわかってから、本当にあっという間すぎた。 初めて出会ってから間もなく一年くらいになるけど、もう一年という気がするし、まだ一年という気もする。 一日一日時間が過ぎていくのが本当に早くて、一秒でも早く実来に会いたいと思ってしまう。「そういえば新居にはまだ引っ越してないんですか?」「まだだよ。入居が三月からなんだよ」「え、そうなんですか?」 俺も早く新居に入りたいが、もう少し先の話になりそうだ。そもそも、まだ内見も出来ていないしな。「ああ、何せ新築だからな。しかもマンションだ」「えっ、新築でマンションですか!?」「ああ。しかも駅近でショッピングモールに隣接だし、実来も行きやすくていいかなって思ってな。駅降りたらもうショッピングモールになってるらしい」「ええー。それはすごいですね」 俺たちの新居である前に、家族三人で住む家だ。防犯対策もしっかりとしていかないと、子供も不安になるだろうし。やはりあのマンションで正解だ。 車も自転車もいらない最高立地のエリアだ。「防犯面もしっかりしてるし、スーパーも近いから何かと便利なところだよ」「へえ……。でもマンションって、家賃高くないで
last updateLast Updated : 2025-03-17
Read more

【イルミネーションデート】

 そして迎えた土曜日。今日は京介さんと一緒にイルミネーションを見に行く日だ。  冬を迎え、冬らしく寒さが厳しくなってきた頃に始まったイルミネーションだった。 妊娠八ヶ月のわたしは、大きなお腹になってきて、洋服のサイズが変わり、マタニティ用の洋服になった。  たた寒さが厳しい中で出かけるので、温かいインナーにセーターを何枚も重ね着して、寒さ対策をした。 大きなお腹を抱えて歩くのはなかなか大変で、だけどそんな中でも妊婦生活をなんとか楽しみたい。  出掛けられる限り、思い出を作りたくて、時間が合えば京介さんと共に出掛けている。 京介さんはわたしのことをとても心配してくれているし、お腹を冷やさないようにといつも車の中では少し大きめのひざ掛けをかけてくれる。「……あ、動いてる」 出掛けようと立ち上がった時、赤ちゃんが激しく動くのが分かった。「うふふ」 動いているのがとても嬉しくて、きっと赤ちゃんも、出掛けるのが楽しみなんだと思う。 だって赤ちゃん、きっと今お腹の中で楽しいことがあるってわかってるのかも? そう思うわたしって、もしかして親バカ……? でも自分たちの子供は可愛いに決まってる。「実来、お待たせ」「京介さん、お待ちしてました。今日も、とても寒いですね」「さ、寒いだろ。乗って」「よろしくお願いします。……あ、温かいです」「温めておいたよ。実来のために」「ありがとうございます。嬉しいです」「さ、行こうか。イルミネーションスポットへ」「はい」 車に乗り込み、イルミネーションデートへと出かけた。「寒くないか?寒ければ言ってくれ。暖房強くするよ」「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」「お腹の子が冷えたら大変だ。ちゃんと毛布、かけないとダメだぞ?」「はい。すみません」「赤ちゃん、動いてるか?!」「はい。元気いっぱいです」 「そっか。早く産まれてほしいな」「はい。わたしもそう思います」「イルミネーション、楽しみだな。二人で見るのは、初めてだもんな」「はい。とても楽しみです。連れて行ってくれて、ありがとうございます」「お礼なんていい。俺も実来と一緒にイルミネーション見れて、本当に嬉しいよ」 車を走らせてから約40分ほどで、目的地のイルミネーションスポットについた。「車、結構いっぱいですね……止めるところ、あり
last updateLast Updated : 2025-03-17
Read more
PREV
12345
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status