「よいっしょ……」 妊娠八ヶ月を過ぎてきて、だんだんと重くなってきたこの身体。歩くのさえ、以前よりも少し困難な感じがしてきた。 そしてもう12月も半月を過ぎて、年末年始に差し掛かろうとしていた。「お母さん、今年のクリスマスはケーキどうする?」 わたしがそう聞くと「ケーキならもう予約してあるわよ」と言われた。「そうなの?」「ええ。……実来、今年のクリスマスは、森嶋さんも家に呼んでクリスマスパーティでもしましょうか」「えっ、本当に?」 京介さんも一緒にいいの?「ええ。だって実来の旦那さんになる人だもの。みんなで楽しくパーティーしましょう」「やった!嬉しい。……あ、赤ちゃんも喜んでるみたいだ。動いてるよ、元気に」「そう?赤ちゃんもパパに会えて嬉しいのね、きっと」「早速、京介さんに連絡して聞いてくるね」「ええ」 わたしは一度の部屋に戻り、京介さんに電話をかけた。「もしもし、実来? どうした?」「あ、すいません京介さん。今忙しい……ですか?」「いや、今はお昼休みだから大丈夫だけど……どうした?何かあったのか?」 わたしは電話越しに「えっと、京介さんは……今年のクリスマスって、空いてますか?」と聞いてみる。「クリスマス?……ああ、日曜日だから仕事は休みだよ」「本当ですか?」 良かった……。誘っても大丈夫かな?「あの……もしよければ、家でクリスマスパーティーをするんですけど、京介さんも一緒にやらないかって、お母さんが」「本当に? 俺がいても大丈夫?」「はい。お母さんも、ぜひ来てほしいって言ってて」 わたしがそう話したら、京介さんは「……そうか。ならせっかくだし、お邪魔させてもらおうかな」と言ってくれた。「はい!ぜひ来てください。 美味しいケーキも用意しますので」「あはは。ケーキ食べたいのは実来だろ?」 そう言われてしまい「あ、バレてしまいましたね」と笑った。「実来のことならなんでも分かるよ」「……参りました」「あはは。実来は本当に可愛いな」 「ありがとうございます。……あ、そうだ。今日は、赤ちゃんがすごく動くんです」 今日は一段と元気でよく蹴っている気がする。「そうなのか」「はい。きっと赤ちゃんは、パパに早く会いたいんだと思います」「そっか。それは楽しみだな」「はい。赤ちゃんよく動いてるので、きっとこの
「本当ですか? 頑張ってよかった〜」「実来、すごいな。ありがとう」「いえ。わたしがやりたかっただけなので」「そっかそっか」 良かった。京介さんも楽しそう。「森嶋さん、立ってるのもなんですから、どうぞ座ってください」「あ、すいません。ありがとうございます」「すぐ料理の準備しますね。 実来、手伝ってくれる?」「うん。分かった。 京介さんは座って待っててください」「ああ、ありがとう」 お母さんの手作りのパエリアや、ローストチキン、唐揚げなどをテーブルに運んだ。「うわ、すごいな。これ全部、実来のお母さんが作ったのか?」「そうですよ。 うちのお母さんは、毎年クリスマスは必ず手作りのチキンとパエリアを作ってくれるんです」 お母さんのパエリア、とても美味しいから京介さんにもたくさん食べてほしい。「すごい。本格的だな」「はい。すっごく美味しいですよ」 わたしの言葉に京介さんは「それは楽しみだな」と微笑んでいる。「今スプーンとフォーク持ってきますね」「ああ、ありがとう」 スプーンやフォーク、お皿などを持ってテーブルに並べる。「実来、大丈夫か?お腹キツくないか?」「大丈夫ですよ。少しは動かないといけませんし」「あまりムリはするなよ?ケガでもしたら大変だから」「はい。気を付けます」 もう、京介さんってば、こんな時にも心配性なんだから……。でも心配してくれるのは嬉しいから、素直に受け取っておこう。「さ、お待たせ。食べましょうか」 テーブルに並べられた豪華な料理たち見てワクワクする。 みんなで食べるからこそ、もっと美味しくなると思う。「ではいただきましょうか」「うん。いただきます」「じゃあ俺も……いただきます」 京介さんは揚げたての唐揚げにお箸を伸ばしていく。「いっぱい作ったから、いっぱい食べてね」「ありがとうございます。……うん、この唐揚げめちゃくちゃ美味いです。 生姜、結構効いてる感じしますね」「あら、分かるの?」「俺、唐揚げが昔から大好きなんですよ。こういう生姜が効いてるヤツが特に好きで」 京介さんの好きな食べ物は唐揚げだということは、つい最近わたしも知った。 わたしも唐揚げは大好きだから、嬉しい。お母さんの唐揚げは最高なんだ。「あら、そうなの? それはよかったわぁ」「ほんとに美味いです。味付けもちょ
「京介さん、お待たせしました」「全然大丈夫」「ありがとうございます。 さ、行きましょうか」「そうだな」 気が付けば、今年も今日で終わろうとしている。今日は十二月三十一日だ。 もう年末になり、早いもので今年が終わってしまう。 今日は年末のデートに京介さんと一緒にベビー用品を買いに来た。 もうすぐ産まれてくる我が子のために、今から出来ることをしっかりとやっていきたいと思う。 京介さんも出来ることをサポートしたいと言ってくれているので、とても心強い。「今日は、いつも行く所よりももっと大きい大型のショッピングモールに行こうか」「いいですね」 京介さんは車のナビに住所を入れて検索して、ナビを立ち上げてから車を走らせた。 予定ではここから一時間弱くらいで到着する予定だ。「さ、久しぶりの遠出だ。楽しいドライブにしよう」「はい。楽しみです」 赤ちゃんも結構動くので、かなり楽しみみたいだ。「赤ちゃん、今日すごく動いてます」「そっか、動いてるか。家族でドライブがきっと楽しいんだな」「そうだと思います」 わたしはこの子の母親だ。この子のためなら、なんだって出来る。 自分の子を守るのは、わたしたちのパパとママの役目だから。……ね、赤ちゃん?「実来、着いたぞ」「はい」 一時間ほどかけてショッピングモールに到着した。やっぱり土曜日ということもあり、車が結構混み合っていた。「結構混んでますね」「そうだな。まずは中に入って順番に見ていくか」「はい。そうしましょう」 ベビー用品だってかなりたくさん売っていると思うけど、まずは館内をぐるっと見てから選びたい。「今ここは……現在地はここか」「ですね」「まずはここのお店から行こうか」「はい」 わたしたちは館内マップを眺めてから歩き出す。「実来、手を繋ごうか」「え?」 わたしは京介さんを見上げる。「今日はデートなんだ。デートといえば手を繋ぐ、だろ?」「……はい」 京介さんの大きな右手が、わたしの左手を優しく包み込むように握りしめてくれた。「京介さんの手、温かいですね」「そうか?」「はい。とても温かいです」 でも京介さんとこうやって並んで歩くと思うのは、わたしたちって本当に釣り合っているのかなって、そう思ってしまう。 だけど京介さんの隣を歩くのは、わたしだけだと言ってくれた。
そして年が明けた一月一日の元旦、新しい年を迎えた。 今日からまた新しい一年が始まる。「お母さん、明けましておめでとう」「明けましておめでとう、実来」「今年もよろしくね」「こちらこそ、よろしくね」「うん」 日に日に大きくなるお腹を抱えて歩くのはとても大変だし、何よりも出産が近くなってきて、前よりも赤ちゃんの動く鼓動を感じるようになってきた。 わたしはより一層、赤ちゃんの母親として頑張らないという気持ちが出てきた。もちろん出産はもう少し先になるけど、元気に生まれてきてくれることだけを考えていこう。「実来、今年は初詣行く?」 お母さんにそう聞かれたので「初詣かぁ……行こうかな。赤ちゃんのために安産祈願もしたいから」と答えた。「じゃあ明日、一緒に初詣行こっか」「うん。行く」 お母さんは心配なのか、わたしに「ただ、人も多くて大変だろうから、歩く時気を付けるのよ。 階段も多いし、ぶつかったり転んだりしないようにね」と言われた。「うん、気を付けるよ」「大丈夫よ、お母さんがそばにいるから」「うん、ありがとう」 お母さんがどんな時もそばにいてくれるなら、安心だ。「今日はお雑煮でも食べる?」「うん。食べる」「食べすぎないようにね、また先生から言われちゃうから」「うん、気を付ける」 やっぱりお正月といえばお雑煮だよね。 お母さんの作るお雑煮、美味しいんだよね。「じゃあ、お雑煮の準備するわね。出来たら呼ぶから、部屋でゆっくりしてなさい」「いいよ、わたしも手伝う」「大丈夫よ。部屋で休んでなさい」 お母さんはわたしのことが本当に心配みたいなので、わたしは「……分かった。ありがとうお母さん」と微笑んだ。「気を付けてね、階段」「分かってるよ〜」 もうお母さん、本当に心配性なんだから……。 部屋に戻りテレビを付けると、すごく流行っていて話題になっていたドラマの再放送がやっていた。「あ、これずっと見たかったヤツだ」 まさか年明けにこのドラマの再放送やってるなんて思わなかった。 有名な女優さんが検死をする解剖医の役で出ているドラマだった。 視聴率もかなり良くて、ドラマの主題歌がまた話題になった。……そういえばこの人、昨日の歌番組に出てた人だな。 主題歌歌ってたの、このアーティストだったんだ。歌声がかなりいい。 わたしはドラマの再放送
【実来、誕生日おめでとう!今年も素敵な一年にしてね! 後、元気な赤ちゃんを産んでね。出産報告待ってるからね】 三が日が終わった一月五日、今日はわたしの21歳の誕生日だ。 もう、21歳になったんだと思うと、なんだか20歳が終わらないで欲しいなって一瞬だけ思った。 全然実感なんて、ないけれど。 だけど誕生日が来てわたしは一つ大人になって、そして母親という最も重要な役割が待っている。 去年の今日、今年がまさか大きなお腹に赤ちゃんがいる妊婦になっているなんて、誰が想像しただろう。 赤ちゃんがもう少しで産まれるけど、わたしにとって子供は21になって出来る大切な人、大切な宝物。 愛する人とひょんな形で出会い、赤ちゃんが出来て、今こうしてわたし幸せな誕生日を迎えることが出来て良かった。【ありがとう彩花!お祝い嬉しい! また彩花に会いたいよ〜。また遊ぼうね!】 彩花にそう返信して、ようやく寒さで抜け出せなかったベッドから脱け出す。 うひゃあ……寒い〜。寒すぎてしんどい……。「おはよう、実来。朝ごはん出来てるわよ」「おはよう、お母さん。ありがとう」 部屋を出ると、更に寒さが増してリビングに行くまでがかなりキツイ感じがした。 そしてゆっくりとリビングへ降りて扉を開けると……。「……えっ? 京介さん?」「お誕生日おめでとう、実来」 なぜかそこに、花束を持った京介さんがいた。「京介さん、なんでここに……?」 どうして京介さんがここにいるの……?「実来、誕生日おめでとう」「え? あ、ありがとうございます」 京介さんはにこやかな笑顔で、わたしに花束を渡してくれた。「驚いた?」「は、はいっ。でもどうして、京介さんがここにいるんですか? 今日来るなんて、全然言ってなかったですよね……?」 それだけが本当に疑問で仕方ない。「サプライズしたくてね。お母さんに頼んで、内緒にしてもらっていたんだ」「ええ〜そうだったの、お母さん?」「そうよ。実来を喜ばせたいから、内緒にしといてくれって言われてね」 サプライズしたいからって……本当にロマンチストだな。 嬉しいけど、ビックリした。「そう。だから今日は、サプライズでお祝いしたくて」「……嬉しいです。ありがとうございます」 朝からこんなにも嬉しいサプライズが待っているなんて思ってなかったから、
これ以上ないってくらい、幸せになってみせるからね、わたし。 不釣り合いでもいい。京介さんの妻として相応しくないのは、わたしだってよくわかっているし、支えて行ける自信なんてまるでない。「あの、京介さん……」「ん?」「わたしをあなたの妻にくれて、ありがとう」 だけどこんな小さな出会いから、小さな命まで授かることが出来て、そしてこうしてまた巡り合うことが出来たのは……本当に奇跡だと思う。 わたしなんかが妻になるなんて、世間からしたら常識知らずと言われることだって、もしかしたらきっとあるかもしれないけど……そんな覚悟なら、もうとっくに出来ている。「こちらこそ。 俺の妻になってくれると言ってくれて、ありがとう」 でも何があってもわたしは、京介さんのそばから離れたりしないし、ずっとそばで京介さんのことを支えてみせる。 誰に何を言われようとも、わたしは京介さんの妻であり、わたしたちは家族になるんだ。 家族の絆は、そう簡単に壊れたりなんかしないんだから。 わたしたちは、これから最高の夫婦になっていくんだ。 どんな時も支え合っていけるような、そんな夫婦になると決めた。「京介さん……わたしたち、最高の家族になりましょうね。 どんな家庭にも負けないくらい、最高の家族になりましょう」 わたしがそう話すと、京介さんは「……そうだな。二人で共に手を取り合って、頑張っていこうな」と微笑んでくれた。「はい。よろしくお願いします」「こちらこそ、よろしくな」 その後わたしは、京介さんと一緒に役所へ行って、婚姻届を提出した。「おめでとうございます」 婚姻届は無事に受理されて、わたしたちはついに恋人から夫婦へと変わった。 左手の薬指にキラキラと光る結婚指輪を眺めながら、わたしは嬉しい気持ちでいっぱいだった。「本当に、夫婦になったん……ですよね」「そうだ。俺たちは今日から夫婦だ」「夫婦になった感覚、あんまりないです」 本当にこれで、わたしたちは結婚したんだな……。婚姻届を出しても、そんな実感が全くなくて。 だけど今までにないくらいすごく幸せな気持ちになっているのは、確かだった。「まあ、それは俺もだけど」「ふふふ」 わたしは本当に、京介さんと結婚したんだよね。「これからもよろしくね、実来」「こちらこそ、よろしくお願いします」 わたしは今日から、京介
それから時が過ぎて、早いことに入籍してからもう一ヶ月が経とうとしていた。 新しい新居にはまだ住むことが出来ないけれど、内装が完成したと連絡が入り、今日は旦那と一緒に内装の見学をすることになった。「実来、中はどんなだろうな」「確かに。とても楽しみだね」「そうだな。俺たちの新しい新居だ。そこが、俺たちの新しい家だ」 わたしたちの新居、入るの楽しみだな。「うん。なんか、少しドキドキするね」「そうだな」「どうしよ。楽しみなのに、すごくドキドキしちゃう」 新築の家に住むなんて初めてだから、とてもドキドキする。「さっき不動産屋で鍵をもらってきたから、これで中に入れるぞ」「カードキーなんだよね」「そうだ。これをドアのセンサーにかざすと、中に入れるらしい。 鍵じゃないと変な感じだけどな」「確かに」 玄関にカードキーをかざすと、赤色から緑色に変わって、ロックが解除された。「……空いたの?」「空いたな」 ドアを開けると、中に入ってみる。「うわっ……すごい! キレイ!」 中はとても広くてキレイで、なおかつ白を基調とした明るい感じの部屋だった。 見取り図よりも遥かに現実の方がいい。思ったよりすごく素敵な部屋だ。 なんだか感動してしまう。「すごくキレイだな。外の景色の眺めもいいし」「本当だ。とてもキレイだね」 部屋中から見える景色もとても素敵で、景色は最高だ。「来月からはこの部屋にみんなで住めるんだもんね。楽しみだね」「さすが新築だな。俺の予想を遥かに超えてきたよ」 わたしは窓の外を眺めながら「本当にこんな部屋に住めるなんて……夢みたいだな」と京介を見る。「これからは、ここが俺たち家族の家だ」「……うん。三人で暮らす家になるんだもんね」「そうだ。この家で、産まれて来る子供をのびのびと育てていこう」 京介の言葉にわたしは微笑んで「うん」と頷いた。「京介、キッチン見て! 広くない!?」「本当だな。このキッチンなら、実来も楽しく料理出来そうだな」 ここがキッチン? キッチンもすごく広い。しかもIH搭載で、魚が焼けるグリルも完備してある。 しかも食洗機まで備え付けだなんて、すごく太っ腹すぎる。 新築なのに、ここまでしてくれるって……すごいな。 「うん。シンクも広いし、いいキッチンだね」 赤ちゃんだってきっと、喜んでるに違い
「課長、改めて、ご結婚おめでとうございま〜す!」「ありがとう、みんな」「では、課長の結婚を祝って〜」「「「「かんぱーい!!!!」」」」 俺はビールの入ったジョッキを、社員たちと交わした。 今日は会社の社員たちと飲み会をしようと誘われた。 久しぶりの社員たちの飲み会なのだが、結婚祝いまで用意してくれて、本当にいい後輩たちを持ったなーと思った。 いい社員たちに、俺は本当に恵まれている。「課長、これ、わたしたちから課長と奥様に結婚祝いのプレゼントです」「え、いいのか? 悪いな」 飲み会の日、部下から結婚祝いというものをもらった。「ぜひ受け取ってください。奥様にも喜んでもらえるといいんですけど……」「嬉しいよ。妻もきっと喜ぶよ」「よかったです。 よかったら、開けてみてください」「ありがとう。じゃあ、早速開けさせてもらうよ」「はい!」 結婚祝いだと渡されたその紙袋の中には、ペアのグラスとペアの茶碗が入っていた。 しかもそのグラスには、俺たちの名前のイニシャルが刻印されていた。「うわ、すごいな。イニシャル入ってるのか? 凝ってるな」「奥様と色違いのお茶碗ですよ。夫婦仲良く使ってください」「ありがとう。嬉しいよ。これは妻も喜ぶよ」 色違いの茶碗とペアのグラスは嬉しいな。二人で使うことにする。「よかったです。本当にご結婚、おめでとうございます」「ありがとう。ようやくって感じだけどな」 35歳で結婚か。まさかこの歳で結婚するなんて思ってはなかったが……。「でも、奥様はとても可愛らしい方ですよね? 本当に素敵な方ですよね」「ありがとう。……まあ妻はまだ21だし、年の差もあるけど、結婚出来てよかったとは思ってるよ」 本当に妻が実来で良かったとつくづく思う。「課長みたいな一途な男性に愛されてる奥様、羨ましいですね」「そうか……?」 俺の方が実来に愛されていると感じる瞬間は、多々ある気がする。「そうですよ。 わたしにも早く現れてほしいです、運命の人」「そのうちきっと、いい相手が現れるさ。上原の元にも」「ありがとうございます。素敵な旦那様が現れることを期待して待ってます」「ははは。いい報告、期待してるよ」「出来るように頑張りまーす」 部下の上原も結婚には憧れがあるようで、素敵な人と出会えることを祈っている
「木葉ー、準備出来た?」「うん! まま、できたっ!」「よし、じゃあ保育園行こっか」 木葉が産まれてから、早くも三年が経った。あんなに小さかった木葉も、今でも言葉も話せるようになり、日々子供の成長というのを実感している。 木葉も保育園ではお友達も出来たみたいで、今は保育園に行くのが楽しいみたいだ。 毎日保育園に行くことをとても楽しみにしている。 母としてはそれはとても嬉しいことで、木葉にお友達が出来ることもそうだし、毎日少しずつ出来ることが増えていくことも親としてはやっぱり嬉しい。 京介とも日々そんな話をしているのだけど、京介は木葉のことが本当に好きみたいで、毎日仕事から帰ると木葉の元へ歩み寄っている。「出発進行!」「おー!」 木葉を自転車の後ろに乗せ、保育園まで送り届けている私の毎日の日課は、ここから始まる。 京介のが家を出るのが早いので、私は毎日木葉を保育園まで送ってから家のことをやっている。「よしよし、起きしちゃったか〜」 木葉が産まれてから一年後には、第二子である女の子を出産し【うらら】と名づけた。 ひらがなでうららが可愛いなって言うのと、産まれたのが春ということもあり、うららと名づけたのだけど、木葉もうららのことに興味があるみたいだ。 ちゃんとお兄ちゃんをしてくれるか心配ではあるけど、きっと木葉なら大丈夫だろうと思う。 京介も家族が増えることを喜んでくれていたので、うららが産まれた時も泣いて喜んでくれた。「うらら、ミルク飲もうか」 うららにミルクを飲ませるためにソファに座る。「飲んでる飲んでる」 うららがミルクを飲んでる姿もとても可愛くて、ついうっとりしてしまう。「うらら、もうお腹いっぱいかな?」 ミルクを飲み終えたうららの背中を優しく叩きゲップを出す。「よく出来ましたね、うらら」 二人目は女の子なのが何よりわたしは嬉しい。 うららが産まれてからは、我が家はもっと楽しくなったし、もっと素
✱ ✱ ✱「京介、ご飯出来たよ」 「ああ、ありがとう実来」「うん。温かいうちに、食べよう」「ああ、そうだな」「「いただきます」」 新しい新居に住み始めてから、およそ半年が経ったけど、わたしたちは仲良く子育てにバタバタしながら過ごしている。 わたしたちの子供は二人で名前を決めて、【木葉(このは)】と命名した。 植物の生命力のように力強く成長してほしいと願って、木葉と名付けた。 木葉はとても元気で、よく笑う子で、笑った顔がとても可愛い子だ。 自分たちの子がこんなにも可愛くて愛おしいだなんて、産まれてからもっと気づいた。 木葉はパパが大好きで、結構京介に懐いてる感じがする。 本当に可愛くて、愛おしい木葉。 二人で木葉を育てていくのってとても大変だし、分からないことばかりで戸惑うことばかりだ。 それでも毎日が幸せで、わたしも京介も、毎日笑顔が耐えない。 木葉を見ているだけで癒やされて、そして木葉と一緒にパパとママとして成長している。 それってわたしたちにとって、とても特別なことであり、かけがえのないものであることに間違いはない。「木葉にも、ミルクあげないとね」「そうだな。俺がやろうか?」「ううん、大丈夫。わたしがやるから」「そうか? じゃあ俺は食器を洗うよ」 京介はわたしが木葉に付きっきりになっていると、食器洗いやお風呂掃除などを率先してやってくれるから、わたしも助かっている。「ありがとう、京介。助かる」「気にしなくていいって」 木葉にミルクをあげながら「京介って、明日も朝早いんだよね?」と問いかけると、京介は「ああ。明日は朝一で会議がある」と答える。「分かった。 じゃあ明日はお弁当、用意しておくね」「ああ、ありがとう」「卵焼きは、いつもの甘くないヤツでいいよね?」「ああ」 京介と一緒に住み始めてから、京介のために毎日お弁当を作るようになったわたし。 愛妻弁当という訳ではないけど、京介は仕事大変で毎日遅くまで頑張ってくれているから、栄養のバランスを考えて作るようにしている。 卵焼きはいつも甘くないヤツで、お出汁を使った出汁巻き卵にしている。 甘いのがあまり好きじゃないみたいだから、飽きないように工夫をしているつもりではあるけれど、それでも毎日美味しいって食べてくれるから、
京介の言葉を借りるなら、わたしも京介の喜ぶ顔がもっと見たいし、京介のいろんな顔をこれからも見たいと思ってる。「これからもどうぞ、よろしくな。 父親として未塾な俺だけど、子育て一緒に頑張ろうな」「うん。こちらこそ、よろしくね」 京介とこうして過ごす日々は、これからもっと愛おしくなる。そんな日々を毎日、きっと宝物になる。「俺、実来に頼りっぱなしになってしまうかもしれないけど、俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ」「うん、ありがとう」「俺は実来のことをずっと支えていきたいし、ずっとそばで守っていきたい。もちろん、子供のことも守っていくよ。……俺たちは、三人で家族だからな」 そう、わたしたちは家族だ。 これから家族として、みんなで明るい未来を作っていくと約束したんだ。 京介、これからもわたしはあなたの妻でいたい。妻として、母親として、しっかり頑張るからね。「わたしも京介のそばで、ずっと支えていきたいと思ってるよ。……この子と三人で、幸せな家族になろうね」「……ああ」 こうしてわたしたちの、新たな家族としての生活がスタートした。 夫婦であり、子供の親でもあるわたしたちだけど。今日からはこの新しい新居で、新しい場所で、家族として生活していくんだ。 どんな困難なことでも、どんなに大変なことでも、夫婦二人なら乗り越えていけそうな気がした。 わたしたちは数ある人たちの中から出会って、結婚して、子供が出来て……。この特別な出会いに、本当に感謝している。 この出会いがまさにほんの一瞬だったとしても、出会うべくして出会った二人なんじゃないかって、勝手に思っている。 京介も同じ気持ちなら、嬉しいな。 わたし、毎日が本当に幸せで、今が一番幸せでよかったと思ってる。 その気持ちはこれからだって変わらないし、変わることなんてない。 京介とだから、こんなにも幸せなんだと思っている。「……ねえ、京介」「ん?」「わたしと出会ってくれて、ありがとう。わたしと結婚してくれて、ありがとう。 わたしを愛してくれて、ありがとう。 わたしと家族になってくれて、ありがとう」「……実来」「京介と出会って、わたしはいつも楽しいことばかりだよ。……これからもきっと、楽しいの予感しかしないよ」「……本当だな。 家族が一人増えたし、楽しいことたくさんしていこう。思い出を作
「先生、ありがとうございました」「何かあったら、また来てくださいね」 「はい。ありがとうございます」「では、お大事に」「お世話になりました」 出産を終えてから数日後、わたしと赤ちゃんは無事に退院することが出来た。 赤ちゃんも健康で何事もなかったから、本当によかった。「さ、帰ろうか。新しい我が家へ」「うん。帰ろう。新しい我が家へ」 赤ちゃんと一緒に後ろのシート乗り込むと、京介の運転で新しい新居へと帰った。 楽しみだな、新しい新居での暮らしがこれから始まっていく。 赤ちゃんが産まれて、これから新しい生活が始まるんだな……。ワクワクもするし、ドキドキもするし、でも不安もあるけれど。 だからこそ、この一瞬の瞬間や時間を、家族三人で共有していきたいと思う。 子供を初めてチャイルドシートに乗せた時、なんだかとても緊張してドキドキした。 産まれて間もない子供だけれど、わたしたちの大切な宝物だ。 大切な大切な、家族と言う名の存在。 これからしっかりと、この子を自分たちの手で育てていきたい。 こうして産まれてきてくれた、わたしたちの宝物に感謝したい。「さ、出発しようか」「うん。お願いします、パパ」「パパか。……そうだよな、俺はパパなんだよな」「うん。そうだよパパ」 子供にとって、父親は京介一人だけだ。 わたしにとって京介は旦那さんで、そして大切な家族だ。 とても愛おしい存在なんだ。「なんかまだ、パパって呼ばれるの慣れないな」「そのうち慣れるよ」 これからの三人での生活は、きっとドタバタ続きで大変だろうけど、なんとか頑張っていこう。 新米ママと、新米パパとしてね。 赤ちゃんにとって、わたしたちは親なのだから。 そして車を走らせること四五分ほどで、わたしたちの新しい新居に到着した。 わたしはしばらく入院していたこともあり、実際の中はまだ写真などでしか見ていなかったから、どんな風になっているのか、とても楽しみだった。 ここで暮らせるなんて、なんだかまだ夢のようだけど……。 チャイルドシートから子供を降ろして、抱っこして家の中へと向かう。 階段もあるけど、エレベーターで行けるのでスイスイだ。 しかも子供がいる家庭にとっては、こういうのは便利すぎてすごい。 良く出来てるなって感じがする。 さすが新築マンションだな。 セキュリ
もうダメ……。本当に痛くて、子宮が取れそうな感覚になってしまう。 なぜか一緒に涙も出てきてしまったし。「森嶋さーん、赤ちゃんの頭がまだ出てきてないから、指示出したらその通りにやってみてくれるかな」「は、はいっ……」 赤ちゃんの頭もまだ出て来てないの!? こんなに痛いのに……。わたし、こんな弱気で頑張れるのかな……。「森嶋さん、息を吸ってから吐いてみてくれる?」「は、はいっ」 言われた通りに、息を吸って吐いてを何回かやってみた。「OK、いいよ。 森嶋さん、次いきんでくから息を吐きながらいきんでみてくれるかな」「えっ、はっ、いたたっ……!」 いたたたた……! やばい、めちゃめちゃ痛いっ! 言われた通りにいきんでくと、力が入るからかなり子宮が圧迫されたような感じがして、とても痛かった。 もはやこれは我慢できないほどの痛みだった。 ああ、早く赤ちゃん出てきて……。痛みに一生懸命耐えながら、そんなことばかりを考えていた。「森嶋さん、もう一回いきんでー!」「はいいいっ……!」 思いっきり力を振り絞りながら、いきんでいく。「ふんんんっ……!!」 やばい、痛いし身体が限界を迎えそうだ。 おでこや身体全体に汗をたくさんかきながら、本当に必死だった。 途中からはもう、何だかもうよく分からなくて、ただただ赤ちゃんが出てきてくれることだけを祈っていた。「森嶋さん、まだいきまないでね〜」 「っ……はあ、はあ……っ」 もう苦しい……。無理かも……。「森嶋さん、赤ちゃんの頭が見えてきたよー! はーい、もう一回いきんでみて!」「ふんんんんっ……!!」 でも赤ちゃんの頭が見えてきたって言葉を聞いて、少しだけ嬉しくなった。 もう少しで、もうちょっとで赤ちゃんと会えるんだ……。「実来!頑張れー!!」 一生懸命いきんでいく中で、やっと京介の姿が見えたけど、不安そうな顔でこっちを見ていた。 でも……きっと大丈夫。京介が応援してくれてるし、ここで見守ってくれているんだから。 「森嶋さん、旦那さんが到着されましたよー! よかったですね!」「っ、は、はいっ……!」「実来、もう少しだ!頑張れっ!」「う、うんっ……!」 京介の声が聞こえてくる度に気持ちが高まるし、元気がもらえる。「森嶋さーん、赤ちゃんの頭出てきたよー!もう少しだから、この
「っ……いたたたっ……!」 え、なんかお腹痛い……! なにこれ! それから数日後、その日はお天気が良かったので外の中庭を歩いていた。 その時、急にお腹にドッと痛みを感じた。 あまりにも痛みが強くて、わたしはその場にしゃがみ込んでしまった。「森嶋さん、大丈夫ですかっ!?」 そこへ通りすがった先生がわたしの元へ駆け寄る。「お、お腹が、痛くてっ……!」 痛みでまともに話すことも出来ない。 きっとこれは、陣痛かもしれない。「森嶋さん、ちょっとお腹触りますね」 先生がわたしのお腹に触れると「森嶋さん、すぐに病室に移動しましょう。子宮口が少し開いてるかもしれません」とわたしに告げた。「先生、い、痛いです……!」「大丈夫ですよ、森嶋さん。一緒に頑張りましょうね」「は、はいっ……!」 それは今までに感じたことのないような痛みで、どうしようもなくて、思わず泣きそうになってしまった。 車イスを用意されて病室に移動すると、超音波検査などを行った。 そして先生は、子宮口を確認していく。「森嶋さん、子宮口がもうちょっとで開きそうだから、もう少しだけ我慢してね」「ううー……まだ、ですか?」「後もう少しだから、もうちょっとだけ待ちましょうね」 それからもう少しだけ、子宮口が開くのを痛みに耐えながら待っていた。「はぁ……はぁ……痛いよお」 先生まだかな……。 いつまで待てばいいのかは分からないけど、子宮口が開かないと赤ちゃんが出て来られないとのことだったので、陣痛を促す薬を投与してもらい、完全に開くまで待つことになった。 でも開くのもいつになるのかわからないので、途方に暮れそうだった。「せ、先生……?」 それからどのくらい経ったかは分からないけれど、痛みに耐えながら待っていたら、先生が来てくれたのでようやくかなと思った。「森嶋さん、子宮口確認するね」「は、はいっ……」 陣痛って、こんなにも痛いのか……。本当にすごく痛い。 生理痛の何倍も痛いから、何度も泣きそうになってしまった。 だけどここまで来たら後少しだから、と自分に言い聞かせた。「森嶋さん、良かったね!ようやく子宮口開いたよ。 よし、出産準備に入るからちょっと待っててね」「は、はいっ……!」 良かった……。ようやく開いたみたいで、産む準備に入れるそうだ。「森嶋さん、旦那さ
「おねえちゃんは、いつあかちゃんうまれるの〜?」 わたしのそぱに来た紗奈ちゃんという女の子は、わたしのお腹に目を向けている。「こら、紗奈!お姉ちゃんの邪魔しちゃダメでしょ?……すみません、うちの子が」 紗奈ちゃんのお母さんは、わたしの元へとゆっくり歩いてくる。「いえ。 紗奈ちゃん、お姉ちゃんもね、もう少しで赤ちゃんが産まれるんだよ」 「さなも、あかちゃんたのしみなんだぁ! おねえちゃんも、あかちゃんがんばってね〜」 紗奈ちゃんに応援してもらったおかげで、なんだか気持ちが明るくなった気がしたわたしは、紗奈ちゃんに「ありがとう、紗奈ちゃん」と紗奈ちゃんの頭を撫でた。「紗奈、こっちに来なさい! パパにジュース買ってもらいな」「うんっ!パパのとこいく〜」 紗奈ちゃんはパパのところへ行こうと走り出す。「こら!走っちゃダメよ、紗奈!」「パパ〜!」「紗奈! もう、紗奈ったら……。騒がしくて、すみません」「いえ。 可愛いですね、紗奈ちゃん。おいくつですか?」「四歳です。女の子なんですけど、とにかく活発で困るんですよ〜」「そうなんですか? でもすごく可愛いですよね」 紗奈ちゃんを見ていると子供ってやっぱりいいなって思う。 これがわたしの理想の家族像かもしれない。「ありがとうございます。 出産は初めて?」「はい。 なので、本当に不安だらけで……」「初めてはそうだよね。 うちももう三人目だけど、やっぱり毎回不安になりますよ」 そうなんだ……。三人目でも不安になるんだな。「三人目ですか? すごいですね。男の子ですか?女の子ですか?」「うちは全員、女の子なのよ。 男の子一人くらい欲しいかったんだけどね」「女の子だと、可愛いですよね。 可愛い服とか、いっぱい着させられそうですし……」 いつかは子供と一緒にリンクコーデみたいな感じにするのが、夢ではある。 そうなったらいいな。「でも女の子も女の子で、大変ですよ? 騒がしくて、言うこと聞かないのよ〜」「え、そうなんですね?」「でもやっぱり、子供は可愛いですよね。やんちゃで大変だけど、それでもやっぱり可愛いのよね〜」 そう言われたので、わたしも「だってすごく、幸せそうですもん」と思わず口にしてしまう。「そうですかね?」「はい。もう楽しそうな家族だっていうのが、目に見えて分かります」
「……ふうっ」 お腹がかなり大きくなっていたわたしは、立ち上がったりするのが大変で、産まれるまでようやく後少しという所まできた。 妊婦生活も臨月に差し掛かり、もういつ産まれてもおかしくない状況になっていた。 身体が重いし、歩くのも大変だ。 だけど、お腹の子が元気に動くのを感じて、早く産まれてきてほしいという思いが強くなっているのは、確かだった。 この子と、産まれてくる赤ちゃんに早く会いたいという気持ちが、以前よりも強くなっていき、早く対面したいと思ってる。 わたしが母親になって初めて気付いた、愛情という感情。 そして産まれてくる子に対する、この奇跡という名の宝物。 二人でたくさんその奇跡を共有したい。「もう少しだな、産まれるまで」「うん」 京介も優しく微笑みながら、元気に動くお腹の子を眺めている。「……実来」「ん?」「出産、頑張ろうな」 京介が何かと助けれてくれるから、わたしは頑張られる気がする。「うん、頑張るね」「本当に、実来のために何も出来ないのが申し訳ないくらいなんだけどな」「そんなことないよ。……不安な時に、こうやってそばにいてくれるだけで、それだけでわたしはもう安心するんだよ」 わたしがそう話したら、京介は「そうか……?」とわたしを見る。「うん。正直、今すごく不安だし。……だけど、京介がいてくれるだけで、その不安が少し和らぐからとても頼りになるよ??」「そっか。 ならよかった」「ありがとう、京介。 出産までもう少しだから、頑張るからね」「ああ、大丈夫だ。……俺がそばにいるからな」「……うん、ありがとう」 微笑むわたしに京介は優しく手を握ってくれて、寒いからとコートを掛けてくれる。「ありがとう、京介」「今日は一段と冷える。……身体に障るといけないから、中に入ろうか」「うん」 京介の家にはもうほとんど何もなくなっていた。 ベッドと冷蔵庫がぽつんと置いてあるだけで、とても殺風景になっていた。「……いよいよ明後日には、引越しだな。ここともお別れだ」「そうだね。なんだか、寂しくなるね」 もうここに来ることもなくなるのか……。と思うとなんだか寂しくなる気がする。「そうだな。 まあ今度は実来と子供と三人で暮らせるようになるし、楽しみもあるけどな」「うん、そうだね。 わたしたち、三人で暮らす新しい家だも
「お母さん、後少しだけど、よろしくね」 「はいはい。今のうちに存分、甘えておきなさい」「はーい。 じゃあお母さん、お腹空いたからご飯食べたい」「アンタって子は……よし。ご飯にしよっか。お箸持っててくれる?」「うん」 お箸をテーブルに並べて、お味噌汁の入ったお椀を並べた。 お母さんのご飯を食べられるのも、後少しなんだよね……。なんか、寂しくなるな。 恋しくなる、母の味。 わたしの母の味は、なんだろうな。 やっぱり肉じゃがと、甘い卵焼きかな。「さ、食べましょう」「「いただきます」」 お母さんと一緒に夕飯を食べるのも残り少なくなって、なんだかんだで寂しい気持ちになる。 お母さん、これから一人で寂しくないかな……?「ん、美味しい。これだよ、これ。やっぱりお母さんの肉じゃが、本当に美味しい」「ならよかった。アンタは昔から甘めが好きだもんね」「うん。お母さんの作る肉じゃが、お袋の味って感じだもん」「そっか。お袋の味か……」「うん。後ね、甘い卵焼きも」 お母さんの作る甘い卵焼きはとにかく大好き。高校の時のお弁当にも、毎日甘い卵焼きは入っていたし。 甘い卵焼きは大好きだから、食べるとほころぶ気がする。「卵焼きはいつもお砂糖たっぷり入れてるからね」「そう。その甘いヤツが極上に美味しいんだよね」「それはよかった。遊びに来たら、また作ってあげるわね」「やった。嬉しい〜。子供にも食べさせてあげたいな」「食べさせてあげなさい。 実来の料理が、いつかお袋の味になるようにね」 わたしのお袋の味か……。いつかそうなったらいいなって思う。「そうだね、頑張ろう。 料理もっと上手くなりたいから、お袋の味ってヤツを作ってみてもいいかもなあ」「頑張りなさい。母は強し、よ」「うん」 母は強し……か。 確かによくそれを聞く。 お母さんいわく、母になると精神的にも強くなるらしい。 さすがお母さん、尊敬する。「ねぇ、お母さん」「ん?」「肉じゃがとご飯、おかわりしていい?」「いいわよ。いっぱい食べるわね」「だって、美味しいんだもん」「食べすぎてあんまり太り過ぎないように、気を付けなさいよ」「うん。気を付ける」 その後はご飯をしっかりと食べた後に、お風呂に入った。 お風呂から上がると、京介からLINEが来ていた。【実来、ご飯食べたか?