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水沼早紀
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水沼早紀の小説

クールな副社長に一億円で愛されることになりました〜アップルパイに愛を込めて〜

クールな副社長に一億円で愛されることになりました〜アップルパイに愛を込めて〜

主人公はスイーツが大好きなヒロイン、由紀乃。ある日由紀乃は、冷凍食品を扱う会社【スリーデイズ】で副社長を務める天野川大翔と出会う。 大翔からスリーデイズが新たにスイーツ部門を立ち上げることを聞かされた由紀乃は、大翔からスイーツ部門の開発メンバーとして立ち上げに協力してほしいとお願いされる。 その報酬は一億円で、一億円で大翔と結婚してほしいとお願いされた由紀乃は、戸惑いながらも結婚することを決める。 大翔と夫婦になった由紀乃は、スリーデイズのスイーツ部門のメンバーとしてスイーツ開発に携わることになる。 スリーデイズが最初に開発するスイーツを決めることになった由紀乃たちだったが、意見を出し合う中、スイーツ開発にアップルパイが決定する。 由紀乃は母親が作るアップルパイが大好きだった。母親からレシピを聞き、アップルパイを再現していきながら開発を進めることになった由紀乃たちは、スリーデイズの看板メニューとしてアップルパイを売り出すために奮闘していくことになるのだが、アップルパイ開発は由紀乃にとっては前途多難で……。
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Chapter: 【婚姻届、提出しました。】
~挨拶✕初めてのキス~* * *「お母さん、お父さん、初めまして。 天野川大翔と申します」 婚姻届を提出する数日前、天野川さんはわたしの家へ来ていた。 わたしは未だに実家暮らしだったため、わたしの両親は、わたしがいきなり男を連れてきたことに驚いていた。「え、あ、天野川って……?」 お母さんは天野川さんを見ながら、あたふたとしていた。「失礼しました。 株式会社スリーデイズの副社長を務めております、天野川大翔と申します」「スリーデイズ……。って、ええっ!? あ、も、もしかして、あなた天野川秀人の……?」「はい。息子です」「えっ!? お、お母さんっ!?」 娘が連れてきた男が、まさかのあの有名企業の副社長だと知った瞬間、お母さんは驚きで気絶してしまいそうになった。 そんなお母さんを、天野川さんは「大丈夫ですか?お母さん」と支えていた。「え、えぇ……すみませんねぇ」「いえ、ケガがなくて良かったです」 天野川さんはお母さんにキラキラとした笑顔を向けていた。「さ、さぁ、天野川さん。こちらへどうぞ、大した家じゃないですが……」「ありがとうございます」 天野川大翔……すごい笑顔。キラキラとしている。「まさか天野川さんが、由紀乃の結婚相手だなんて、驚いたわよ。 あなた、結婚したい人がいる、としか言わなかったから……」 お茶を淹れながら、お母さんはそう言ってきた。  「ごめんね、お母さん」 お母さんはさぞかし驚くに決まっているだろうとは思っていたが、まさかそこまでとは思ってなかった。「しかし、イケメンねぇ?天野川さん。男性なのに美形よね」「……だよね」 イケメンだというとは、わたしも認める。思わず見惚れてしまいそうになる時があるから。「お待たせしました。大したものではないですが、どうぞ」  お母さんは天野川さんにいつもよりも丁寧な対応と言葉遣いをしていた。「ありがとうございます。お気遣いなく」 お母さん、めちゃくちゃ緊張してるな……。「あ、そうだ。僕からもお土産があるんです」「え? あ、わたしにも?」 お母さんは驚いたような表情をしていた。「はい、これは父親からなんですが……。よろしかったらどうぞ」「あら、すみません……。ありがとうございます」 天野川さんから紙袋を渡されたお母さんは、その中身を見て目を見開いた。 
最終更新日: 2025-01-26
Chapter: プロローグ
【プロローグ】〜副社長との出会い〜* * *「大変お待たせ致しました。 角切りりんごと紅茶クリームのパンケーキになります」「うわぁ……」 お、美味しそう……! そして何より、見た目が美しいっ! フワフワで厚みのある茶葉入りのパンケーキに、香り豊かな紅茶クリーム。そしてその周りを囲む、黄金色が輝く美しい角切りりんご。「美しいっ……」 これぞカフェのパンケーキ。 いや、もはやそれ以上かもしれない。 見た目のクオリティに関して言うと、パーフェクトすぎるくらいだ。 これは女子受け、間違いなしのスイーツだ。 わたしはすぐにカバンからスマホを取り出し、一番いい位置から写真を撮影し、それをInstagramにハッシュタグを付けて上げる。 これがわたしの休みの日のルーティンだ。休みの日はどこかのカフェに出向き、そのお店のオススメのスイーツを必ずチェックしている。 もちろん、新作のスイーツや期間限定のスイーツなどは外せないため、必ずチェックするようにしている。 こんなことをしているせいか、わたしには彼氏など出来ない。 今のわたしには、恋愛することよりもスイーツを食べる方が優先なのだ。「それでは……いただきます」 Instagramにあげた写真をチェックした後、ナイフとフォークを両手に持ち、出来たばかりのパンケーキに手を伸ばしていく。「うん、美味しいっ」 何これ、めちゃくちゃ美味しい。フワフワなのに軽い口どけのパンケーキに、甘さ控えめなのにしっかりと紅茶の風味を感じるクリームとの相性がバツグンすぎる。 何よりこの角切りされたりんごはシナモンが少し入っていて、口に入れた瞬間の爽やかなりんごの酸味とシナモンのフワッと香るほんのりとした香りが更に美味しさを引き立てている。 これは間違いなく、文句無しで美味しいスイーツだ。絶対に食べた方がいい。 くどくないし、クリームの口どけも滑らかなのに軽く食べられてしつこくないし。甘いものが苦手な人でも食べやすいように出来ている。「やばっ、止まらない……」  あまりにも美味しくて、ナイフとフォークが止まらなくなる。「ごちそうさまでした」 あまりにも美味しくて、あっという間にパンケーキを食べ終えたしまったわたし。「うん」 これは評価高いな、もう一度食べたくなる。 そしてお会計しようと席を立ったその時…
最終更新日: 2025-01-23
Chapter: 二度目の再会でまさかの……。
【え、これってプロポーズ……ですか?】* * *  それから一ヶ月が経った時のことだった。「いらっしゃいませ」「すいません、一人なんですけど……空いてますか?」「すみません、今ちょうど満席で……。テラス席でしたら空いていますが、どういたしますか?」「……じゃあ、テラス席でお願いします」 その日は三連休の中日ということもあり、お昼時のカフェは混んでいるのか、店内は満席状態であった。 テラス席なら空いてるとのことだったので、わたしはテラス席に座ることにした。 今日は気分転換にスイーツを食べながら、外で仕事をすることにしたのだった。「こちらの席にどうぞ」「ありがとうございます」    イスの下にあるカバン入れにカバンを入れ、ノートパソコンと資料を開く。「ご注文お決まりになりましたら、こちらのボタンでお呼びください」 「分かりました」   まずはメニューを開いてホットの紅茶を注文した。食べ物は後ででいいと思い、まずは資料に目を通していく。 「はあ、全然ダメだ……」 わたしはごく普通のOLだ。毎日上司から仕事を押し付けられ、毎日ため息ばかりついている。 そんな日々ばかりなのだ。「お待たせしました。ホット紅茶になります。ミルクと砂糖はお好みでどうぞ」「ありがとうございます」 まずは昨日終わらなかった分の作業を終わらせてしまおう。 そしてパソコンに入力作業をしていると、後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた気がした。「分かってる。俺だって見合いは避けたいさ」「大翔……」 ……大翔? いや、まさかね……。 でも今、お見合いって言ったよね……?「でも親父さん、お前に結婚しろって迫ってるんだろ?南條ゆずと」「ああ。……けどいくら言われても、俺はゆずとの結婚は出来ない」 そんな会話が、後ろの方から聞こえてくる。「南條、ゆず……?」 え、南條ゆず……!? 南條ゆずって、あの南條ゆず……!? 世界的に有名なピアニストの、南條ゆずのことっ……!?  すご……! 南條ゆずとの結婚話、しちゃってるんですけど……?!「でもゆずちゃんとは、幼なじみなんだろ?」「幼なじみだからって、それとこれは話が違う」「南條ゆずと結婚したら、お前の人生は安泰だと思うけど? な、大翔」 まさかね……。たまたま同じ名前ってだけよね? 
最終更新日: 2025-01-23
エリートな彼と女子大生の年の差恋愛婚

エリートな彼と女子大生の年の差恋愛婚

主人公である実来(みくる)は、ある夏の暑い日に大学へ向かう途中満員電車の中で痴漢にあってしまう。 声も出せずにいると、とある男性京介が痴漢から助けてくれる。 京介にお礼がしたいと伝えた実来は、その男性と夜に濃密で甘い夜を過ごし、身体を何度も重ね合う。 実来はそんな名前も知らない彼と身体を重ねることに気持ちよさを覚えてしまったが、真夜中にたった一夜だけの関係を終えるとそっとホテルを出る。 しかしそれからしばらくが経った頃、実来は体調に異変を感じるようになり病院へ行く。 すると実来は、妊娠していることが発覚して……。 実来は助けてくれた今日と再び連絡を取り、あの日の夜で妊娠したことを告げると、京介から結婚しようとプロポーズを受けるが……。
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Chapter: 【あの夜のあの子〜森嶋目線〜】
 あの日の夜、あのベッドで過ごしたあの子はどうしているだろうか。  何故かあの子のことばかり、気になって仕方なかった。 だってあの子を抱いた時、初めて愛おしいという気持ちになった。 あんなにも誰かを、心の底から抱いたのは初めてだった。  あんなにも情熱的に求めてくる彼女を、俺は何度もあのベッドの上で抱いてしまった。 だけど、ただひとつ失敗したのは……避妊をしなかったことだ。 そう、あまりにも欲望が出すぎてしまい、避妊していなかったのだ。 最初は避妊しようと思っていたのに彼女に触れた途端に、あまりにも欲望が深すぎてしまった。 本当にあれは、失敗だった……。  だけど彼女の温もりと体温が溶け合ううちに、それがもう心地よくなってしまって……。彼女がベッドの中で甘えた声を出しながら、俺との情事を受け入れていたから、俺も本気になってしまった。 彼女との情事は、本当に気持ち良くて俺も止められなかったのは事実だ。 ……いや、あれは本当にもう反省しかない。 そしてそれからしばらくして、彼女から久しぶりに連絡が来た。 その声ですぐに、彼女だと分かった。 麻生実来(あそうみくる)。彼女は電話越しに名前を教えてくれた。 実来(みくる)いい名前だ。 彼女にピッタリの名前だと思う。 でも彼女は、女子大生だ。年齢は多分二十歳くらい。 お酒を飲んでいたし、多分そうだろう。 俺は仕事に全うする三十五で、彼女は二十歳。……いや、どう見ても年の差がありすぎる。 下手したら、彼女に訴えられたりしないか……?? そんな考えまでも、頭の中をよぎっていた。 そんなことを考えていても、仕方ないと分かっている。 だけど彼女から大事な話があると言われた時、俺は確信した。 ああ……きっと、俺を訴ると言うんだろうなって思い不安に狩られた。……だけど違った。 彼女と食事をしていた時、彼女から母子手帳を見せられ、俺の子を妊娠していると告げられた。 明らかに俺との間に出来た子だと分かって、驚いた。 でもなんとなく、そういうことがあってもおかしくないと思った。 だってあの日の夜、彼女を抱いた事実は確かにあったから。……だけどまさか、それがそんな形で返ってくるとは思わなかった。 彼女は、俺の子を妊娠している……。母子手帳を見せられたから、間違いないだろう。 彼女は俺の子を、身篭って
最終更新日: 2025-02-08
Chapter: 【年の差恋愛のはじまり】
 その後、森嶋さんがお会計をしてくれた。 わたしも払うと言ったけど、奢らせてと言われてしまい、それ以上何も言えなくなった。  そして駅の近くにある公園で、ふたり腰掛けて座った。「……実来ちゃん」「はい……??」 わたしは森嶋さんの方へ振り返る。「俺との子、産んでくれないかな」「……えっ??」 それは、予想外の言葉だった。 産んでほしいと言われるとは、思ってなかった。 なんで、産んでほしいなんて……。「……勘違いしないでくれ。責任を取りたいから産んでほしいと言ってるんじゃない。 本気で、本気で、そう言ってるんだ」「……でも、わたし……」 わたしは怖くなって俯く。「聞いてくれ。 俺が今一番守りたいのは、実来ちゃん、君なんだ」 わたしは森嶋さんに「……それ、は赤ちゃんが出来たから、ですか??」と問いかける。「違う。そうじゃない」「……じゃあ、なんで……そんなこと……」 わたしは責任をとってほしいなんて思ってない。「―――君を好きなんだ」「……えっ??」「君のことが……実来ちゃんのことが好きなんだ。 本気でそう思ってる」 そんなの、ウソだよ。だって大人は、ウソを付く。「……でも大人の人は、すぐにそうやってからかいますよね?? そうやって甘い言葉で……んん……っ!?」 なのにわたしの言葉が遮られた。 でもそれを遮ったのは、言葉なんかじゃなくて、森嶋さんのその唇だった。「えっ……。森嶋、さん……??」「冗談なんかじゃない。本気で言ってる」 その瞳(め)が本気だと物語っていた。「……あ、あの、わたし……」 どうして、キスなんてするの……。どうして……。「俺は本気で、君のことを守りたいんだ。 君のお腹にいる子も、俺が守りたいんだ。……ダメか??」「……いや、あの……」 ダメかと言われても……。「君のお腹にいる子の父親は、俺なんだろ?? だったら、俺はお腹の子の父親として、君たちを守る権利がある」「それは、その……」 確かに、そうかもしれないけど……。「そうだろ?? それなのに実来ちゃん、君は何を躊躇っているんだ??」「何を……躊躇ってる??」「そうだ。俺はたしかに35だよ。君は20歳くらいだろうから、15も年の差があるけど」 わたしは何も言えなくなってしまう。「だけど年の差なんて関係ないだろ??年の差があ
最終更新日: 2025-02-07
Chapter: 【二度目の再会】
「おはよう実来‼」「おはよう、彩花(あやか)」「あれ??どうしたの??」「えっ??」「なんか、顔色悪くない??具合でも悪い??」 それから何日かして、大学で親友の彩花と一緒になった。  だけど、変化ってすぐに気が付くもので……。「だ、大丈夫‼ 何でもないよ‼」「……なんかあった、でしょ??」「な、なんで??」「実来のことは、なんでも分かちゃうよ」「……ま、参りました」「で、何があったの??」 わたしは観念して、昼休みに彩花に全てを話すことにした。 彩花は昼休み、黙ってわたしの話を聞いてくれた。そして一言、こう言った。「……実来はもう一度、その人に。お腹の子の父親に、会いたいんだね??」「……うん」 あれから何日も考えていたけど、やっぱり、わたしは彼のことが忘れられなかった……。―――もう、出会ったあの時からわたしは、彼に恋をしているんだとその時気付いた。 会いたい。もう一度、彼に会いたい。 だけど、会うのが怖い。 会って妊娠していると告げた時、彼がどんな反応をするのか想像しただけで、体がビクビクする。「実来??」   「……えっ??」「あたしは、ちゃんと話すべきだと思うよ??」「……でも、少し怖い」「それでも、逃げちゃダメだよ。これは……実来だけの問題じゃないんだよ?? 実来のこれからのためにも、ちゃんと話すべきだと思う」「……でも、わたし、どうすれば??」「素直に言うんだよ。自分の気持ちを」「……自分の、気持ち」そうだ。言わなきゃ……。だってわたしは、彼のことが好き。 彼にもう一度会って、ちゃんと今の気持ちを話したい。「……わたしもう一度、連絡してみる」「うん。頑張って。応援、してる」「ありがとう……」「大丈夫。妊娠のことは、誰にも言うつもりないから、安心して」「……ありがとう、彩花」 彩花が親友で本当によかった。 誰にも言うつもりなかったけど、彩花だけにはやっぱり話せる。……話してよかった。  その日わたしは、講義が午後までだったので、思いっきって彼に連絡してみることにした。 カバンの中から取り出す、あの時もらった彼の名刺……。スマホを取り出して、また番号を打つ。 そしてゆっくりと、発信ボタンを押した。プルルルル……プルルルル……。 何回かのコールの後、「はい」という声が聞こえた
最終更新日: 2025-02-06
Chapter: 【発覚した妊娠】
―――それは、それからしばらくした時のことだった。 夏もそろそろ終わりを迎えて、季節が移り変わろうとしていた時のことだった。 いつもより体調が優れなくて、頭痛や微熱などが続いた。 ただの風邪かと思ったけど、季節の変わり目ということもあり、大学終わりに念の為病院に行った。 そしたらそこで、衝撃的なことを言われるのだった。「麻生実来さん、診察室へどうぞ」「はい」 診察室へ入るなり、問診票を見て、先生が一言言った。「麻生さん、あなた……生理きてる??」「えっ?? 生理……??」 そう言われると……。 あれ、しばらく生理……来てない。 もともと不順な方ではあったから、また遅れているだけかと思っていた。「……いえ、そういえば、来てないです」 でもどうして、そんなことを聞くのだろうか……。「それはいつから??」「えっと……多分、この時くらいから、ですけど……」 カレンダーを指差して、一言そう言った。「……ちょっとエコーをしても、いいかしら??」「えっ??エコー……??」 わたし、もしかしてどこか悪いの……??「―――麻生さん、あなたもしかして、妊娠してるんじゃない??」「……えっ??」 妊娠……??  最初、先生が何を言っているのか分からなかった。「生理がしばらく止まってる。しかも妊娠の症状というのは、風邪に似ていることが多いから、風邪だと勘違いする人もけっこう多いのよ」「……わたしが、妊娠??」「その様子じゃ、身に覚えがあるみたいね」「…………」 わたしはその言葉に何も、言えなくなった。 あの日からは彼のことを忘れてたつもりだけど、心のどっかでは、忘れられてなかった。「……さ、調べてみましょう。ここに横になって??」「あ、はい……」 言われたとおり、ベッドへと横になった。 お腹にジェルを塗り、先生はゆっくりとエコーを当てた。 ―――すると。「……ほら、見える??あなたの、お腹の子よ」「……これが、赤ちゃん??」 かすかだけど、お腹の中に見えた、小さな命。   やっぱりわたし、妊娠していたんだ……。先生の言うとおりだった。「妊娠ニヶ月ってところかな」「……ニヶ月」 わたしは、お腹に新しい命を宿していた。 その子は、あの日結ばれた、名前も知らない大人な彼との間に出来た子供。 ふと、あの日の夜のことを思
最終更新日: 2025-01-25
Chapter: 【大人な彼と一夜の関係】
「……あ、あのっ……」「ん??」「……ほ、本気、ですか??」「本気だよ?? だって、それが俺が望んだ゙お礼゙だからね??」「……で、すよね」なんでこうなっているんだろう……。お礼をしたいと言ったら、なぜかその日の夜、ラブホテルに来てしまっていた。彼が放った言葉は、わたしの身体でお礼をしろってことだった。まさかとは、思ったけど。やっぱり……。あの時は通学途中だったため、夜また駅で待ち合わせをしようと言われた。連絡先の書いた名刺を渡され、その番号に終わったら連絡してと言われて……。現在(いま)に至る。今いるのは、ラブホテルの一室。ちょっと高級そうなラブホテルで、少しゴージャスな感じの雰囲気だった。「……君、お酒は飲める??」「えっ!?お酒、ですか??」「うん。飲める??」「は、はい。飲め、ますけど……」「じゃあとりあえず、俺たちの出会いに乾杯しよう」「えっ??あっ、はい……」シャンパンの入ったグラスを渡され、お互いにグラスを合わせて乾杯した。「ん、美味しい……」このシャンパン、今まで飲んだ中で一番美味しい。口当たりが爽やかというか、飲みやすい……。「よかった。気に入ってくれた??」「は、はい……」なんていうか、ちょっと緊張する。こんなオシャレな部屋でシャンパンを飲むなんて、今までしたこともなかったし。大人な雰囲気に、なんとなく慣れなくて、ちょっと緊張する。「……大丈夫??」「へっ!?あっ、だ、大丈夫です……」なんかわたし、挙動不審!?「もしかして、緊張してる??」「……あ、はい。少しだけ」「大丈夫だよ。リラックスして??」「そんなこと、言われても……」こんな大人な方と一緒に過ごすなんて、初めてだから、緊張しちゃうよ……。「……そういうとこ、可愛いね??」「……えっ??」そして彼の大きな左手は、わたしの頬にそっと触れた。―――ドキッなぜだか分からないけど、すごくドキドキしてるのが自分でも分かる。こんなにもドキドキするなんて、初めてで……。思わず、顔を背けたくなる。優しく撫でられた頬が、真っ赤になるのがわかって、熱を持つのもわかる。……ど、どうしよう。なんかもう、目を反らせない……。「……そんなに可愛い顔されると、もう我慢出来ないんだけど??」「えっ……??」そう思った時には
最終更新日: 2025-01-25
Chapter: 【プロローグ】
 それは、ある夏のかなり暑い日の出来事だった。 いつものように大学へ行くため、わたしは電車に乗っていた。 時間は朝8時15分、満員電車の通勤ラッシュの時間帯だった。 その日は友達と遊びに行く約束もしていたため、いつもよりも薄手の格好をしていた。   そう満員電車だから、乗れるわけもなく、通学時間40分ずっとたちっぱなしだった。 そして電車に乗り始めて10分後くらいだった。゛それに゛気付いたのは。 わたしのお尻に、サワサワと何か違和感があった。 ……これってもしかして。―――痴漢?? その予感は、的中した。 だけどこんな満員の電車の中で、声も出せる訳もなくて……。 できることならいっそのこと、今すぐその手を掴んで「この人、痴漢です!!」って口にしたい。 だけど、こんな状況で、口に出来る訳がない。 そう思った時だった。「ゔっ……!!??」「すみません‼この人、痴漢です‼」「……えっ??」 急にその手が離れて、違和感が無くなった。 振り返って後ろを見ると……。 痴漢していたおじさんの右手を掴んでいたのは、背の高いスラッと人だった。……わっ、イケメン。そして駅に着いた途端、彼はおじさんの手を掴んだまま電車から引きずりおろして、駅員さんに引き渡した。……た、助かった。 本当に怖かったし、声が出せないって辛いんだなと、改めて思ってしまった。  こういう時、ちゃんと言える人だったら、よかったのにって、思ってしまった。  わたしも急いで電車を降りて、助けてくれたあの人の所へと走った。「あっ、あの……‼」「ああ、大丈夫??」「は、はいっ‼あの……助けてくださって、ありがとうございます‼」「いや、別に」「本当に……なんてお礼をしたらいいか……‼」「気にしないで??何もなくてよかったよ」その人は、優しく微笑んでそう言った。「あ、あの……‼」「ん??」「本当に、何かお礼させてもらえませんか??」「本当に気にしなくていいから」「えっ、でも……‼」「……どうしてもお礼したいの??」「は、はいっ‼このままだと、わたしが申し訳ないので……!!」「そう??」「は、はいっ……‼その、迷惑でなければ、ですけど……」だってこんなイケメンな人に助けてもらって、お礼しないわけにはいかない。せめてお茶でもごちそうしたいくらいだ。こん
最終更新日: 2025-01-25
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