Chapter: 【番外編②〜森嶋家の日常】「木葉ー、準備出来た?」「うん! まま、できたっ!」「よし、じゃあ保育園行こっか」 木葉が産まれてから、早くも三年が経った。あんなに小さかった木葉も、今でも言葉も話せるようになり、日々子供の成長というのを実感している。 木葉も保育園ではお友達も出来たみたいで、今は保育園に行くのが楽しいみたいだ。 毎日保育園に行くことをとても楽しみにしている。 母としてはそれはとても嬉しいことで、木葉にお友達が出来ることもそうだし、毎日少しずつ出来ることが増えていくことも親としてはやっぱり嬉しい。 京介とも日々そんな話をしているのだけど、京介は木葉のことが本当に好きみたいで、毎日仕事から帰ると木葉の元へ歩み寄っている。「出発進行!」「おー!」 木葉を自転車の後ろに乗せ、保育園まで送り届けている私の毎日の日課は、ここから始まる。 京介のが家を出るのが早いので、私は毎日木葉を保育園まで送ってから家のことをやっている。「よしよし、起きしちゃったか〜」 木葉が産まれてから一年後には、第二子である女の子を出産し【うらら】と名づけた。 ひらがなでうららが可愛いなって言うのと、産まれたのが春ということもあり、うららと名づけたのだけど、木葉もうららのことに興味があるみたいだ。 ちゃんとお兄ちゃんをしてくれるか心配ではあるけど、きっと木葉なら大丈夫だろうと思う。 京介も家族が増えることを喜んでくれていたので、うららが産まれた時も泣いて喜んでくれた。「うらら、ミルク飲もうか」 うららにミルクを飲ませるためにソファに座る。「飲んでる飲んでる」 うららがミルクを飲んでる姿もとても可愛くて、ついうっとりしてしまう。「うらら、もうお腹いっぱいかな?」 ミルクを飲み終えたうららの背中を優しく叩きゲップを出す。「よく出来ましたね、うらら」 二人目は女の子なのが何よりわたしは嬉しい。 うららが産まれてからは、我が家はもっと楽しくなったし、もっと素
Last Updated: 2025-04-16
Chapter: 【番外編①〜森嶋家のその後〜】✱ ✱ ✱「京介、ご飯出来たよ」 「ああ、ありがとう実来」「うん。温かいうちに、食べよう」「ああ、そうだな」「「いただきます」」 新しい新居に住み始めてから、およそ半年が経ったけど、わたしたちは仲良く子育てにバタバタしながら過ごしている。 わたしたちの子供は二人で名前を決めて、【木葉(このは)】と命名した。 植物の生命力のように力強く成長してほしいと願って、木葉と名付けた。 木葉はとても元気で、よく笑う子で、笑った顔がとても可愛い子だ。 自分たちの子がこんなにも可愛くて愛おしいだなんて、産まれてからもっと気づいた。 木葉はパパが大好きで、結構京介に懐いてる感じがする。 本当に可愛くて、愛おしい木葉。 二人で木葉を育てていくのってとても大変だし、分からないことばかりで戸惑うことばかりだ。 それでも毎日が幸せで、わたしも京介も、毎日笑顔が耐えない。 木葉を見ているだけで癒やされて、そして木葉と一緒にパパとママとして成長している。 それってわたしたちにとって、とても特別なことであり、かけがえのないものであることに間違いはない。「木葉にも、ミルクあげないとね」「そうだな。俺がやろうか?」「ううん、大丈夫。わたしがやるから」「そうか? じゃあ俺は食器を洗うよ」 京介はわたしが木葉に付きっきりになっていると、食器洗いやお風呂掃除などを率先してやってくれるから、わたしも助かっている。「ありがとう、京介。助かる」「気にしなくていいって」 木葉にミルクをあげながら「京介って、明日も朝早いんだよね?」と問いかけると、京介は「ああ。明日は朝一で会議がある」と答える。「分かった。 じゃあ明日はお弁当、用意しておくね」「ああ、ありがとう」「卵焼きは、いつもの甘くないヤツでいいよね?」「ああ」 京介と一緒に住み始めてから、京介のために毎日お弁当を作るようになったわたし。 愛妻弁当という訳ではないけど、京介は仕事大変で毎日遅くまで頑張ってくれているから、栄養のバランスを考えて作るようにしている。 卵焼きはいつも甘くないヤツで、お出汁を使った出汁巻き卵にしている。 甘いのがあまり好きじゃないみたいだから、飽きないように工夫をしているつもりではあるけれど、それでも毎日美味しいって食べてくれるから、
Last Updated: 2025-04-15
Chapter: 【あなたと出会えて良かった】 京介の言葉を借りるなら、わたしも京介の喜ぶ顔がもっと見たいし、京介のいろんな顔をこれからも見たいと思ってる。「これからもどうぞ、よろしくな。 父親として未塾な俺だけど、子育て一緒に頑張ろうな」「うん。こちらこそ、よろしくね」 京介とこうして過ごす日々は、これからもっと愛おしくなる。そんな日々を毎日、きっと宝物になる。「俺、実来に頼りっぱなしになってしまうかもしれないけど、俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ」「うん、ありがとう」「俺は実来のことをずっと支えていきたいし、ずっとそばで守っていきたい。もちろん、子供のことも守っていくよ。……俺たちは、三人で家族だからな」 そう、わたしたちは家族だ。 これから家族として、みんなで明るい未来を作っていくと約束したんだ。 京介、これからもわたしはあなたの妻でいたい。妻として、母親として、しっかり頑張るからね。「わたしも京介のそばで、ずっと支えていきたいと思ってるよ。……この子と三人で、幸せな家族になろうね」「……ああ」 こうしてわたしたちの、新たな家族としての生活がスタートした。 夫婦であり、子供の親でもあるわたしたちだけど。今日からはこの新しい新居で、新しい場所で、家族として生活していくんだ。 どんな困難なことでも、どんなに大変なことでも、夫婦二人なら乗り越えていけそうな気がした。 わたしたちは数ある人たちの中から出会って、結婚して、子供が出来て……。この特別な出会いに、本当に感謝している。 この出会いがまさにほんの一瞬だったとしても、出会うべくして出会った二人なんじゃないかって、勝手に思っている。 京介も同じ気持ちなら、嬉しいな。 わたし、毎日が本当に幸せで、今が一番幸せでよかったと思ってる。 その気持ちはこれからだって変わらないし、変わることなんてない。 京介とだから、こんなにも幸せなんだと思っている。「……ねえ、京介」「ん?」「わたしと出会ってくれて、ありがとう。わたしと結婚してくれて、ありがとう。 わたしを愛してくれて、ありがとう。 わたしと家族になってくれて、ありがとう」「……実来」「京介と出会って、わたしはいつも楽しいことばかりだよ。……これからもきっと、楽しいの予感しかしないよ」「……本当だな。 家族が一人増えたし、楽しいことたくさんしていこう。思い出を作
Last Updated: 2025-04-15
Chapter: 【新しい家族のスタート】「先生、ありがとうございました」「何かあったら、また来てくださいね」 「はい。ありがとうございます」「では、お大事に」「お世話になりました」 出産を終えてから数日後、わたしと赤ちゃんは無事に退院することが出来た。 赤ちゃんも健康で何事もなかったから、本当によかった。「さ、帰ろうか。新しい我が家へ」「うん。帰ろう。新しい我が家へ」 赤ちゃんと一緒に後ろのシート乗り込むと、京介の運転で新しい新居へと帰った。 楽しみだな、新しい新居での暮らしがこれから始まっていく。 赤ちゃんが産まれて、これから新しい生活が始まるんだな……。ワクワクもするし、ドキドキもするし、でも不安もあるけれど。 だからこそ、この一瞬の瞬間や時間を、家族三人で共有していきたいと思う。 子供を初めてチャイルドシートに乗せた時、なんだかとても緊張してドキドキした。 産まれて間もない子供だけれど、わたしたちの大切な宝物だ。 大切な大切な、家族と言う名の存在。 これからしっかりと、この子を自分たちの手で育てていきたい。 こうして産まれてきてくれた、わたしたちの宝物に感謝したい。「さ、出発しようか」「うん。お願いします、パパ」「パパか。……そうだよな、俺はパパなんだよな」「うん。そうだよパパ」 子供にとって、父親は京介一人だけだ。 わたしにとって京介は旦那さんで、そして大切な家族だ。 とても愛おしい存在なんだ。「なんかまだ、パパって呼ばれるの慣れないな」「そのうち慣れるよ」 これからの三人での生活は、きっとドタバタ続きで大変だろうけど、なんとか頑張っていこう。 新米ママと、新米パパとしてね。 赤ちゃんにとって、わたしたちは親なのだから。 そして車を走らせること四五分ほどで、わたしたちの新しい新居に到着した。 わたしはしばらく入院していたこともあり、実際の中はまだ写真などでしか見ていなかったから、どんな風になっているのか、とても楽しみだった。 ここで暮らせるなんて、なんだかまだ夢のようだけど……。 チャイルドシートから子供を降ろして、抱っこして家の中へと向かう。 階段もあるけど、エレベーターで行けるのでスイスイだ。 しかも子供がいる家庭にとっては、こういうのは便利すぎてすごい。 良く出来てるなって感じがする。 さすが新築マンションだな。 セキュリ
Last Updated: 2025-04-12
Chapter: 【ママとパパになった瞬間の喜び】 もうダメ……。本当に痛くて、子宮が取れそうな感覚になってしまう。 なぜか一緒に涙も出てきてしまったし。「森嶋さーん、赤ちゃんの頭がまだ出てきてないから、指示出したらその通りにやってみてくれるかな」「は、はいっ……」 赤ちゃんの頭もまだ出て来てないの!? こんなに痛いのに……。わたし、こんな弱気で頑張れるのかな……。「森嶋さん、息を吸ってから吐いてみてくれる?」「は、はいっ」 言われた通りに、息を吸って吐いてを何回かやってみた。「OK、いいよ。 森嶋さん、次いきんでくから息を吐きながらいきんでみてくれるかな」「えっ、はっ、いたたっ……!」 いたたたた……! やばい、めちゃめちゃ痛いっ! 言われた通りにいきんでくと、力が入るからかなり子宮が圧迫されたような感じがして、とても痛かった。 もはやこれは我慢できないほどの痛みだった。 ああ、早く赤ちゃん出てきて……。痛みに一生懸命耐えながら、そんなことばかりを考えていた。「森嶋さん、もう一回いきんでー!」「はいいいっ……!」 思いっきり力を振り絞りながら、いきんでいく。「ふんんんっ……!!」 やばい、痛いし身体が限界を迎えそうだ。 おでこや身体全体に汗をたくさんかきながら、本当に必死だった。 途中からはもう、何だかもうよく分からなくて、ただただ赤ちゃんが出てきてくれることだけを祈っていた。「森嶋さん、まだいきまないでね〜」 「っ……はあ、はあ……っ」 もう苦しい……。無理かも……。「森嶋さん、赤ちゃんの頭が見えてきたよー! はーい、もう一回いきんでみて!」「ふんんんんっ……!!」 でも赤ちゃんの頭が見えてきたって言葉を聞いて、少しだけ嬉しくなった。 もう少しで、もうちょっとで赤ちゃんと会えるんだ……。「実来!頑張れー!!」 一生懸命いきんでいく中で、やっと京介の姿が見えたけど、不安そうな顔でこっちを見ていた。 でも……きっと大丈夫。京介が応援してくれてるし、ここで見守ってくれているんだから。 「森嶋さん、旦那さんが到着されましたよー! よかったですね!」「っ、は、はいっ……!」「実来、もう少しだ!頑張れっ!」「う、うんっ……!」 京介の声が聞こえてくる度に気持ちが高まるし、元気がもらえる。「森嶋さーん、赤ちゃんの頭出てきたよー!もう少しだから、この
Last Updated: 2025-04-10
Chapter: 【出産という不安を抱えて】「っ……いたたたっ……!」 え、なんかお腹痛い……! なにこれ! それから数日後、その日はお天気が良かったので外の中庭を歩いていた。 その時、急にお腹にドッと痛みを感じた。 あまりにも痛みが強くて、わたしはその場にしゃがみ込んでしまった。「森嶋さん、大丈夫ですかっ!?」 そこへ通りすがった先生がわたしの元へ駆け寄る。「お、お腹が、痛くてっ……!」 痛みでまともに話すことも出来ない。 きっとこれは、陣痛かもしれない。「森嶋さん、ちょっとお腹触りますね」 先生がわたしのお腹に触れると「森嶋さん、すぐに病室に移動しましょう。子宮口が少し開いてるかもしれません」とわたしに告げた。「先生、い、痛いです……!」「大丈夫ですよ、森嶋さん。一緒に頑張りましょうね」「は、はいっ……!」 それは今までに感じたことのないような痛みで、どうしようもなくて、思わず泣きそうになってしまった。 車イスを用意されて病室に移動すると、超音波検査などを行った。 そして先生は、子宮口を確認していく。「森嶋さん、子宮口がもうちょっとで開きそうだから、もう少しだけ我慢してね」「ううー……まだ、ですか?」「後もう少しだから、もうちょっとだけ待ちましょうね」 それからもう少しだけ、子宮口が開くのを痛みに耐えながら待っていた。「はぁ……はぁ……痛いよお」 先生まだかな……。 いつまで待てばいいのかは分からないけど、子宮口が開かないと赤ちゃんが出て来られないとのことだったので、陣痛を促す薬を投与してもらい、完全に開くまで待つことになった。 でも開くのもいつになるのかわからないので、途方に暮れそうだった。「せ、先生……?」 それからどのくらい経ったかは分からないけれど、痛みに耐えながら待っていたら、先生が来てくれたのでようやくかなと思った。「森嶋さん、子宮口確認するね」「は、はいっ……」 陣痛って、こんなにも痛いのか……。本当にすごく痛い。 生理痛の何倍も痛いから、何度も泣きそうになってしまった。 だけどここまで来たら後少しだから、と自分に言い聞かせた。「森嶋さん、良かったね!ようやく子宮口開いたよ。 よし、出産準備に入るからちょっと待っててね」「は、はいっ……!」 良かった……。ようやく開いたみたいで、産む準備に入れるそうだ。「森嶋さん、旦那さ
Last Updated: 2025-04-09
Chapter: 第 60 話大翔さんがいなきゃ、わたしはスイーツを作ろうと思えなかったかもしれない。 単純にスイーツを食べることが大好きってだけで、ここまで来ることは思ってなかった。「わたしは、スイーツが大好きだよ。食べることも、作ることも大好き。……だけど、わたしは大翔さんと一緒にいる時間が、一番大好きなんだよ。大翔さんがいないと、わたしは生きていけないもん」「由紀乃……」 だってわたしは、天野川由紀乃。スリーデイズの副社長である天野川大翔の妻だ。 大翔さんのことを誰よりも尊敬しているし、誰よりも愛おしいと思ってる。 大翔さんは誰よりも頼れる存在で、わたしにはもう大翔さんと過ごすこの時間がかけがえのない大切な
Last Updated: 2025-03-16
Chapter: 第 59 話【〜最高の幸せは家族三人で〜】 「ただいま」 「大翔さん、おかえり。 今日もお仕事、お疲れ様でした」 「ありがとう、由紀乃」 わたしは大翔さんに「先にご飯食べる?」と聞くと、大翔さんは「ああ、そうするよ」と答える。 「今日の夕食、大翔さんのリクエストのチキン南蛮にしたよ。後豚汁とピリ辛キュウリ」 「お、チキン南蛮は嬉しいな」 「すぐ用意するね」 あれから気が付けば、半年が過ぎた。 半年間色々とあったけれど、無事にオンラインショップでのスイーツ販売にもこぎつけることに成功した。 そしてスリーデイズのオンラインショップでも自慢のアップルパイをハーフとホールでの販売も開始したところ、これがまた大反響なのだ。 大人気のためオンラインショップがサーバーダウンしてしまうことがあり、お客様には迷惑をかけてしまったが、無事にサイトも復旧しまた販売が出来るようになった。 思わぬサーバーダウンにわたしたちもてんやわんやでバタバタしてしまったが、サーバーに強いスタッフがいるおかげで割とすぐにサーバーは復旧することが出来たのも良かったと思う。 「お、チキン南蛮美味そうだな」 「ふふふ。正直、自信作」 「そうか。 よし、食べよう」 二人で「いただきます」と手を合わせると、大翔さんは早速出来たてのチキン南蛮に手を伸ばす。 パリパリというチキンの音が、口にした瞬間にいい音を奏でている。 「うん、美味いっ」 「でしょ? 自信作だからね」 「本当に美味いよ。最高だわ」 「ふふふ。良かった」 大翔さんがこうやっていつも美味しそうにご飯を食べてくれるから、わたしも作って良かったと思える。 一人で食べるより、やっぱり二人で食べる方が何倍もご飯は美味しい。 「豚汁も最高に美味い」 「良かった」 わたしが作る豚汁は出汁に特にこだわっている豚汁で、味噌は白味噌を使っているのだけど、出汁が美味しいから豚汁がもっと美味しくなっている。 「いつも美味しく食べてくれるから、わたしも嬉しいよ」 「本当に由紀乃の料理は美味い。疲れた身体を染み渡る」 「良かった」 大翔さんと色々と切磋琢磨しながらこうして美味しいスイーツ作りをしてきたけど、美味しいスイーツでみんなが喜んでくれるのはやっぱり嬉しいし、作ってて良かったと実感する。 「そうそう。ネットでのアップルパイの注
Last Updated: 2025-03-16
Chapter: 第 58 話片山さんがそう伝えると、新メンバーの人たちは驚いているようで、「えっ! あ、天野川副社長の奥様……ですか!?」とわたしを見ている。「はい。わたしは副社長の妻です。……片山さん、伝えてなかったんですか?」「言ってたつもりだったんだけどね」「すみません。聞いてなかったのでビックリしました」 そう言われたけど、「わたしのことは普通にリーダーでいいですよ。 副社長の奥様だとか、気を張ることないですからね」と念の為伝えておいた。「お、恐れ多いです……」 と言われたけど、「わたしだって普通の一般人ですよ?元はスイーツ大好きな一般人です。 なので、気負わず話しかけてくれたら嬉しいです」と笑顔を見
Last Updated: 2025-03-16
Chapter: 第 57 話わたしたちは頷きながら「はいっ!」と返事をした。「求人募集についての補足になるが、募集開始後の面接は俺と片山、二人で行うことになった。 片山、宜しく頼むよ」「えっ!わたしですか……!?」 片山さんは驚いたような表情をしている。 大翔さんは片山さんに「片山は俺がスイーツ部門を立ち上げた時からの初期メンバーだからな。片山が一番適任だと俺は思ってるんだが……どうだ?」と聞いている。「わたしも、片山さんが適任だと思います」 わたしがそう伝えると、片山さんは「そこまで言われたら、断れないじゃないですか」と言っているものの、「わかりました。面接担当、引き受けます」と受けてくれた。「ありがとう
Last Updated: 2025-03-16
Chapter: 第 56 話無理だけは絶対にさせられない。「なんとか人手を増やせない、ですかね」「人手が増やせれば、なんとか回せるんだけどね……」 今の人数でやれることがギリギリになり、仕事を増やしてしまうと負担を掛けてしまう。 そうなると、なかなかお取り寄せにまでは辿り着くのは難しいかもしれない。「片山さん。副社長に、求人募集の依頼をかけてもらいませんか?」「求人募集?」「はい。社員でなくても、例えば短時間でも働けるスタッフとか、土日だけ働きたいみたいな人たちを募集してみませんか?」 派遣みたいなスタイルにしてもいいし、その人が働きやすい環境で働いてもらえるように、募集をかけていくしかもうない。「パ
Last Updated: 2025-03-16
Chapter: 第 55 話ワンホールでの販売すれば、家族みんな分け合って食べられるし、自分なりにアイスを乗せたりしてアレンジも効くから、そっちの方がいい気もする。「そうだな、店舗では4/1カットが基本だもんな。……なあ、お取り寄せにするなら、ワンホールとハーフカットが選べるってのはどうだ?」 「ハーフカットとワンホールを選べるようにするってこと?」「そうだ。少人数だとワンホールは多いだろうし、ハーフカットを選べたら少人数でも食べやすいと思わないか?」 ああ、確かに……!「そのアイデア、素敵だね」「カップルや友人で少人数で食べるなら、ハーフカットくらいがちょうどいいだろ? ワンホールじゃ多くて食べきれなくなる
Last Updated: 2025-03-16
Chapter: 【エピソード03〜バイキングデート〜】 そして父親はついに闇金から借金をした。 だけどその金額は膨らんでいくばかりで、一切減ることはなかった。 返済するためにお金を借りても、結局返せなくて……。利子ばかり増えてしまって、返すのも間々ならないくらいになってしまった。 ある日、父は母親と私を残して首を吊って自殺した。 父親が死んで悲しむ暇もなく、母親もなんとか借金を返すために毎日朝から晩まで必死で働いた。 それでも借金は少ししか減らなくて……。ついには過労で倒れてそのまま亡くなった。 そして私は一人になり、家族を失った。 なのに今度は、借金取りが私の所へやってきて、もう限界だった。 家賃を払うのが精一杯で、生活なんて出来やしなかった。 それを助けてくれたのは、爽太さんだった。爽太さんが私を地獄から救ってくれた。 だから私は、爽太さんと夫婦になって、少しでもいい思い出を残したいと思っている。 ニ年間という期限付きなら尚更、楽しい思い出をたくさん残して、爽太さんと夫婦だったことを思い出せるようにしたい。 少しでも爽太さんと距離を縮めたい……って、そう思っている。「紅音!」「爽太さん……!」 仕事を早く終えた爽太さんと待ち合わせをした夕方17時半すぎ。爽太さんは私を見つけて慌てて駆け寄ってきた。「すまない。遅くなってしまった」「いえ、大丈夫です」 初めてデートとした時の緊張感みたいなものが、いつもある。「さ、行こうか」「はい」 爽太さんはいつも、どこかに行く時には必ず手を繋いでくれる。 夫婦なら当たり前のことだけれど、それがいつも嬉しく感じるのは、なぜなのだろうか……。 夫婦だからこそ、私たちはこうして夫婦らしいことを出来るのは嬉しい。「紅音、今日メイク変えた?」「え、分かりますか……?」 確かにいつもよりもメイクを少し変えた。デートということもあり、アイメイクを少し濃いめにしたのだけれど……。 まさか気付いてくれるとは思ってなかった。「もちろん。そのメイクも可愛いよ」「……ありがとう、ございます」 【可愛い】と言われると、それこそちょっと照れるけど、やはり嬉しい。「紅音、今日は過ごしやすいな」「そうですね……。過ごしやすいです」 手を繋ぎながらこうして歩くのは、なんだかそれだけでも幸せに感じる。「爽太さんの手……温かいです」「そうか?」 この温
Last Updated: 2025-04-15
Chapter: 【エピソード02〜偽物の夫婦〜】✱ ✱ ✱「さ、入ってくれ」「お、お邪魔、します……」 うわ、大きいお家だな……。広さどのくらいなのかな……なんて考えてしまうほど、爽太さんのお家は大きかった。 爽太さんの家に招かれた私は、爽太さんから「紅音、これにサインしてくれ」と一枚の紙を渡された。「……あ、はい」 渡されたそれは婚姻届で、私はそれにサインをした。 私の保証人の欄には、職場の人にサインしてもらうことにした。「紅音、君に伝えなければならないことがあるんだ」「え? 伝えなければ、ならないこと……?」 それは何なのだろうか……。まさかまた何か、あるのだろうか……。「この結婚だが……。この結婚は契約結婚だ」「け、契約、結婚……?」 一体どういうことなのだろうか……。契約結婚……?「俺との契約結婚の期間は、明日から二年だ」「二年……?」 わたしたちは二年間だけの、夫婦ってこと……? 契約結婚……。どうして、契約なのだろうか……?「俺たちは明日、ニ年間の夫婦になる」「ニ年……ですか」「そうだ。 ニ年間の゙期間限定夫婦゙だ」「き、期間限定夫婦……ですか?」 期間限定夫婦って……。結婚にそんなワードはさすがに聞いたことはないけど、まあいいか。「明日、お前の借金も全部俺が返済しておいてやる。そうすればお前は、これから借金取りに追われなくて済むだろう」「……ありがとう、ございます」 そして爽太さんからもう一つ、結婚するための条件を出された。 それは【子供を作らないこと】だ。 ニ年間だけの結婚生活を送る上で、子供は絶対に作らないことを契約された。 私は借金を返済してもらう代わりに、その条件を全て飲んだ。 生きていくための手段として、それを了承したのだ。「……爽太さん。これからニ年間、よろしくお願いします」「ああ。よろしくな」 そしてその日は、私の誕生日だった。 25歳になったばかりの日に、こんなことになって、正直戸惑ったりもしている。 だけどその日から私は、爽太さんの゙妻゙としてこの小田原家にやってきた。 最初はどうなるのかわからずおどおどしていたが、徐々に小田原家にも慣れていった。 それから半年が過ぎ、わたしはこうして爽太さんと夫婦として楽しく過ごしている。 爽太さんのおかげで、毎日の生活が楽しくなった気がした。 爽太さんがいてくれるから、
Last Updated: 2025-04-15
Chapter: 【エピソード01〜契約という名の結婚〜】 ある日突然、私は期間限定で夫と結婚することになった。しかも二年間という、期限付きで。 それは【離婚を前提とした結婚】であることを示していた。✱ ✱ ✱「爽太(そうた)さん、おはよう」「紅音(あかね)、おはよう」 私と爽太さんと結婚したのは、半年前のこと。 そのきっかけになったのは、父親の借金だった。 父親が多額の借金を作ってしまい、返せなくなった父親は、首を吊って自殺した。 その事実を知ったのは、父親が亡くなったすぐ後のことだった。 まさか私の名前を借りて借金していたとは知らなかった私は、その後すぐに借金を取り立てを受け、地獄を味わうことになった。 毎日借金取りが家にやってきて、金を返せと言われた。 時には金を払えないなら自分の身体で払えと言われて、その日も無理矢理連れて行かれそうになった。 そんな時私助けてくれたのが、私にとってはヒーローである爽太さんだった。「やめてっ、離してよっ……!」「暴れるんじゃねーよ!」「おい。女一人によってたかって何してんだ。イヤがってるだろ?」 それが、私と爽太さんとの出会いだった。そしてその日は、私の25歳の誕生日だった。「コイツの父親が借りた借金返さねぇから、返せって言ってるだけだろ?」「だからって身体で払えなんて、そんなセクハラまがいな発言していい訳ないよな?」「うぜぇ……。何なんだよてめぇは!?」 あの時、そう言って殴りかかる男の拳を受け止めた爽太さんは、その男たちを撃退してくれたのだった。「大丈夫か?」「……ありがとう、ございました。助けて頂いて」 私はあの時、爽太さんに助けてもらったからこそ、こうして恩返しが出来ている気がする。「……お前、借金どのくらいあるんだ?」「え……?」「借金。父親が借金、してるんだろ?」「……500万です」 その言葉の後、爽太さんは「500万? そんなにあるのか、借金」と言って私を見ていた。「……はい。父親が借金してると知ったのは、父親が死んだ後です。 気が付いたら、私が払うことになっていました」 父親の借金を抱えて生きていくのは、とても辛い。毎日こうして取り立てられて、生きてくことに疲れてしまった。「……もう、イヤだ」 父親の借金さえなければ、わたしは今頃幸せになっていた。「……お前、名前は?」「……え?」 その時、爽太さん私の
Last Updated: 2025-04-15