All Chapters of 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない: Chapter 211 - Chapter 220

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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』11

   *今日は、お祝いを持って自宅まで遊びに行く。夕食をご馳走してくれるらしい。最近免許を取った俺は車で向かっていた。久実ちゃんは都内のマンションに住んでいた。高級住宅街ではない普通の建物だった。玄関の前に立ってチャイムを鳴らすと久実ちゃんが出てきた。満面の笑みを向けている。ツインテールの髪の毛はポニーテールに変わっていて、元気そうだ。「赤坂さん、ようこそ!」「お邪魔します」中に入ると母親がエプロン姿でキッチンから出てきてくれる。「わざわざありがとうございます」「いえ。お邪魔します」父親が近づいてきた。普通のサラリーマンという感じで、話し方も優しくていい人オーラが出ている。久実ちゃんは、一人娘で大事に育ててもらっている印象を受けた。母親は手料理を振る舞ってくれて、父親も何度も感謝の言葉を伝えてくれて温かい家庭だと思う。いつか自分も結婚して久実ちゃんファミリーのような笑顔が耐えない家庭を作りたい。久実ちゃんにプレゼントを手渡した。「赤坂さん、ありがとうございます」「中学に入るんだから、ちゃんと勉強するんだぞ。じゃないと、俺みたいになるぞ」「はーい」笑いが起きる。俺と久実ちゃんは本当の兄と妹のようだった。いい子だし、病と戦っているなんて思えない強さがあって、俺は見習おうと思っていた。彼女のように物事をプラスに捉えることができれば、どんなこともいい方向に行くのではないかと思えた。
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』12

自分の心が変わっていくと環境がどんどんよくなっていき、COLORはみるみるうちに売れていった。久実ちゃんが中学二年生になる春から、俺はドラマの主演をすることになった。オーディションを受けて勝ち取った大きな仕事。冬から撮影をしていて、そろそろ放送される予定だ。番組宣伝で忙しく過ごさせてもらっている。しかしそんな中、久実ちゃんの母親からメールが届いた。体調が思わしくなく再び入院することになってしまったのだ。ショックだった。撮影現場で知ってしまいテンションが落ちてしまう。……しかし、仕事を頑張らなければ。ドラマはあともう少しで撮り終える。それまでは撮影が深夜になったりして見舞いに行けないだろう……。俺様役でラブストーリーということもあり、女性ファンが一気に増えた。街でも声をかけられるようになり、違う世界に来たみたいだ。本当は歌って踊りたいところだが、今は与えられたことを一生懸命やる。自分の世界が変わってきた時に、久実ちゃんが入院してしまったのが残念でならなかった。
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』13

四月に入り……昼の情報番組で番組宣伝を終えて見舞いに行くと、ベッドに横になっている久実ちゃんがいた。げっそりと痩せてしまって顔色も悪く目に光が灯っていなかった。母親はパートに出ることになり平日は夕方じゃないと来れないようだった。医療費がかさんで生活も大変になっているのだろう。「久実ちゃん……」「赤坂さん。わざわざ来なくていいよ。最近、テレビにいっぱい出てるから毎日会っている気がするから、寂しくないし」力なくニコッと笑った。起き上がろうとした久実ちゃんを寝かせた。「無理すんな。寝ろ。強制」「はい」枕元にはクラスメイトからの寄せ書きが置かれている。『元気になりますように』とあった。明るい性格だから、きっと皆にも好かれているのだろう。「どんどん有名になっていくから励みになってるの。ドラマも楽しいよ。あの俺様キャラ……赤坂さんそのままだし」俺に気を使って話をしてくれる。あまり長くいると逆に疲れさせてしまうのではないか。そんな気もしたが次はいつ来てやれるかわからない。もう少しいてやりたかった。「ガキは寝てる時間だろうが。テレビなんて見ないで寝ろって」ぷくっと頬を膨らませる。「お母さんが録画してくれてるの。パソコンで見てる。……けど、こっそり夜中も見てる。一人部屋だし。部屋が空いたら移動しなきゃ駄目なんだけどね」ふふって笑った久実ちゃん。元気になってほしい。心臓が復活したらいっぱい走らせてあげたい。俺は切実に思っていた。「欲しい物はあるか? 俺、最近、稼いでるからなんでも言って」「最終回の台本かな」「えっ?」答えに困って動揺する俺を見て、くすっと笑った。ガキのくせにからかうなんて生意気だ。「誰と結ばれるのか毎回ドキドキしてるの。赤坂さんのキスシーンとか照れるよ」「お前にはまだ早いんじゃない? おこちゃまなんだから」「キスくらい……中学生でもするよ。同級生でも彼氏いる子いっぱいいるよ」「ませてんなー」俺は久実ちゃんとの語らいが楽しい。最近は仕事が忙しくて神経もピリピリしていた。ストレスが溜まっていて発散できなかったし、笑うこともあまりなかった。久実ちゃんは、六歳も年下なのに話が合う。久実ちゃんはそこら辺の子よりも辛い思いをしてるから大人なのかもしれない。「じゃあ、また来るから」「うん。無理して来なくていいからね
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』14

2 ―二人の距離感―久実十五歳 赤坂二十一歳久実ちゃんが中学三年生になるほんの手前から、ありえないほどCDが売れ始めた。COLORメンバーは次々に仕事が決まっていく。信じられないほど金が入ってくるし、今まで冷たかった番組プロデューサーも笑顔を向けてくるのだ。女が死ぬほど寄ってくる。そんな目まぐるしい変化の中で、俺らCOLORは話し合いを設けることにした。俺と黒柳は大樹の家にお邪魔した。コンビニで買ってきた菓子を広げて雑談をしていたが、シーンと静まり返った。俺らは売れてきている時で、不安だったのだ。この先、メンバーの誰かだけが売れるかもしれないし、辞めたがるメンバーもいるかもしれない。三人の未来を三人だけで語り合う。「俺らの人気は永遠に続かないかもしれない。だけど、三人で協力して生き残り続けたいと思う」大樹は真っ直ぐ俺と黒柳を見て言った。黒柳は「そーだね」とふんわりと返事をする。「俺らを応援してくれる人を裏切ってはいけない。しっかりやっていこうぜ」俺はそう伝えた。久実ちゃんを思い出す。俺らは少なからず誰かの希望になっているかもしれない。「どんなことがあっても乗り越えよう」大樹がそう言う。短い話し合いだったが、三人の意識は同じだということを確認し合えた。俺らはアイドルではなくプライベートモードで会話を始めた。「俺……今好きな子いるんだ。でも……恋愛のこととか大澤社長に言えないよな」大樹が幸せそうな口調で言った。人が人を好きになるのは当たり前のことだからいいが、スキャンダルには気をつけてもらいたい。俺も女とは体の関係があるから人のこと言えないけど。「大澤社長は恋人作るの禁止って言うけど……年頃だしね。俺たち」黒柳が眠そうにあくびをしながら言った。そして、言葉を続ける。「頼むから二人共スキャンダルとかやめてねー。バレないようにしてよー」「そういう奴が一番スキャンダル起こしそうだな」大樹は笑っている。大樹が惚れてる子ってどんな人なのだろう。俺たちはざっくばらんに話した。どんなことがあっても、メンバーと結束して頑張ろうと誓った。自分たちだけが幸せになるのではなく、応援してくれる人を裏切らないために。「じゃあ、仕事あるから俺行くわ」立ち上がった俺は、大樹のマンションを出た。車を運転して次の仕事場へ向かう。カー
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』15

夕方からの仕事は、大手出版社の女性向け雑誌のインタビューが入っている。どこの雑誌でも恋愛観を聞かれて困るのだ。俺の恋愛観は自分でもよくわかっていなかった。一度事務所に行ってマネージャーが同伴をする。出版社に到着するとロビーで迎えてくれる。色んな人に持ち上げられていると感覚が麻痺してくる気がした。俺に対して「よろしくお願いします」とスーツを着た女性が深く頭を下げてくる。俺は最近、後頭部ばかり見ている気がしていた。マネージャーとインタビュアーが名刺交換をする。出版社の来客室まで案内された。ソファーに座るとお茶を出されて早速インタビューが行われる。若い女性が担当で笑顔を向けてくる。カメラマンもスタンバイしていた。「では、よろしくお願いします」「よろしくお願いします」早速、シャッター音が鳴る。インタビュアが愛さない表情で質問を重ねてきた。「赤坂さんはお休みの日は何をされているんですか?」「音楽を聞いたり、ドライブをしたりしています。あとは……病院へ行っています」「病院に……ですか?」「ええ。まだ売れてない頃にファンレターをくれたお子さんがいて……お見舞いに行ったりしています」「偉いですね。素晴らしいです」「別に偉くないです。逆に生き方を学んだ気がしますね」俺は久実ちゃんを利用するつもりはなかったが、売れ始めているからと事務所から言えと言われたのだ。拒否したがそうであればもう会いに行くなと言われてしまい、従うしかなかった。「そうですか。続いて好きな女性のタイプを教えてください」こういうのは苦痛でならない。好きな女性のタイプなんて別にない。俺はこの質問をされるたびに梨紗子に遊ばれたことを思い出す。女なんて何を考えているのかわからない。「一途な方がタイプですね」梨紗子を思い出しつつ、無難なことを言う。「どんな雰囲気の方が好きですか?」「…………」しつこいからイラッとしてつい睨む。「COLORは圧倒的に女性のファンが多いんです。女性の興味があるところなので、詳しく聞かせてください。こちらもお仕事なので」苦笑いされてしまった。心を落ち着けて仕事を続ける。小さなことでイライラしてしまうなんて、相当ストレスが溜まっているのかもしれない。そして頑張って答えを絞り出す。「話が合う人……ですかね」インタビューを終えてビルを出る
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』16

テレビ局について楽屋に案内される時、俺は梨紗子を見かけた。あいつはまだそこそこ売れているようだが、今のCOLORの勢いには勝てないだろう。今日はVTRを観てコメントする番組だったが、梨紗子も一緒だった。俺はずっと引きずっていたけれど、意外と平気だった。仕事を終えたのは二十二時過ぎていて、もう腹も減っていたから早く帰ろうとした時、楽屋のノックが鳴った。立ち上がってドアを開くと梨紗子が立っている。「久しぶり」「…………なに」「挨拶に来たの。またお仕事で一緒になるかもしれないでしょ」過去にあったことは棚に上げてこんな態度を取れるなんて恐ろしい。俺は顔がひきつってしまう。「ああ、よろしくお願いします」すると、梨紗子は俺の胸を押して楽屋に入ってきた。「冷たいね。成人」「…………あのさ、そういうの迷惑なんだけど」ぷくっと頬を膨らませる。こいつはこうやって芸能界で生き残ってきたのだろう。「仕事ではこちらもお世話になるかもしれない。その時はお手柔らかに」見下ろしながら言うと、梨紗子はクスッと笑う。「売れっ子芸能人のオーラ、すごいね。成人。きっともっと売れるね。その時は暴露しちゃうかな」「恐ろしい女だな。可愛い顔して」「最高の褒め言葉ありがとう。じゃあ、また」梨紗子が出て行くとマネージャーが戻ってきた。怪しげな目で見られている。「………挨拶に来たんだっつーの。あんな性格悪い女、願い下げだ」「お願いだから、問題を起こさないでくださいよ」「わかってる」今日は家でビールでも呑みたい気分だ。
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』17

久実side数学の時間。窓際の席の私はぼうっと外を見ていた。天気がいい。さわやかな青空が広がっている私は……いつまで生きることができるのだろうか……。高校へ行って、大学へ行って、仕事をして、結婚をして、赤ちゃんを産んで……。そんな平凡な夢は叶うのだろうか。私は心臓病を発症し、今は投薬治療をしている。入退院の繰り返しだ。お母さんはパートに出ているし、生活も苦しくなっているのは私のせいなのではと思っている。中学三年生になってからは比較的体調がいい。無理な運動はできないけど、なんとか暮らしている。高校へは進学するつもりだが、勉強する価値はあるのかな……。だって……短い人生かもしれないから。赤坂さんも頑張っているから、めげずに頑張るしかないか。私のことを雑誌で話してくれたのは、嬉しかった。赤坂さんからは、いつも勇気をもらっている。本当にファンになってよかった。忙しそうで……なかなか会えないけど、ファンとしてあまり欲張りになっちゃいけない。陰ながら応援しようと思っている。
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』18

昼休みになり、親友の朋代が近づいてくる。ショートカットで運動が得意な女の子でいつも仲よくしてくれていた。お昼はお母さんのお手製の塩分が少なめのお弁当を食べている。COLORメンバーである赤坂さんと交流があることは、朋代にも言っていない。今じゃ大人気者であるCOLOR。私に会いに来てくれることを言うとサインしてっていっぱい言われそうだから。赤坂さんに迷惑はかけたくなかった。「夏休みも受験勉強だよね。めんどいけど、久実と同じ高校行きたいから頑張る」「私も」「久実は頭いいからいいじゃん」「入院中やることなくて勉強ばかりしてたからねぇ」「偉い! 私だったら漫画ばっかり読んでいると思う! マジ偉いわ」明るくて朋代といると楽しくなる。機会があれば、朋代には赤坂さんのことを話そうかなって思っていた。おかずを食べつつ話していると、後ろの席から恋愛話が聞こえてきた。「サッカー部のキャプテンってさ、めっちゃかっこいいよねぇー」「でも、あいつキスしてたよ。二年生のくせに」「マジでー」どんなにかっこいい人を見ても、なかなか赤坂さんに勝てる人はいない。そのせいかわからないけど、人を好きになったことはなかった。というか、こんな体だから恋愛は諦めている。手を繋いで歩いたり、デートをしたり憧れはあるけれど。実際には無理だろうから、変な希望は持たないことにする。
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』19

日曜日、私は自分の部屋で受験勉強をしていた。でも、身に入らずぼんやりしていた。トントンとノックがされ「はい」と言うとドアが開いてお母さんが入ってくる。「久実、赤坂さんから電話よ」「えっ!」嬉しくて立ち上がり、お母さんから電話を受け取った。「もしもし」『おう。元気にしてるか?』「まあまあですかねぇ……」『これから妹とランチするけど、久実ちゃんも一緒に行かないか? 受験勉強頑張ってるんだろ。息抜きしようぜ』「行く!」一気にテンションが上がった。『じゃあ、車で迎えに行くから。お洒落しろよ』電話を切ってお母さんに事情を説明する。「たまには息抜きしておいで」そう言ってくれた。急いで着替えをする。赤坂さんの妹さんに会うのもはじめてだ。お友達になれるといいな……。ドキドキしながらマンションの外で待っていると車が到着した。降りてきた女の子は私よりも大人っぽい。赤坂さんに似ていて美少女だった。赤坂さんも車から降りてきた。ボーダーに白い七分丈のシャツにジーンズ姿の赤坂さん。日に日にイケメン度が増している気がする。見ているだけで眩しい。「妹の舞。久実ちゃんと同じ年だから、仲よくしてやって」「はじめまして! 舞です。よろしくね!」ハキハキ話す舞さん。私も挨拶をする。「よろしくお願いします」人懐っこい性格に、私は安心していた。助手席に乗せてくれて舞さんは後ろに座った。赤坂さんの運転する車に乗せてもらえるなんて、幸せすぎる。一生の思い出になるかもしれない。「人が多い所だと落ち着いて食事できないから、個室がある所でいい?」「はい」赤坂さんがこんな風に気を使ってくれるのが、すごく嬉しくて。とても贅沢な時間に思える。それと同時に赤坂さんが人目を気にしている事実を知って、ますます遠い存在になった気もしていた。私にとってはお兄ちゃんのような存在だけど、赤坂さんは国民的アイドル。車が走り出す。軽快な音楽が流れていた。「久実ちゃんって、めっちゃ可愛いねぇ」舞さんが気さくに話しかけてくれる。「舞さんこそ……赤坂さんに似ていて綺麗な顔してるね」「えー! お兄ちゃんに似てるなんてなんだか嫌だな」「お前、酷いこと言うな」そんな他愛のない話をしながら車はどんどん進んでいた。連れて来てくれたのは横浜のホテル。景色がよくて、私にはまだまだ
last updateLast Updated : 2025-01-21
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』19

日曜日、私は自分の部屋で受験勉強をしていた。でも、身に入らずぼんやりしていた。トントンとノックがされ「はい」と言うとドアが開いてお母さんが入ってくる。「久実、赤坂さんから電話よ」「えっ!」嬉しくて立ち上がり、お母さんから電話を受け取った。「もしもし」『おう。元気にしてるか?』「まあまあですかねぇ……」『これから妹とランチするけど、久実ちゃんも一緒に行かないか? 受験勉強頑張ってるんだろ。息抜きしようぜ』「行く!」一気にテンションが上がった。『じゃあ、車で迎えに行くから。お洒落しろよ』電話を切ってお母さんに事情を説明する。「たまには息抜きしておいで」そう言ってくれた。急いで着替えをする。赤坂さんの妹さんに会うのもはじめてだ。お友達になれるといいな……。ドキドキしながらマンションの外で待っていると車が到着した。降りてきた女の子は私よりも大人っぽい。赤坂さんに似ていて美少女だった。赤坂さんも車から降りてきた。ボーダーに白い七分丈のシャツにジーンズ姿の赤坂さん。日に日にイケメン度が増している気がする。見ているだけで眩しい。「妹の舞。久実ちゃんと同じ年だから、仲よくしてやって」「はじめまして! 舞です。よろしくね!」ハキハキ話す舞さん。私も挨拶をする。「よろしくお願いします」人懐っこい性格に、私は安心していた。助手席に乗せてくれて舞さんは後ろに座った。赤坂さんの運転する車に乗せてもらえるなんて、幸せすぎる。一生の思い出になるかもしれない。「人が多い所だと落ち着いて食事できないから、個室がある所でいい?」「はい」赤坂さんがこんな風に気を使ってくれるのが、すごく嬉しくて。とても贅沢な時間に思える。それと同時に赤坂さんが人目を気にしている事実を知って、ますます遠い存在になった気もしていた。私にとってはお兄ちゃんのような存在だけど、赤坂さんは国民的アイドル。車が走り出す。軽快な音楽が流れていた。「久実ちゃんって、めっちゃ可愛いねぇ」舞さんが気さくに話しかけてくれる。「舞さんこそ……赤坂さんに似ていて綺麗な顔してるね」「えー! お兄ちゃんに似てるなんてなんだか嫌だな」「お前、酷いこと言うな」そんな他愛のない話をしながら車はどんどん進んでいた。連れて来てくれたのは横浜のホテル。景色がよくて、私にはまだまだ
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