All Chapters of 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない: Chapter 191 - Chapter 200

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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』23

「仕事があるから行くけど、また空き時間に来るからね、芽衣子」すっと立ち上がったリュウジ。「もう。いいよ」ポツリとつぶやとリュウジは無表情で見つめてきた。「なにが?」「来なくていい。リュウジが来ると目立つし週刊誌に撮られるよ」「もう、撮られたけど。近いうちに載るんじゃない」なぜに、そんなに堂々としているのだろう。「何か食べたいものあれば持ってくるから、メール届くようにしてね」「リュウジ」「ん?」「結婚したいって言ってごめんね」「……謝るようなことじゃないよ」「幸せになってね」「いろいろ言い返したいところだけど、時間がないから行くから。俺は芽衣子と別れたつもりはないからね。じゃあ、行ってくるね」リュウジは、部屋を出て行った。きょとんとする私。今の話の流れからすると……付き合ってるみたいな口ぶりだ。面倒をみてくれたし、優しいけれど。宝石店で女性といるところも目撃したのだから、流されてはいけない。リュウジは優しいから私を放っておけないのだ。ナースが入ってきた。「ご気分はいかがですか?」「かなりいです」体温計を渡される。脈拍を調べて点滴チェックをしてくれた。「顔色もいいですね」「ありがとうございます……」にっこり微笑んでくれるナースの笑顔に安心して、癒される私。そこにドクターが入ってくる。かなりイケメンで若いのに胸には副医院長と書かれていた。「おはようございます。主治医の高瀬です」「……おはようございます」「昨晩はかなり高熱だったため入院していただきました」そのタイミングで体温計が鳴った。熱は平熱に下がっていた。「食事はできそうですか?」「はい」「それであれば、明日に退院しても問題ないので、今日一日は安静にしていてください」「わかりました」ニヤリと笑い出すイメケンドクターさん。「な、なんでしょうか?」「ずっと心配して付き添っていましたよ。素敵な彼氏さんですね」「はい?」
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』24

「COLORの……黒柳さんですよね」「……いえ、私は彼の事務所の人間でして……そういう関係ではありません」イケメンなのにずかずかと聞いてくるドクターさん。変な人。「お大事に。何かあれば遠慮なく言ってくださいね」出て行ったドクターとナース。私は頭を抱えたい気分になる。何もやることがないと色んなことを考えてしまうのだ。――もう、撮られたけど。近いうちに載るんじゃないリュウジの言葉を思い出す。どうしよう。大事な我が社のアーティストにスキャンダルを作らせてしまうなんて。リュウジの人気がガタ落ちになったら……。せっかく決まった大きな仕事が駄目になって、会社にすごい損害賠償を払うことになるかもしれない。ああ、恐ろしい。どうしたらいいのだろうか。真剣に、不安になる。誰かに相談したいけど……心を開いて言えるような人はいない。困ったなと思っているとドアが開いた。入ってきたのはお母さんだった。「芽衣子、大丈夫なの?」「うん」誰から聞いたのだろう。お母さんは私の顔を見て安心しているようだった。「あんたね、付き合ってるなら言えばいいのに」「誰と?」「黒柳さんと」サーっと血の気が引いていく。もう、ワイドショーで流れてしまったのだろうか。「どうしてそれを知ってるの?」「だって電話くれたの黒柳さんよ。挨拶遅れてごめんなさいって」「え……」リュウジは一体……何を考えているのだろう。親に連絡して挨拶するなんて、どういう気持ちなのかな。期待してもいいのかな……。リュウジ。早く会って話がしたい。話ってなんなのよ。
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』25

リュウジside芽衣子を病院へタクシーで連れて行き、朝になると社長から電話が鳴った。人が少ない階段で電話を折り返す。『リュウジ。朝一で会社来なさい』「……えっと。なにかやらかしましたか?」『自分が一番わかってるでしょ? 目立つ行動をして』「…………はぁ。了解です」電話を切って壁に背をつけた。撮られちゃったかな。病室に行くと、芽衣子は体調がだいぶよくなったようで、安心した。見届けてから事務所に直行する。マネージャーが事務所で待っていた。「おはよー」「呑気すぎますよ……。撮られましたよ。どうしましょう」「べつに……焦ることないでしょ?」クスッと笑った俺の態度がイラついたのかマネージャーは、眉毛をピクピク動かし鼻息を荒くした。社長室に行く。午後からの仕事だから時間はたっぷりある。ノックして入ると大澤社長が「座りなさい」と言った。二人きりの社長室には嫌な空気が流れている。座るとテーブルに置かれたのは数枚の写真だった。俺と芽衣子がタクシーに乗り込んでいるところと、病院に到着したところだ。「明後日発売のものに載せるそうよ。これは、リュウジで間違いないわね」「……間違いないですねぇ」「一緒にいる女性は誰?」何年も誰にも言ってなかったから少し抵抗がある。ドキドキしながら名前を告げた。「……芽衣子」「芽衣子って、芽衣子?」こくりと頷いた俺。社長は意外そうな顔をしていた。「いつから?」「五年前から」「ずいぶんと黙ってたのね。芽衣子とはどうするつもりなの?」「大樹の結婚が落ち着いたら俺もって思ってるけど……芽衣子次第かな」「ちゃんと報告しなさいって言ったでしょ?」「……すみません」
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』26

「大人なんだから恋愛は自由だけど、対処方法……作戦を練る必要があるのよ」大澤社長は眉間に皺を寄せながら言う長。言っていることが正論すぎて何も言い返せなくなった。黙り込んだ俺に社長は深い溜息をついた。「大樹は十一月三日に入籍。リュウジはどうしたい?」どうしたいと聞かれても芽衣子は俺を許してくれるかわからない。合コン男ともうすでにいい関係かもしれないし。爪を噛む。困ってしまうとついついやってしまう癖なのだ。はっとして、手を膝に置いた。「まだ……プロポーズをしてないし。ちょっと喧嘩中で……芽衣子はどう思っているかわからないけど」「あんたねぇ」「……来年。来年……結婚したい」「そう」実をいうと結婚なんてまだまだ先のことだと思っていた。一番、実感が湧いていないのは俺だ。――来なくていい。リュウジが来ると目立つし週刊誌に撮られるよ。病院からの帰り間際、そんなことを言われてしまった。俺は、芽衣子にとって俺は迷惑な存在になりたくなかった。芸能界の仕事をしている俺と交際していることを知られるせいで、平凡な生活を壊したくなかった。冷やかされる芽衣子が可愛そうだと思ったから……。「大樹はライブで交際宣言したけど……リュウジはどうしようかしらね」「うん。しなくていいかな……べつに」「あんたね、人気商売なのよ。しっかりとしてよ」社長は俺の性格を知り尽くしているから、バンバンキツイことを言う。チョットしたことではへこたれない。腕を組んでいる社長を見つめる。「うん…………とりあえず、隠さない方向でいきたい。そして、目立つような会見とかはしたくないかな……」「仕方がない子ね。での、子供だったのに大人になったのね、リュウジも。まずは、しっかりと芽衣子さんと話し合いなさい」呆れながらだったけど、社長は認めてくれた。一つ条件が出され、雑誌に掲載された日に、俺はSNSでつぶやきで報告することになった。
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』27

芽衣子は回復が早く次の日には、退院した。変な病気じゃなくてよかったと心から思う。芽衣子に何かあったら、生きていけない。仕事を終えて芽衣子の家にウマそうなものを買い込んだ。急いで芽衣子のマンションに向かった。チャイムを鳴らすと、すぐにオートロックを解除してくれた。ドアをすり抜けてエレベーターに乗った。明日は雑誌に載るはず。芽衣子も社長から連絡をもらっているだろう。俺からもちゃんと説明しなければいけない。エレベーターが開き降りて芽衣子の部屋に向かう。変な緊張感が襲ってきた。話の流れからプロポーズをすることになるだろう。指輪も持ってきたし。部屋の前についてチャイムを押すとすぐにドアが開いた。「入って」「うん」すぐに中に入れてくれたことに安堵するが、芽衣子は落ち着かない様子だった。リビングへ行くと芽衣子はキッチンでお茶を準備してくれる。俺はお気に入りの定位置のソファーに座った。「体調大丈夫?」お茶を出してくれた芽衣子に問いかける。「うん、大丈夫……。それより」言いかけて、芽衣子は悲しそうな表情を見せた。「社長から電話……もらった。明日は会社休みなさいって言われたの」落胆の声で教えてくれる。雑誌に載ると会社も少し忙しくなるだろう。社長は気を使ってくれたに違いない。芽衣子は俺から距離をとってカーペットに座った。奇しくも今日は、俺と芽衣子の付き合い出した記念日だったりする。芽衣子は覚えているだろうか。「休んだらいいんじゃない? ゆっくりすれば?」「どうしてそんなに呑気なの? 私のせいでリュウジが仕事を失うかもしれないんだよ」今にも泣きそうな顔で訴えかけてくるが、俺は薄っすらと微笑んだ。多少のイメージダウンは覚悟できている。「あ、芽衣子。美味しいものいっぱい買ってきたから食べようよ」「リュウジ。今は大事な時でしょ? 大きな仕事も決まったのに……SNSで報告って……ファンは納得してくれるの?」「うん」「そもそも、私とリュウジはもう終わったでしょ?」不安そうな声で探ってくる芽衣子。芽衣子は今でも俺のことが好きだろうか。ソファーの背もたれに体重を預けて芽衣子を見つめる。「芽衣子は俺のこと……好き?」「……えっ」隙を突かれたような表情をして、目をパチパチとさせている。何度もする瞬き。芽衣子の気持ちが知りたい。「芽衣
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』28

「それ、妹」「リュウジ、妹なんていたの? 家族構成もわからないし……」「俺と母と妹。父親は病気で小さい頃死んじゃって。金持ちになりたくて芸能界に入ったんだよね……」「そうだったんだ。大澤社長は猫みたいなリュウジを拾ったと言っていたけど」「なんだそれ」ふわりと笑って話の続きをする。「売れはじめた時にメンバーの大樹がタイミング悪く子供を作ってしまって。大樹には申し訳ないけど、阻止したんだ。大樹には、悪かったと思ってる。だから、祝福したいって思ったんだ。相手は美羽ちゃんね」「そうだったの……」芽衣子は困ったような表情をする。「それじゃあ、雑誌に載るなんて余計に大変なことだよね」立ち上がった芽衣子はマッサージチェアーに座って頭を抱える。たしかに、あまりいいことではないけど、さほど影響はないと思う。俺は気にしてないし。大樹みたいに女性ファンが多いわけじゃないから。どちらかと言うと、ファンは俺を友達みたいな感覚でいてくれている。握手会で俺の前に並ぶのはメンズばかりなのだ。なぜなのかはよくわからない。「芽衣子」「なによ」俺はそれよりも何よりも、これからプロポーズするのだ。おかしなテンションになってきている。手に汗をかいてきた。もう、はっきりさせないと。「あのさ、これ」ズボンのポケットから小さな箱を取り出す。そして、テーブルに置いた。「これ……もらってほしいんだけど」「なに?」「あのさ、俺いろいろ考えたんだ。俺……芽衣子がいなきゃ生きていけない」元々大きめの目を更に開いて驚いている表情を見せた。「芽衣子。結婚してください」「えっ」指輪の入った箱を開けようとしないから、俺が開けて指輪を指で摘んだ。震えるが立ち上がった俺はマッサージチェアーに座る芽衣子に近づいた。「左手の薬指に入れていいかな」「ま、待って」焦っている芽衣子。マッサージチェアーから立ち上がった。「結婚したいとか言うから焦らせちゃったんだよね。いいんだよ」悲しそうな顔をして受け取ろうとしてくれない。これってプロポーズ失敗ということ?今まで俺が不安にさせてきた代償なのかもしれない。「リュウジなりに考えてくれたのかもしれないけど、もういいの。リュウジみたいなすごい人と五年も過ごせた私は、幸せものだったから」「……俺と結婚したくないの?」「それは
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』29

芽衣子sideこんなにも真剣な表情のリュウジをはじめて見たかもしれない。――俺は、芽衣子を好きになってから一度も気持ちが変わったことがなかった。美羽さんが教えてくれた果物言葉を思い出す。――変わらぬ愛情・優しい心ですって。これ、結構当たるんですよ!もしかしたら、私がリュウジの愛を知ろうとしなかったのかもしれない。リュウジは、私なんかをずっと前から本気で愛してくれていたのかもしれない。「リュウジ……」言葉が続かなくて込み上げてくる。私は、リュウジが好き。何を考えているのか、わからないこともあるけど、すごく優しくて繊細な人なのだ。涙がポロッと零れ落ちてくる。「リュウジ、結婚しよう」「芽衣子……」リュウジは私の手をすっと取って、左手の薬指に指輪をはめてくれた。ピッタリサイズでダイヤモンドがキラキラと輝いている。私とリュウジは微笑み合うとキスをした。抱きしめ合ってお互いの体温を確かめ合う。一番しっくりくる。色んな試練があるかもしれないけど、私のパートナーはリュウジしかいない。「入籍は大樹が先だから来年になるかもしれないけど、堂々と交際宣言したいと思う」「わかった。ありがとう」額をくっつけ合う。そのまま二人でベッドルームに向かった。リュウジに組み敷かれる。久しぶりでドキドキしてしまう。まだ病み上がりだけど、いいよね。目をそっと閉じると唇が重なり合う。お互いの柔らかい唇の感触を確かめ合い舌を絡ませる。体がだんだん熱くなってきた。もっといっぱい、リュウジは触ってほしいと思っていたら、動きを止めた。「……病み上がりだもんね。もう少し我慢する」名残惜しそうに頭を撫でて起き上がった。「芽衣子のこと大事だし」はにかんで言われると、可愛すぎるんですけど!
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』30

その後、リュウジが買ってきてくれた料理を二人で堪能した。リュウジは泊まると言ってくつろいでいる。「あ、合鍵返してね」まるで自分のもののような言い方に笑えてきた。これからも一生、マイペースな彼と過ごしていくのだと思ったら胸が熱くなる。ベッドルームの引き出しにしまっておいた合鍵を持ってきてリュウジに渡した。「はい」「ありがとう。俺、めちゃくちゃ凹んだよ。もう、離れないでね」手をつかんで見つめてくる。私は深くうなずいた。「早く一緒に住みたいな……。芽衣子のご両親にも挨拶しないとね」「リュウジの家族にもね」リュウジの隣に座って肩を寄せ合う。「俺の家族は芽衣子のこと、大歓迎だよ。絶対に」「緊張するけど乗り越えて行かなきゃね」次の日は、朝からワイドショーでリュウジのことが流れていた。リュウジはSNSで何をつぶやいたかチェックする。『好きな人とずっと一緒にいたいので、応援よろしくね』だけだった。軽すぎる。でも、ファンはかなり返信をしてくれていた。『応援するよー』とか『スキャンダルが無かったリュウジさんの初スキャンダルおめでとう』とか。皆さん祝福してくれているのだと思うと心が温かくなった。その夜はさすがに騒ぎになるので会いには来なかったけど、電話はくれた。声を聞くだけで安心する。『二、三日すれば収まるさ』「うん」『俺はファンたちのことを信じてるんだ』そして、最後には『好きだよ、芽衣子』と言ってくれた。
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』31

会社に行く時にマンションを出てみたが、パパラッチはいなくて安心した。私は一般人ということもあり大騒ぎにはならなかったのかな。事務所に行くと雰囲気が違った。皆が私とリュウジの交際の秘密を知ってしまったからだ。「おはようございます」明るい声で入った。「体調不良などいろいろとご迷惑おかけしました」皆さんは「いえいえ」と言って温かく迎えてくれた。挨拶を終えると私は社長室に挨拶に向かった。社長室に入り椅子に座るように促されたが、私は深く頭を下げた。「大事なアーティストに手を出して申し訳ありませんでした」「頭を上げて」大澤社長の声に頭をそっと上げる。表情を確認するけれど穏やかな顔をしていた。「よく五年も黙って耐えたわね」「……本当に申し訳ありません」「芽衣子になら、大事なリュウジをお願いできると思えたわ」社長の言葉に涙を流しそうになった。そして、泣かないように堪えて頭を深く下げる。「本当にありがとうございます」「マイペースな彼だけど、よろしくお願いしますね」「はい」「結婚のタイミングについてはもう少し検討させてほしい」私は結婚を認めてもらえただけでもありがたいと思った。年齢的にも早くしたいという焦りはあるけれど、芸能界の仕事をしている彼を選んだ責任が自分にもあるのだ。「わかりました」その後、部署へ戻って仕事をする。数日休んでしまったせいで感覚を取り戻すのに苦労してしまった。でも、皆さんにフォローしてもらえてなんとか、終えることができた。美羽さんは私と彼のことを自分のことのように心から喜んでくれていた。彼女も過去に辛い思いをしたのに耐えて偉かったと思う。自分のことのように嬉しそうにしてくれた美羽さんにもいっぱい幸せになってほしい。
last updateLast Updated : 2025-01-20
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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』32

   *今日はリュウジと二人で映画を観にきた。キャップに眼鏡をかけているので周りには気がつかれていないようだ。「芽衣子と映画なんて新鮮だね」「うん」映画がはじまると、リュウジは手をつないできた。普通のカップルでは普通のことだけど、私にとってはすごく貴重なことだ。普通のことをしたいと五年の間、想い続けたのだから……。肩を並べて一緒に過ごせる時間を大切にしたいと思う。スキャンダルはそんなに大きな話にならず、平和な日々になった。前以上にリュウジの愛を感じて幸せに暮らせていると思う。映画を見て自宅に戻ってくると、リュウジが玄関で何やらゴソゴソと動き出した。何だろうと思って見つめているとポケットからダイヤモンドのついたリングを出したのだ。「今度ちゃんとプロポーズするから……こういうの苦手でさ。でも芽衣子は何かないと不安になっちゃうだろうから」そう言って私の左手を持って薬指にリングをはめた。こんな気遣いをしてくれると思っていなかったから嬉しくて涙がポロポロ出てくる。すると不思議そうな表情でこちらを見てきた。「どうしたの? このデザイン気に入らなかった?」「悲しくて泣いているんじゃないの。嬉しくて泣いてるの」「そっか。安心した」柔らかな表情でニッコリと笑った。「結婚式をするときはドレスのデザインは一緒に選ぼうね」「うん!」今、こうして穏やかに過ごせるのは色んな人の協力があったからに違いない。しっかりと感謝したいと思う。そして、リュウジを大事にしていこうと誓った。これからも変わらない愛を注ぎ続けたい。「芽衣子、愛してる」「ふふ、ありがとう」人とは比べないで自分たちらしく、人生を作り上げていきたい。             【スピンオフ】黒柳リュウジ、芽衣子編 終
last updateLast Updated : 2025-01-20
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