―スピンオフ― 潔白・純愛『赤坂成人・川井久実編』プロローグいつからだろう、あいつをこんなに愛しはじめたのは……。ただの子どもだったのに、こんなにも好きになってしまった。久実と出会ったのは、俺らがデビューしてまだ間もない、やっとラジオの仕事が決まった時だった。少しずつ知名度を上げてきた頃でファンレターが日々、届くようになり自分は芸能人だと自覚するようになってきたそんなある日、事務所に寄った。そこで一通のファンレターが渡された。コーヒーを飲みながらなんとなく目を通した。 『赤坂さんへはじめまして。川井久実(かわいくみ)です。十二歳です。私は今、病気で入院しています。夜中、眠れない時にラジオを聞いていたらCOLORの赤坂さんが出ていました。頑張れば絶対にいいことがあると言っていた赤坂さんのお話を聞いて勇気をもらいました。どんな人なのかなと思って見たら、すごくカッコよかったです。COLORの音楽も最高です。大ファンになりました。いつも音楽を聞いています。いつか、元気になってコンサートに行きたいです。赤坂さんに会いたい!私の夢は赤坂さんと結婚することです(笑)』丸くて可愛らしい字で綴られていた。小学生の女の子からファンレターをもらったのは、はじめてだった。まだ幼い子どもなのに……頑張ってるんだな。俺らみたいな存在が少しでも勇気づけられていることを知って、胸が熱くなる。自分たちの活動がしっかり届いていたのだ。鼻がツーンなってすすった。俺の母親は病気で亡くなっている。そんな母と重ねていた。全然、親孝行ができなかったなと反省しつつ、封筒を見ると、もう一通手紙が入っていた。『赤坂様久実の母親です。久実は心臓病を患ってしまい現在治療しております。いつも泣いてばかりだった久実が、赤坂さんを知ってから笑顔を見せるようになりました。母親として笑顔を見られるようになったことが心から嬉しいです。本当にありがとうございます。お身体に気をつけて、ますますご活躍されますよう祈っております』封筒の中にはツインテールの女の子の写真が入っていた。大きめな目に長い睫毛の女の子がにっこり笑っている。しかし、顔色が悪い。体が細くて今にも折れてしまいそうだ。写真から、必死で生きていることが伝わってくる。自分が誰かの生きる励みになっているなんて、思わな
最終更新日 : 2025-01-20 続きを読む