「美羽、どうしたの?」「お腹……空いてない?」「お腹よりも美羽が欲してるかも。美羽を補給したいかな……」くすっと笑って大くんは、私の太腿に頭を乗せてくる。安心しきった顔で甘えてくれると素直に嬉しい。柔らかい栗色の毛を撫でる。芸能人はコロコロ髪型を変えるのだけど、大くんは何をやっても似合う。大くんは体を私のほうに向けてお腹に顔をこすりつけてくる。まるで子犬だ。こうやってじゃれ合っている時間は最高に幸せで、いつか消えてしまうのではないかと思うほどだ。得るものがあれば、失うものがあるような気がして不安だった。「ねぇ、大くん。やっぱり、働きたいな。パートでもいいし」「うーん……。ちゃんと指輪してくれるなら考えてもいいけど」「ダイヤのリングはハードルが高いもん」落としてしまったら大変だ。なるべく宝物のように大切にしまっておきたい。「じゃあ、シンプルなの買いに行こうか」「もったいないから、いい」大くんは起き上がってずっと私の瞳を見つめてくる。まるで獲物を仕留めるような百獣の王のような強い視線だった。いつも穏やかで可愛い顔しているのに急に男っぽい顔をすることがあるのでドキッとさせられる。「俺、独占欲が半端ないんだよね……。もしも、美羽に変な男がくっついたら頭がおかしくなっちゃいそう。美羽ってさ、優しいから言い寄ってきたら断れなさそう」笑いながら激しい束縛めいたことを言うのが、大くんらしい。心配しなくてもいいのに。あんして大丈夫なのに。「わかった。リングつけるよ。外出する時はするようにします」「だーめ」私の顔を両手で包み込んでチュッとされた。いちいち行動が甘くて私の心臓は持たないかもしれない。「家の中でも。宅急便の男とかと接触することだってあるでしょ。……美羽、全然わかってない」「だ、大くん、まずはご飯食べよう」「ああ、うん」大くんの独占欲がこんなに激しいと思わなかったけど、私は嫌いじゃない。そんなに好きになってくれてありがたいと思っている。
Last Updated : 2025-01-19 Read more