Semua Bab 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない: Bab 121 - Bab 130

287 Bab

第五章 一生懸命にパフォーマンスする姿3

ライブを終えて打ち上げが終わったのは朝方だった。私と大くんは昼頃にベッドの上で目を覚ます。そっと目を開けると大くんと目が合った。「おはよう、美羽」吐息のような声で囁かれた。もう、誰かに過去を隠して生きていくことはない。私と大くんらしく生きていければいい。大くんの手がそっと伸びてきて頬を包まれた。そして唇が重なり合う。唇が離れると熱を帯びた目で私を見つめる。「……なんか、できそう」「え、何が?」「美羽を愛せそう。途中で駄目だったらごめん」起き上がった大くんは覆い被さってきた。そして私の首筋に吸いつく。チクっと甘い痛みが走る。だけどその痛みは快感へと変わって、私は甘い声が溢れてきた。「無理……しないで」「好きだから、愛してるから、抱きたくなるんだ。すべてから解放されて安心して美羽を愛せるんだって思ったら、案外、早く治ったみたいだな。最後までできるか心配だけど……」嬉しそうに笑った大くんの唇は、鎖骨にキスを落とし、胸に辿り着き、お腹の上に滑り落ちて、太ももにたどり着いた。過去に抱かれた甘酸っぱい果実のような感情とは違って、甘い感情が込み上げてくる。あの頃は、お互い子供だった。でも、必死で愛していたのは間違いない。何度も切れてしまいそうになる快楽の糸を、大くんは焦らしながら速度を上げていく。プチンと切れた糸の先に繋がっていたのは、想像を絶するほどの素晴らしい世界だった。――もう、誰にも邪魔をされずに愛し合えるんだ。一つになれたね、大くん。大くん、私を見つけてくれてありがとう。「美羽、ありがとう」私と大くんは汗と涙にまみれていた。二人を太陽が照らしキラキラとしていた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-17
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第五章 一生懸命にパフォーマンスする姿4

+「今日で退職することになりました」三月三十一日。朝礼で挨拶をさせてもらった。大くんと話し合って家庭に入ることにした。できることなら子供を授かって温かい家庭を作りたいねと、二人で決めた。長い間、お世話になった会社を退職するのは寂しい気もしたけど、家のことを頑張って大くんを支えていく人生を選んだ。私と大くんの婚約が発表されてから、大くんの事務所社長は甘藤に挨拶に来てくれた。甘藤の社長とも理解し合えこれからも、お付き合いして行くことになった。「私はCOLORの紫藤大樹さんと婚約しました。マスコミが来たり、ファンの嫌がらせがあったりと、会社にはいろいろご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ありません。私にとってこの会社は私を育ててくれた場所です。心から感謝します。そして、本当にありがとうございました」頭を下げると皆さん祝福の拍手を送ってくれ、千奈津が花束を渡してくれる。「幸せになってね」「ありがとう」杉野マネージャーも温かく前向きに退職することを受け止めてくれ、笑顔で送り出してくれた。一日仕事を終えてデスク周りを片付けて、もう一度部署を見渡す。明日からはもうここに来ない。新しい人生がはじまるのだ。ちょっと寂しいけど、胸には温かいものが広がっていた。頭を下げて会社を出た。
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第五章 一生懸命にパフォーマンスする姿5

「ただいまー」仕事を終えた私は大くんのマンションに帰って来た。三月はじめから同棲している。慣れない料理をインターネットで検索しなんとか調理する毎日。インターネットさまさまだ。今日、もらった花束を花瓶に入れようと準備していると、下に落として割ってしまった。「ど、どうしよう!」あたふたしていると、テレビには大くんが映っている。あ、大くんっ。目をハートにして見ていると……「おい、危ないだろう」呆れた声が後ろから聞こえて、驚いて振り向くと大くんが立っていた。「お、お帰り」「テレビの俺に夢中になって後ろにいる俺に気がつかないって……」苦笑いされて恥ずかしくなってくる。しゃがんで片付けようと手を伸ばすと「触るな」と怒鳴られる。「危ないから俺がやるから」手際よく片付けてくれる。結局、二人で料理をして夕食を食べていると、寧々さんが乱入してきた。たまに現れて夕食を一緒に食べている。でも、本当に大くんのことは諦めてくれたみたいで今は友達として接してくれているから、安心だ。「今日も二人から声をかけられちゃって。もう、イケメンとか見飽きたから私も一般人と付き合っちゃおうかな。美羽ちゃんみたいな地味な感じのサラリーマンとか。あ、美羽ちゃん、誰か紹介してよ」「地味って言うな。美羽は素朴で可愛いんだから」地味、素朴……うーん、なんか、微妙な気持ち。「あーあ。なんか愛されたいなぁー」こんなに綺麗だからすぐに見つかりそうな気がするのに、運命の人ってなかなか出会えないものなのかもね。寧々さんはお腹いっぱいになって話したいことを話すと、帰っていく。自由人である意味羨ましい。寧々さんを見送りリビングに戻った。ソファーに座っている大くんに後ろから抱きつく。「なーに、美羽」チョコレートのように甘い声で言って上を向いた大くんに引き寄せられてキスをする。唇が逆さまなキス。私の愛を全て受け入れてくれる。そんな大くんが大好きで、たまらない。「こっち、おいで」「うん」大くんの隣に座ろうとしたら、大くんは自分の太ももをポンポンと叩く。「美羽から誘ってくれるなんて嬉しい限りだ」「誘っているんじゃなくて」楽しそうに笑っている顔を見ると幸せな気持ちが胸いっぱいに広がってきた。夫婦になったらまたいろいろな難があるかもしれないけれど、苦しいことを乗り越
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-17
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続編 第一章 小さな嘘と遠慮1

続編第一章 小さな嘘と遠慮部屋には春らしい優しくて温かい光が差し込んでいる。窓から見える空はほどよく白い雲が浮いている。私は押し花しおりが置かれている『はな』のお供えコーナーに手を合わせていた。大くんの家に住むようになってから、お供えコーナーを作ってくれた。生まれて来ることはできなかったけど、お腹の中で生きていた事実は消えないし、いつまでも忘れたくない。「今日も、パパがお仕事を無事で安全に、精一杯頑張ってこられますように」手を合わせてお願いをする。「ありがとう、美羽」後ろから愛しい大くんの声が聞こえて、赤面してしまう。聞かれてしまった。心の声をつい口に出してしまった。あぁ、恥ずかしい。隣に座って大くんも手を合わせた。「今日もママが元気に暮らせますように」優しい言葉。同じ言葉でも大くんが発すると柔らかくなる気がした。耳に言葉が届くたびに胸が温かくなる。この人を好きになってよかったと、いつも思っているのだ。正座したまま見つめ合う。「おはよう、美羽」「おはよう、大くん」日常の挨拶を面と向かって言えることが、こんなにも幸せだとは想像していなかった。予想はしていたけれど、こんなにも素晴らしいとは思っていなかったのだ。好きな人と過ごす時間は贅沢をしなくても素晴らしいものがなくてもキラキラと輝く宝石よりも価値があると思っている。大くんは、私の手を取った。大きい手だ。そして、左手の薬指を擦る。「…………美羽。指輪つけてって言ってるだろ。どうしてつけてくれないのかな」ちょっとだけ、ふくれた大くん。クリスマスにプロポーズしてくれた時に、買ってくれたダイヤのリングだが、どこかに落としてしまいそうでつけられずにいた。大事に保存している。「だって、あんな高価な物……、万が一落としちゃったら怖いし……」「リングをつけてくれなきゃ、俺の女だって証明できないでしょ。他の男に取られたら困るんだよ」そんなに心配することないのに。私は一途だ。私は面白くて、笑ってしまう。「ないない。私を好きになってくれる人なんて、大くんしかいないよ」大くんはムッとして私を引き寄せる。筋肉質な大くんの胸の中に包まれた。相変わらず、いい香りがして、抱きしめられるだけで胸が疼く。「美羽は、自覚が足りない。世界で一番美しいし、可愛いし、いい子だよ」なんだか
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続編 第一章 小さな嘘と遠慮2

大くんの仕事の関係もあるから、まだはっきりと入籍日を決めていないのだ。大くんと住み始めて一ヶ月が過ぎていた。仕事を退職してから今は大くんの家で炊事洗濯をしている。苦手な家事だが、働かず家にいてもやることがないので、自分なりに頑張っているつもりだ。余計な仕事増やしていないか心配だ。私も食卓テーブルについて一緒に食事をする。「えっと、今日はテレビ収録と……雑誌撮影だっけ?」「ああ。あとは打ち合わせがあるよ。年末番組のね」「忙しそうだね」「まあ、仕事をもらえていることに感謝して頑張ろうと思ってるよ」スターの鏡のような人だ。感謝する気持ちがどんどんと大くんを大きくしているのかもしれない。大くんは、週に一度は休みがあるけど、一緒にお出掛けはあまりしていない。オフの日は仕事場で出会った人と飲み会があって忙しそうだ。本来彼はマイペースでゆっくりとした時間を与えなければストレスで駄目になってしまうタイプ。これからもずっと共に暮らしていくことになると思うけれど、家にいる時はストレスをなるべくかけないようにしようと思っている。そうは言っても難しいかもしれないけれど……なるべく頑張っていきたい。それにまだ入籍前だから堂々とは外へ出れない。ドライブとかしたいな。普通にデートしてみたい。芸能人と結婚するのは色々不自由があるけど、でも、好きな人と一緒に過ごせることに感謝しようと思う。「スタジオに一緒に来る?」「……え、いいよ。大丈夫」「そうか。俺は美羽を連れて行きたいけどね」ふわりと笑ってカットしたフルーツをパクっと食べた。大くんの笑顔には本当に癒やされる。食べられたフルーツまでもが幸せそうに見えた。「ご馳走様でした」立ち上がって自分で食器を下げる大くん。時計を見ると、まだ朝七時なのに出かける準備をする。ああ、もういなくなっちゃうのかと思うと寂しくなった。私も食器を下げて大くんの後をくっついて歩く。何かしてあげたいけど、一人でテキパキと行動してしまうので私はまるで金魚のふん状態だ。大くんにとって私は必要ないのではと思ってしまう。大くんの携帯が鳴る。池村マネージャーが下まで迎えに来たみたい。「行ってくるね」玄関まで一緒に行ってお見送りをする。出て行く前に一度振り向いて頭を撫でてくれた。そして、出て行ってしまった。ドアが閉まると
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続編 第一章 小さな嘘と遠慮3

まず、洗濯をしようか。そして、掃除して、夕飯のメニューを考えよう。洗濯物をネットに入れて洗剤を入れる。グルグル回り出す洗濯機をじっと見ていた。コンサートで大くんは私との交際宣言をしてくれて、結婚の意志まで伝えてくれた。私がどんな女性なのかマスコミの報道は加熱していたが、一週間もすれば別の話題にすり替わっていた。世間とはそんなものだ。報道直後は、私は一般人なのにメディアに追いかけられることがあった。でも時間が解決してくれることもあるので、私は自分らしく強く生きていかなければならないと思うようになっていた。仕事は会社に迷惑をかけてしまったので残念ながら退職した。黙って家にいるのは物足りない。掃除、洗濯、料理などすることはあるけれど、それでも時間が余ってしまう。家事をやりながらでもできる仕事があればやりたいけど、大くんは私が働くことについてはどう考えているのだろう。もし仕事をすることになったとして、私の結婚相手が大くんだと知ってしまったらまた会社に迷惑をかけることになるかもしれない。そう考えると簡単にまた仕事に復帰したいと伝えることもできなくて悩んでしまう毎日だった。大事なことなのになかなか話せないでいた。そんなことを考えつつ、洗濯機をかけながら、フローリングを丁寧に拭いていく。大くんは「膝が黒くなっちゃうから」とフローリングはモップでと言われているけど、雑巾で拭いてしまう。なかなか癖が抜けない。午前中で掃除も、洗濯も、終わった。夜ご飯の準備をするのにも少し早いから、ぼーっとテレビを見ていた。――早く、大くんに会いたいな……と思いつつソファーでうたた寝していた。春の太陽は温かくて優しくて抱きしめられているような気分になる。のんびりしすぎている平和な時間。大くんが頑張っているのに悪いな……と思ってしまう。何か自分にできることはないだろうか。家事を極めるなら料理教室に通うとか、何かしなければ駄目な人間になるような気がしていた。インターネットをして習い事を調べていたが、そのまま睡魔に襲われてソファーで眠っていた。
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続編 第一章 小さな嘘と遠慮4

そんな私の意識はスマホの着信音で戻ってきた。「はい」画面もろくに確認しないで、寝ぼけながら出る。『もしもし、美羽?』「だ、大くんっ!」大くんが仕事をしているのに、うたた寝してしまうなんて申し訳ない。『声がガラガラだけど……調子悪い?』「え、いや……」微かな変化にも気がついてくれる。それほど、いつも私のことを思ってくれていると改めて知った。寝ていたなんて、言えない。大くんに嫌われたくない。そんな気持ちが湧き上がって、つい嘘をついてしまった。「ちょっとだけ、微熱があって横になってたの……。でも、心配するほどのものじゃないから。ごめんね」『朝から具合悪かったのか? 無理しないで病院に行ったほうがいい。一人で大丈夫か?』心底心配している声に胸を痛める。嘘なんてつきたくなかったのに。私ってズルイ。こんな気持ちになるなら働きに行ったほうがいいんじゃないのかな。でも……会社にまた迷惑をかけてしまうかもしれない。堂々巡りだ。「大丈夫。少し横になれば楽になるから。心配しないで」『うーん……。とりあえず、今日はご飯の支度をしなくていいから。ゆっくり寝てろよ?』「えっ、大丈夫だよ。ちゃんと準備しておく。……ところでどうしたの?」仕事をしている時間帯に電話をしてくるのはとても珍しいことだった。たまに空いた時間があれば連絡くれることはあるけれど。「用事があったんじゃないの?」『いや。美羽の声が聞きたかったんだ。無性に……。家に帰ったら会えるのにな』仕事を辞めて急にやることがなくなった私のことを気にかけてくれるんだ。大くんに嘘をついてしまったことで胸が痛くなる。私ってヒドイ人間だ。『じゃあ、そろそろ戻るから。愛してる』甘い言葉を囁いてくれた大くんの背後から『ラブラブだな』とメンバーの赤坂さんの声が聞こえた。『当たり前だろ』茶化されているのに普通に答えている。一緒に仕事をしているのだろう。雑誌撮影かな。単独の仕事じゃなくてCOLORとしての仕事なのかな。「頑張ってね。帰って来るの、楽しみにしてるから」『ありがとう。本当に無理するんじゃないぞ』通話を終了して、時計を見ると十五時だ。そろそろ夕飯の支度をしようかな……。あぁ、大くんごめんね。
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続編 第一章 小さな嘘と遠慮5

スマホのインターネットで材料を検索してメニューを決める。冷蔵庫に鶏肉が入っている。これを使って何かを作りたい。しかも、なるべくヘルシーなものがいいよね。メニューを決めて、キッチンで鶏肉の皮を取る。油は落とさなきゃ。味付けには自信がないけど、大くんが喜んでくれることを想像すると胸がジンっとなった。大くんのために頑張る。大くん、大好き。包丁で材料を切り始めた。料理はあまり得意じゃないけれど美味しいと喜んでくれる姿を想像する。失敗しても文句を言わないで全部食べてくれるのだ。こんなに優しくて素敵な人ってこの世の中にいるのだろうか。「ちょっと、何やってるんですかっ」いきなり背後から声が聞こえてびっくりした。幻聴でも聞こえたのかな?振り返ると、池村マネージャーが両手に買い物袋をぶら下げて立っていた。「って、え! 池村マネージャー……、ど、どうされたんですか?」「どうしたじゃないですよ。紫藤が……あなたが熱を出して寝込んでいるかもしれないからって、届けてこいと言われたんです」袋を差し出される。ゼリーやスポーツドリンクがいっぱい入っていた。うわ……大くんと池村マネージャーに気を使わせてしまった。「起こしたら可愛そうだからって鍵を渡されて、そっと入ってとのことでして。なのに、なぜに料理をされているんですか! 寝てください! あなたが倒れると紫藤が心配するじゃないですかっ」大くんが心配してここまでしてくれるとは思わなかったから、驚いてしまった。大くんに悪いと思ってついた小さな嘘。それで第三者に迷惑をかけてしまうなんて、思わなかった。「ご、ごめんなさい」「は?」私が急に謝り出したので怪訝そうだ。「熱は、ないんです……」「はあ? じゃあ、紫藤に心配させたくて嘘をついたんですか?」冷静な池村マネージャーを怒らせてしまった。ものすごい顔で睨んでいる。余計な仕事を増やしたので怒りたくなる気持ちも理解できた。私の行動が安易だったと深く反省する。「……違うんです……いろいろとわけがあって」「どうして紫藤は、あなたを選んだのでしょうね」チクリと胸に刺さった言葉。たしかに、池村マネージャーのようにしっかりした女性であればもっと支えてあげられたのに。そのほうが大くんも幸せだったかもしれない。せっかく一緒に暮らすことができるようになったのに、私
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続編 第一章 小さな嘘と遠慮6

料理を終えてソファーで大くんの帰りを待っていた。今日は二十二時頃には、戻ってきてくれるらしい。嘘をついてしまった理由を聞かれるだろう。大くんは許してくれるだろうか。テレビもつけないで無音の中、クッションを抱えて座っていた。ドアが開いた音が聞こえた。大くんが帰って来たのだと嬉しくなったけれど、嘘をついたことが後ろめたくて立ち上がったけれど迎えに行けなかった。……どうしよう。すぐに大くんがリビングに入ってくる。「ただいま、美羽」「お、お帰り……」下手くそな笑顔を浮かべて大くんに近づいていくと、大くんは手を伸ばして私の額に手を触れた。気まずくなって視線を落とすと、夜ご飯を買ってきてくれたらしく、袋が手にあった。「本当に、熱ないな。池村が嘘をついたのかと思ってしまったよ」大くんは、私を信じてくれたんだ。それなのに、なんてヒドイことをしてしまったんだろう。キッチンに目を向けた大くんは眉をひそめた。「ご飯を作る余裕もあったんだな。まぁ、元気でよかったよ」優しすぎる笑顔に泣きそうになってしまった。ちゃんと謝らなきゃ。大くんを見つめると、真面目な顔をされた。大くんは明らかに感情を出さないようにしている。心の中では怒っているのだろう。「美羽、でも……ちゃんと話をしようか」「うん……」「こっち、おいで」手を引かれてソファーに並んで座った。大くんと私は体ごとお互いを向き合う。真剣な顔で笑顔は浮かべずまっすぐに見つめられた。緊張して唇が乾いてくる。手が冷たくなってきてぎゅっと握った。「美羽は嘘をつかない子だと思ってたから。俺……ちょっと、ショック受けてる。きっと、理由があったんだと思うけど……正直に言ってほしい」小さな嘘だったのに、愛しの人を傷つけてしまった。よくないと思っていたけど、改めて嘘をついたことを後悔する。一つ頷いて隠さずにきちんと伝えようと心が決まった。「実は、電話をもらった時にうたた寝をしていたの。大くんが一生懸命頑張って働いているのに、何もしないで寝てしまうなんてヒドイでしょう? だから、咄嗟に嘘をついてしまったの。ズルイよね、私……。本当にごめんなさい」大くんの顔から緊張の色が消えていく。私の手を自分の手の平に乗せてもう一つの手で包み込んでくれた。大きくて温かい。「そんな理由だったのか。気を使ってくれたん
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続編 第一章 小さな嘘と遠慮7

「大くん……私ね、やっぱり家にいるだけだと申し訳ない気持ちが出てきちゃうの。だから、働きに行きたいと思って」私は正直に自分の気持ちを伝えてみた。「え……マジで」驚いたような、困ったような表情の大くん。背もたれに体重をかけて少し考えた顔をする。やっぱり大くんは家にいてほしいタイプなのだろうか。「だってこれから忙しくなるよ。結婚して、子供産んで……」「結婚する日も、まだ決めてないし」ついつい言ってしまった本音。正式に夫婦となるまで不安だったりする……。せめて入籍日を決めておきたい。仕事の関係でいろいろあるのだろうけど、ちゃんと決めておきたいこともある。「……そうだよね。入籍日はせめて決めたいよな。俺は今すぐにでも入籍してしまいたいと思ってるんだけど」体をぐっと起こして私に近づいてくる大くん。「二人にとっていい日にしたいよな。希望の日ってあるか? 美羽の誕生日とか……。事務所にもしっかり相談しないといけないし」いつがいいか、私は首をひねりながら考えてみる。「十一月三日にしない?」「俺らが付き合った日?」「うん。入社した時に果物言葉を先輩に教えてもらってその時に真っ先に調べたのが、大くんと付き合った日なの。それでね、十一月三日が『相思相愛』だったの。私達にとっていい日に入籍したいな」ニコッと笑って「わかったよ、美羽」と言ったあと、優しく抱きしめてくれた。本当に私と大くんは夫婦になるんだ。心の中に温かい気持ちがあふれ出す。顔を上げると、微笑んでいた。お互いに目を閉じてキスがはじまった。私の髪の毛に手を差し込むと、大くんは、もっと唇を押しつけてくる。『はな』を産めずに過ごしたあの日から遡って、会えなかった時間を埋めるように愛してくれていると感じた。遠慮がちにしてきたキスは激しさを増す。唇を割って入ってきた舌と舌を絡めていると、だんだんと甘い気分になってきた。大くんは帰って来たばかりでご飯も食べていないのにいいのかな。不安になって目を開けると、大くんも目を開けて見ていた。
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