All Chapters of 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない: Chapter 141 - Chapter 150

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続編 第二章 愛するからこその独占欲8

   *今日は事務所に所属しているタレントさんや、働いているスタッフが集まって呑み会が開かれていた。大会議室でオードブルが広げられていて、缶ビールを片手に雑談をしている。「美羽さん、お疲れ様」「お疲れ様です」声をかけて回っている大澤社長は、私のところへも話しかけに来てくれた。「仲よくやってる?」「はい、お陰様で」「そう。楽しく暮してね」そう言ってまた次の人のところへ行ってしまう。過去にあんなに反対されていたのに今ではこうして普通に話しかけてくれるのが不思議でたまらない。でも私たちが乗り越えなければならない難だったのかも。テレビで活躍されているタレントがいっぱいいて、まるでテレビの中に入ったような気持ちになった。若いタレントさんが近づいてきたのでお酌をする。今売れ始めているイケメン俳優だ。「ありがと」「いえ」ニヤリとして顔を近づけてきた。「お姉さん……見たことない顔だな。最近、入ったの?」「……はい」「へぇ。色が白くて美人だね」「ありがとうございます」いかにも軽そうな雰囲気で、対応に困っていると、大くんがさり気なく近づいてきた。若手俳優は「おはようございます」と礼儀正しく挨拶すると、大くんは「おはよう」と言って微笑んだ。「話している最中悪いけど、彼女のこと借りるね」大くんは私の手を引いて若手俳優から引き離した。そして、廊下へと連れて行かれる。「美羽、この業界は色んな人がいるから気をつけろよ」「べつに話しかけられただけだよ」額をツンと人差し指で突かれた。「危機感が少なすぎるんだって。あいつ美羽のことそういう目で見てただろ。気をつけろよ」「ごめんなさい」見つめ合っていると「お熱いこと」と声が聞こえて驚いて見ると、黒柳さんが壁に背をつけて腕を組みつつ見ている。それでも、大くんは慌てる様子はない。私は驚いてそばから離れた。「黒柳もそろそろ結婚してあげなよ。彼女もお年頃だろ?」その口ぶりから大くんは、黒柳さんが付き合っている人を知っているようだ。誰にも言うなと言っているはずなのにメンバーは知ってるのかな。「大樹……。俺と芽衣子が付き合っているって教えたの?」「いや」「そう」つぶやいた黒柳さんは、私を見つめた。「そういうことなんだ。でも、誰にも言わないでね」私はとりあえずコクリとうなずいたが、芽衣
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第二章 愛するからこその独占欲9

黒柳さんは、芽衣子さんのことが好きなんだ。二人が両想いだと知って少し安心した。それならきっとうまくいくはずだ。でも早く掛け違えたボタンを直さなければ二人は別れてしまうかもしれない。私に何かできることはないのだろうか。「大樹は言わないのか? 事務所の人間に」「……言おうと思う。社長は美羽が大変だから言うなって。でも、もう限界。俺の美羽に手を出そうとする奴が多い」「ははは」気怠そうに笑った黒柳さん。「独占欲が強いな、大樹」「お前が野放しにしすぎなんじゃない?」クスクスと笑い合っている二人。仲がいいようだ。そこに赤坂さんまで登場する。赤坂さんは見るからに俺様オーラを放っている。「頑張ってるんだってね、赤坂」黒柳さんがやんわりした声で言うと赤坂さんは鼻で笑う。「まあな。お前らみたいに余裕があるわけじゃねぇーから」COLORが全員揃って目の前で話していると迫力がある。やっぱり、大くんってすごい人なんだと実感した。「大樹がさ、美羽ちゃんが他の男に狙われるのが嫌だからついに皆にバラすらしいよ~」黒柳さんが面白がってふんわりと笑いながら言った。「え?」「いいじゃん。どうせなら、今言っちゃえよ」赤坂さんは革のパンツのポケットに手を入れて、唇を片方だけ上げて笑う。俺様発言連発に私はきょとんとしてしまった。「それ、いいかも。今皆に伝えるチャンスだな」大くんはそう言って、私の手を引いて中へ入って行った。パーティーをしている場所に移動すると、ここには身内の事務所の人しかいなかったけれどたくさんの人が集まっている。「話があります」大くんがマイクで言うと静まり返り、視線がこちらに集中した。私は突然のことなので驚いて止めることができなかった。「俺がライブで結婚宣言した女性は、こちらにいる美羽です」皆さんは堂々と言うと目を丸くしている。一気に注目を浴びて顔が熱くなってしまった。大澤社長は笑っている。「大樹ったら、もう。困った子」それから、揉みくちゃにされて質問の嵐に対応するのが、大変だった。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心1

続編第三章 嫉妬しちゃう心暑い……。かき氷食べたいな……。仕事を終えて買い物をしながらそんなことを考えていた。大くんは甘いモノをほとんど食べない。だから私も付き合って食べないようにしているけれど、たまに食べたくなってしまう。女性は甘いモノが大好きな人が多い気がする。七月に入り、ますます気温が上昇しているせいか、湿気が多くて具合が悪くなる。今日は冷麦でもしようかな。そう思っている時、大くんからメールが届いた。『友だちに会うことになった。今日は夕飯いらないよ。なるべく早く帰るね』なんだ、一人で夕飯か。寂しいな……と思いつつ、一人なら作る必要はないと思ってお弁当を購入した。きっと、大くんと暮らしてなかったらだらしない食生活かもしれない。お惣菜かファーストフードか、コンビニ弁当。栄養バランスを考えないで食べていただろうなと想像し苦笑いをしながら自宅に戻った。家に戻ると一週間分の疲れが出てしまったのか、お弁当をテーブルに置いてうとうとしてしまった。「……う、……みう、美羽!」呼びかけられて体が揺すられ、目を覚ます。大くんが心配そうな顔で覗きこんでいた。「……あ、やだ。眠ってしまってた……」壁の時計を見ると深夜一時だ。明日は休みだから夜更かししても平気だけど……大くんは疲れてないかな。「お帰りなさい、大くん」大くんは私をふわりと包み込むように抱きしめてくれた。安心してまた眠気が襲ってきたのだけど、甘い匂いがして一気に意識がはっきりしてしまった。……女の人の香りがする。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心2

「遅くなってごめんな」「……いや、大丈夫だよ」抱きしめられたままいるのが嫌で、大くんから離れる。すっと立ち上がった私は目をそらす。「明日も早いでしょ? 早くお風呂入ってきた方がいいよ」そっけなく言ってキッチンへ行く。友達に会うって言ってたけど……。匂いが服に移るほど密着していたのだろうか。もしかして――浮気?大くんはそんなことしない人だよね。「美羽。弁当食べようと思ってたのか?」テーブルに置きっぱなしだった弁当を見ながら大くんは問いかけてくる。「……たまにはね」「やっぱり、美羽を一人にしておけないな。ジャンクフードとかばっかり食べて体悪くしそうじゃん。俺が側にいないとね。美羽には俺が必要だな」そう言って後ろから抱きしめてくる。少しアルコールも入っているみたい。友達って誰なの?聞きたいけど聞けない。いちいち束縛していたら、嫌な女だと思われそうだし。結婚するんだからもう少し自信を持つべきだと思う。「大くん、お風呂どーぞ」「うん。美羽、疲れているならあまり無理するんじゃないぞ」「ありがとう」「じゃあ、風呂入ってくる」リビングから出て行った。私は、はぁと溜息をついてソファーに座る。無造作に置かれた最新の機種ですごく薄いスマホに目がいった。中身をみたい衝動に駆られる。けど、そんなことはしたくない。婚約者であってもプライバシーは必要だと思うから。そう思いつつ真っ暗な画面を見ていると急に光った。無料通話アプリが作動し画面にメッセージが書かれていた。『紗代:今日はありがとう。また会いたい』短い文面だったためかすべて読めてしまった。画面はすぐに暗くなる。……紗代って誰?
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心3

二人きりだったわけじゃないよね。疑いたい気持ちが出てきたけれど大くんを信じよう。立ち上がってお弁当を冷蔵庫に入れる。食べる気が湧かずミネラルウォーターをグラスに注いで飲んだ。そこにバスルームから戻ってきた大くんが頭を拭きながら近づいてくる。「俺にも一口頂戴」ニコッと笑って私の手からグラスを抜き取った。そして喉を鳴らして美味しそうに飲んでいる。モヤモヤしている気持ちが嫌だったから、意を決して質問しようと思った。声が震えないように冷静を装って質問を投げかける。大くんはミネラルウォーターをおかわりしようと冷蔵庫から取り出して、グラスに注いだ。「……今日って、何人集まったの?」さり気なく、普段の会話のように話しかける。二人以上であれば安心できるし、勘違いをしたままでいたくない。水を飲み終えた大くんは平然と答えた。「二人だよ」「大くんと、あと二人の友達が来たの?」「いや、俺ともう一人」……二人きりだったってことだ。サーッと血の気が引いていくような感覚に襲われた。これ以上質問を重ねてもいいのだろうか。もっと悲しい気持ちになるかもしれない。それなら聞かないほうがいいんじゃないか。「そう。楽しかった?」私は嘘の笑顔を作りながら会話を続ける。「うーん。どちらかと言うと話を聞いていたって感じだからな。定期的に話を聞いてやらないと爆発しちゃうみたいでさ。困ったやつだよな」ずいぶん仲のいい友達で、付き合いが長いようだ。私の知らない大くんを知っている人なのかもしれない。大くんはソファーに座ってスマホを手に取った。さっき届いたメッセージを読んでいるようだ。すぐに返事をしている。大くんはマメな性格だから深い意味はないと思うけど……女の人に返事を書いていると思うと、胸の奥底から嫌なものが沸き上がってくる。「お風呂入ってくるね。大くん、疲れてるだろうから、先に寝ていていいからね」目を合わせることもできずにバスルームに逃げ込んだ。気持ちを落ち着かせるように熱いシャワーを思いっきりかけた。「……紗代って誰なのよ……」そして、私はもう一度ため息をついた。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心4

寝室に行くと大くんはベッドに寝ている。さすがに疲れてしまったのかもしれない。起こさないようにそっとベッドに入り、大くんに背を向けて目を閉じた。寂しい気持ちになってくる。自分以外の女性と二人きりだったなんて……たとえ友達だったとしても腹立たしい。こんなふうに思う私ができていないのだろうか。大くんは、私が男友達と二人きりで食事していても悲しくないのかな。背中に大くんの体温が感じられた。大くんは私にピッタリとくっついてくる。真夏でも関係なく体を寄せてきた。「……起きてたの?」小さな声で質問する。「うん」「寝ててもよかったのに」「美羽が元気ないから」その言葉に固まってしまう。気がつかれないようにしてたんだけど、大くんは鋭い。「元気だよ……」それでも、強がる私。大くんは抱きしめてくる。そして耳朶を舐めてきた。そういう気分じゃないのに。熱くなっている大くんの指先が私の体を布越しに触れる。甘い痺れに体をよじった。それでも大くんは私を快楽の世界へ連れて行く。唇からは吐息が漏れる。「んっ……」「美羽、気持ちいい?」大くんはズルイ。私の快感ポイントをすべて知り尽くしているのだから。そんなことで元気を取り戻させようとするのは卑怯だ。「いや」ちょっと本気で嫌がってみる。「なんで?」「つ、疲れてるの!」「……そっか。ごめん」自分から拒否したのに離れられると切ない。そのまま距離を置いて私と大くんは眠った。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心5

朝、目が覚めると大くんは隣にいなかった。ぼうっとする頭に声が聞こえてくる。「紗代が決めることだと思うぞ。……ああ、うん」――紗代。その名前が耳に入ってきて私は目に涙が滲んできた。嫌だ……。他の女の人と、馴れ馴れしくしないでほしい。朝から電話をしてくるなんて……それだけお互いに信用している存在ということだ。大くんには、たくさんのファンがいる。それは応援してくださっているからと受け止めているけれど、プライベートで仲よくしている女性とは話が違う。タオルケットをぎゅっと握って悔しさを押し殺す。……大くんが他の女性に気を取られているかもしれない。どうしよう……。私と結婚するのを今更迷っているのだろうか。「今晩は無理だって。仕事も忙しいし」奪われたくない。そう思ってベッドから出ると、私は大くんの元へ行った。「…………」無言で大くんを見つめると、困った表情をして私を片手で抱きしめた。だけど、電話はまだ続けている。「もう、時間ないから切るぞ。とりあえずまた連絡するから」『待って大樹!』電話から聞こえてきた声は可愛らしい女性の声だった。しかも、呼び捨てにしているなんて。ありえない。私は大くんの胸をぐいっと押して離れた。「ごめん。切るね」大くんは電話を切った。そして、私の近くに寄ってくる。壁に追いやられ、私の顔の隣に両手をついてじっと見つめられた。「おはよう。起きたんだね、美羽」「…………」大くんから目を背ける。空いてる手で顎を持たれ視線を合わせられた。「どうして俺から逃げようとしたの?」「そんなつもりじゃない。……もういい」「何がいいの?」ちょっと怒った顔をされて、思わず泣きそうになる。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心6

大くんは私に隠し事をしているのに、どうして堂々としているのだろう。「はっきり言えよ。何か言いたいことがあるんだろ?」強い口調で煽られて私はつい口を開いてしまった。「……昨日、友達って誰……なの?」声を振り絞るように問いかける。大くんは顔色を変えずに「友達」と言う。「……女の人なの?」「うん」「女の人と二人きりだったの?」「うん」当たり前のように言われたのでそれ以上何も聞けなくなった。間違っていることは何もしていないという態度だ。「……そうなんだ」「隠すことないから言うよ。高校時代に付き合ってた子」「え?」――元カノ?別れた人と友達関係になることは、普通のことなのだろうか。大くんは壁から手を離して直立で私を見た。「俺のこと信じられない?」「そんなんじゃないけど」理解できない。私を置いて元カノと二人で会うなんて。しかも、香水の匂いをさせて。ヒドイ。思わず大くんを睨んでしまう。「なに?」大くんは怪訝な顔をした。「……ちょっと考えさせて」「何を?」「私には過去にお付き合いしていた人がいないの。だから、別れても友達だなんて意味がわからない」大くんは、時計を気にしている。もうそろそろ行かないと遅れてしまうのだろう。「また夜に話そう」そう言って家を出て行った。一人になってしまった部屋は、静まり返っていて悲しい気持ちになる。私はなんで嫉妬深い発言をしてしまったのだろう。付き合って、別れて……と言う経験がある人はどうなんだろうか。自分がスタンダードじゃないのは、わかっている。でも、考えてもやっぱり別れた人と友達になるなんて理解できない。玲か千奈津に聞いてみようか。私も仕事にいかなきゃ。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心7

仕事から帰ってきて夕食の準備を終えて私はソファーに腰を下ろした。大くんが帰って来る時間が近づいてくると、そわそわするスマホを持った。大くんと顔を合わせるのが気まずくて玲に会えないかメールをするも駄目だった。千奈津も予定があった。――大くんに会いたくない。二十時になり私は頭を冷やしたいと思って外に出た。と言っても、外は蒸し暑くて汗が出てくる。しばらく歩いてスマホを家に置いてきたと気がついた。「連絡できないや……。今、何時なんだろう……」長い時間歩いた気がする。それでも帰る気になれずに歩き続けた。すると、一台の高級車が止まった。窓が下がり声をかけられる。「あれ、美羽ちゃん?」「あ、赤坂さん……」芸能人オーラが漂っている。サングラスを外して私を見つめる。「こんな時間に一人で何やってんの?」「……いろいろありまして」「大樹は?」何も答えずにいると赤坂さんは察したように微笑む。「喧嘩?」「私のワガママなんですけど」「マジ? 話聞いてやるか。とりあえず、夜に一人でふらついてると危ないから乗って」「ありがとうございます」普段は男の人の車には乗らないけれど、赤坂さんはCOLORのメンバーで信じられるからと乗せてもらうことにした。「で、大樹には外出してくるって伝えてあんの?」首を横に振る。「マジ? すっげぇ心配するぞ」「どうでしょうか……」車をしばらく走らせると赤坂さんが提案してくる。「話聞いてやるけど、車の中だと雑誌に撮られるかもしれないから俺の家来るか?」「えっ?」肩を震わせて笑っている。「悪いけど親友の女を襲うような悪趣味なことはしねぇーから」その言葉を信じて赤坂さんの家にお邪魔させてもらった。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心8

「散らかってるけど、どーぞ」1LDKだが部屋は広い。でもたしかに少し散らかっていた。掃除してくれる彼女とかいないのだろうか。黒いソファーに腰を下ろす。赤坂さんは、冷たいお茶を出してくれた。「俺、ビール呑むけどいい?」「どうぞ」「送っていけないから帰りはタクシーで帰れよ」私の目の前で腰を下ろしてあぐらをかいた。「で、どうした?」「実は大くん……元カノと二人で会っているそうなんです。友達だと言っているんですが、私は別れた人と友達になるなんて理解できなくて」ふんっと鼻で笑う赤坂さん。ビールを一気に呑み干す。「まあ、俺も美羽ちゃんと同じ考えだけど。大樹は別れた人とも友達になれるんじゃねぇーの?」私と同じ考えの人がいて安堵した。「そうなんですけどね。二人きりはやめてほしい……」「ずいぶんハッピーな悩みだな。笑わせんじゃねぇ―って」自分では一生懸命悩んでいるつもりなのに他人にはくだらないことに思えるらしい。恥ずかしくなってうつむく。「悪い。きつかったか?」「いいえ。その通りだと思います」立ち上がって二本目のビールを開けた赤坂さんは、つぶやくように自分の話をはじめてくれた。「美羽ちゃんは好きな人と一緒にいられる。それってすげぇ幸せなことなんだぜ。俺はなかなか会えないから……」この話しぶりだと恋人がいるような口調だ。遠慮しながらも私は質問してみた。「彼女さんは……?」「アメリカ。正確には彼女じゃない。俺が惚れているだけで、あいつはどう思ってんのか不明なんだよね」よほど素敵な人なんだろうな。女優さんとかなのかな。ハリウッドとかで活躍しているとか?「大樹は正直に元カノだと言ったなら、怪しい関係ではないんじゃないか?」「……そうなんでしょうか?」自分も感情的になっていたから冷静に判断できなかったかもしれない。「逃げないでちゃんと話し合う必要があると思うぞ」「……はい」赤坂さんが言ってくれた言葉を噛みしめる。大くんが何を話すかわからないけれど、怖がってはいけない。「俺の好きな人、心臓病なんだ。移植でアメリカにいるわけ。……元気になって戻ってきてくれたら俺の女になってくれって言うつもりだけど。早く……会いてぇな」切ない顔。寂しそうな声。赤坂さんに比べたら私なんて幸せなのかもしれない。デスク周りには心臓病に関する書物が置い
last updateLast Updated : 2025-01-19
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