All Chapters of 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない: Chapter 151 - Chapter 160

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続編 第三章 嫉妬しちゃう心9

大樹side――私には過去にお付き合いしていた人がいないの。だから、別れても友達だなんて意味がわからない。その言葉を思い出しつつテレビ収録をしていた。仕事を終えて急いで帰る支度をする。正直に元カノだと伝えた俺がバカだったのかもしれない。たしかに高校時代に付き合っていたし男女の関係もあった。でも今は本当に友達としか思っていない。自分はそう思っていて、紗代はどう思っているのか考えたことはなかった。俺がライブで交際宣言をして結婚すると言ってから「会いたい」と頻繁に言われるようになった。深い意味はないと思っていたが、二人きりで会った夜に抱きついてきた。そして泣きながら「大樹との思い出をずっと引きずっていた」と言われたのだ。女というのは、よくわからない。紗代は新しい恋をして幸せだと言っていたのにな。「ただいま」家に戻ると部屋は真っ暗だった。食べ物が出来上がった匂いはするのに。不思議に思って、リビングの電気をつけるが美羽の姿はない。ベッドルームを見てもいない。「……美羽?」俺はだんだんと不安になりトイレやバスルームを確認するも、どこにもいなかった。「美羽!」時計を見ると二十三時が過ぎていた。こんな時間に一人でどこ行ったんだ?混乱しつつ電話をかけてみるとテーブルに置かれたままの美羽のスマホが鳴った。「嘘だろ……」美羽を失った日のショックが蘇り冷静でいられなくなる。俺は慌てて外に出るが右を見ても左を見ても姿はない。どこに行ったんだ?気持ちを落ち着かせようと思って駐車場に行き車に乗った。ハンドルを乱暴に叩く。「……美羽っ」不安にさせてしまったことに深く反省する。お願いだから、帰って来てくれよ。一人で歩いていたら危ない。変な奴に襲われてしまうかもしれない。早く、早く見つけなければ……!エンジンをかけた時、赤坂から電話が来た。「もしもし、今忙しい!」電話を切ろうとしたが赤坂は『美羽ちゃんなら、俺と一緒にいる』と言った。どういうこと?美羽が赤坂と一緒にいる?「はあ? 美羽を返せ」『人聞き悪いな。俺もう飲んだから迎えに来いよ』「どこだ?」『俺の家』その言葉を聞いて、想像を絶するほどの怒りがこみ上げてきた。俺の女に手を出そうだなんてたちが悪すぎる。電話を切って赤坂の家まで車をぶっ飛ばした。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心10

美羽side「大くんは……怒っていましたか?」「俺が美羽ちゃんを誘惑したと思ってるみたいだぞ。お前らのゴタゴタのせいで巻き込まれた俺の気になってみろって。ったく。弁解してくれよ」缶ビールがカランと転がる。赤坂さんはお酒に強いようだ。まるで水のように飲んでいる。そして、タバコを吸いまくっていた。「大くんは……赤坂さんの好きな人の話、知っていますか?」「言ってない。言ったらあいつら、俺らも金出すって言いそうじゃん」「協力したいと言うと思います」「でも、まあ……今はアメリカに行ったし教えてやってもいいかな。機会があれば美羽ちゃん言っといて」会話をしていると、激しくチャイムが鳴った。クスッと笑った赤坂さんは気怠そうに立ち上がって「お迎えが来たぞ」と言ってオートロックを解除する。そのまま玄関の鍵を開けて戻ってきた。面倒くさそうにソファーに座る。すると、チャイムがふたたび鳴って玄関のドアが開いたと思うと、大くんが入ってきた。「おい、てめぇ!」怒鳴りながら一直線に赤坂さんの元へ行き、胸ぐらをつかんだ。私は慌てて大くんをつかむ。「ちょっと、やめてよ!」胸ぐらをつかまれていても赤坂さんは余裕たっぷりで笑っている。「愛する女を不安にさせているくせに、偉そうなことしてんじゃねーよ」「なっ」パッと手を離した大くんは、悔しそうに唇を噛んだ。「大くん、ごめんね。突然いなくなって心配させたよね」「心配するに決まってるだろ!」涙目の大くんを見て私も泣きそうになる。「スマホも置いてきちゃって」「……美羽に何かあったらと思うと、不安でたまらなかったんだぞ」「ごめんね」私が頭を冷やそうと外を歩いていると赤坂さんに会って、話を聞いてくれた経緯を話した。すると、大くんは理解したのか怒りが顔から消えていく。はぁと盛大なため息をつく赤坂さん。「続きは帰ってからにしてくれない? 俺そろそろ眠いんだけど」「ですよね。赤坂さんありがとうございました」ふっと鼻で笑って手を振った。「好きな人……戻ってきたら会わせてくださいね」「ああ」大くんは赤坂さんに「悪かったな」と言って私の手を引いてマンションを出て行った。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第三章 嫉妬しちゃう心11

車に乗るとシーンと沈黙が流れた。しばらく車を走らせる。何から話せばいいのか、わからない。手に汗をかいてぎゅっと握った。大くんは人があまり歩いてない路地に車を停めた。「どうして俺のこと信じてくれないんだって思ってたけど、普通に考えて元カノと会ってたなんて嫌だよな。……ごめん」大くんは反省したような声を出した。「俺は友達としか思っていなくても相手の気持ちはわからないもんな。もう、二人きりでは会わないから」「……心が狭くてごめんね」「いや、美羽は悪くない」そっと手を握られた。「でも、仕事の関係で女性と二人きりで会うこともあるけど、それは許してな」「うん」「美羽に会わせたいと思ってる。過去に付き合った男が結婚となると何か嫌なんだろうな」苦笑いしている大くん。元カノさんは、大くんとどんな付き合いをして別れたのかわからないけど、大くんみたいな素敵な人を忘れるのは大変なことだ。私もそうだったから。「わかった。会わせて」「嫌な思いさせて悪いな……」首を横に振る。大くんは私の頬に手を触れさせる。親指で頬を撫でられてそのままキスをされた。額をくっつけた。体温が伝わってきて心臓がドキドキとしてくる。「俺が一番大事なのは美羽だけだから。一生、離れないでくれよ」その言葉が嬉しくて目に涙が浮かんでくる。もっと大人にならなきゃ。私はもうアラサーなのに、大くんとしか付き合ったことがなくて……。だから、大したことじゃなくても一喜一憂してしまう。こんな自分を変えたい。愛してくれる大くんに申し訳ないと思う。「大くん。私もっと余裕ある女性になるね」「美羽はそのままでいいよ」「ちょっとだけ、ドライブすっか」久しぶりにデートらしいデートをしている気がする。流れる景色を共有しながら会話をする何気ないこの時が幸せだ。「ところで……赤坂の好きな人って?」「うん……実はね、心臓が悪い女の子らしいの。今は移植するためにアメリカにいるみたい」「だからあいつ……仕事入れまくってたんだな……。海外で移植するのってかなり金がいるんだって聞いたことがある。赤坂、一人で出したのかな。言ってくれれば協力したのに。あいつらしいな」「うん。側にいたいのに切ないだろうね」「ああ。俺らはこうやってすぐに触れられる距離にいることに感謝しないとな」好きな人と同じ空気を吸える
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第四章 相思相愛1

続編第四章 相思相愛「だって。大樹があまりにも有名になるから……忘れられなかったの」紗代さんは、視線を落とし泣きそうな顔をした。外で会うと雑誌に万が一撮られたらややこしいことになるからと、家に来てもらったのだけど、やはり話はこじれた。この場所に私もいていいのかと迷ったけれど、大くんは隠しごとはしたくないからそばにいてくれと言った。紗代さんは、ハキハキ話すタイプの女性で予想以上に美人だった。胸が大きくてスタイルがいい。大くんは本当に私のような小さな胸の女でいいのだろうか。「大樹と会えなくなるなんて嫌なの!」「……紗代、お前だって結婚するんだろ?」コクリとうなずく。え……幸せな時なんじゃないの?それってマリッジブルーなんじゃなくて?絶対マリッジブルーでしょ。そんなことを私は思っているけれど二人の会話はあまりにも迫力がありすぎて口に出せなかった。黙ってみているしかできない。「お互いに、幸せになろう」大くんが落とすように言っているが彼女は涙をポロポロと流す。「…………大樹には、どんな男性も勝てないよ」女って複雑な生き物だ。紗代さんは結婚する立場でありながら、大くんとも繋がっていたかったのかもしれない。二人が話を始めてもうすぐ一時間。状況が変わらないので遠慮しながらもさすがに私は、思わず口を開いた。「紗代さん」「何よ」めちゃくちゃ睨まれたのでビクッとしたけれど私は握りこぶしを作って発言する。「大くんと過去に付き合っていて、それからも二人は友達関係だったのはわかりますが……。今はもう、私の結婚相手なんです。二人きりで会うのは勘弁してください」冷静な口調で言うと、紗代さんはさらに機嫌の悪そうな表情に変わった。迫力満点で思わずびっくりしてしまう。「……大樹を手に入れて満足そうね。大人しそうな顔をして偉そうなこと言わないで!」「おい、紗代」「わかったわよ。大樹が私に未練がないって理解したし。もう二人きりで会わないから」ふてくされた様子で口を尖らせた。結婚するのに大くんとチャンスがあれば……と、思っていたところがすごいと思う。それほど大くんは素敵な人なのかもしれない。しばらくしてイライラが収まったようで……。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第四章 相思相愛2

「美羽さん、言い過ぎてごめんなさい。別れた原因は、私が大樹を信じられなくて……。フッてしまったことだったから。でも、嫌いだったわけじゃないの。好きだったから……。好きすぎてしまったから。別れて後悔してたの」大くんがフラれたんだ。意外だった。そんな場面、想像できなかった。「冷静になれば……。今、私は大樹を友達としか思ってないし。私は婚約者を愛しているのに。バカだね。幸せになってね。……帰るね」「ああ、紗代も旦那さんと幸せになるんだぞ」「ありがとう」立ち上がった紗代さんは、言いたいことを言ってスッキリした表情だった。「お邪魔しました」頭を下げて玄関に向かっていく。玄関まで見送る大くんの後ろ姿を見ていた。緊張していた私は力が抜けた。まるで台風の中に巻き込まれたような気分になった。ソファーにうなだれたように座りクッションを抱きしめる。大くんがしばらくして戻ってきた。「大変なことに巻き込んでしまって申し訳なかった」「部外者の私が余計なこと言ってごめんね」「そんなことない。言ってくれたからこうやって収まったんだと思う」私は首を横に振る。しばらく無言のまま座っていた。「フラれたんだね、大くん」「まあ……な」「そんな話、はじめて聞いたよ。もしかして、まだ未練が残ってるんじゃないの?」「まさか。美羽に出会ってからは美羽しか目に入らなかったよ」私の隣に座る大くん。肩が触れ合って体温が伝わってくる。大くんが戻ってきたことに安心していた。「でも、大くん……紗代さんの香水の匂いさせてた」「あれは、あいつが酔っ払って歩けなくなって、抱えてタクシーに乗せたからだよ。断じて怪しまれるような関係ではない」真面目な顔で言うから、信じることにしよう。いちいち疑っていたら身がもたないし。「きっと紗代さんマリッジブルーなんだよ。この人と結婚して大丈夫なのかなって不安になったんじゃないかな」大くんに顔を覗き込まれる。「美羽も?」「えっ?」「マリッジブルー? 俺と結婚していいのかって不安になってない?」結婚に限らず新しい生活になると思うと、不安になるのは当たり前だと思う。でも、私は今のところ大くんと結婚する実感が湧かない。「正直言って、まだ結婚するんだって……思えなくて」「そうなのか?」「うん……」大くんは考え込む表情を見せた。傷つ
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第四章 相思相愛3

*仕事をしながらふと窓を見ると、ずいぶん空が近くなった気がした。もう、九月。寒くなってきたなぁ。明日は大くんが休みの日だ。さっきメールが来てご飯を作らなくていいと言われた。一緒にお出かけしてくれるのかな。ちょっと期待しちゃう。仕事を終えて家に帰ると、大くんは珍しく六時に帰って来た。「お帰りなさい」玄関まで迎えに行くと、大くんは満面の笑みを浮かべている。いつものように私のことを抱きしめてキスした。唇が重なると幸せな気持ちになる。そしてうっとりとして体の力が抜けそうになるのだ。「美羽、温泉行こう」「はい?」あまりにも突然言われてきょとんとしてしまう。いつ、どこの温泉に行こうとしているのだろうか。「これから車で行く、いいだろ?」「何も準備してないけど」「手ぶらでいいよ」そう言うから着替えを準備しただけで、他は何も持たず外へ出た。数分後、私と大くんは車に乗っていた。大くんの運転する車。ラジオを流しながらどんどん進んでいく。突然でびっくりしたけれど、こうやって連れて行ってくれるのは嬉しい。「予約とか……いつから、してたの?」「んー、今日。紹介してもらって、たまたま空いてたから。全部で九部屋しかなくて全室露天風呂付きなんだって」けろっと言っているけど高級そう。まあ、大くんの財力であれば問題ないだろうけど、心配になる。でも、大くんは私を喜ばせようとして考えてくれたことだ。素直に感謝することにしよう。到着した旅館は歴史がありそうで落ち着いた雰囲気だった。こんなところに泊まったことがないから怖気ついてしまう。着物を身につけた女将さんが丁寧にお出迎えしてくださった。部屋に入ると和室で低めのベッドが用意されていた。あずき色の布団カバーに、落ち着いた照明でいい感じだ。露天風呂まである。テンションが上がっていく。窓から見える景色は大自然。「大くん、すごい!」「美羽が喜んでくれて嬉しいよ」後ろから抱きしめてくれる。その腕をぎゅっとつかんで大くんの体温を感じていた。「大くん……」「美羽、愛してる」大くんからの「愛してる」の言葉は魔法の言葉。顔が熱くなって力が抜けてしまう。このままベッドに行きたい。そう思った時、コンコンとノックが鳴った。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第四章 相思相愛4

少し遅目の食事は部屋食。会席料理に舌鼓を打つ。「うわぁ、とろける」「だな。たまにはこうやってご褒美もいいだろ。これからもまた頑張って働かないとな」「うんっ」「美羽と、いつか授かる子供のためにも一生懸命頑張るから」大くんの発言に一生一緒なのだと心が温かくなった。『はな』もお空から見守ってくれているだろう。もしも、子供を授かることができればどんなに幸せかな。明るくて笑顔が絶えない家庭にしたい。過去に、はなを産めなかった。だから、同じことを繰り返さないか不安はある。悪いことばかり考えていても心にも体にもよくないとは理解していた。ストレスがあると妊娠しづらかったり流産しやすかったりすると聞いたことがある。私と大くんは、料理を食べ終えて満腹になり少し休憩することにした。冷たいお茶を飲みながらのんびりと過ごす。すると、大くんは立ち上がって何かを持ってきた。「美羽。そろそろ準備しておいたほうがいいと思って」封筒から出された薄っぺらい紙を広げ、私の目の前に置いた。なんだろうと思って覗き込むと婚姻届だ。はじめて見る婚姻届に不思議な感情が湧き上がってきた。これに名前や住所などを記入をして提出すると夫婦になるのだ。大くんと私が家族になるのだと思うと、目に涙が浮かんできた。「ど、どうしたんだよ」「……なんか感慨深い」「は?」「いろいろあったじゃない? 好きでたまらなかったのに別れてさ。忘れようと思って頑張ってたのに、忘れられなくて。再会したらで大くんは私を恨んでたりして。私は『はな』のことが言えなくてさ。なのに、そんな二人が結婚だなんてミラクルだと思わない?」私の隣に座った大くんは、優しい笑顔を向けて微笑んでくれた。そして、涙を親指で拭いてくれる。「ああ、長かった。ほんっとに」そう言って大くんはくすりと笑う。「俺は、出会った頃から美羽のことが好きだった。どんどんのめり込んでいく自分に歯止めがかからなくて、一日も早く美羽がほしかった。会えない間も美羽のことばかり考えていたよ。美羽……めっちゃ愛してる」唇が重なった。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第四章 相思相愛5

大くんの甘くて包み込んでくれるキスが大好き。お互いに手を伸ばして抱きしめ合う。そして、もっと唇を強く押し付けて、舌を絡めた。キスしたまま畳に押し倒される。足の間を割って体を密着させてくる大くん。熱い吐息が耳に届いて、胸が疼く。シャツのボタンを一つずつ外されて袖から腕を抜くと、肩に吸いついてきた。くすぐったくて大くんを睨む。「いやん、もう」もちろん、本気で睨んでいるわけじゃない。照れ隠しもあったりする。私の心なんてお見通しのようだ。そのままキャミソールも脱がされた。そして胸の谷間に顔を埋める。……と言っても豊満じゃないけれど。喜んでくれるから嬉しい。大くんも服を脱ぐと相変わらず美しいボディーラインがあらわになる。いつも頑張って鍛えているだけあるなって思った。私を優しく抱きしめてくれた。背中と膝の裏に手を差し込まれてお姫様抱っこをし、ベッドへ運ばれる。高級旅館の布団は寝心地がいい。うっとりする私を組み敷いた。もう一度キスをする。優しい口づけだった。いつも彼のキスからは愛情が感じられるけれど今日は一段と気持ちがこもっているように感じる。何度も何度も唇を重ね合わす。数えきれないほど大くんと抱き合ってきたけれど、今日はすごく大事な時間だと感じていた。一つになっていることが幸せすぎて、何も考えられなくなる。大くんの赤ちゃんが……どうしようもなく、ほしい。心からそう思った。激しく動き合う意識の中――二人の体温が混ざり合っていく。突然、動きを止めた大くんは私を見つめてくる。「美羽。赤ちゃん……作ろうか?」「え……?」「いや?」首を横に振る。嫌なわけがない。同じことを思っていたことに驚いているだけだ。「私も、大くんの赤ちゃんがほしい」「美羽……」背中に手を回されて奥深くで一つになった私と大くん。大くんは私にたくさんの愛を放ってくれた。もしも、授かることができれば今度こそ大切にお腹で育てて出産したい。心からそう思った。家族を増やして色々な思い出を作っていきたい。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第四章 相思相愛6

「んー、気持ちいい」二人で露天風呂に入っていると、大くんは微妙な顔をしている。「どうしたの?」「本当はさ、ゆっくりして風呂に入ってから……と思ったのに、美羽が可愛すぎて思わず抱いてしまったことを反省してる」「あはは、そんなこと?」後ろから抱きしめられる。風が少し冷たくてとても心地がいい。腕を伸ばして空を見上げる。「美羽は夢ある?」おもむろに聞いてきたので私は想像してみた。「家族を増やすことかな。いっぱい楽しい思い出を作ってみたい」「その夢を叶えられるように俺努力していくから」ものすごく優しい声で言ってくれた。「私も努力していくよ」温泉の水の流れる音がとても心地いい。「大くんは? いっぱい夢を叶えてきたと思うけどこれからやってみたいこととかあるの?」「歌とかダンスとか演技とかバラエティとかいろんなことをしてきたけどやっぱり俺はダンスが好きなんだ。将来はダンススクールとかやってみたいんだ。いつまでもアイドルをやっているわけにいかないから」将来の夢を熱く語ってくれる。どんな表情をしているのか見たくて私は大くんから離れて見つめた。彼の瞳はとても輝いていて、ものすごく素敵だと思った。「俺の夢を一緒に応援してくれる?」「もちろん」「いつになるかわからないけど、頑張るから」「うん! いつまでも応援し続けるよ」
last updateLast Updated : 2025-01-19
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続編 第四章 相思相愛7

露天風呂から上がった私と大くんは、震える手で婚姻届に記入することにした。「すげぇ……緊張する」大くんが記入している横顔を見て、私もドキドキしてきた。どっちから先に書こうかと話し合って大くんから書くことにしたのだ。「はい、できた。美羽、どうぞ」「うんっ……」ゴクリと唾を飲む。普段は字を書くことに緊張なんてしないのに、夫婦になる重みを感じていた。自分の名前を書く。両親がつけてくれた名前なんだなと思ったら胸が熱くなってきた。両親が私のことを大切に育ててくれて支えてくれたおかげで今があるのだ。昔は本当に心配をかけてしまった。両親もきっと辛い思いをしただろう。だから結婚したら私たち夫婦で両親に恩返ししていきたいと思っている。そんな感情のまま私は自分の名前を書き終えた。「間違えないで書けたよ」大くんがチェックをし、婚姻届を並べながら微笑んでいる。「やっと夫婦になるんだな……長かった。こんなに長い間待たせてごめんな」私は首を横に振った。「これからの未来はお互いに協力して楽しく生きていこう」「そうだね。大くんとならどんな未来も乗り越えていけそうだよ」「どんなことも乗り越えて行こう」私たちは甘くて長いキスをした。
last updateLast Updated : 2025-01-19
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