撮影を終えると、夜も遅かったのに大澤社長に呼び出された。何かあったかなと考えつつ裏から出るとファンが出待ちをしていた。「大樹!」声援を送ってくれる中、手を振りながら車に乗り込んだ。池村マネージャーと事務所に向かう車の中で、いつもと雰囲気が違うのを感じていると池村マネージャーが小さな声で語りはじめた。「あなたの過去を聞きました。先ほど、収録中に社長から電話があって」「そう。その件で社長は話があるのかな」「おそらく、そうだと思います。……紫藤さん」「ん?」流れる景色を見ている俺に池村マネージャーが切羽詰まった声で呼ぶ。「愛しているのですか?」「……うん」だけど、一方通行な思いなのかもしれない。「どうして彼女なんですか?」「運命の人なんだよ。池村もいつか出会うよ」「運命なんてあるのでしょうか?」池村を見ると怪訝そうな表情だ。美羽、会いたい。どうか、俺に連絡をくれ。そんな気持ちが胸を支配していた。事務所に到着して社長室に入るとメンバーと社長がいた。ソファーに腰を下ろすと、社長は近づいてくる。「大樹、お疲れ様」もう時計は深夜を回ろうとしていた。今日話さなければいけないことなのだろうか。俺の目の前に社長が座り、赤坂は社長のデスクに軽く腰をかけこちらを見ていて、黒柳は社長の隣に座っている。赤坂と黒柳のマネージャーはいなかったが、池村はドアの近くにまっすぐと立っていた。「またあの子に会ってるのね。宇多さんから連絡が入ったの。これからも仕事を続けていきたいなら、会うのはやめなさい。過去のことは誰にも言えない秘密なのよ」「…………」俺は唇を噛みしめる。美羽のことは命をかけてでも守りたい。でも、美羽の心はどこにあるのだろう。「あなたは芸能人なのよ。芸能人は結婚という大事な転換期をプラスに変えていく必要がある。COLORだってもういい大人よ。結婚や恋愛は反対する時じゃないと思っているわ。しかし相手が問題なの」俺をなだめるような言い方をする。「社長には感謝してます。無名だった俺らをここまで育ててくださった恩人です。でも、ビジネスのために結婚や恋愛する相手を選ぶのは賛同できません」「宇多さんは業界でも力がある人なの。その娘に好かれているってどういうことかわかってるの?」社長はイライラしはじめてタバコに火をつけた。ふーっと煙
Last Updated : 2025-01-17 Read more