「何作ってくれたの?」「あ、豚汁……。でね、ご飯を炊こうかと思ったんだけど」「いいよ。俺、夜は炭水化物抜いてんだ。太っちゃうからさ。美羽食べるなら炊いてあげるよ」「私はいいの。味見で、お腹けっこう膨れちゃったから」「美羽らしいな」クスクス笑って鍋の蓋を開けてかき混ぜた大くんは「ウマそうじゃん」と言ってくれる。味の保証はできないけど、一生懸命作ったのは間違いない。食卓テーブルに向かい合って座り、お椀に豚汁を注いだだけの夕食がはじまった。サラダとか、いろいろ作っりたかったんだけどな……。大くんは、ニコニコしていて「美味しいよ」と言ってくれる。「ちゃんと出汁も効いているし、野菜の甘みも溶け出して美味しい。美羽、料理の腕上げたね」「ありがとう」大好きな大くんに褒められると素直に嬉しい。幸せな時間が流れているけど……。ふと、寧々さんのことを思い出す。聞いてもいいのかな。でも、怖くて聞けない。「美羽、もう遅いから……泊まるよね?」「うん。そのつもりだったけど、迷惑じゃない? 突然押しかけちゃってるし」「迷惑なわけないだろ。今日からでも一緒に住みたい」真剣な眼差しにくらりと、めまいを起こしてしまいそうになる。私も、一緒に住みたい……でも、お父さんとお母さんになんと言えばいいのだろうか。「実はさ……メンバーに美羽とのこと、伝えたんだ」急に声のトーンが下がった。あまりいい話ではないのかもしれない。でも、覚悟を決めて話を聞く。「二人とも過去のことを謝ってくれたよ。でもさ、交際は反対だってさ。もしも、俺と美羽がゴールインしたら、過去のスキャンダルがバレてしまうかもしれないから……」「……そうなんだ」心に冷たい塊ができていく気がした。やっぱり難しい恋愛なのかもしれない。「だから、解散して結婚したらどうだって言われたんだ。なんか、寂しいよな。力を合わせて頑張ってきたのにさ」私のせいで大くんは悩んで苦しんでいる。やっぱり、結ばれてはいけない運命なのだろうか。「心配するな。ちょっと時間はかかるかもしれないけど、祝福されるように頑張ろう。ご馳走様でした。さ、美羽。風呂入ろうか?」「どうぞお先に」「一緒に入るんだよ。片時も離れたくないから」顔が熱くなる。たしかに、付き合っているんだしそういう関係になるのは予想がついた上で家に来たのだけど……。
Last Updated : 2025-01-17 Read more