夫の佐々木健一が死んだ。家のベッドで、見知らぬ女と一緒に死んだ。2021年8月2日、夏の日のこと。出張から福岡に戻った私は、家に入るなり腐臭に襲われ、思わず何度もえずいてしまった。急いで窓を全開にして換気し、鼻を押さえながら臭いの元を探し始めた。「健一......」何度か呼びかけたが、返事はない。家具に積もった埃を見て、すぐに察した。佐々木健一はまた麻雀に行っているのだろう。私がこの数日家を空けている間、きっと外で賭け事三昧だったに違いない。こんなことはもう何度目だろう。この男に対して、もはや何の期待も持てなくなっていた。今や頼れるのは自分だけだ。疲れ切った体を引きずりながら、家中を探し回った。一通り探したが何も見つからず、寝室へ向かった。荷物を先に片付けてからまた探そうと思ったのだ。しかし、寝室のドアを開けた瞬間、強烈な腐臭が鼻を突いた。そして目に飛び込んできたのは、一人の男と女の姿だった。男は夫の健一だった。そして、見知らぬ女と二人でベッドに横たわっていた。二人とも裸で、その体はすでに膨れ上がり黒ずんでおり、悪臭を放っていた。茶色がかった血液がシーツや床に広がっていた。その凄惨な光景に、私は驚きと悲しみで立ち尽くした。私は口を押さえたまま、呆然とドア口に立ち尽くしていた。我に返った時には、涙が止まらなかった。夫の裏切りなど、全く予想だにしていなかった。力なくリビングへ戻り、震える手で嗚咽しながら警察に通報した。警察はすぐに駆けつけてきた。彼らは手際よく、一人が私への事情聴取を担当し、他の者たちは現場を封鎖し証拠採取を行い、マンションや団地の防犯カメラ映像も調べ始めた。家には大勢の人がいたが、それでも私の心から恐怖は消えなかった。ソファーで体を丸めながら震える私に、田中刑事が質問を続けた。「この数日、大阪へ出張していたんですね?」「はい」私は目元の涙を拭った。「ご主人とは普段どんな仲だったんですか?」私は黙って首を振り、少し悲しさが込み上げてきた。「良好とは言えませんでした。彼が半年前に失業してから、私たち夫婦関係は日に日に悪化していきました。出張前日も、このことで口論になったばかりです」「原因は何だったんですか?」
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