私はその問いには答えなかった。沈黙が続くと、田中刑事は話題を変えた。「鈴木力也の供述によると、佐々木健一の家に着いた時、ドアが開いていたそうだ。君が開けたのか?」「いいえ」私は首を振った。彼の疑わしげな表情に、私は言葉を継いだ。「この点について、嘘をつく理由はありません。確かにその日、私は廊下で彼と出くわしました。それに、鈴木力也に届いた手紙も、私がデリバリーサービスを使って送ったものです」それ以上の説明はしなかった。田中刑事もそれ以上は追及しなかった。事件の全容はほぼ明らかになり、彼の抱いていた疑問も全て氷解したようだった。田中刑事は私をしばらく見つめた後、立ち上がった。「傷害罪の容疑で逮捕する。署まで同行してもらおう」私は微笑みを浮かべながら立ち上がり、両手を前に差し出した。しかし田中刑事は手錠を取り出そうとはしなかった。その表情には、犯人を逮捕した時に見られるような達成感のかけらもなかった。起訴から公判、そして判決まで。全ての法的手続きを経て、私には懲役6ヶ月の実刑が言い渡された。それについて、私には一切の不満はなかった。望んでいたことは既に達成できていた。この程度の代償は、私にとって十分な価値があった。服役中は模範囚として過ごし、半年の時は瞬く間に過ぎた。私は良好な行いが認められ、一週間の減刑を得て出所することになった。出所の日。面会室で私を待っていたのは、まるで鏡に映したかのように私と瓜二つの女性だった。私は微笑みながら彼女に歩み寄った。「久しぶりね、美鈴」「お姉ちゃん、痩せたわね」
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