私が罰として下屋敷に追いやられてから、もう五年。毎日毎日、洗っても洗っても尽きない厠を片付けている。いくら香袋を身につけ、炉に香を焚いたとしても、体に染みついた悪臭は取れない。奥女中たちは私を嫌い、誰も同室しようとしなかった。そして御台所様に仕えるお局、女中頭が私と新之助を下屋敷の奥の朽ちかけた屋敷に追いやった。昨夜、暴風雨の中、屋根の腐った梁が轟音を立てて崩れ落ちた。私は外で洗濯物を取り込んでいたため難を逃れたが、左足は柱に挟まれたまま動かない。だが、新之助は下敷きになってしまった。私は叫びながら、負傷した足を引きずりながら瓦礫を掘り返した。私の叫び声があまりに凄まじかったのか、見物人が傘を差して遠巻きに眺めている。彼女たちはただ遠巻きに立ち、助けようとせず、どうすべきか迷っている様子だ。すると女中頭が慌ただしく駆け寄り、女たちに命じた。「余計なことはするな、御台所様の怒りを買うぞ」「でも......あの子は上様の御子息です」「御子息だと?上様はあの子を宗正寺に記録したこともなければ、生母に位を与えたこともないぞ」夜が明けかける頃、私はようやく瓦をどかし、真っ白な小さな手を見つけた。手には、私が書いた『香譜』が握られていた。新之助はわずか四歳。下屋敷で生まれ、この薄暗い場所から一歩も外に出たことがない。彼の知る世界には、腐った食べ物と厠の吐き気を催す臭いしかなかった。私はたまに石の隙間から香草を摘んでは、世の中にはこの臭い以外にも、心地よく、思わず笑顔がこぼれるような香りがあるのだと彼に教えていた。新之助は『香譜』を抱えて真剣に、「下屋敷を出たら、母上をいつも笑顔にする香を作るんだ」と語ったものだ。私はひたすら掘り続け、一秒でも早く新之助を救い出さねばと、手を止められない。新之助は生まれつき丈夫だし、きっと無事に違いない。慎重に頭上の瓦を取り除いたその時、赤と白が混じったものが、瓦の隙間からどろりと垂れてきた。雨で血の匂いがより際立ち、強烈に鼻をつく。今、私と新之助の間には、ただ一枚の布があるだけ。その布には小さな凹みがあり、そこが鮮やかな赤に染まっていて、息が詰まりそうだ。私は布を引き剥がした。そこには、少量の肉片がこびりつき、ぽたぽたと瓦礫の上に落ちた。
Last Updated : 2024-11-05 Read more