あれから三日が経ったが、上様はまだ姿を見せない。烏が日に日に増え、新之助の遺骸に群がり、私が目を離すと肉片をくわえていってしまう。夜ともなれば、鼠が暗闇の中で緑の光る目を光らせ、「チチチッ」と鳴きながら、どこかで待ち構えている。城のあちこちでは奥女中が顔を輝かせて噂をしていた。どうやら御台所様に懐妊の兆しが見られたそうで、上様は大変お喜びになり、奥には褒美が配られたのだという。私は急に疲れが押し寄せ、瓦礫の木片を一箇所に集めて火を点けた。新之助は父親のことを私に言ったことはない。私が気に病むのを恐れて、口に出せなかったのだろう。だが、上様が西の城門から狩りに出るときには、新之助は槐の木のいちばん高い枝までよじ登り、遠くから見送っていたものだった。最後に、あの子に父親の姿を見せてやりたかったが、もはや叶わぬ望みだ。私は新之助を薪の中央にそっと横たえ、香で炙った新しい衣を着せてやった。お前には、この母がどれほど苦労をかけたことか。火が次第に高くなり、小さな身体を飲み込んでいく。薪には水がかけられていたため、煙がひどく立ち上り、城中がむせるような煙に包まれていった。程なくして、私は何人かの役人に取り押さえられ、小部屋に連れて行かれた。部屋には上様である鷹司光信が椅子に座って待っており、手の中で私が渡したあの小さな珠を転がしていた。新之助が生まれたとき、光信が私を訪ねてきて以来、五年ぶりの対面であった。あの時は政に追われ疲れていると思っていたが、見ると頬は丸く、目は澄んで、さながら悩みとは無縁の若君のような姿だった。私が近づくと、光信は思わず鼻を覆った。臭いが私から出ていると気付いたとき、驚いたように手拭いを下ろした。かつて光信は、私の身にまとっていた香を気に入り、いつも私の手拭いを懐に入れていた。そのことを知った御台所、氷川綾が私を最も汚れた仕事に追いやったのだ。光信は珠を懐にしまい、そっと私の手を取ったが、呼吸が浅くなっているのが分かる。「新之助の死、わしも心が痛む。もっと早く会いに来るべきだった」光信の身に纏うのは、氷川綾が最も好んでいる伽羅の香りだった。その胸に抱かれ泣き叫びたい気持ちはあったが、何かが詰まっているかのようで声が出ない。頭の中には、新之助の無惨な姿しか浮か
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