自分の体が再び人目に触れることになるなんて、夢にも思わなかった。解剖台の上に横たわる遺体を、ただ茫然と見つめていた。一体どうして、こんなにもアスファルトまみれになり、まるで焼かれたかのような姿になってしまったのか......「佐木先生、来たんですね?」隣にいた助手の夏目が、謹言に挨拶した。工場の匂いが空気中に漂い、謹言は眉をひそめた。その顔つきは、生前の私を見た時とまるで同じ。冷たく、よそよそしく、嫌悪感さえ感じられる表情だった。「どういうことだ?」彼はそう言いながら、手袋をはめた。「今朝、郊外の旧工場が取り壊され、そのアスファルトの池の中から発見されたんです」「顔はひどく損傷していて、激しい争いがあったことが分かります。これは明らかに故意に復讐されたものです」「体はアスファルトで腐食し、気道にもアスファルトが詰まっています」謹言は低く「ふん」と鼻で笑い、道具を手に取った。私は空中に漂いながら、彼をじっと見つめていた。最後に彼と会ったのは、一年前のことだったのを、ぼんやりと思い出した。彼は千絵を平手打ちした私に激怒し、こう言ったのだ。「鈴木昭子、若い女の子を困らせるなんて、弁護士がすることか?謝らないなら、結婚は無しだ!」その日、私は千絵にアスファルトの池に突き落とされた。死んでからも、あまりの怨念に成仏できず、廃工場を彷徨い続けていた。そして、今日ついに発見されたわけだが、まさか解剖するのが謹言だなんて......一年ぶりの再会が、こんな形で訪れるとは思いもしなかった。彼がメスを手に取ろうとしたその時、ふと何かを思い出したかのように助手に聞いた。「実験室の消毒と換気はちゃんとしているか?」「アスファルトの毒性はかなり強いからな」助手は笑って答えた。「もちろんです、佐木先生。田中先生と妊活中だって知ってますから!」千絵の名前を聞くと、謹言の顔に微笑が浮かんだ。「そうだ、万が一にも失敗は許されない。半年も健康的な生活を心掛けているんだからな」「もし千絵が失敗したら、どう言われるか......」彼らの何気ない会話を聞いていると、胸がナイフで切り裂かれるような痛みが走った。一年経った今、私の婚約者と私を殺した犯人が妊活をしているなんて......その事実
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