瑠璃はじっと、目の前の男性を見つめた。人混みの中から現れた彼を前に、一瞬、時が止まる。――三年ぶり。それでも彼は、相変わらず端正な顔を持ち、品のある佇まいを崩していなかった。むしろ以前よりも成熟した落ち着きを纏い、さらに洗練された魅力を持つようになっていた。彼の黒曜石のような瞳には、彼女の姿がくっきりと映り込んでいる。そこに浮かぶのは、言葉にできない喜びと驚きだった。「……瑠璃、本当に……君なのか?」若年は、まるで夢でも見ているかのような表情で彼女を見つめた。その声音は、春風のように穏やかで優しい。しかし――「申し訳ありませんが、私は四宮瑠璃ではありません」瑠璃は美しい眉をわずかに寄せ、不快げに言った。「もし、私が瑠璃に似ているかどうかを確かめに来たのなら、どうぞお引き取りください。ここは商売の場です」そう言い放つと、彼女はくるりと背を向けた。その瞬間、胸の奥が、ひどく痛んだ。律子ちゃん、先輩……ごめんなさい。今の私は、もうかつての私ではないの。「瑠璃ちゃん!」しかし、律子は彼女の手をしっかりと掴み、離さなかった。「瑠璃ちゃん!なぜこんな冷たい人になってしまったの?あなたは、まぎれもなく私の瑠璃ちゃんよ!どうして知らないふりをするの?」そう言いながら、律子は傍らの若年を指さした。「私のことはどうでもいい。でも――西園寺先輩は?彼のことも知らないっていうの?あなたは、彼がどれほどあなたを大切にしていたか忘れたの!?」瑠璃は、静かにまつげを伏せた。そのまま、ちらりと若年を見やる。「これ以上、邪魔をするなら、強制的に退場してもらいますよ」彼女は冷たく言い放った。「瑠璃……」若年は静かに瑠璃の前へと歩み寄った。その穏やかな眼差しは、かつてと変わらぬ優しさを湛えたまま、まっすぐに彼女の顔を見つめる。彼の瞳には、言葉にならないほどの激しい感情が揺れていた。だが、それをすべて押し込めるように、彼は何も言わなかった。「君にまた会えて、本当に嬉しい」彼の声には、心からの喜びが滲んでいた。その言葉を聞いた瞬間、瑠璃が泣きそうになった。だが、彼女はすぐに冷たい笑みを浮かべる。「最後に言います、私は四宮瑠璃ではありません。もう死んだ人間と、私を重ねないで」冷淡な言葉を残し、彼女は歩き出した。「待って!」
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