紗希は北兄が美蘭をこんなにもはっきりと突っぱねたのを見て、なぜか少し楽みに感じた。美蘭の笑顔が凍りついた。まさか北がこんなに無礼だとは思わなかったのだろう。 詩織の婚約が拓海にキャンセルされたことを恨んでいるのだろうか?これからどうなるのだろう。小林家は詩織の渡辺家への嫁入りを承諾するのだろうか。北は冷ややかに拓海を一瞥した後、紗希に視線を向けた。「今日の手術は長時間になるから、家族の方々は交代で付き添われることを勧める」紗希は北兄が自分の体を気遣って言ってくれた言葉だと分かった。彼女は今日の手術が長引くことを予想していたが、学校には既に休みの連絡を入れており今日は病院で待機するつもりだった。北は冷淡に言い終わると、病室を後にした。渡辺家の人々も出てきて、別のエレベーターに乗って手術室の方へ向かった。患者専用のエレベーターは使えないため、一般用のエレベーターを使うしかなかった。ところが、エレベーター前で待っていた詩織と出くわした。美蘭は詩織を見て、驚いた表情を見せた。「まあ、詩織、今日本当に病院に来てくれたのかと思うと......」「おばあさんが手術を受けるので、何でも見に来なければならなかったのですが、エレベーターの入り口で、渡辺家以外の方は今日お見舞い禁止だと言われました」詩織は無理な笑みを浮かべた。こんな風に入室を拒否されたのは初めてだった。特に紗希と一緒に来た時、自分は止められたのに、あの紗希という女は堂々と入ることができたなんて。この腹立たしさは、詩織にはどうしても収まらなかった。美蘭は表情を曇らせた。「すみません。詩織を部外者扱いするなんて、後で警備員には注意しておくわ」詩織は玲奈を見て、困った様子で言った。「玲奈には電話もLINEもメッセージを送ったのに、全然返事がなくて......」玲奈は慌てて説明した。「詩織姉さん、私はおばあさんの手術の邪魔にならないように、さっき来る途中で携帯をマナーモードにしていた。ごめんなさい、事前に知っていれば必ず詩織姉さんを迎えに行ったのに」言い終わると、玲奈は美蘭と目を合わせた。もちろん二人は事前に知っていた。しかし、今日のルールは拓海が決めたことで警備員に例外を認めさせることは誰にもできなかった。美蘭は体面を保つため、玲奈に知らないふりをさせ詩織からのメ
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