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第314話

「紗希、そんなことで辞める必要はないよ。ここの管理がとても緩やかだし、他の同僚との公平性を気にする必要もない。お前は他の人とは全然違うんだから」

紗希が驚いて顔を上げると、風間は続けて言った。「紗希、僕の気持ちは分かってるはずだよ。これだけいろいろなことを経験したのに、お前には僕に対して何の感情もないの?」

「すみません、先輩。私はずっと友人としか思ってませんでした」

紗希ははっきりと風間を断った。

風間の目には失望の色が浮かび、諦めきれない様子も見えた。最後に彼は言った。「紗希、じゃあこうしよう。これからは週末だけ来てくれればいい。お前という人おかげで、多くの仕事を受注できたんだ。お前がすぐに辞めたら、僕のスタジオにも影響が出る。友人として、週末だけでも来てくれないか」

紗希は風間の頭の傷跡を見て少し心が揺らいだ。「分かりました」

風間はほっと息をついた。「紗希、昨日の私の母のことは気にしないでくれ」

「大丈夫です。気にしてません」

紗希は自分の席に戻ったが、落ち着かない様子だった。明日は渡辺おばあさんの手術日で、少し緊張していた。

夜、紗希は北兄が家に帰るのを待って渡辺おばあさんの状態について相談した。

北は冷静に答えた。「渡辺おばあさんの状態は最近安定してるから、手術で予期せぬことが起きなければ、問題ないはずだよ。心配しないで」

紗希はほっとした。それならよかった。

翌日、紗希は早朝から病院に行く準備をしていた。

伯母は起きてきて驚いて聞いた。「こんな早くどこに行くの?月曜の授業は午後からじゃないの?」

紗希は少し間を置いて。「伯母さん、今日渡辺おばあさんの手術があるので、見に行かなければならなりません」

「ああ、そうね。病院に行くべきだわ。渡辺おばあさんはいい人だから、きっと大丈夫だよ」

紗希は昨夜あまり眠れなかった。今日の手術がうまくいって、渡辺おばあさんが無事に手術台から降りられることを願っていた。

タクシーで病院の前まで来ると、お腹がぐうぐう鳴り始めた。二人の赤ちゃんがお腹が空いたのだ。

仕方なく紗希は病院の近くで朝食を買うことにした。

彼女は食べながら病院に入ろうとした時、突然スポーツカーが猛スピードで近づいてきて、彼女にぶつかりそうになった。

紗希は慌てて避けたが、手に持っていた豆乳を落としてしまった。

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