共有

第313話

紗希は北兄の言葉を聞いて、うつむいて静かに答えた。「北兄、私はもう子供を産むことを決めたの」

彼女にとって、お腹の子供は彼女の家族で拓海とは何の関係もない。

北は彼女の頭を撫でながら言った。「お前の兄達は今事業も成功してるし、将来お前と子供を世話するから、そんなに頑張らなくてもいいんだよ」

「分かってる」

紗希は心の中で決めていた。単位を取得して卒業証書をもらえばここを離れることができるだろう。

紗希は家に帰ると、すぐに顔を洗って寝る準備をした。

新居の別荘で、拓海は書斎で仕事を終えて寝室に戻るとわざわざコーディネートされた服を見に行ったが、赤いスーツを見た瞬間眉間にしわを寄せた。

これは紗希がコーディネートした服なのか?

彼は自分の目で見なかったら、絶対に信じられなかった。

すぐに紗希に電話をかけると、相手はすぐに出た。紗希はこの電話が来ることを予想していて、落ち着いて言った。「何かあった?」

拓海はこめかみを押さえながら怒った。「これはお前がコーディネートした服なのか?こんな赤い服で、お前は色盲なのか?」

「私はよく似合うと思うけど。あなたが気に入らないなら着なくてもいいわ」

「紗希、200万円払って、これを選んでくるのか?」

男が歯ぎしりする声を聞いて、紗希はお腹を抱えて笑いたかったけど、我慢して真面目な声で言った。「約束通り、お金と商品の取引は終わってる。修正は受け付けないわ」

「紗希、これがお客に対する態度なのか?」

「いいえ、拓海さんに一つ教訓を与えたかっただけ。女性を簡単に信じなくて、特にあなたに恨みを持ってる女性を信じないわ」

そう言って紗希は電話を切った。ベッドの上で何回も転がりながら、涙が出るほど笑った。

この200万円は本当に価値があったわ。

あのくそ野郎が金で彼女を侮辱しようとしたなんて。

人の心がどれだけ怖いものか、体験させてあげたのよ!

電話の向こうで拓海は携帯を見つめ、怒ってネクタイを引きちぎった。この女は本当に神様が自分を苦しめるために送ってきたに違いない。

それなのに200万円も取るなんて!

完全に騙されたと感じた。

——

紗希は翌日またスタジオに出勤した。先輩に退職のことをどう話すか、よく考えようと思っていた。

お腹も日に日に大きくなってきて、スタジオと学校を行き来するのが大変にな
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status