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第312話

「そうだね。考えてみれば、私だってデザイナーなんだから、仕事を断る理由はないよね」

元夫の服に合わせることは不可能ではないが、追加料金がかかる!

200万円で1回のコーディネート、これは結構いい稼ぎになるわ。

拓海は携帯をメイドに投げ渡して言った。「コーディネートさえできればいい。他に用事があるから」

紗希は歯を食いしばって言った。「まずお金を払って」

拓海は自分の携帯を取り出して、すぐに振り込みをした。

紗希は200万円が振り込まれたのを確認すると、深呼吸して職業スマイルを浮かべた。「拓海さん、コーディネートについて何か希望はありますか?どんな場所で着る予定ですか?」

拓海は眉を上げ、この女の豹変ぶりに感心しながら淡々と答えた。「週末のビジネスパーティーで着るつもりだ」

そう言い残すと、拓海は寝室を出て行った。

紗希は壁に寄りかかって考えた。彼がビジネスパーティーを参加するなら、どんな服装が適切か分かっているわ。

しかし、本当に言われたとおりにしたら、彼女は心の中の怒りを飲み込むことができなかった。

彼女は振り込まれた200万円を見ながら、突然思いついた。「由穂、一番下の引き出しを開けて。真っ赤なスーツがあるから、それとこれらを合わせて、そこに置いておいて」

メイドの由穂は真っ赤な服を見て言った。「これで大丈夫でしょうか?」

今まで若様がこんな派手な色の服を着たのを見たことがなく、いつも黒や白、グレーの系統ばかりだった。

「大丈夫、私の言う通りにして。私がコーディネートした服なんだから、気にしないで」

紗希は分かっていた。拓海がこの服を着るはずがない。

わざとやったのだ。

拓海のクソ野郎が彼女を信じているなら、その信用を裏切ってやろうと思った。

コーディネートを終えた紗希は、上機嫌で新居の別荘を離れた。

タクシーでマンションの下に着くと、空腹を感じたお腹をさすりながら、通りにある屋台でラーメンを注文した。

彼女は注文して食べようとした時、後ろから北兄の声が聞こえた。「紗希、何を食べてるの?」

紗希は北兄の声を聞いて背筋が凍り、振り返ると北兄が車から降りてくるのが見えた。彼女は気まずそうな表情を浮かべた。「ちょっとお腹が空いたから、夜食を食べに来たの」

もちろん、北兄に夕食も食べていないとは言えなかった。そうしないと、また
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