交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています のすべてのチャプター: チャプター 51 - チャプター 60

178 チャプター

第51話

「今日起きた事は内海唯花には秘密にしておけ」結城理仁は周りの者たちに注意した。ボディーガードたちは皆それに応えた。若旦那はもう所帯持ちの人なのだ。神崎家のお嬢様がひと目も憚らず堂々と彼に告白をしたなんていう事はもちろん女主人に知られてはいけないのだ。神崎姫華の告白を、結城グループで働く多くの人が知ってしまった。結城理仁がオフィスビルへ入る時、従業員たちは皆、思わず彼を何度も見た。しかし、彼はいつもと同じく氷のように冷たい表情で唇をきつく結び、ボディーガードたちに囲まれて、大きな歩幅で流星の如く入ってきた。こんなに格好よく、まるで王者のように来臨する男性であれば、簡単に若い女性の心を奪ってしまうだろう。会社の中にもたくさんの若い女性従業員が、無意識のうちに結城社長の本性を知り、彼を恋い慕う気持ちをへし折られた。もちろん誰も結城社長に告白する勇気など持っている人はいなかった。更に言えば結城社長を追うような運試しをする女性などいなかった。結城家というハードルは一般人からすれば高すぎるのだ。結城家の男たちが全員一途であることを知っていても、問題は自分が結城家の男から真心を得られるかどうかだ。自分のオフィスに戻ると、結城理仁は携帯を取り出し、神崎玲凰に電話をかけた。しばらくしてから神崎玲凰はようやく彼の電話に出た。「あれ、今日太陽がまさか西から昇ってきたんじゃないだろうな?結城社長が俺に電話をかけてくるなんて。何か面倒を見てもらいたいことでも?」神崎玲凰はいやらしく薄笑いし、電話の中で結城理仁をからかった。「神崎玲凰、お前の妹をしっかりと管理しておけ!」妹の話題になり、神崎玲凰の表情は険しくなり尋ねた。「姫華がどうかしたのか?」彼は妹が結城理仁のせいで、人生を台無しにしてしまうことを知っていた。結城理仁に何年も片思いしていて、最近は結城理仁に告白したいと言っていた。それを思い出し、神崎玲凰は嫌な予感がした。あの傍若無人な妹がまさか本当に結城理仁に告りに行ったんじゃないだろうか?どうして彼女はあんな死人のような顔をした野郎が好きなんだ。「彼女が俺につきまとうんだよ!今も俺の会社の外にいるぞ。お前が来てあいつを連れ帰るか、それとも俺が誰かに命令してあいつを追い払わせようか?」「俺が今すぐあいつの義姉に家まで連れ帰らせ
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第52話

「結城理仁は彼女の手に負えるような人物ではない。あきらめるようによく言い聞かせてやってくれないか。結城理仁の周りには、家族親戚を除いて、若い女の影は一度も見たことがない。あいつは冷淡で良心を持たない奴なんだ。どう言っても姫華は聞く耳を持たなくて困ってるんだよ」神崎玲凰も妹には全くお手上げだった。「今俺は忙しくて、彼女に構ってる時間がないんだ。姫華のことはおまえに任せたぞ」「わかったわ、仕事に戻ってちょうだい。今から姫華ちゃんを迎えに行ってくる。彼女を連れてお義母さんと一緒にショッピングするわ。お義母さん、最近ちょっと気分が落ち込んでるから」神崎家の奥さんは姑と関係が良好だった。最近姑の元気がないことに気づき、彼女を誘って街をぶらぶらし、買い物したりしていた。もしかしたら姑を元気にさせることができるかもと思ったのだ。神崎玲凰は突然黙った。彼は母親が落ち込んでいいる原因を知っていた。母親の妹が今に至るまで消息不明だからだ。母親がこの一生で最も口にするのは、この実の妹のことだった。神崎夫人は孤児院で育った。彼女が幼い頃、家族は彼女と四歳年下の妹を残してこの世を去ってしまい、姉妹は孤児院に送られた。それから孤児院の子供を養子として引き取りたいというお金持ちの夫婦に出会ったのだ。その夫婦二人は姉妹のうち、妹のほうを気に入った。当時、姉のほうは八歳、妹にいたってはまだ四歳だった。彼女は妹と別れたくなかったが、妹が誰かに引き取られて、孤児院で育つよりもよっぽど良い生活が送れると知っていたので、その夫婦が妹を養子にするのを受け入れたのだった。それから、姉妹二人は記念写真を思い出に撮って、それ以降は離ればなれになってしまった。そしてそのまま数十年の月日が流れた。神崎夫人は大きくなって孤児院を離れた。彼女は聡明で強い人間だった。自分の力だけで商業界のエリートまでのし上るほどに。社長から厚く信頼され重宝され、また社長の長男の心を掴み、最終的に豪族に嫁入りし神崎家の夫人になったのだ。彼女が自立してから、妹を捜すのを一度もあきらめてはいなかった。妹とは数十年も音信不通だ。少し前に、神崎玲凰はやっとのことで叔母に関するわずかな情報を手に入れ、当時叔母を引き取った金持ち夫婦を見つけたのだった。母親はとても喜び、彼と父親は母親に付き添って会いに行った。そ
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第53話  

神崎姫華は結局兄嫁に連れて行かれた。あの壊れたスポーツカーについては、電話して業者に牽引してもらうしかなかった。 兄嫁が迎えに来た時、神崎姫華は義姉に対してこう言った。「結城理仁が私の車にぶつけて壊したの。ちょうど私に口実を作ってくれたわ。義姉さん、一歩踏み出したからには、やれるだけやってみせる。三年から五年かけて理仁を追わなくちゃ、私気が済まない」 「義姉さん、あなたが一番私を応援してくれてるよね。兄さんもあなたの言うことなら大人しく聞いてくれるし、私に代わって兄さんに取りなしてくれない?私の幸せを追い求める権利を奪わないでって」 神崎姫華は愛し合う兄夫婦のその関係が羨ましかった。当時も義姉が自分から兄を追いかけ一年後ようやく兄を捕まえたのだ。結婚後は立場が逆転し、兄が義姉を溺愛するようになった。 義姉が当時ためらうことなく、真実の愛を追い求めていなかったら、今のこの幸せな生活は手に入れられなかったと何度も彼女に言っていた。 神崎家の女主人は車を運転しながら言った。「姫華ちゃん、私はあなたが幸せを求めることに大賛成よ。でも、あの人は結城理仁。彼の東京での評判を知っているでしょ?貞操観念が強く女性を寄せ付けないことで有名よ。あなた、彼の周りに若い女性がいるのを見たことある?」 「それに、私たち神崎家と結城家は犬猿の仲だわ。あなたのお兄さんと結城理仁は、かたき同士とは言えないけど、でもライバルだわ。お互いに相手が成功するのは気に食わないようなね。こんな関係のライバルだから、私はあなたが結城理仁に利用されるんじゃないかって心配なの。それに、彼にいじめられるんじゃないかって」 「彼が妻をいじめるわけないでしょう?結城家の家風は素晴らしいものだわ。結城家の男は皆妻を溺愛してるって有名じゃない」 神崎姫華は兄夫婦の愛が仲睦まじいのを自分の目で見て、自然と自分も結婚した後、夫から溺愛されるのを期待していた。 東京の上流階級において、結城家の男たちは妻を溺愛することで有名だった。 「どうであれ、あなたのお兄さんもあなたのためを思って言っているのよ。姫華ちゃん、今はこの話題はこれで終わり。お義母さんがエルメスのお店で私たちを待ってるの。まずはお義母さんを連れてぶらぶらして気晴らししましょうよ。妹さんの件で、お義母さんはここ数日とても落ち込んで
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第54話

金城琉生は笑って言った。「知っています。そのバイクは僕に任せてください。明日唯花さんに、ちゃんと走れるようになったバイクを返しますから」親友の従弟は何年も前からの知り合いだ。内海唯花は金城琉生を信用していたので、こう言った。「じゃあ、お願いしちゃおう」金城琉生は内海唯花の手助けができて本当に嬉しかった。すぐに電話をかけた。誰に電話をしているのかはわからなかった。内海唯花は彼が住所を教えているのだけ聞こえた。それから、二人はその人がバイクを牽引しに来るまで待っていた。......「若旦那様」運転手の目はとても良く、信号の真向かいにいる女性が女主人にそっくりだったので、信号待ちをしている時に、後ろを振り向いて、目を閉じリラックスしていた主人に言った。「若旦那様、あの女性は若奥様にそっくりですよ」それを聞いて結城理仁は目を開け、前方を見た。道端に男女がいた。その男が誰なのかわからなかった。おそらく距離が少し遠すぎたからだろう。女のほうは確かに彼の妻に似ていた。同じ家で少しの間一緒に生活してきたので、結城理仁はだんだん内海唯花の姿に見慣れてきていた。「通りすがる時、すこしゆっくり運転してくれ。彼女かどうか確認しよう」「かしこまりました」結城理仁は携帯を取り出して内海唯花に電話をしようとしたが、少し考えて、そうするのをやめてしまった。すぐに信号が青に変わった。結城理仁の高級車の列がその前を通りかかる時、車はスピードを少し落とした。車の中にいる結城理仁はその女性が彼の妻、内海唯花だと確認することができた。男の方は誰なのか、彼は車が過ぎ去ってからようやく思い出した。金城琉生だ!奴は恋のライバルだ!内海唯花と金城琉生が一緒にいた?偶然に道端で会ったのか?結城理仁は心の中は疑いの気持ちに満たされ、ひと言もしゃべらなかった。もちろん内海唯花に電話などもしなかった。高級車の列は遠くに走り去った。金城琉生はその遠くの高級車の列を見て内海唯花に言った。「さっき通り過ぎた何台かの車のうち、その一台は結城家の御曹司が毎日使ってる専用車なんだ」車の列が通り過ぎてから、彼はやっと思い出した。内海唯花は適当に尋ねた。「どの結城御曹司?」富豪の結城家のお坊ちゃんだよ。結城グループの現社長さ。この前のパーティに
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第55話

「彼が普通の人だったとしても、私のような普通の庶民なんか相手にしないわよ」 内海唯花にとって、あの富豪結城家の若旦那については、あの夜パーティーで少し噂話する程度が関の山だ。その後はその人のことなんて頭の中から抜けてしまっていた。まさに彼女が言うとおり、結城坊ちゃんがいくら普通でも、彼女のような庶民とは付き合わないだろう。彼女は決して底辺層の人間とは言えないが、上に行けたとしても限度があるのだ。彼女が知り合った一番のお金持ちは親友の牧野明凛を除いて金城琉生だけだった。金城琉生は名家の金持ちのお坊ちゃんと言える。富豪家の御曹司と彼女が住む世界は全く違うのだから、関わりあうことなどなかった。金城琉生は笑って、それには返事しなかった。彼は内海唯花のことを見下したことなど一度もなかった。でもそれは他の金持ちの坊ちゃんが内海唯花を軽蔑しないというわけではない。彼は上流階級というものをよくわかっていた。みんな家柄、身分、地位ばかり見て話してるのだ。大型パーティに参加した時、彼のような金城家の坊ちゃんでさえ、八方美人になり自分からその偉い人たちと交際していた。うまくいけば気に入られ後ろ盾が得られるのだ。「車が来ましたよ」金城琉生が呼んだ車は路肩に駐車し、人が降りてきて二人のほうにやってきた。金城琉生きを坊ちゃんと呼んだ。内海唯花は彼が金城家の運転手を呼んだことに、この時はじめて気がついた。金城家の運転手は誰から借りたのかわからないピックアップトラックで来た。彼と金城琉生は力を合わせて内海唯花の動かなくなった電動バイクをその車の上に載せた。金城琉生は内海唯花に言った。「唯花さん、もう遅いので修理屋は閉まってるでしょ。坂本さんが明日バイクを修理屋に持っていきます。修理が終わったら、店まで届けますね」「ありがとう」内海唯花は心から金城琉生に感謝した。もし彼に偶然会っていなかったら、彼女はきっとこんな夜遅くに電動バイクを押して家に帰らなければならなかっただろう。そうなれば朝までかかるはずだ。金城琉生はニコニコして「僕たちの仲なんですから、お礼なんかいらないです。唯花さん、車に乗ってください。僕が家まで送ります。まだお姉さんのところに住んでいますか?」「ううん、今はトキワ・フラワーガーデンに住んでるの。琉生君、今日
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第56話

彼を起こす?おばあさんは彼が寝てしまうと、電話でもかけて彼を夢から醒まそうものなら、激怒すると言っていた。内海唯花が時間を見ると、もう夜中過ぎだった。結城理仁は普段、家に帰ってくるのはいつもだいたいこの時間だから、まだ寝ていないだろう。内海唯花はそれで結城理仁にLINE電話をかけた。結城理仁はまだ寝ていなかった。彼はわざと玄関にドアロックをかけたのだ。どうしてこんなことをしたのか、彼自身もわからなかった。内海唯花と金城琉生が一緒にいて、二人がお似合いだったので、とても不愉快だったのだ。あの腹黒女め、ここはあまり良い条件ではないから、さっさと次の相手を探しにいくとは。ばあちゃんはあの女に騙されているんだ。全部含めても、ばあちゃんが内海唯花と知り合って三ヶ月あまり、どれだけ内海唯花のことを理解できるのだ?ばあちゃんが感謝の気持ちだけで、内海唯花をとても信用しただけだ。それなのに、うるさく彼女と結婚しろと......鳴り続ける携帯をただ見るだけで、結城理仁は内海唯花からの電話に出なかった。しばらくかけ続け内海唯花は自分から電話を切った。しかし、一分も経たないうちに彼女はまた電話をかけてきた。連続三回かけてきてから、結城理仁はやっとその電話に出た。「結城さん、寝ていましたか?」「何か用か?」結城理仁は氷のように冷たく彼女に聞き返した。「ドアロックがかかっていて、家に入れません」結城理仁はしばらく沈黙した後、変わらない冷たさに皮肉を込めた口調で「俺は今日君が高級ホテルで一泊してくると思っていたよ」と言った。内海唯花は彼の話しぶりから皮肉を感じ取った。でもわけがわからない。どうして彼女が高級ホテルに行かないといけないのだ?彼は突然ひねくれて、言葉には刺があった。彼女が彼を怒らせたのか?「結城さん、ドアを開けてくれませんか?」内海唯花は怒らず、彼のそのへんてこな態度を気にしなかった。結城理仁は何もしゃべらなかった。夫婦二人はしばらく沈黙を保ち、内海唯花が口を開いた。「結城さんが私に高級ホテルへ行けと言うなら構いません。どうせいつもあなたがくれたキャッシュカードを持っていますからね。じゃ、今からスカイロイヤルホテルに行ってこのカード使わせていただきます」結城理仁「......」「待っ
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第57話  

「内海唯花、俺たちはもう合意書にサインしたんだ。たった半年待つだけで離婚ができる。それを待ってから次の相手を探せばいいだろ?今から探す必要がどこにあるんだ。今俺たちはまだ法律上夫婦なんだ。今のお前の行為は不倫だぞ」 「俺はお前のことが嫌いだし、お前を愛することもない。だが、男は、普通の男は不倫されるのが嫌なんだよ」 結城理仁は彼女と金城琉生が一緒にいることが嫌なのだ。 彼の様子がおかしいのは、怒っているからだ。離婚前に次の男を探し、不倫することに怒っているのだ。 金城琉生は彼女に片思いをしているんだぞ。 あいつは彼の恋敵なんだ! これは愛の問題ではなく、面子の問題だ。大の男の尊厳の問題だ。 内海唯花はキョロキョロと見回し、何かを探していた。ちょうど良いものがなかったので、彼女は直接手に持っていた鍵と携帯を入れた袋を力いっぱい結城理仁に向かってぶつけた。彼女は空手を習ったことがあるので、人を殴る腕前はかなりのものだった。 結城理仁は彼女がこんなことをするとは思っておらず、完全に油断していて、彼女の袋が完全にヒットした。 袋の中に鍵と携帯が入っていたうえに、彼女は彼の口めがけて殴ってきたので、殴られた後、結城理仁は口元がとても痛んだ。 彼は顔を暗くし内海唯花を睨みつけた。 今まで彼に、こんなことをする度胸があるやつはいなかったんだぞ! 彼を殴った張本人の内海唯花が近づいてきて、腰を曲げて袋を拾った。口調もとても悪かった。「結城さん、そんなでたらめを言うのが好きな口なんて、殴られて当然よ!」 「わけも聞かずに、自分で勝手に解釈して。結城さん、いつもこんなに独りよがりで横暴で、この世で自分だけが正しいとでも思ってるの?」 結城理仁は痛む口を触り、目を見開いて彼女を睨んだ。 「なにそれ?どっちが目が大きいかって?私だってあんたなんかに負けませんけど」  内海唯花は怒ってまたその袋を持って殴りかかった。 結城理仁:......まだ殴る気か! 一体彼女はどこにこんな度胸を隠し持っていたんだ? こ、これは家庭内暴力だ! 「バイクで帰ってきている途中で、どうしてかわかんないけどバイクが動かなくなったのよ。でも、ちょうどいいところに、親友の従弟の金城琉生が通りかかった。彼とはあんたなんかより長い付き合いな
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第58話

結城理仁の顔はこわばっていたが、耳は少し赤くなっていた。彼が内海唯花を誤解していたから赤くなったのだ。決して恥ずかしいからではない。彼、結城理仁が恥ずかしがるわけなどないだろう!「これは男の尊厳の問題だ!」内海唯花は鼻で笑った。この瞬間、結城理仁の顔は真っ赤になった。「俺は君なんか好きじゃないし、愛してもいないんだ、ヤキモチなんか焼くわけないだろ?君が不倫さえしない限り、どこの誰と一緒にいようがどうだっていい」「いちいち何度も私を好きじゃない、愛してないって強調しないでよ。まるで私があんたのことが大好きで愛して仕方ないみたいじゃない。私たちは結婚して、ただシャアハウスの生活をしているだけでしょ。正直に言うけど、私はね、ただ姉に私のことで義兄と喧嘩してほしくなくて、急いで姉の家を出てきたかっただけ。住むところを提供してくれるから、あなたのおばあさんの申し出を受け入れてあなたと結婚したのよ」「たくらみがあるって言うなら、これこそがあなたへのたくらみよ。あなたに家があって、私はタダで住まわせてもらえる。家賃が浮いたし、姉さんを安心させてあげられるから」結城理仁「......」彼の持ち家は彼自身よりも魅力的なのだ。彼の口からはスラスラと彼女が嫌いで、愛してないと出てきた。でも、彼女の口から彼が嫌いで愛してないと聞くと、その言葉が耳に刺さった。「私も不倫なんてしないわよ。あなたがさっき言ったとおり、半年後離婚してあなたが本当に家と車を譲ると言うなら、私はこの家に住んであの車を使うわ。そして正々堂々と新しい男を探しに行くから、これじゃダメなの?なんでわざわざあなたに不倫してるなんて言われなきゃならないのよ」結城理仁「......」しばらく経って、彼は態度を柔らかくし内海唯花に謝罪した。「内海唯花、申し訳ない。俺が君を誤解していた」彼の言い分は筋が通っておらず、彼女には敵わないのだ。ただ頭を下げて謝るしかなかった。「今後なにか問題があれば、直接私に言って。さっきみたいに内側から鍵をかけて私を外に放っぽり出すような真似はしないで。あなたのその性格はね、将来奥さんをもらっても、仲違いしやすいわ。もし奥さんもあなたと同じような性格だったら、あなたたち夫婦はすぐ冷戦に突入して、最終的には離婚するわよ」結城理仁は黙ってから
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第59話

それから一晩、会話はなかった。次の日の朝、内海唯花は起きると、まずベランダに行って花たちに水をやり、観賞した。毎日起きてこの花の庭園を見ると、心が洗われ、結城理仁に対するちっぽけな不満など消えてしまうと言うしかない。この庭園は結城理仁が花を買ってきてくれたおかげで完成したのだから。心の状態を整えた後、内海唯花はキッチンへと向かい、夫婦二人の朝食の準備に取りかかった。すぐ結城理仁も起きてきて、キッチンの入口まで来ると、内海唯花が忙しそうにしていた。きつく引き締まった唇が動いた。「内海唯花、おはよう」唯花は後ろを向いた。「おはよう」「何か手伝うことはあるか?」「いいわ、もしやることがなくてつまらないなら、私の服を干してくれる?それから掃き掃除も」結城理仁はびっくりした。彼女は本当に遠慮がないな。口先では彼女に応えた。「わかった」彼は後ろを向いて去っていった。内海唯花の代わりに服を干して、掃除を始めた。こんなに大きく広い家に夫婦でたった二人、どちらも朝早く夜遅く家には基本いないので部屋はとてもきれいだった。結城理仁はどの部屋も隅まで掃き掃除した。唯花が二人分の朝ごはんを作り終わった時、彼はまだ掃除をしていた。「なんでそんなにタラタラしてるの」内海唯花はひと言つぶやくと、近づいていって、彼の手からホウキを取り上げた。結城理仁は無言になった。彼女は素早く、数分で終わらせてしまった。結城理仁は口を開いて何か言おうとしたが、結局何も言わなかった。こっそりと何度か彼女の顔色を伺ってみた。昨晩、彼に誤解されてから彼女はものすごく怒って、彼に手まで上げたのだ。まあいい、今朝も引き続き彼に朝食を用意してくれて、顔色もそこまで不機嫌そうではなかった。この娘、手ごわい!結城理仁は内海唯花の性分が少しわかった。なにか問題があるならその場で解決し、復讐ならその場で面と向かってやるのが一番だ。面と向かっていけないなら、チャンスを見計らうのだ。ひと言で核心を突き、彼女に無実の罪を着せず、怒らせない。彼女は気性の良い女性だ。「私の様子を伺いたいなら、コソコソしないで堂々と見たら。私がコンテストで最低でも準優勝できるくらいきれいなことは知ってるけど」結城理仁は我慢できずに笑った。「優勝できるくらいだと言うかと思っ
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第60話

結城理仁は内海唯花の審美眼に問題があるんじゃないかと疑った。金城琉生は確かに顔が悪くないが、彼と比べることができようか?彼は金城琉生よりも、もっとイケメンのはずだ。彼女の携帯の連絡先に、彼の名前はどう登録されているのだろうか?結城理仁はふいにとても知りたくなった。内海唯花は金城理仁の電話に出た。「唯花さん、おはようございます」「こんなに早くから電話してきて、どうしたの?」「唯花さん、朝ごはんを食べましたか?僕が迎えに行って、店まで送りますよ。途中で朝ごはんを食べませんか。それか、唯花さんが僕に奢ってくれてもいいです」金城琉生の言葉には少し期待が込められていた。昨夜、彼は内海唯花を助けたのだ。今日、唯花姉さんを誘って朝ごはんを一緒に食べて送り迎えをする良い口実ができたというわけだ。「ううん、もうすぐ食べ終わるから。自分で朝食を作ったのよ。あとで夫が店まで送ってくれるから、あなたがわざわざ遠くまで来る必要ないわよ」内海唯花は金城琉生が彼女に片思いをしているとは、露ほども思っていなかった。彼女はただ単純に金城家からトキワ・フラワーガーデンまでがとても遠いと思っていた。朝の通勤ラッシュは渋滞しやすい。金城琉生に遠くからわざわざ来てもらって、渋滞にまで巻き込みたくないと思っていたのだ。金城琉生の満ち溢れていた期待は唯花の「夫が店まで送ってくれる」という言葉で、跡形もなく消えてしまった。まるで冷水を頭から浴びせられ、全身ずぶ濡れになったようだ。彼は内海唯花が既婚者だということを見落としていた!唯花姉さんはずっと彼氏がいなかったのに、突然スピード結婚してしまった。その相手は知らない人......彼女はどうして彼のことを待ってくれなかったのか?彼は今はまだ若いけれども、彼女のスピード結婚の相手に喜んでなるのに。残念なことに、唯花姉さんは一度も彼をその対象として見たことはなかったのだ。彼のことをただ弟としか見ていなかった。知り合ってから長い間、彼に物心がついた頃から、唯花姉さんは片思いの相手だった。しかし......結局のところは虚無でしかなかった。「わかった。唯花さんのバイクが直ったら、店まで持って行かせるから」金城琉生の心はとても苦しかったが、態度を変えずにいたので、内海唯花に彼の様子がおかしいこ
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