「おばあさんが病気なんだ。肝臓癌で。でも早期の癌だからよかったんだけどな」内海智明は電話で言った。「医者が都内の病院で治療を受けたほうがいいって言うんだ。君たち姉妹は都内に住んでいるし、詳しいだろう。病院の予約を先にして準備しておいてくれないか。私たちはもうすぐ出発する。おばあさんを都内の病院に連れて行くよ」「予約しておいてくれたら、着いてすぐ看てもらって、入院もできるだろう。入院時に保証金を前払いしないといけないところもあるって聞いたんだ。そちらで前払いしといてくれ。君の両親はもう亡くなっているけど、祖父母の世話も責任はあるだろ。君たちは生活費もあげたことないしさ。今おばあさんが病気になったんだから、君たち姉妹で病院にかかる必要を出してくれ。今までの生活費の補填だと思ってさ」従兄の話を聞いて、内海唯花の顔は青ざめた。彼女は十歳で両親を亡くした。二人が命と引き換えにした賠償金は全部で一億二千万だった。祖父母もお金を要求してきたが、それは理解できる、彼らは父親の両親なのだからだ。姉妹は当時幼く、祖父母が奪っていった賠償金は彼らの分の割り当て額をはるかに超えた金額だった。彼女は祖父母が一億二千万の賠償金を受け取った後、そのお金を彼女のおじさんたちに分けていたと知った。彼女には伯父が二人、叔父が一人、おばが二人いる。おじさんたちの家それぞれに一千五百万、二人のおばにはそれぞれ二百五十万、残ったお金は祖父母の老後の費用に当てられた。当時の彼女はまだ小さかったが、十歳でもしっかりと覚えていた。彼女は今でも、祖父母ができるだけ多くの賠償金をもらうために、村の役場や彼女の母親方の親戚の前で今後は姉妹に老後の面倒を見てもらわなくていいと言っていたのを覚えている。しかも合意書にサインまでしたのだ。祖父母、おじたち、そして姉妹二人の拇印までした。合意書は三枚あり、姉妹二人に一枚、祖父母に一枚、村の役場にも一枚保管してあった。証人はこんなにたくさんいるというのに、今従兄は姉妹に対して祖父母に生活費をあげていないと責めるのか!両親が亡くなった後、親戚には誰も姉妹二人を引き取ってくれる人は誰もいなかったことを考えた。一億二千万の賠償金の半分の六千万は祖父母に取られ、母方の祖父母も不公平だと思い四千万取られ、姉妹に残ったのは二千万だけだった。まだ十五
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