交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています のすべてのチャプター: チャプター 211 - チャプター 220

310 チャプター

第211話

屋見沢は星城の高級住宅地で、ここに住んでいるのは数少ない大金持ちか、権力のある名家の者ばかりだ。結城理仁は内海唯花と結婚する前、ほぼ毎日ここに住んでいた。実家にはたまに帰り、お年寄りの相手をするくらいだった。彼が住んでいたのは、もともと何軒かの小さな一軒家をまとめて買い取り、一つの大きな家に建て直したもので、前にも後ろにも庭園がついていた。実家ほど広くないが、一人の住処としては十分快適なところだ。執事である吉田は彼が帰ってくるのを知り、お腹をすかせないように、先に昼食を用意していた。結城理仁は起きるのが遅かったので、朝食を食べず、そのまま昼食にした。慣れ親しんだ家で腹一杯食べているうちに、結城理仁の機嫌はいくらか良くなってきた。そして、ソファーに座り、九条悟に電話をした。一方その頃、九条悟はまだ目を覚ましていなかった。昨日東隼翔と一緒に結城理仁に付き合ってがっつりお酒を飲んでいたのだ。結城理仁はお酒に強く、そこまで酔っていなかったが、九条悟は誰かに家まで送ってもらわなければならないほど酔っていた。東隼翔は結城理仁よりお酒が強く、少しも酔っていなかったが、お酒を飲む以上、車を運転することができず、そのままホテルに泊まっていた。「社長」九条悟は少しかすれた声で挨拶した。「おはよう」暫く沈黙した結城理仁は言った。「おはようも何も、俺はもう昼食も食べ終わったぞ」九条悟「……」携帯を少し耳から離し、時間を確認すると、本当にもう昼だと気づいた。どうりで社長様がじきじきモーニングコールしてきたわけだ。少々お腹が痛いが、幸い頭は痛くなっていない。さもなければ、彼は一日中ベッドの中に封印されるかもしれない。「どうした?」「午後はどこかへ遊びに行かないか?」九条悟は、さっと身を起こし、もう一度携帯を耳から離し、着信通知をじっくり確認した。電話をかけてきたのは間違いなく、彼の上司兼親友、結城理仁である。確認すると、彼は笑い出した。「どうした理仁、君からどこかへ遊びに行こうと聞かれるなんて、今日は太陽が西から出てきたのか。奥さんと一緒にいなくてもいいのか」結城理仁の顔色がどれほど不機嫌なものか、九条悟は確認するすべがなかった。夫婦喧嘩したことを結城理仁は口に出すわけがなく、わざと淡々とした口調でいった。「彼女は休み
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第212話

夜景を眺めているうちに、どんどん眠くなり、内海唯花はブランコにもたれて、何分くらいか居眠りをしようと思って結局寝入ってしまった。目が覚めた時、もう午前五時過ぎで、夜が明けようとしていた。ベランダで一晩中眠っていたなんて。目が覚めると、内海唯花は結城理仁が昨夜帰らなかったことに気づいた。もし帰ってきていたら、彼は必ず彼女を起こすだろう。彼は冷たい性格をしているが、決して冷血無情な人じゃない。彼女にもなかなかよくしていて、妻に与えるべきものは、確かに全部与えてくれたのだ。ハンモックチェアから立ち上がり、リビングに戻って電気をつけた。暫くローテーブルに置いておいた二つのハンドメイドを黙って見ていて、結城理仁の部屋へ向かった。ドアの鍵がかかっていて、その部屋の鍵を持っていない彼女はドアを開けることができなかった。多分、本当に帰って来ていないのだろう。今日は月曜日、また新しい一週間の始まりだ。結城理仁が一晩中帰ってこないし、内海唯花に電話もかけてこなかったから、まだ怒っているに決まっている。彼女もわざわざ彼を気にかける必要はないと思っていた。どうせ彼に電話をかけても、絶対出ないだろう。結城理仁が家にいないので、内海唯花も家で朝食を取らないことにした。外が明るくなると、車の鍵を持ち家を出て、外で適当に食べてから姉の家に甥の佐々木陽を迎えに行こうと決めた。佐々木唯月は今日も仕事を探しに行くから。内海唯花はマンションの下にとまっていた結城理仁のホンダ車を見て、思わず立ち止り、じっくり車のナンバーを確認して、確かに彼の車だと確定した。結城理仁は車で出かけたわけじゃないのか。少し迷ってから、携帯を取りだして、結城理仁にメッセージを送った。彼女は彼に聞いた。『今日は会社へ行かないの?マンションの下に車がとまってるの見たけど』メッセージを送った後、彼女は自分の車に向かった。そして、車のエンジンをかけ走らせた。姉の家に着くと、意外なことに義兄の佐々木俊介が帰ってきていた。「唯花か、おはよう」佐々木俊介は先に義妹に声をかけた。少しきょとんとしていたが、内海唯花は彼にも挨拶して尋ねた。「お姉さんと陽ちゃんはもう起きましたか」「唯月はキッチンで朝食作ってる。陽はまだ起きていないよ」帰ってきた佐々木俊介が随分自分に丁
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第213話

佐々木俊介は振り向き、部屋の中を見た。彼は昨夜自ら帰ってきたのだ。両親と姉に散々言い聞かせられて、彼はやっと帰ると決めた。さもなければ、まだ実家に何日も滞在するつもりだった。実家にいると、何もはばかることなく、成瀬莉奈と二人で一緒にいることができるからだ。普段佐々木唯月はあまり義理の親の家に行かない。行くたびに義母と義姉にけちをつけられるから、煩わしく思い、何事もなかったら夫の実家に行かないのだ。だから、佐々木俊介は遠慮もせずに、図々しく成瀬莉奈と二人の世界を作りあげた。彼が怪我をして休暇を取り、家にいた数日で、成瀬莉奈は仕事が終わるとすぐ彼の世話をしに来て、たくさん栄養食品とおいしいものを買ってきてくれた。これで二人の感情が急速に近づいた。成瀬莉奈は彼の離婚を待つと言い張っていた。何も知らないまま彼と一緒にいてもいいと思っていたら、今頃二人はとっくに最後の一線を超えていることだろう。成瀬莉奈と最後までは関係を持っていなかったが、佐々木俊介は彼女にもっとよくしていた。完全には得られないという状況が、一番良いということだ。それをわかっている成瀬莉奈は、たとえ佐々木俊介と実の夫婦のように仲良くなっても、最後の一線を死守していて、彼の思うようにさせなかった。「彼女が謝ったぞ、今後は二度と俺に手をあげないとも約束した」佐々木俊介は嘘をついた。実際、彼が帰ってくると、夫婦二人は別々の部屋で寝ていたのだ。佐々木唯月に部屋から追い出されたのではなく、一緒のベッドで寝てしまったら、佐々木唯月にズタズタに殺されてしまうのではないかと怯えていたからだ。佐々木唯月は彼に謝らず、逆に、また乱暴したら包丁を持って地獄まで彼を追いかけて、思い切り恥をかかせてやると警告した。佐々木俊介は唯月の恐れも知らない猛々しさに怯えた。帰ってくる前に、両親も彼に注意したのだ。何かあったら佐々木唯月が激しく反抗してくるから、今後彼女に手を出さないほうがいいと。さもなくば、夫婦喧嘩の最後、一体どちらが損するのかは誰もわからないのだ。その返事を見て、成瀬莉奈は嘲笑したように笑った。佐々木唯月が夫に暴力を振るわれたのに、まさか先に佐々木俊介に謝るなんて、本当に気性がいいことで。多分、彼女はまだ佐々木俊介に深い愛情を持っているのかもしれない。それに、佐々木唯月は今無
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第214話

ためらいながら、佐々木唯月は彼に声をかけた。「朝ごはんを食べないの?」「いいよ、外で適当に食べるから。お前たちだけで食べてくれ」佐々木唯月がただその一言を言っただけで、以前のようにコートとカバンを持ってきてくれ、王様の付き人のように送ってくれなかったので、佐々木俊介は密かに不満を抱いた。佐々木唯月が彼のお金で衣食住を得たのに、彼の世話をちゃんとしてくれなかったからだ。俊介の姉の英子は夫にとてもよくしていて、王様の付き人のようにしていながら、仕事もちゃんとこなしているのだ。逆に佐々木唯月は何もできないくせに、彼にも尽くしてくれなかった。不合格な妻に不満を抱いて、愛してあげないのは当たり前のことだろう。佐々木俊介は勝手に自分の浮気に合理的な理由を見つけた。彼は自分でスーツの上着、カバンと鍵を取り、息子に言った。「陽、パパは会社に行くぞ、じゃあね」息子が彼に手を振ったのを見て、家を出ていった。家を出ると、車でスカイロイヤルホテルへ行った。しかし、成瀬莉奈がスカイロイヤルホテルで彼を待っているとは思っていなかった。「佐々木部長」成瀬莉奈はきちんとスーツを着こなしていて、まだまだ若いのに、しっかり仕事をこなせるエリートに見える。今きれいに化粧を施した彼女は、佐々木唯月より何倍も美しく見えるのだ。「どうして来たんだ?持って行くって言ったじゃない?外で俺のことを俊介って呼んでって約束しただろう。莉奈にこう呼ばれるのが好きなんだ」佐々木俊介は車を降り、愛人に近づくと、手を彼女の肩に回して、自分の胸の中に抱きしめながら、ホテルへ歩いた。「来てくれたなら、ホテルでいっぱい食べてから会社に戻ろう」成瀬莉奈は恥ずかしく笑った。「俊介、一緒にご飯を食べたいから、わざわざここで待っていたの。どう?嬉しくない?」「もちろん、嬉しいさ」佐々木俊介は愛おしそうに返事して、成瀬莉奈の頬に軽くキスをした。成瀬莉奈は顔を赤くして、彼の体を軽く押しながら小声で言った。「やだあ、まだ外だよ。万が一誰かに見られて、奥さんの耳に入ったら、私はみんなに憎まれる泥棒猫になっちゃうわよ。愛しているって言ったでしょ、私はそう言われて本当にいいの?」彼女の目標は佐々木俊介の合法的な妻となり、佐々木唯月に代わって、その家の持ち主の一人になることな
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第215話

「結婚した後、彼女は無職だから、収入がもちろんないじゃない?全部俺が養ってやってるんだよ。家のものは全部俺の金で買ったんだ。俺の財産を分ける資格があると思うか?」佐々木俊介は偉ぶった顔で言った。「俺と離婚したら、彼女が家から持っていけるものはなにもないさ」前に、離婚するなら、当時家のリフォームの代金を返してくれと佐々木唯月は言っていたが。佐々木俊介はお金は一円たりとも渡さないと当然のように返事した。今離婚しないのは、息子がまだ小さくて、世話をする人が必要だからだ。それまで、佐々木唯月をただのベビーシッターにしよう。この金のかからないベビーシッターは息子を虐待する心配もなく、献身的に世話をしてくれるだろう。成瀬莉奈が言いたいのは彼の貯金も夫婦二人の共有財産に含まれるということだ。佐々木唯月が訴えたら、貯金の半分も取ることができる。それに、佐々木俊介が普段浮気相手の彼女に使ったお金さえ佐々木唯月に知られ、まとめて訴えられたら、そのお金や買ったものなど全部返さなければならないのだ。しかし、内海姉妹はただごく普通の一般人で、逆に佐々木俊介は大企業の部長だ。職場でうまくやっていて、顔も広い。離婚した後、佐々木唯月がどう足掻いても、彼に敵わないはずだから、成瀬莉奈はあえて考えていたことを言わなかった。言ったところで、佐々木俊介に彼女がお金目当てで近づいたと思われるかもしれない。成瀬莉奈は佐々木俊介に対して、いくつかの真心をもって付き合ってきた。会社の多くの重役のうちで、佐々木俊介だけが一番若かった。まだ30代前半で、普段自分のメンテナンスにはとても気を配っていて、毎日スーツと革靴姿でびしっと決めて、落ち着いた大人のイケメンに見える。もちろん、一番重要なのは、お給料が高いことだ。彼女の兄は佐々木俊介の一ヶ月分の給料が、彼の一年分の収入に匹敵すると言っていたのだ。彼女が佐々木俊介と結婚したら、実家の近所の娘の中で、誰よりもいい結婚相手を捕まえたことになる。その時、ホテルの警備員が素早く出入りしているお客たちを両サイドに誘導すると、黒いスーツを着た大勢の男たちが一人の男性を囲みながら、ホテルを出てきた。警備員に案内され、ボディーガードの大男たちに視界を遮られていた。ホテルから大物が出ていったことがその場にいる全員はわかったが、その真ん中に囲
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第216話

結城家の御曹司だと聞いて、佐々木俊介は少しぼうっとしながら言った。「さすが結城家の坊ちゃんだな。悔しいぜ、彼だとわかってれば、一目でもいいから拝みたかった」噂によると、結城家の御曹司は非常に端正な顔をしているという。そのおじさんは佐々木俊介を一瞥し、笑いながら言った。「お前さんもなかなかのイケメンだけど、結城家の坊ちゃんと比べたら、さすがに勝ち目が見えないな」それを聞いた佐々木俊介は全く気にしなかった。「わかるよ、レベルが違い過ぎると。星城で結城さんと張り合えるのは神崎社長くらいだろう?今日は結城さんに会えて、もう結構ついていると言えるよ。あとで宝くじでも引いて、大当たりが出るかもな」おじさんは佐々木俊介の話を聞いて、思わず笑い出した。成瀬莉奈はうっとりした顔で話を聞いていた。おじさんと別れた後、佐々木俊介の腕を組みながら、ホテルのカフェテリアに向かった。「結城さんは星城で神様のような存在ね。どのような女性が彼の心を手に入れるでしょうね。」結城家は大都市である星城の名家でトップに君臨しているものだ。結城家の御曹司は当代の当主で、結城グループを仕切りながら、副業もやっているそうだ。彼は間違いなく他の人が到底及ばない大金持ちなのだ。それに、結城家の御曹司には彼女がいないと聞く。彼を慕っている女性もそんなに多くいないが、おそらく普段直接彼に会える人が限られているからだ。会えなかったら、彼を好きになる可能性も低くなるに決まっている。もちろん、彼のことを深く愛している人が確かにいた。それは神崎家の令嬢である神崎姫華だ。神崎姫華は公に結城家の御曹司に告白しただけでなく、一心に彼を追いかけていた。成瀬莉奈はもし自分が神崎姫華のような出身なら、彼女にも彼を追いかける自信があると思った。「さっき結城さんの姿を見て、なんだか見覚えがあるようで、どこかで会ったことがあるかもな」佐々木俊介は自分の疑問を口にした。成瀬莉奈は水を差すようなことを言いたくないが、事実に背を向けることができず、口を開けた。「それは難しいんじゃないの?うちの会社は結城グループとの取引がないでしょ。あったとしても、私たちのような人間は結城さんに会うこともできないわ。それに、うちは結城グループの支社と競争関係だから、今後も提携するはずがないの」少なくとも今のと
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第217話

財力と権力を持っている結城家と義妹の状況を比べて、佐々木俊介は嘲笑した。もし結城理仁が本当に結城家の御曹司で、内海唯花が彼の妻になったのなら、内海家の先祖の方々が代々徳を積んできたおかげだろう。内海唯花は確かに容姿端麗ではあるが、他のところでは神崎家のお嬢さまに到底及ばないのだ。結城家の御曹司はそのお嬢様ですら相手にしないのに、内海唯花と結婚するわけがない。そう考えると、佐々木俊介はその考えを捨て、気のせいだと思い込んだ。結城理仁は断じて結城家の御曹司などではない!「見間違えた。朝ごはん食べに行こう」成瀬莉奈は密かに佐々木俊介が結城社長と実は知り合いだということを望んでいた。そうすれば、彼女も結城社長と知り合いになって、上流社会に入るきっかけを掴めるかもしれないからだ。しかし、現実は残酷だ。それは不可能なことだった!やはりあまり夢を見すぎないほうがいい。しっかり佐々木俊介の心を掴んで、嫁にしてもらえば、それが一番いい結果だ。これ以上の望みは無理な話なのだ。結城理仁は佐々木俊介のことに気づいていないが、七瀬は見ていた。幸い、佐々木俊介は結城理仁のボティーガードを知らなかったが、ボディーガードは社長夫人の身近な人をしっかりと覚えるのも仕事の一つなので、とっくに佐々木俊介の顔を覚えていた。車に乗ると、七瀬は結城理仁に報告した。「若旦那様、さっきホテルの前で、奥様の義兄を見たような気がしましたが、隣にいる女性は奥様のお姉さんではないと思います。一瞬だけしか見ていないので、見間違えたかもしれませんが」その男がもし本当に社長夫人の義理の兄だったら、彼は既婚女性の夫が浮気しているという残酷な事実を知ってしまったことになる。結城理仁はすぐには返事をしなかった。暫くすると、冷たい声で言った。「言ったはずだ。彼女のことは俺に関係ないと」七瀬は口を開け、何か言いたそうにしたが、何を言ったらいいかわからなかった。彼の主人は妻と喧嘩した。今でも絶賛冷戦中だ。内海唯花は結城理仁に電話をかけなくなり、結城理仁もトキワ・フラワーガーデンへ帰らなくなった。しかし、彼らのようなボディーガードはこの夫婦が何のために喧嘩したのかを知るすべがなく、仲直りさせようにもできないのだ。これだけを言って、結城理仁はまた黙った。七瀬は首を
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第218話

佐々木唯月はまた仕事を探しに行った。内海唯花は甥を連れて店に行った。牧野明凛は非常に佐々木陽を甘やかしていた。ほとんどの時間は彼女が遊び相手をしていて、おかげで内海唯花はハンドメイドに専念することができた。彼女は自分でレトロ風のヘアアクセサリーを作ってネットショップで販売してうまくいくか試してみようと思っていた。もしそれなりの売り上げがあったら、もう一つのネットショップを開くつもりだ。今はネット通販が流行っていて、実店舗での商売よりも儲かることがある。もしネットショップが儲かるなら、内海唯花は喜んでもう一つをやろうと思っていた。昼になると、牧野明凛は親友に声をかけた。「唯花、今日はまた結城さんを迎えに行って一緒にご飯を食べる?家から新鮮な海鮮を持ってきたの、昼ご飯にしよう。結城さんが来るなら、ご飯を多めに作るよ」牧野明凛は昼食の準備をするため、親友に聞いたのだ。ちゃんと確認しないと、人数分足りないかもしれない。「呼んでも来ないと思うよ。明凛、私は結城さんと喧嘩したっぽいんだよね」内海唯花はお客さんが注文した招き猫を作り終わって、一休みすることにした。それを聞いて、牧野明凛は心配そうに聞いた。「どうして喧嘩したの?最近うまくいってたじゃない?結城さんはおいしいものを食べさせるために、スカイロイヤルホテルに頼んで、ご馳走を持ってきてくれたし」内海唯花はため息をつき、続いて言った。「土曜日に琉生君と明凛にご馳走してる時、私たちが一緒にご飯を食べているのを彼が見たらしくてさ、私は彼の影も見てないのに。それで、私が浮気して、琉生君を次のターゲットにするつもりだと言われて、頭にきたの。琉生君は私の弟のようで、ずっと彼を弟としか見てないのに、琉生君を次の結婚相手にするはずがないでしょ。もし本当に琉生君のことが好きだったら、当時お姉さんの家から引っ越した時、彼に頼めばいい話でしょ。結城さんと結婚する必要ないじゃない?普段余裕そうに見えるけど、実は器は針の先より小さいのよ。ケチだし、疑い深いし、口まで悪いの。本当のことも知らないくせに、私が浮気しただなんて言い出して勝手に騒いだの。これって私が尻軽な女だと言ってるのと同じよ」結城理仁が酒乱で強引に彼女にキスしたことについては言わなかった。牧野明凛「……三人で一緒にご飯を食
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第219話

「たぶんメッセージを確認してないだけかもよ、もう一度送ってみたら?」内海唯花はしばらくためらい、携帯を取り出して、LINEで結城理仁にメッセージを送った。『一緒にお昼ご飯を食べない?』メッセージを送ったところで、彼女は結城理仁のLINE友だちじゃないため、そのメッセージの送信ができないので、先に友だち申請してくださいという通知が出てきた。内海唯花はその通知をじっと見つめた。LINE友だちじゃない?結城理仁のばか、また彼女をLINEから削除していた!しかもこれで二回目!一回目の時、二人は結婚したばかりで、お互いにまだ相手に慣れていなかった。彼が彼女の存在まですっかり忘れて、友だちから削除したのはまあ、納得できないわけではないが。今になってまた彼女を削除したのは、彼女が彼に申し開きのできないことをして、次の男を見つけたと思い込んでいるということだろう。せっかく先に頭を下げて、ちゃんと話をして、どんな問題でも面と向かって二人で解決しようと思ったのに、このような結果になってしまうなんて、さすがに頭にきた。彼女はまだ彼をブロックしていないのに、まさか彼が先にそうするとは。消したいなら消せばいい話だ。何も恐れることはない!内海唯花も苛立って、結城理仁をLINEから消した。ついでに、彼の電話番号もブロックしてしまった。本当に腹立たしい!「唯花、顔色が悪いよ。結城さんからの返事が来たの?」内海唯花は携帯をポケットに入れ、冷たく言った。「彼なんかほっといて、私たちのご飯だけ準備すればいいわ。彼が食べようと食べまいと、それは彼自身の問題なの。私とは関係ない」牧野明凛は彼女を見つめた。内海唯花はふてくされたように説明した。「彼にLINE友だちを削除されたから、私もそうしただけ。ついでに電話もブロックしたの。あと私の前で彼のこと、もう口に出さないで、聞きたくないの。明凛、やっぱりしっかりいい男を探して何年か付き合ってから結婚した方がいいと思うよ。私のようにならないでね。スピード結婚した上、こんな腹立たしい男の妻になったなんて。毎日気を使って彼の機嫌をとっても理不尽に怒られて、ありえない」牧野明凛「……」内海唯花はレジから出て、甥を抱き上げ、親友に言った。「気分が悪いから、ちょっとショッピングモールへ行ってくる。
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第220話

内海唯花は普段ちゃんとお金を計算して生活している。大きな家具を買わない限り、家に使うお金は毎日2000円も超えないのだ。やがて、結城理仁は考えるのも億劫になった。どうせ彼女にあげた金だ。どう使っても彼女の自由だ。彼は確かに彼女に怒って、LINEから削除すらしてしまったが、彼女に使うお金を返してもらうとか、彼女を困らせるようなことをしたくないのだ。どうなっても、契約が終わるまで一緒に生活するつもりで、途中で契約を中止したり、約束を破ったりして、彼女に多額の賠償金を支払うことはないだろう。数十分後。結城理仁の携帯にまた通知が届いた。今回は、一気に四十万以上も支払っていた。もちろん、結城家の御曹司にしてみれば、やはり大した金額ではない。ただこの女がどうして急にこんなにお金を使ったのか気になっただけだ。金塊を丸ごと持ち帰ったわけはないだろう。それとも、彼女は彼にLINEから消されたことを知り、怒って、わざと彼のお金を使って、買い物に行ったのか?さすが結城理仁、予感的中だ。退勤時間まであと十分、会議もようやく終わり、結城理仁はそのまま解散することにした。普段会議が終わると、いつも彼が先に会議室を出て、部下たちが後ろについて行く形だが、今日は結城理仁は席に座って、携帯で何かを見ていて、会議室を出る気配が全くなかった。他の人達は視線を交わしながら、誰も先に立ち去ることができなかった。暫くして、結城理仁はようやく何かおかしいと気付き、顔を上げて言った。「なんだ、残業したいのか」全員帰りたいけど、会議室から出る勇気がないんだと思っていた。結局、結城辰巳が先頭に立って会議室を後にした。結城辰巳は結城家の二番目の坊ちゃんなので、彼が先頭に立つと、部下たちはまるで救世主が現れたみたいに、急いでついて行って、次々と会議室を出て行った。九条悟はそれにはついて行かなかった。彼は結城理仁の社長専属秘書なので、会議ではいつも彼の一番近くにいた。他の人は結城理仁の変化に気づかなかったとしても、九条悟のこの目は見逃さないぞ。ふたりきりになると、九条悟は心配そうに尋ねた。「社長、どうしたんだ?」結城理仁は再び携帯を机に置き、椅子にもたれて、暫く九条悟を見つめてから、ようやく口を開けた。「内海さんと喧嘩した」九条悟「
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