屋見沢は星城の高級住宅地で、ここに住んでいるのは数少ない大金持ちか、権力のある名家の者ばかりだ。結城理仁は内海唯花と結婚する前、ほぼ毎日ここに住んでいた。実家にはたまに帰り、お年寄りの相手をするくらいだった。彼が住んでいたのは、もともと何軒かの小さな一軒家をまとめて買い取り、一つの大きな家に建て直したもので、前にも後ろにも庭園がついていた。実家ほど広くないが、一人の住処としては十分快適なところだ。執事である吉田は彼が帰ってくるのを知り、お腹をすかせないように、先に昼食を用意していた。結城理仁は起きるのが遅かったので、朝食を食べず、そのまま昼食にした。慣れ親しんだ家で腹一杯食べているうちに、結城理仁の機嫌はいくらか良くなってきた。そして、ソファーに座り、九条悟に電話をした。一方その頃、九条悟はまだ目を覚ましていなかった。昨日東隼翔と一緒に結城理仁に付き合ってがっつりお酒を飲んでいたのだ。結城理仁はお酒に強く、そこまで酔っていなかったが、九条悟は誰かに家まで送ってもらわなければならないほど酔っていた。東隼翔は結城理仁よりお酒が強く、少しも酔っていなかったが、お酒を飲む以上、車を運転することができず、そのままホテルに泊まっていた。「社長」九条悟は少しかすれた声で挨拶した。「おはよう」暫く沈黙した結城理仁は言った。「おはようも何も、俺はもう昼食も食べ終わったぞ」九条悟「……」携帯を少し耳から離し、時間を確認すると、本当にもう昼だと気づいた。どうりで社長様がじきじきモーニングコールしてきたわけだ。少々お腹が痛いが、幸い頭は痛くなっていない。さもなければ、彼は一日中ベッドの中に封印されるかもしれない。「どうした?」「午後はどこかへ遊びに行かないか?」九条悟は、さっと身を起こし、もう一度携帯を耳から離し、着信通知をじっくり確認した。電話をかけてきたのは間違いなく、彼の上司兼親友、結城理仁である。確認すると、彼は笑い出した。「どうした理仁、君からどこかへ遊びに行こうと聞かれるなんて、今日は太陽が西から出てきたのか。奥さんと一緒にいなくてもいいのか」結城理仁の顔色がどれほど不機嫌なものか、九条悟は確認するすべがなかった。夫婦喧嘩したことを結城理仁は口に出すわけがなく、わざと淡々とした口調でいった。「彼女は休み
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