おばあさんは孫を見つめ、孫はおばあさんを見つめていた。 彼女は何度も口を開いて何かを言おうとしたが、何も言わなかった。そして最後に、はははと笑い出した。結城理仁は顔を曇らせて、屈託なく笑うおばあさんを見ていた。おばあさんは笑いながら結城理仁の肩をパシパシと叩いていた。理仁はおばあさんがあまりに邪心なく笑ってうっかり転んでしまうんじゃないかと思って彼女の体を支えなくてはならなかった。暫く経ってから、おばあさんはようやく大笑いを止めて言った。「理仁ちゃんったら、おばあちゃんが間違ってたわ。唯花さんは空手を習っていたのよね。うん、腕っぷしはそりゃあ良いでしょう。そこら辺の不良くらい、十人近く集まっても彼女には敵わないわ。これはおばあちゃんからのアドバイスよ。次、唯花さんがトラブルに遭ったら、彼女に手助けが必要かどうかは構わずにすぐ助けに行ったらいいの。ちょっと怪我するくらいがちょうどいいわよ。そうすれば唯花さんは申し訳ないと思ってあなたに良くしてくれるだろうから」結城理仁は顔色を暗くさせ、唇をきつく結んだ。「彼女を追いかけるなら、ちょっとくらい、せこい真似したほうがいいのよ。もちろん、一番大事なのはあなたの真心よ」結城理仁は冷ややかに言った。「ばあちゃん、俺は彼女を追いかけてなんかいないよ」「わかった、わかった。違うのね。あなたは頑なに認めないんだもの。いつかきっとおばあちゃんに助けてって言ってくるわよ。ふふふ」結城理仁のこの時の表情といったら、目の前にいるのは実の祖母なんだよね?彼はなぜだか、祖母が面白いものが見られるんじゃないかと期待しているように感じられるのだが?なんだか人の不幸を喜んでいるような感じだ。おばあさんの車の運転手が車を運転してやって来た。「おばあちゃんは先に帰るわね。あなたはゆっくりジョギングしてちょうだい。もし朝ごはんを食べる時に食欲がなかったら、おばあちゃんの真似をしてみて、私の方法はとっても効くんだから。私のほうが経験豊富なんですからね」おばあさんはまた結城理仁の肩をぽんと叩き、はははと笑って車に向かい、運転手に忘れずに尋ねた。「吉田さんがあなたに朝食を包んだのを手渡したかしら?」「もちろんです、ありますよ」おばあさんはうんと返事をした。結城理仁はよく気が利き、車のドアを開け
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