All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 231 - Chapter 240

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第231話

おばあさんは孫を見つめ、孫はおばあさんを見つめていた。 彼女は何度も口を開いて何かを言おうとしたが、何も言わなかった。そして最後に、はははと笑い出した。結城理仁は顔を曇らせて、屈託なく笑うおばあさんを見ていた。おばあさんは笑いながら結城理仁の肩をパシパシと叩いていた。理仁はおばあさんがあまりに邪心なく笑ってうっかり転んでしまうんじゃないかと思って彼女の体を支えなくてはならなかった。暫く経ってから、おばあさんはようやく大笑いを止めて言った。「理仁ちゃんったら、おばあちゃんが間違ってたわ。唯花さんは空手を習っていたのよね。うん、腕っぷしはそりゃあ良いでしょう。そこら辺の不良くらい、十人近く集まっても彼女には敵わないわ。これはおばあちゃんからのアドバイスよ。次、唯花さんがトラブルに遭ったら、彼女に手助けが必要かどうかは構わずにすぐ助けに行ったらいいの。ちょっと怪我するくらいがちょうどいいわよ。そうすれば唯花さんは申し訳ないと思ってあなたに良くしてくれるだろうから」結城理仁は顔色を暗くさせ、唇をきつく結んだ。「彼女を追いかけるなら、ちょっとくらい、せこい真似したほうがいいのよ。もちろん、一番大事なのはあなたの真心よ」結城理仁は冷ややかに言った。「ばあちゃん、俺は彼女を追いかけてなんかいないよ」「わかった、わかった。違うのね。あなたは頑なに認めないんだもの。いつかきっとおばあちゃんに助けてって言ってくるわよ。ふふふ」結城理仁のこの時の表情といったら、目の前にいるのは実の祖母なんだよね?彼はなぜだか、祖母が面白いものが見られるんじゃないかと期待しているように感じられるのだが?なんだか人の不幸を喜んでいるような感じだ。おばあさんの車の運転手が車を運転してやって来た。「おばあちゃんは先に帰るわね。あなたはゆっくりジョギングしてちょうだい。もし朝ごはんを食べる時に食欲がなかったら、おばあちゃんの真似をしてみて、私の方法はとっても効くんだから。私のほうが経験豊富なんですからね」おばあさんはまた結城理仁の肩をぽんと叩き、はははと笑って車に向かい、運転手に忘れずに尋ねた。「吉田さんがあなたに朝食を包んだのを手渡したかしら?」「もちろんです、ありますよ」おばあさんはうんと返事をした。結城理仁はよく気が利き、車のドアを開け
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第232話

相手の運転手は二人が車から降りて手伝ってくれるのにとても感激していた。調べた後、結城理仁の運転手が言った。「この車を直すには数時間はかかりますよ。我々は急いでいるので、修理の手伝いはできません。後から来た車の邪魔になってしまわないように、車の中の者たちを呼んできて車を端へ移動させましょう。後で電話して牽引車を呼んでください」一台の車はみんなの力を合わせれば、押して押して少しは移動させることができた。少しずつ移動させれば、後続車の邪魔にならないところまで移動できるだろう。相手の運転手は感謝して言った。「それでは、先にお礼を言っておきます。あのう、うちのお嬢様は少し急用がありまして、そちらの車に途中まで乗せていただけないでしょうか?」七瀬と運転手は勝手にその返事をすることができなかったが、七瀬はロールスロイスの前まで行き、恭しく結城理仁に尋ねた。「若旦那様、あちらの車にお乗りのご令嬢の方がお急ぎらしく、車は修理する必要があるのでこちらの車に乗せてもらえないかとお尋ねでいらっしゃいます」結城理仁は冷ややかに聞き返した。「どこの令嬢だ?」七瀬「……お尋ねしていません」「どこの令嬢なのかはっきり聞いてから、決め……いや、その必要はない。誰なのかわかった」結城理仁はその車からお嬢様が降りて来たのを見て誰なのかがわかった。それは彼に纏わりついて離れず、公開告白をして彼を追いかけ回している神崎姫華だった。内海唯花は彼に神崎姫華は海へバカンスに行ったと言っていたが、こんなに早く戻ってきたのか?神崎姫華が彼の車に向かってくるのを見て、結城理仁の端正な顔がこわばった。不思議と内海唯花が彼に言った言葉を思い出した。神崎姫華が内海唯花に彼をどうやって追いかければいいか教えてもらいに来た話だ。内海唯花のあのバカ娘が、親切にも彼女が思いつく方法を神崎姫華に教えて、神崎姫華が彼を手に入ようとする行動力に大きな追い風を吹かせてやったのだ。こんなに寛容な妻を見たことはない。自分の夫を追う女の手助けをするなんて。結城理仁は瞬時に神崎姫華の車が故障したのはわざとだと気づいた。いつもなら、神崎姫華は自分で車を運転して出かけている。今日に限って運転手に運転させているのだから、完全に彼をここで引き留めようとしてのことなのだ。七瀬は神崎姫華を見て、ま
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第233話

「理仁、理仁……」神崎姫華は結城理仁の車を数歩追いかけて、諦めてしまった。結城理仁はどうしても彼女を車に乗せてくれなかった。彼女が彼の車のタイヤに滑り込んでいっても、彼はきっと車を止めることはなく、そのまま彼女を天国送りにしてしまうだろう。目を見開いて結城理仁の専用車がボディーガードの車に守られて長い列になり去っていくのを見つめていた。神崎姫華は怒って足を踏み鳴らしていた。彼女は朝早くにここまでやって来て、結城理仁の道を塞いだのだ。道を塞ぎはしたが、彼も彼女を助けてくれたと言える。なんといっても車は彼のボディーガードたちが力を合わせて押してくれたおかげで、道の端まで移動させることができ後ろの車の邪魔にはならずにすんだのだ。しかし、結城理仁の車に乗ることができず、神崎姫華はとても悔しかった。もちろん神崎姫華がこんなことで簡単にあきらめてしまうわけはない。長い時間かけて追いかけても彼女は絶対にあきらめたりしない。彼女が公開告白をしてからどのくらいが経った?粘るのよ。いつかはきっと彼女は結城理仁の車に乗せてもらえるはずだ。彼の専用車は将来、この神崎姫華という若い女性だけが乗ることができるのだ。そのポジティブな夢を見ている神崎姫華はすぐにテンションが上がってきた。彼女は自分の家の執事に電話をかけ、車を彼女のところに寄越すよう指示をした。「昨日の夜持って帰ってきたあの海鮮水槽に入れてあるわよね?死んでない?死んでないなら、それも梱包して一緒に持って来て。人にあげるつもりなの」神崎姫華は内海唯花にバカンスから帰って来たら、新鮮な海鮮を食べさせてあげると約束していたのを覚えていたのだ。彼女は昨夜海辺の別荘から帰って来る時、特別にたくさんの海鮮を持って帰って来た。両親は彼女と内海唯花が仲良くしているのを知っていた。内海唯花が娘の友達になるのに相応しくないなどとは思っておらず、逆に唯花と友達になるのに賛成していた。おそらく、彼女の友達がとても少ないのが理由だろう。両親はお目の高い娘が喜んで友人になろうとする女の子なら、良い子なんだろうと思っていた。神崎姫華が内海唯花に海鮮を持って帰ろうとするので、神崎夫人も自ら娘と一緒にたくさん用意してあげた。神崎夫人はまだ内海唯花本人に会ったこともなく、ネットに公開され
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第234話

おばあさんは内海唯花のぺたんこなお腹をちらちらと見た。そうだ、彼女のあのプライドが高く、少し煮え切らない態度の孫が言っていたじゃないか。彼はまだ一度も内海唯花に触れておらず、夫婦二人は今はどちらも純潔なのだ。おばあさんがひ孫を抱きたいという夢を見るにはまだ早すぎる。内海唯花は結城理仁のあの冷たさがあまり好きではない。彼を押し倒すことも、服を脱がせて寝る勇気もない。唯花はその勇気がなくて、結城理仁もあんな性格だから……おばあさんは心配で気が気でない。彼女は突然、結城理仁が外で噂されているように男が好きだとか、体に欠点があるからアッチ方面は無理だとかなのではないかと思った。そうでなければ内海唯花と結婚して一か月余り、一緒に住んでいて、まさかまだ夫としての権利を存分に行使していないとは考えられない。おばあさんは家のシェフに依頼して、昼食はスッポン料理でも作らせて内海唯花にお願いし結城理仁に届けてもらおうと決めた。滋養強壮効果を期待して、ひ孫が生まれないか試してみようじゃないか。ちょうどこの夫婦が冷戦を休戦させる良いチャンスになるだろう。もうこれ以上このように別居を続けていてはいけないのだ。「陽ちゃん、おばあちゃんって呼んでごらん」内海唯花も甥っ子はとても良く育ててもらっていると思っていた。「ゆーきおばあたん、おはよ」おばあさんは結城理仁の祖母だ。佐々木陽にとっては曾祖母の年齢にあたる。おばあさんは笑顔で佐々木陽にお利口さんだと褒めた。そして、彼女と内海唯花は一緒に店の中へ入っていった。「結城おばあさん、いらっしゃったんですね」牧野明凛が迎えた。おばあさんが三人分のお弁当を持っているのを見て、急いでそれを受け取った。「あなた達に朝食を持って来たわよ。いらっしゃい、一緒に食べましょう。私あなた達二人の娘さんと食べるのが大好きなの、食欲が増すわ」おばあさんは店に入ると、自分の家かのように慣れた様子で手を洗いに行き、お椀と箸を持った。牧野明凛はすでに弁当箱の蓋を開けて中の朝食を見ていた。明凛はキッチンから出て来たおばあさんに尋ねた。「おばあさん、もしかして五つ星ホテルにでも行ってテイクアウトしてきたんですか?」どのおかずも見栄え良く、美味しそうな香りがした。五つ星ホテルの料理じゃないなら牧野明凛
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第235話

おばあさんはとても焦っていた。退散してしまおうと思ったが、あ、それはできない。神崎姫華はもう店の入り口にやって来たのだ。今ここでおばあさんが外に出て行けば、神崎姫華に包み隠さず自分をさらけ出してしまう。ひとまず隠れるしかない。そして、おばあさんは落ち着いた様子で箸を置き、内海唯花と牧野明凛に告げた。「お腹いっぱいになったわ、ちょっとお手洗いをお借りするわね」そう言いながら彼女は立ち上げり、トイレのほうへ歩きながら言った。「年取っちゃって、一回お手洗いに行ったら、三十分はかかっちゃうのよねぇ」内海唯花、牧野明凛「……」「唯花、いるの?」おばあさんがトイレに行ってすぐ、神崎姫華が入ってきた。彼女は左手に網に入ったエビを下げ、右手にはカニを下げて勢いよく中へ入ってきた。「唯花、早く受け取って、重くて死んじゃう」神崎姫華はお嬢様だ。普段、家の中で何をするのも誰かがやってくれるから、自分で家事すらしたことのない人間だ。エビやカニの入った袋を二つもぶら下げるだけで重くて死にそうに感じるのだ。内海唯花と牧野明凛はそれを見て、急いで彼女のもとへ行き、彼女の手から海産物の入った大きな網の袋を受け取った。「神崎さん、これって?」神崎姫華は両手が空になったが、その手はまだプルプル震えていた。「ホント重くて死んじゃうわ、手がしびれちゃった。バカンスに行く前にあなたに言ったでしょ。帰って来たら海鮮を持って帰って食べてもらうって。これはね、海に出て釣りをしている時に、捕まえたものだから、本当に新鮮なものよ。特別に人に頼んで一番大きいものを水槽に入れておいたの。帰って来る時にあなたの分も持って来たのよ」内海唯花は大きな二つの袋に入ったエビとカニを見て笑って言った。「神崎さん、これ多すぎるわよ」「そんなことないわ。水槽に入れてゆっくり食べたらいいじゃない。それか、先に下処理しちゃって冷凍して食べたいときに食べてもいいと思うわ。車の中にまだあるのよ。あなた達二人で取りに行って、私は力がないから。この子とっても可愛いわね、どこの家の子?」神崎姫華は手を伸ばして佐々木陽の小さな顔を触った。「私のお姉ちゃんの子よ。お姉ちゃんは時間がないから、ここに陽ちゃんを連れてきて、私が代わりに面倒見てるの」「とってもカワイイ。ちょっと見覚えが
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第236話

「さっき食べ終わったところよ」牧野明凛は急いで食器を片付け始めた。神崎姫華は興味津々で尋ねた。「四人分みたいだけど、他に誰かいるの?」牧野明凛は片付けながら言った。「唯花の旦那さんのおばあさんが来てて、今トイレに行ってるんです」神崎姫華は「そっか」と言い、それ以上は尋ねてこなかった。内海唯花が結婚していることを神崎姫華は知っていた。あのネット炎上事件に関して、彼女が兄に頼んで内海智文をクビにしようとしたこともある。内海家と唯花の親族争いを神崎姫華は他の人よりも多く知っていた。だから、唯花が結婚していることも自然と知ることになったのだった。無関係な人は、もちろんこのことを知っている人はほとんどいない。神崎姫華は他人のプライベートに踏み込むのが好きではない。内海唯花の結婚生活に関しては何も聞かないのだ。牧野明凛がテーブルを片付け終わってから、内海唯花は神崎姫華にお茶を出した。「神崎さん、バカンスに行ってこんなに早く帰ってきたの?」「私って好きな人のこといっつも考えちゃうでしょ、両親に付き合って海で二日遊んで昨日の夜ここへ帰ってきたの。唯花、あのね、今朝あなたが教えてくれた方法を使って結城社長の車を遮って来たの。ホントにできちゃったわ」神崎姫華は内海唯花に早く自分の戦績を伝えたくてたまらなかった。内海唯花は笑って言った。「本当に?あなた達話ができた?結城社長は助けてくれたの?」「助けてくれはしたけど、助けてくれなかったとも言えるわね」神崎姫華は瞬時に悲しそうになって言った。「彼とはお話できなかったわ。まるで私に食べられるのを怖がってるみたいに車から降りてもくれなかったの。私の車が故障したでしょ、本当は彼の車に乗りたかったんだけど、拒否されて、彼の車には乗れなかったのよ。幸い彼がボディーガードたちに指示して、わざと故障させた車を端のほうに移動させたの。他の車の邪魔にならないようにって。これは私を助けてくれたことになるでしょ。でも、その助けも半分ってところね、教えてもらった方法だと、半分成功、半分失敗って感じ」そう言い終わると、神崎姫華はまたすぐに元気を取り戻した。少なくとも結城理仁は彼女の車をあの場に放置するようなことはせず、ボディーガードに車を端まで移動させたのだから、彼女に全くの無関心というわけではないのだ。
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第237話

内海唯花は彼こそが結城家の御曹司で神崎姫華の片思い相手なのだということはまったく知らない。神崎姫華はいつも結城社長と言っていて、理仁という名前を口にしたことがなかった。だからこの二人は話しているのが同一人物だとは気づいていなかった。「これぞ、ざまあね!」おばあさんはトイレの中でこっそり笑っていた。「これはなかかな面白くなってきたじゃないの」高みの見物をしているおばあさんは、耳を立てて、引き続き外にいる二人の女子の会話を聞いていた。内海唯花はおばあさんのことを気にかけていて、神崎姫華と一通り話した後、親友に言った。「明凛、おばあちゃんの様子見てきて、トイレに入ってから結構経つでしょ」牧野明凛は了解して、トイレの方に向かっていった。佐々木陽はすぐそばにいて、おもちゃで遊んでいた。彼に構ってくれる人がいない時は、店の中で大人しく遊んでいて、外に出たりはしないのだ。とても利口な子供だ。神崎姫華は自分の今回の作戦が失敗したと思っていたが、内海唯花の話を聞いた後、目から鱗が落ち、笑ながら唯花に言った。「唯花って本当に素晴らしい策士だわ。ありがとう。今すぐ結城社長に会いに行ってご飯に誘うわ。また拒否しようものなら、会社のゲートで待っているわ。彼がデリバリーでも頼まない限り、私からは絶対逃れられないわよ。そうだ、唯花、あなたっていつも旦那さんにどんな贈り物をするの?」内海唯花は正直に答えた。「彼には数セットの洋服とか、私が作った招き猫や鶴とか、あと、亀もね。これくらいだわ。特に高価なものは贈ったことないよ」それに、彼女が贈った服も結城理仁が着たかどうかわからない。ネクタイなら彼がつけてくれているのを一度だけ見た。結城理仁は自分の奥様がこのように考えていることを知ったら、きっと憤慨するだろう。あの日、彼はわざわざ彼女からプレゼントされた新しい服を着て、ネクタイまで締めていた。そして、会社に行って一日中その格好で回っていたのだ。その日、幹部役員でさえも彼のその姿を見てブランドを換えたのだとすぐにわかった。噂好きの九条悟だけがその理由を知っているが、他の者は何も知らない。しかし、どっちみち、みんな理仁がブランドを換えたことに気づいていたじゃないか。なのに内海唯花は一日中まったく気づかなかった。今でも彼女が贈った服
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第238話

「白鳥のオスとメス一体ずつなんだけど」内海唯花は立ち上がってビーズ細工を入れている大きな箱のところまで行った。そして、とても綺麗なプレゼントボックスを持って神崎姫華の前に置き、言った。「この中に入ってるよ」神崎姫華はその箱を開けて、中から白鳥二体を取り出すと、褒めて言った。「本当にキレイね。唯花、あなた本当に手先が器用だわ。いくらかしら?買うわ」「私たち仲良くなったし、あなたは友達だから、材料費だけくれればいいよ」神崎姫華はその白鳥を箱の中に戻して言った。「友達だからこそ、お金のことはちゃんとしなくちゃダメ。これはこれ、それはそれよ。この商品の売値で買い取るわ。材料費だけじゃいけないわよ。あなたのネットショップの商品、値段を見たことあるわ。この白鳥二体は確か数千円はするわよね、具体的な値段は覚えてないけど」彼女はエルメスの鞄の中から財布を取り出し、その財布から何枚かお札を取り出した。いくら分なのか彼女は数えず、それをそのまま内海唯花の手に押し込んだ。「おつりはいらないし、いくらあるかも数えなくていいわよ。そのまま受け取って。もし結城社長がこのプレゼントを受け取ってくれたら、またお店の宣伝をしてあげるね。必ず売り上げが何十倍にもなるわよ。じゃ、先にお礼言っておくわね」神崎姫華がこんなに気前が良いので、内海唯花も遠慮しないことにした。本当におつりも返さないし、もらったのがいくらなのかも数えず、そのままお札をレジの引き出しに入れた。「唯花、それじゃ、私はプレゼントしに行って来るわね。私が結城社長を手に入れたら、必ず厚く策士さんにお礼するわ」内海唯花はニコニコ笑って言った。「いってらっしゃい、成功するといいね、がんばって!」神崎姫華が内海唯花に車いっぱいの魚介類をあげた後、惜しまずお金を使い手に入れたカップルの白鳥を引っさげ、結城理仁に求愛アピールをしに向かった。ふふ、対の白鳥なんてこれには大きな意味がある。神崎姫華はそう思うと、内海唯花のことがもっと好きになった。彼女は内海唯花を本当に自分の愛の策略家だととらえていた。おばあさんは神崎姫華が去ってから、ようやくトイレから出てきた。牧野明凛は言った。「結城おばあさん、これ以上出て来なかったら、唯花と一緒にドアをこじ開けるところでしたよ」おばあさんは年を取って
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第239話

星城総合病院からそう遠くないホテルで、内海陸の両親は内海家の長男である兄の部屋のドアを叩いた。彼がドアを開けると、一番下の弟夫婦が焦った様子でそこに立っていて、彼は心配して尋ねた。「どうしたんだ?なんだか顔色が悪いけど」「兄さん、陸が昨日出かけてから帰って来てないんだ。何かあったんじゃないかって心配で」内海陸の父親は内海家の兄弟姉妹の中で一番年下だ。あの内海家のじいさんとばあさんが溺愛しているのが彼で、名前を瑛慈とつけた。慈しむという漢字を使い、一番愛される大切な子供だという気持ちを込めている。「陸はどこに何しに行くとか言ってなかった?」内海民雄は内海家の長男だ。一番年上だから冷静で落ち着いている。内海瑛慈は少しためらった後言った。「陸は内海唯花のところにケリつけに行くとか言って出てったんだ。あの女にばあちゃんの医療費出させるんだとかなんとか言ってた。昨日それっきり、今まで帰ってこないんだよ。携帯にかけても電源が切れてるし」内海陸は今勾留されている身だ。このことを家族はまだ知らない。彼の携帯はちょうど電池がなくなり自動的に切れてしまったのだ。内海民雄はそれを聞きすぐに顔を暗くし、弟夫妻を怒鳴りつけた。「お前らなんで陸を内海唯花のところに行かせたんだ。この間あいつらがあの女の所に行った時、あの女、一歩も譲らなかったろ。なのに、陸が一人で行ってあの女に頭下げさせられるとでも思うか?」姪っ子と話してみて、内海民雄は三番目の弟が残していった二人の姉妹はただ者ではないとそこではじめて知ったのだ。姉のほうは置いておいて、内海唯花とかいう姪っ子は本当に目の上のたん瘤だ。彼ら一族全員が大損したのだから。彼女から金を巻き上げられなかったのはいいとして、名声も底まで叩き落されてしまった。一族の子供たちはあのせいで停職処分にまでなり、商売にも影響が及んだ。元々、彼ら兄妹たち数人で内海唯花にもう一度直談判に行こうと思っていたが、二人の妹が時間がなく、日を改める必要があり、週末になってようやく皆時間が持てるから、それから一緒に内海唯花のところに話に行くことにした。どう言っても、彼らは全員内海唯花と比べて年長者だ。もしかしたら、彼女は彼らの面子を考慮してくれるかもしれない。「陸がどうしても唯花のところに行くって言うもんだから、止めたくて
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第240話

「じゃあ、あいつらも呼ぼう」内海民雄も人数は多いほうが良いだろうと思っていて、弟が民雄の息子と甥を呼ぶのに賛成した。内海瑛慈が甥に電話をかけた時、内海智明に「おじさん、ちょうどおじさんに電話をしようと思ってたんです。陸が大変みたいですよ」と言われるとは思っていなかった。それを聞いて内海瑛慈の顔から血の気が引き、慌てて尋ねた。「陸はどうしたんだ?あの子、内海唯花のところに金を取りに行くとか言ってたから、もしかしてあの女に殴られたのか?あのクソ女めが、うちの陸に指一本でも触れてみろ、絶対に許さねえからな。故郷に帰って、あの女の母親の墓でも荒らしてやる!」内海唯花の父親は彼の兄だ。だから内海瑛慈はその兄の墓を荒らすことはない。兄嫁と彼は血縁関係にないからどうでもいいのだ。もし内海唯花が彼を怒らせようものなら、彼は本気で兄嫁の墓を荒らして平地にしてしまうつもりだ。「陸が不良数人引き連れて、夜中に唯花の車を妨害したらしいです。彼らが鉄の棒を持って、唯花の車を叩き壊そうとしたらしいですが、唯花がそれに抵抗したんだって。今彼はその不良たちと一緒に留置所にいます。俺もさっき知ったばかりなんですよ」「勾留されてるって?従姉弟同士の喧嘩に、警察に通報したのか?内海唯花、あのくそアマめが、本当に意地汚い女だ。警察呼んでうちの陸を捕まえるなんて!智明、あの子を留置所からどうにか出すことはできんか?あの子はまだ若いんだ、子供なんだよ。こんなことになって驚いているはずだ」内海瑛慈は姪が自分の息子を通報したと聞いて、まず、内海唯花が全く情けをかけなかったことに、すごく腹を立てていた。そして、息子が捕まって驚いているのではないかと心配し、どうにかして早く彼を留置所から出してあげたかったのだ。「この間、唯花のところに行った時、陸は感情的になって突っ走ってましたから。俺たちは今、分が悪いです。唯花とはやり合っちゃだめですよ。陸が唯花に迷惑かけに行って、あの女の後ろ盾も誰なのか俺たちはまだ把握していないですから、軽率な行動は避けるべきです」内海智明は叔父に言った。「おじさん、陸をしっかり説得するべきでした。俺たちはあの姉妹とは摩擦があるだけで、何の恩もありません。彼女は俺たち一族にはかなりの恨みがあります。親戚のよしみを語っても、無駄なんです」一族はみんな内海唯花
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