内海智明はおばの罵声は聞かなかったことにして、おじとの電話を切った。そして電話を切ると、長い溜息をついた。彼は最近、疫病神に憑かれたのではないかと疑うほどついていないと思っていた。あれほどの人数がいて、内海唯花の髪の毛一本にも触れられないとは。内海唯花には確かに力を持った後ろ盾がいるようだが、それは一体誰なのか全く見当がつかなかった。テレビ番組制作に携わる誰もが手を出せない相手ということは、その後ろ盾は星城で大きな権力を持つ者に違いないが、内海姉妹を調べたところで、そういう大物は出てこなかった。内海唯花の夫はある大企業で部長だか何だかしているらしいが、ただのホワイトカラーに過ぎない。具体的に何をやっているのかも知らないが、村の人が言うには、彼は安いホンダ車を愛用しているらしい。内海家の若者の使っている車のどれも内海唯花の夫のよりいい車だというのに。相手は大した人物ではないらしい。本当に後ろ盾になれる者といえば、内海唯花の親友である牧野明凛しかいない。その牧野は星城で生まれ育ち、家もお金持ちで、彼女の伯母さんは玉の輿に乗っている。まさか、この牧野お嬢さんがずっと内海唯花を助けているのか?通報して警察に内海陸をつき出し、クズの親戚が必ず彼女のところに来ると内海唯花は予想してずっと待っていたのだが、昼になっても、そういう気配は全くなかった。結城おばあさんは内海唯花に結城理仁へ電話するようには言わず、自ら電話をかけた。祖母からの電話を受けた時、結城理仁は専用車に乗り、会社を出てスカイロイヤルホテルへ食事に行くところだった。一緒にご飯を食べると約束したから、九条悟の車が後ろについていた。「ばあちゃん」結城理仁は祖母の電話に出て、彼女の言葉を待たず、低い声で尋ねた。「ばあちゃんに頼んだこと、聞いてくれた?」「何だったかしら?頼まれたっけ?」おばあさんはすっかり忘れていたのだ。突然、車が急ブレーキをかけた。結城理仁は顔色も変えず、祖母との通話を続けていたが、暫く黙ってから口を開けた。「昨夜、何時に帰ったか聞いてくれって、ばあちゃんに頼んだだろう。もう昼だよ、返事をくれないのか」七瀬は振り向くと、主人が老夫人と電話をしているのを見て、隙を見て口を挟んだ。「若旦那様、また神崎さんです」神崎姫華は午前中結城
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