佐々木陽はパパが恋しいとも恋しくないとも言わず、ただ「パパおしごと」と言った。彼は母親と叔母が世話をしている。普段、彼が朝起きると父親は仕事で家にはおらず、夜寝てから帰って来る。だから、父親という生き物は週末にやっと会える程度なのだ。佐々木陽の父親への感情はまったく深くない。父親が家にいたとしても、息子と一緒に遊ぶことはなく、ただ携帯をいじっているだけだった。「唯月さん、見てごらんなさい。陽ちゃんは数日パパに会ってないから、こんなに冷たい態度になっちゃってるわ。このままじゃ、子供の成長に悪影響しかないわ。男の子は成長過程で父親からの愛がなくちゃいけないのよ。多くのことはパパから教えてもらわなくちゃいけないんだから」佐々木母は本来、孫が父親が恋しいと返事すると思っていた。そして彼女はそれを利用して嫁に息子のためにプライドを捨てさせようとしたのだ。だが、まさか孫が想像したような返事をしないとは。しかし、幸いなことに彼女の頭は冴えていて、孫のその対応にも上手に唯月を言いくるめようとした。佐々木唯月は義母を見て、冷ややかな口調で言った。「佐々木俊介が家にいたとして、あなた達は彼が息子の世話をするのを見たことある?陽は私と彼の子だけど、ずっと私一人で面倒を見て来たのよ。子供の世話をしないのはまだいいとして、一緒に遊ぶこともしないのよ。週末家にいて暇でも、携帯を持ってずっと誰かとしゃべったり、動画を見たりしてバカみたいに笑って息子とはまったく遊ばないわ。こんな父親、この子が彼に対して情が深くなるとでも言うの?」親子の情というものは培っていかなければならない。血の繋がった父子だとしても、コミュニケーションを取って関係を築き上げていかなければ、うまくいくはずはないのだ。佐々木母は口を開いたが、何も言葉が出なかった。やはり佐々木英子がその言葉に続けて言った。「俊介は普段、仕事がとても忙しいでしょう。週末家にいる時だってリラックスして休みたいのよ。あんたは仕事もせず、ずっと家で子供の世話をしてさ。家事が多いなんて言わないでよね、前は妹がここにいてほとんどの家事は妹がやっててあんたは何もしてなかったじゃない。あんたの専門は食べることで、見てごらん、今のこの醜態をさ」彼女の弟だけが佐々木唯月が太って醜くなったのを嫌っているのではなく、佐々木英
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