美少女との即日婚、冷酷な彼氏からの溺愛 のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

200 チャプター

第31話

長谷川千夏は白い目で彼女を見た。「自分に聞いてみたら」橋本美咲はさっぱり見当がつかなかった。どうして自分に聞くの?しかし、長谷川千夏がそれから話したことは彼女の疑問を晴らした。「もともと、あなたに会いにいくつもりだったんだけど、でも、昨日母と大げんかして家を出ちゃったって聞いたわ。「だから、急いであなたを探しにいった。いつも行く場所も探したんだけど、姿はどこにもいなかった。仕方なく、黒崎グループに行ってみたわ」何か不快なことを思い出したようで、長谷川千夏の声はだんだん大きくなった。「そしたらね、そこに着いた途端、すぐに黒崎拓也の厚かましい言葉を耳にした。もう、本当に腹が立つわ」橋本美咲は眉をひそめた。「だから、喧嘩したの?」長谷川千夏は頷いた。橋本美咲は長谷川千夏に何か言いたかったんだけど、でも、それを言うのは良くないと思った。口を開けては閉じたりして、悔しくて顔が真っ赤になってしまった。長谷川千夏は橋本美咲の親友なので、彼女のその様子を理解しないはずはなかった。すると、怒ったように口を開いた。「私に何か言いたいことがあるなら、直接言ってくよ。親友でしょう。そのまま話さないと、つらいのは美咲自分だよ」長谷川千夏の話を聞いた橋本美咲はほっとした。すると、彼女は心の中で思ったことを全部話した。「千夏、今度そういうことに会っても、もう頭を突っ込まないでね」長谷川千夏は橋本美咲の話を遮ろうとしたが、彼女の心配そうな目を見ると諦めた。「千夏は一人で、向こうは二人、しかも黒崎グループの前よ。万が一なにがあっても、千夏のところに駆けつけることができないわ。どうしたらいいの?」長谷川千夏は黙った。少し納得がいかなかったが、でも、橋本美咲の言うことは正しかったと認めざるを得なかった。彼女は力なく言った。「じゃあ次は、彼らが美咲を侮辱するのを聞いても、黙ってみってろってこと?「そんなことできないわ!私の性格、美咲も知ってるでしょ」橋本美咲はため息をついた。「知ってるよ、千夏。「でも、千夏に何かあったら嫌なの。黒崎家は大きな力を持っているし、うちの家族も橋本月影を可愛がるから。もし何かあったら、千夏を守れないわ」この言葉を聞いて、長谷川千夏は悔しさでいっぱいだったが、反論することはできなかった。ただ車の後部座
続きを読む

第32話

それを聞いた氷川颯真は一瞬戸惑った。この女は自分が何を拒んでいたのか知っていたのか?氷川グループ社長からの約束なんて、他の人は神に祈っても手に入れられないものなのに。それなのに、目の前の女は、氷川グループ社長の約束を拒もうとした。しかも、美咲は他の人と違って、自分の妻だった。氷川颯真は眉をひそめて、ニヤリと笑った。「他の人はこの言葉を言ってもいいが、美咲だけはダメだ。僕の妻だから、美咲を大切にするのは当たり前のことよ」後ろに座っていた長谷川千夏は、密かに自分の目を覆った。「また始まっちゃったのか?!いつも見せびらかしちゃって。「まあ、いいよ。独身者の私の気持ちを考えるとは思っていないわ」千夏は無表情で目を覆っていた手を下ろした。見せびらかしてもいいか、ないよりはマシだし。はい、ごちそうさまでした。美咲ちゃんがこの男とイチャイチャし続けたのを見て、長谷川千夏はついに耐えられなくなった。二人に向かって叫んだ。「お二人さん、イチャイチャしたいなら、家に帰って続けてください。先に私を家まで送ってくれない?」橋本美咲は恥ずかしくなり、急いで氷川颯真に言った。「颯真、早く千夏を家に送ってあげて」氷川颯真は何も言わなかったが、心の中では、家に帰ったら、ゆっくり話そうと思った。どれぐらい車を走らせたのかわからなかったが、ようやく長谷川千夏が住むところに送り届けた。車から降りた長谷川千夏は、自宅に戻ろうとしたが、2、3歩踏み出した後、急に停まった。そして、まじめに橋本美咲を見つめた。「美咲ちゃん、もしあの男がいじめたら、私のところに来なさい。あなたの親友はいつまでもあなたの味方だから、必ず守るわ」橋本美咲は笑った。「うん、でも安心して、彼は黒崎拓也じゃないから…」橋本美咲の言いたいことを理解した長谷川千夏は、それ以上何も聞かなかった。振り返らずに自宅に向かって歩いていた。娘が大きくなって、ようやく任せられた人ができた。母さんは本当に安心したわ。幸いなことに、彼女が何を考えていたか橋本美咲は知らなかった。そうでなければ、きっと彼女を殴っただろう。長谷川千夏が自分のマンションに帰ったのを見て、橋本美咲は車に戻った。「戻ったわ」「うん」橋本美咲の心は温かくなった。とても簡単な会話だが、彼女に家の感じを与えた。こ
続きを読む

第33話

その言葉に橋本美咲の顔は真っ赤になり、しばらくの間、言葉が出てこなかった。そうだよ。すでに氷川颯真と結婚したんだわ。変態とは言えない。そう思いながらも、橋本美咲はちょっと不機嫌になった。しかし、何に対して不機嫌なのか知らなかった。橋本美咲の顔色が良くないのを見て、氷川颯真はにっこりなから言った。「しっかり座って、家に帰るわよ」からかうのも限度がある。度が過ぎるとよくないのは、氷川颯真もよく知っていた。しかし、可哀そうな橋本美咲は、自分が氷川颯真にからかわれていたことを知らなかった。自分がいったい何に対して悔しいのを、まだ真剣に考えていた。氷川颯真が何を言ったのかもはっきり聞き取れず、ただ適当に返事をしただけだった。氷川颯真は眉をひそめた。いい度胸だな。可愛い妻が自分を無視するなんて。そして、意地悪そうに、突然アクセルを踏み込むと、車が飛び出した。まだ制限速度内だったが、さっきよりずっと速くなっていた。氷川颯真の突然の行動に、橋本美咲は驚いた。「何してるの、何で急にこんなにスピード出したの?」氷川颯真は悠然としていて、可愛い妻がやっと正気に戻ったのを見て、やっとゆっくりとスピードを落とした。彼は落ち着いて言った。「可愛い妻が自分の考えに没頭していたから、ちょっとやいた。だから、美咲の注意を引きたかったんだ」橋本美咲は苦笑いしながら言った。「こんな方法で私の注意を引くとは。もしスピード出し過ぎると、私たちは死んでたかもよ」氷川颯真はにっこりと笑った。「安心して、僕がここで死んでも、妻を危険にさらすことはしない」橋本美咲は何を言えばいいのかわからなかった。氷川颯真と会ったばっかりだったが、数日前、彼はこのような態度ではなかった。いつから優しい俺様社長から、このようなふざけた人になったのだろうと、橋本美咲は困惑した。分からないなら考えなくていい。このままでいいんだよ。自分の男が自分に甘い言葉をかけるのが嫌いな女はこの世にはいなかったから。橋本美咲は静かになり、運転している氷川颯真をまじまじと見た。すると、何かがおかしいと気づいた。「氷川颯真、私たちはどこに行くの?」氷川颯真はまた彼女をからかうと思った。「やっと気づいたか、美咲を売るつもりだよ」橋本美咲は少し混乱した。「冗談よ。これから、僕の事業
続きを読む

第34話

氷川颯真がそう言ったんだけど、橋本美咲はまだ少し心配していた。会社を経営したり、金融を学んだりしたこともあったんだけど。氷川颯真が突然、このような大きな事業を彼女に渡したのは、本当に大丈夫なのか?しかも、結婚したとは言え、まだ1カ月も経っていなかった。橋本美咲はあれこれを考えた。しかし、どう考えても、今直面していたのは事実だった。目的地に到着した後、氷川颯真は手を伸ばして、橋本美咲を助手席から降ろした。橋本美咲はぼんやりして、氷川颯真の後ろについて目的地に入った。周りをよく見ると、驚いて言葉を失った。信じられないように言った。「氷川颯真、私に見せたのは本当に会社なの?これはリゾート地じゃない?」そうだ、今橋本美咲の目の前に広がっていたのはリゾート地だった。ここでは美しい景色が広がっており、広大な敷地を持っていた。遠くには、山もかすかに見えた。「そうよ」氷川颯真は変わらぬ表情で言った。「これが僕の事業だ。僕の事業は規模が大きく、各業界にも展開していて、観光業はそのうちの一つだった。「ここは僕がよく来る場所だった。疲れた時はよくここで休んでいた。「うちの女主人として、美咲も知っておく必要があると思ったので、ここに連れて来た。ついでに、ここのスタッフにも顔を覚えてもらおうと思った」橋本美咲はぼんやりと頷いた。氷川颯真は橋本美咲をリゾート地の中にあったホテルのようなところに連れて行った。氷川颯真が女を連れて来たのを見て、受付嬢は驚いたような顔をした。幸いなことに、彼女は基本的な職業人としての素養を持っていた。すぐ自分の驚きを抑え、いつも通りの仕事モードに戻った。「氷川様、こんにちは。いつも通りですか?」彼女は素敵な笑顔を見せた。氷川颯真は慣れてた様子で頷いた。「いつも通りだ」そう言った後、急に止まった。隣にいる橋本美咲を思い出したからだった。振り向いて、まじまじと橋本美咲を見た。橋本美咲は分からないままに彼を見返して、首を傾けた。氷川颯真から見ると、その様子がとても可愛かった。そして、他人に対する冷たい顔を和らげた。「美咲ちゃん、部屋に何か要望はあるかい?」橋本美咲はちょっと考えた。「特にないわ。食事や寝る場所にはこだわりがないから、颯真に任せるわ」氷川颯真は頷いて、受付嬢に言った。「聞こえたか?」受付嬢はすぐわかった。「はい、かしこ
続きを読む

第35話

氷川颯真は橋本美咲を連れて上階に行った。ドアを開けた途端、目の前の光景を見た橋本美咲は、息をのんだ。部屋のあちこちに置いていたバラを見て、複雑な顔をした。振り返って氷川颯真を見た。「普段もこんな部屋に住んでるの?」氷川颯真も呆気に取られた。彼の部屋はいつも黒くてミニマルで、このように派手ではなかった。橋本美咲の質問を聞いた後、彼は呆けた顔で橋本美咲を見て、目をパチパチさせながら言った。「いや、違うよ。普段では黒くてミニマルな内装だったが、今日はどうしてこうなったのか分からないわ」そうして、橋本美咲と氷川颯真はその場で立ち尽くし、お互いを見つめ合った。すると、橋本美咲は氷川颯真の顔の美しさに耐えられず、先に視線をそらした。氷川颯真もほっとした。自分の可愛い妻は、やっと視線をそらした。そうでなければ、自分も耐えれらなった。氷川颯真は慌てて説明した。「美咲ちゃん、信じて。この部屋はいつもこんな様子じゃないんだ。前に僕の部屋を見たことがあるよね。黒くてミニマルだったわ」橋本美咲の耳はまだ赤くて、あまり深く考えずに氷川颯真に頷いた。「信じてるよ」氷川颯真は暖かさを感じた。自分の妻は本当に可愛いだね。彼は橋本美咲に微笑みかけ、彼女を少しリラックスさせようとした。「この部屋はプレジデンシャル・スイートで、普段は主寝室だけ使ってるんだ。ここには寝室がもう一つあるので、気に入るかどうかわからないが、もし気に入らなければ、人を呼んで、中の物を変えられるよ」橋本美咲は首を横に振った。「大丈夫よ。住む場所にはこだわりがないんだから。なぜバラだらけなのか知らないけど、結構気に入ったわ」氷川颯真は頷いて、頭の中にこう考えた。美咲ちゃんがこんなに花が好きのなら、家で鉢植えをいくつ育てばいい。さらには、温室を建てて、花を世話する専門家も探せばいいんだ。そうすると、美咲ちゃんが花を世話する手間も省けた。しかも、いつでも美しい花を見ることができたわ。橋本美咲はまだ自分の旦那が何を考えているのか知らなかった。もし知ったら、きっと驚いただろう。彼女はただ花が好きと言っただけで、氷川颯真に温室を建ててもらうつもりはなかったから。しかし、それを知ったのはずっと後のことだった。その時、彼女はとても驚くだろう。なぜなら、氷川颯真はその中に
続きを読む

第36話

橋本美咲は氷川颯真と約束した後、自分の部屋に入った。目に入ったのは、少女風デザインがいっぱいの部屋だった。それ以外にも、バラはたくさんあって、しかもピンクの牡丹もあった。花があまりにも多すぎたため、もともとの少女風デザインを覆い隠した。部屋全体を豪華でぜいたくな雰囲気にした。さらに、ほんの少し曖昧な雰囲気も漂っていた。しかし、橋本美咲はこのようなデザインがとても気に入った。嬉しそうに見て回った後、氷川颯真の言ったことを思い出して、タンスの前に来た。タンスを開けると、中の服にびっくりした。中には、氷川颯真が言った浴衣のほか、ナース服、セーラー服、彼氏風シャツなども並んでいた。それだけでなく、さらに大胆なバニーガールやメイド服なども目にした。橋本美咲は恥ずかしすぎて、頭がおかしそうになった。氷川颯真は自分がこれらの服を着てほしかったの?そうでなければ、どうしてタンスの中にこんなものがあっただろう。しかし、実は氷川颯真も濡れ衣だった。氷川颯真は自分の可愛い妻が美しく着飾るのを見るのが好きだったが、このような大胆なことはしていなかった。これらの服は噂話が好きなホテルスタッフたちが入れたものだった。彼らは、氷川社長がようやく女を連れて来たのを見て、氷川社長のために、事をもっと良くしようとしたのだった。部屋中のバラも彼らの仕業だった。しかし、橋本美咲は知らなかった。ただ恥ずかしそうにそれらの服を元に戻した。タンスの浴衣を取って、着ようとしていた時、突然ある深刻な問題を思いついた。この後、氷川颯真と一緒に温泉に行くんだけど、浴衣を着たら不便だよね。その時、きっと脱ぐことになるだろう…彼はわざとやっていたでしょ。橋本美咲は疑わずにはいられなかった。いっそ、着ないほうがよかったのか?しかし、颯真はとても見たがっていたようだった。橋本美咲は少し迷った。しばらくその場に悩んだ末に、美咲は一つ完璧な方法を思いついた。浴衣も着たし、水着も着た。水着は中に着て、浴衣は外に羽織っただけ。そうすれば、氷川颯真が見えたのは浴衣を着ていた彼女だった。そして、温泉に入る時は浴衣を脱いで、水着だけを着る。うん、完璧だね。自分は本当に天才だった。橋本美咲は嬉しそうに心の中で自賛した。そう決断した後、橋本美咲はてきぱきと身支度を整
続きを読む

第37話

氷川颯真が橋本美咲を温泉に連れていた途中、二人に会ったスタッフは、みんな目を見開いて驚いていた。この可愛い女の子は誰だった?どうして氷川社長と一緒にいるの?まさか、社長夫人のことは本当だった?この女の子が噂の社長夫人だな。可愛い橋本美咲とクールでかっこいい氷川颯真を見て、スタッフたちは思わず感心した。本当に美男美女だったと。途中に会ったスタッフたちの目線を気づいた橋本美咲は、不快ではなかったが、少し不思議に思った。「颯真、みんな私を見ている気がするんだけど?」氷川颯真はやっと自分の妻が目立っていることに気づいた。周囲の好奇心あふれる視線に、不機嫌そうに眉をひそめた。氷川颯真は橋本美咲を引き寄せて、抱きしめた。そして、冷たい顔で周りを見渡した。彼の視線を受けたスタッフたちは皆頭を下げた。みんながもう橋本美咲を見ていないのを見て、颯真は頭を下げて、橋本美咲の耳元で囁いた。「違うわ。美咲のことを見ていないよ」橋本美咲は信じられない様子で氷川颯真の胸から頭を上げた。もう誰も彼女を見ていないことに気づいて、思わず戸惑った。しかし、このことはすぐに彼女の頭から消え去った。不満そうに氷川颯真の腕の中でもがいた。「なんで抱きしめたの?歩きにくいじゃない」氷川颯真は何も言わなかった。ただ橋本美咲の力に従って放して、歩調を早めた。二人はすぐに温泉に着いた。橋本美咲は広々とした温泉を見て少し驚いた。「一人用の温泉でこんなに大きいの?なんだか広すぎる気がするわ」氷川颯真は愉快そうに橋本美咲の鼻をこすった。「おバカさん、ここを借り切ったんだ。誰もいないのは当たり前よ」橋本美咲は唇を尖らせた。「もう鼻をこすらないでよ。鼻が低くなっちゃうわ」氷川颯真はさりげなく手を下し、何事もなかったように、話し続けた。「でも、普段もここにはあまり人が来ないんだ」橋本美咲はちょっと驚いた。「どうして?ここの環境はとてもいいじゃないか、人気がなさそうでもないし、景気がそんなに悪いの?」「だって、ここは僕の専用温泉だから、誰も来ないんだよ」二人は同時に話し出して、ばつが悪い雰囲気が漂った。「ゴホン」氷川颯真は少し咳払いをした。「温泉に入ろうか」橋本美咲も顔が真っ赤にした。恥ずかしさのあまり顔を伏せて、慌てて頷いた。ぎこちなく温泉のそばに
続きを読む

第38話

橋本美咲の顔は赤くなった。それが温泉の暑さのせいなのか、それとも氷川颯真の褒め言葉のせいなのか。彼女にはわからなかったが、ただとても嬉しかった。同時に、心の中で自分の推測が正しいと確信した。やっぱり、颯真はこのような服を着ていた自分が好きだったね。氷川颯真は、ひどい風評被害にあった。風評被害にあったことをまだ知らなかった氷川颯真は、心配そうに橋本美咲に尋ねた。「温泉の温度を試してみて、もし気に入らなかったら、スタッフに他の温泉を用意させよう」橋本美咲の心は温かくなり、温泉に入ると、水が徐々に彼女の腰まで達した。熱すぎるお湯の温度は、橋本美咲の白い肌に朱色を刻み込んだ。この温泉は深くなく、ちょうど橋本美咲の胸までのところだった。橋本美咲は温泉に全身を浸かり、心地よさのあまり思わず声を出してしまった。こんなにリラックスできるのは久しぶりだった。岸辺で見守った氷川颯真の目には、ますます深い表情が浮かんでいた。彼は自分の自制心を過大評価していたようだ。こんなに魅力的な妻…しかし、温泉の中の橋本美咲は気づかず、嬉しそうに温泉の湯を手ですくって、岸辺にいた氷川颯真にかけた。美咲は笑顔をしていた。温泉の独特の硫黄の匂いは彼女の神経をリラックスさせた。彼女のさわやかな声が氷川颯真の耳に届いた。「颯真、温泉に入ろうよ。とても気持ちいいよ」氷川颯真に宝物として甘やかされたこの数日間のおかけで、美咲は次第に無邪気で活発な性格に戻った。黒崎拓也が言ったような陰鬱な姿もなくなった。氷川颯真は深みのある目をして、岸辺で気分を落ち着かせてから温泉に入った。水遊びをしていた橋本美咲は、氷川颯真が温泉に入ったのを気づいて、子供のように彼に水をかけ続けた。妻の機嫌の良さを感じた氷川颯真も、喜んで橋本美咲に付き合い、彼女に水をかけ返した。二人は楽しい時間を過ごした。二人が温泉から出てきたのは一時間ほど後のことだった。氷川颯真はまず自分の清潔なバスローブを着てから、橋本美咲の服を取り、丁寧に彼女にかけてあげた。温泉から出てきたばかりの橋本美咲は、顔が真っ赤になっていた。彼女は少し暑くて、直接シャワーを浴びに行きたかった。そのため、ロープを着たくなかった。彼女の意図に気付いた氷川颯真は、橋本美咲の肩を軽く押さえた。「おとなしくして、服をちゃ
続きを読む

第39話

氷川颯真におやすみを言った後、橋本美咲は自分の部屋に戻った。ベッドに座って丁寧に髪を拭いた。一日中遊んでいたので、疲れが徐々に押し寄せてきた。橋本美咲は少し眠そうにあくびをした。髪を拭く動きがだんだん遅くなり、ついにタオルが手から落ちた。橋本美咲の体もゆっくりと倒れ、ぼんやりと目を閉じた。しかし、ぐっすり眠る前に、携帯のベルが彼女を起こした。橋本美咲は眉をひそめて、起こさせたせいで少し不満そうになった。手でベッドの上を探り回して、やっとある長方形のものを探り当てた。それを見もせず、感覚で応答ボタンを押した。「もしもし?」眠そうな口調で言った。「バカ娘、数日も家に帰らないなんて、私に逆らうつもりなの?」この一言で完全に目が覚めた橋本美咲は、ベッドから起き上がった。「お母さん?」電話向こうの人は、橋本美咲が寝ようが寝まいが気にせず、問い詰める言葉を次々に浴びせかけてきた。「私が母親だってこと、まだ覚えてるの!「あんな男と一緒に出て行って、しかも、テレビであんなことを言うなんて、恥を知りなさい!」橋本美咲はすぐに橋本美奈の言葉を遮った。「どういう意味?テレビで私が何か言った?」橋本美奈はさらに不満そうになって、ますます激しい口調で言った。「何か言ったって?よくもそんなことを聞けるわね!「テレビで言ったあれらの言葉、他人の前で言うべきことか?家の恥を外に晒すなんて、ますます調子に乗ってきたわね」橋本美奈にこんな風に責められ、橋本美咲の怒りも湧いてきた。彼女は母親に向かって叫んだ。「どうして言っちゃダメなの?本当のことを言っただけよ!「それに、あんな男って何?私の夫よ、もう結婚しているから」電話向こうの橋本美奈は、美咲の言葉に怒りを覚えたのか、しばらく言葉が出なかった。電話の向こうからは橋本美奈の荒い息遣いだけが聞こえてきた。しばらくして、さらに鋭い罵倒の声が聞こえてきた。「私はあんたのその夫を認めないわ!「外でいい加減な男を連れてくるなんて、良くもできたわね。どうしてそんなに言うことを聞かないの?どうして妹を見習わないの?」「妹を見習う?」橋本美咲の声はますます嘲笑的になった。「何を見習うの?「彼女のように計算高く、人の夫を奪うことを見習えっての?」「どうして妹をそんな風に言うの
続きを読む

第40話

橋本美咲は氷川颯真の部屋の前に立ち、少し迷った。彼女は氷川颯真の部屋のドアをじっと見つめた。この時間に彼を邪魔するのは良くないのではないかと思った。既に午前一時で、もう寝ていたかもしれない。橋本美咲は自嘲気味に笑い、振り返って自分の部屋に戻ろうとした。今日はこれでいいや、徹夜しても大したことない。どうせもう慣れたのだから。しかし、二歩進んだところで、背後のドアが突然開いた。氷川颯真の鼻声混じりの声が聞こえてきた。「こんな遅くまで、どうして寝てないの?」その一言で橋本美咲の鼻がツンとした。彼女は氷川颯真に飛びついた。氷川颯真は少し驚き、急いで彼女を抱きしめて、胸の中の妻の機嫌が良くないことに気付いた。すると、彼女の背中を軽くさすって、優しく囁いた。「どうした?悪い夢でも見たのか?」橋本美咲は涙を堪えながら首を振った。「ううん、ただちょっと気分が悪いだけ」氷川颯真は眉をひそめた。「まず部屋に入って、ちゃんと話してくれ、どうしたのか。「それに、どうしてそんな薄着なんだ?」颯真は橋本美咲の服の厚さを確かめた。「真夜中は寒いから、風邪をひくぞ」橋本美咲は頷いたが、氷川颯真の胸から離れようとはせず、一歩も動かない意志を見せた。氷川颯真はため息をつき、少し困惑しながら、橋本美咲を横抱きにした。突然の浮遊感に、橋本美咲は驚きながら、手を氷川颯真の首に回した。「奥さんが自分で歩かないなら、僕が代わりに運ぶしかないな」普段なら、橋本美咲は既に降りたいと騒いでいたはずだが、今夜は違った。彼女は母親と口論したせいで、非常に気分が悪かった。だから、氷川颯真の胸に留まって、動かなかった。氷川颯真は不思議そうに橋本美咲を見つめた。普段のように降りたいと騒がないのを見ると、本当に気分が悪いのだと感じた。氷川颯真はドアを蹴って閉めて、部屋に戻った。橋本美咲をベッドに寝かせ、布団を引っ張って、彼女をしっかりと覆った。全てが終わった後、彼は真剣な表情で橋本美咲に尋ねた。「さあ、どうしたんだ?」橋本美咲は首を横に振って、氷川颯真の布団に顔を埋めた。布団には氷川颯真の匂いが満ちており、橋本美咲の心を少し落ち着かせた。美咲のこもった声が布団の中から聞こえてきた。「さっき母と喧嘩して、気分がちょっと悪いだけ。少しすれば良くなるから、
続きを読む
前へ
123456
...
20
DMCA.com Protection Status