相手が「あっ!」と驚いた声をあげ、その場に尻もちをついた。抱えていたものが散らばっている。里香はふらつきながらも体勢を立て直し、目を凝らして相手を確認した。そこにいたのは小さな女の子だった。片腕がなく、服はボロボロで、顔にはいくつもの傷がある。「大丈夫?」その姿を見て胸が締め付けられる思いになった里香は、急いで女の子を支えようと手を差し伸べた。だが、女の子が少し動いただけで痛そうな声を漏らしたため、どこか怪我をしているのだと気づき、触れる手を止めて尋ねた。「どこが痛いの?」女の子はぽろぽろと涙を流しながら、残った片方の腕を押さえて言った。「腕がすごく痛い……」どうやら、さっき転んだときに腕で地面を支えたらしく、その瞬間に激痛が走ったようだ。里香が彼女の腕をよく見ると、骨折しているのが明らかだった。すぐにスマホを取り出し、救急車を呼んだ。「動かないでね。救急車がすぐに来るから」優しく声をかけると、女の子は涙でいっぱいの瞳を散らばった本に向けた。それに気づいた里香は、本を一冊ずつ拾い集め、丁寧にまとめた。やがて救急車が到着し、里香も一緒に乗り込んだ。病院に着くと、女の子はすぐに手術室に運ばれていった。里香は散らばった本を胸に抱えたまま、少し離れたところで時計を見た。眉間に皺を寄せる。もう1時間以上が経過していた。それでも、この場で女の子を置いて帰るわけにはいかなかった。女の子が骨折した原因は自分にあるのだから、責任を取らなければと思った。1時間も経たないうちに、女の子は手術室から出てきた。折れた腕はきちんと処置され、小さな顔も丁寧に拭かれていたが、いくつかの引っかき傷が痛々しかった。「彼女の様子はどうですか?」里香は医者に尋ねた。医者は簡潔に説明をしてくれた。骨折は治るまでかなりの時間がかかり、その間、腕を使うことはできないとのことだった。里香は女の子を見つめ、その目にさらに哀れみが浮かんだ。そして入院費を支払い、病室に戻ると、女の子がまだ自分をじっと見つめているのに気づいた。里香は微笑みながら言った。「ねぇ、家族の電話番号知ってる?お父さんかお母さんを呼んであげようか」やはり、こういうときは家族がそばにいるのが一番だ。だが、その言葉に女の子は急に目を赤くし、「嫌だ。お願い、呼ばないで」
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