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All Chapters of 離婚後、恋の始まり: Chapter 691 - Chapter 693

693 Chapters

第691話

「みなみさん、冬木に長くいると、身元がバレるリスクが高くなるよ」「心配すんな、俺にはちゃんと考えがある。それに、ゲームはまだ始まったばかりだし、楽しむまで帰る気はない」そう言って、そのまま電話を切った。夜はどんどん深まり、男の姿は暗い路地裏に溶け込むようにして、あっという間に見えなくなった。里香とかおるはカエデビルに戻り、シャワーを浴びた後、映像ルームで映画を観ながらくつろいでいた。かおるがジュースを手にしながら言った。「あのみっくんの正体、気にならないの?なんかいつも、里香ちゃんがいるところに現れる気がするんだけど」里香は映画に集中しつつ答えた。「うーん、そうだけど、わざわざ調べる必要ないかな」今までの経験から言って、こんな警戒心もないわけがない。みっくんの正体、どう考えても怪しい。最初は記憶喪失だって言ってたのに、急に記憶が戻ったとか言い出すし。でも、それが本当か嘘か、どこまで信じていいのか、全然分からない。それを追求するのも面倒になってきた。もうすぐ別荘の工事が終わるし、あとは雅之が確認するだけ。問題がなければ、この案件は終わり。その後すぐに辞表を出して冬木を去る予定だ。行く前に、離婚訴訟だけは片付けておきたい。里香には計画がある。それを邪魔するような予想外のことは、絶対に許さない。かおるがちらっと里香を見て言った。「里香ちゃん、ほんと、雅之のクズ男に鍛えられたって感じね」里香は不思議そうにかおるを見た。「それ、どういう意味?」かおるはニヤッと笑った。「雅之のおかげで、イケメンに対する耐性ができたんじゃない?だって、もう雅之みたいな美男子に出会っちゃったんだから、そりゃ他の男は眼中にないよね」里香は少し口元を引きつらせて言った。「あなた、ほんとに変なことばっかり気にするのね」かおるは肩をすくめ、「だって、他に何もないじゃない。今は全部がストップしてる状態だし。目を向けても、何も見つからないよ」確かに、言われてみるとそうかもしれない。里香は尋ねた。「月宮にまた絡まれてる?」かおるの視線はスクリーンに戻った。「映画を見ようよ」かおると月宮の関係は、ただただ複雑だと言うしかない。かおるはいまだに月宮に対して、はっきりとした答えを出していない。月宮はまるでべたべたした湿布みたいに、いつも目
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第692話

雅之は冷たく目をそらしながら短く言い捨てた。「もういい、仕事に戻れ」桜井は少し間を置いてから、控えめな声で口を開いた。「本家の方から連絡がありまして……おばあさまがお会いしたいとおっしゃっています」「ああ」雅之の反応は相変わらず素っ気ない。ただ短く返事をしただけで、会うとも会わないとも言わなかった。桜井は慎重に続けた。「社長、おばあさまもご高齢ですし、体調もあまり良くないご様子です。何をされたにせよ、一度お会いになってはいかがでしょうか……?」雅之は桜井を横目で一瞥すると、皮肉っぽく口元を歪めた。「そんなに熱心に働いてるなら、給料でも上げてやるか?」桜井は一瞬固まったが、すぐに気まずそうに笑った。「いえいえ、そんなことしなくても、ボーナスをちょっと増やしていただければ十分です」「よくもまあそんなことが言えるな」雅之は冷笑を浮かべながら言った。桜井は苦笑しつつ肩をすくめた。「社長、冗談ですよ、冗談。お気になさらず。では、用事がありますのでこれで失礼します」そう言って、桜井は足早にその場を後にした。雅之が本気で怒り出す前に退散するのが一番だった。雅之は再び書類に目を落としたが、いくら見ても内容が頭に入ってこなかった。里香は午後いっぱい忙しく動き回り、ようやく退勤間際になって雅之に電話をかけた。今回は雅之が直接電話に出た。「別荘の工事、もう終わったよ。いつ検収するの?」「今は体調が悪いから、もう少し後にする」「誰か代わりに行かせたら?」「他人には任せられない。自分で確認する」一瞬の沈黙が流れ、里香が電話を切ろうとしたその時、雅之が不意に言った。「おばあちゃんが僕たちを呼んでる」里香は一瞬動揺したが、過去に二宮おばあさんから冷たくされた記憶がよみがえった。敵意を向けられたことを思い出しながら答えた。「私が行ったら怒られるだけだから、あなた一人で行ってきて」「おばあちゃんも長くないだろう。一度くらい会いに行け。これが最後になるかもしれない」「……」自分の祖母をそんな風に言うか?まあ、それが雅之らしいといえばらしいけど、礼儀の欠片もない。里香は時計を見ながら尋ねた。「いつ?」「人を送るから迎えに行かせる」「わかった」里香は短く答え、静かに待った。およそ30分後、雅之から連絡があり
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第693話

桜井は星野の言葉を聞くと、冷たく彼を一瞥して言った。「それ、あんたには関係ないんじゃないですか?」星野は少し表情を止めてから、ゆっくり言った。「友達として、小松さんのことを心配するのは、別に悪いことじゃないと思いますけど」桜井はにやりと笑って続けた。「よく言いますね、奥様の友達って。まぁ、友達なら、友達としての立場をわきまえた方がいいんじゃないですか?」その言葉に星野の眉が少し寄せられ、里香が口を開いた。「もうすぐ離婚するから。あとは裁判の日程を待つだけ」その言葉は、星野への返事であり、桜井に対しての一種の反撃でもあった。星野の固まった表情が、瞬時に笑顔に変わった。「きっと上手くいくよ」「うん」里香はにっこりと微笑み返すと、すぐに身をかがめて車に乗り込んだ。桜井の顔色が少し悪く、冷たく星野を睨んだ後、ドアを閉めて自分も運転席に乗り込んだ。車に乗った里香は、後部座席に雅之が座っているのに気づいた。里香は一瞬表情を止め、雅之を上から下まで軽く見た後、冷たく言った。「歩けるみたいじゃない?だったら明日さっそく別荘のチェックに行きましょう」雅之は膝の上にノートパソコンを置いて、里香の言葉を聞くと手を止め、彼女を見ながら言った。「僕、歩けるなんて言ってないけど?」里香:「……」なんだか空気が冷たくなった。もうこれ以上、雅之とこのことを言い争うつもりはないと感じた里香は、窓の外を見つめることにした。二宮おばあさんはまだ前にいた療養院にいる。車が敷地内に入ると、駐車場に停まった。桜井は車椅子を取り出して、ドアのところに置き、雅之を支えて車椅子に座らせた。その様子を見て、里香は少し驚いた。雅之は背中を打っただけで肋骨が折れたのに、足には問題がないはずだった。どうして車椅子に座るの?桜井は里香の疑問に気づき、「これは医者からの指示です。すぐに歩いたり運動したりしないように、とのことです」と説明した。里香は桜井をちらっと見て、「そう」とだけ答え、淡々とした表情で雅之に対してはさらに冷たい態度を取った。桜井:「……」車椅子を押して療養院の部屋に入ると、二宮おばあさんの世話をしている使用人が、彼らが来たことを中に伝えに行った。ベッドに腰掛けていた二宮おばあさんは、以前よりも老け込んでいて、やつれた様
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