「みなみさん、冬木に長くいると、身元がバレるリスクが高くなるよ」「心配すんな、俺にはちゃんと考えがある。それに、ゲームはまだ始まったばかりだし、楽しむまで帰る気はない」そう言って、そのまま電話を切った。夜はどんどん深まり、男の姿は暗い路地裏に溶け込むようにして、あっという間に見えなくなった。里香とかおるはカエデビルに戻り、シャワーを浴びた後、映像ルームで映画を観ながらくつろいでいた。かおるがジュースを手にしながら言った。「あのみっくんの正体、気にならないの?なんかいつも、里香ちゃんがいるところに現れる気がするんだけど」里香は映画に集中しつつ答えた。「うーん、そうだけど、わざわざ調べる必要ないかな」今までの経験から言って、こんな警戒心もないわけがない。みっくんの正体、どう考えても怪しい。最初は記憶喪失だって言ってたのに、急に記憶が戻ったとか言い出すし。でも、それが本当か嘘か、どこまで信じていいのか、全然分からない。それを追求するのも面倒になってきた。もうすぐ別荘の工事が終わるし、あとは雅之が確認するだけ。問題がなければ、この案件は終わり。その後すぐに辞表を出して冬木を去る予定だ。行く前に、離婚訴訟だけは片付けておきたい。里香には計画がある。それを邪魔するような予想外のことは、絶対に許さない。かおるがちらっと里香を見て言った。「里香ちゃん、ほんと、雅之のクズ男に鍛えられたって感じね」里香は不思議そうにかおるを見た。「それ、どういう意味?」かおるはニヤッと笑った。「雅之のおかげで、イケメンに対する耐性ができたんじゃない?だって、もう雅之みたいな美男子に出会っちゃったんだから、そりゃ他の男は眼中にないよね」里香は少し口元を引きつらせて言った。「あなた、ほんとに変なことばっかり気にするのね」かおるは肩をすくめ、「だって、他に何もないじゃない。今は全部がストップしてる状態だし。目を向けても、何も見つからないよ」確かに、言われてみるとそうかもしれない。里香は尋ねた。「月宮にまた絡まれてる?」かおるの視線はスクリーンに戻った。「映画を見ようよ」かおると月宮の関係は、ただただ複雑だと言うしかない。かおるはいまだに月宮に対して、はっきりとした答えを出していない。月宮はまるでべたべたした湿布みたいに、いつも目
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