影森玄武は宮城を出ると、まず自邸に立ち寄り、つい先ほど床についた有田先生に事の次第を伝え、上原さくらが目覚めた際に報告するよう命じた。有田先生は話を聞くや否や、睡意が一気に吹き飛んだ。本来なら王妃様が目を覚ましたら、白花に会いに連れて行ってもらうつもりだったのに。陛下のこの思し召しは一体何を意味するのか、頭を抱えて考え込まざるを得なかった。もはや眠れる状況ではなかった。さくらが起床し、装いを整えて部屋を出てくると、有田先生は自ら足を運んで報告した。「親王様がお立ち寄りになり、陛下が玄甲軍大将への御抜擢をお考えとのこと。禁衛、御城番、衛士、そして御前侍衛までをも統括なさるとか。ですが、この陛下のご意向の真意が、私にはまだ計りかねます」さくらは半信半疑の面持ちで問うた。「実権のある職なの?」「はい、紛れもない実職でございます」上原さくらは明らかに動揺を隠せなかった。「この国じゃ、今まで女が朝廷に仕えた例なんてないわ。あの葉月琴音だって、功を立てたのに衛所止まりだったじゃない。私だって副将の位はもらってるけど、玄甲軍の政務に口出しするのは許されなくて、ただの名誉職で俸禄をもらってるだけよ」女性が戦場に立つことと、朝廷に仕えることとでは、まったく性質が異なる。玄甲軍のみならず、禁衛、衛士、御前侍衛までをも統括するとなれば......御前侍衛は陛下の側近であり、表向きは従いながらも内心では反発するかもしれないが、それでも自分の管轄下に置かれることになる。この権限は余りにも大きすぎるのではないか。有田先生は言った。「陛下の真意は定かではありませんが、朝議が終わればきっと任命文書が下りてくるでしょう。そうです、親王様は陛下が親御自ら御沙汰を下るとされ申しておられました」さくらは少し不思議に感じたが、もし任命が下りれば受け入れるつもりだった。女性が朝廷に仕えることは、前の王朝には先例があり、ただ今の王朝にはまだないだけのことだ。この王朝における女性の地位は極めて低く、太后さえもいつもその現状を嘆いていた。そのため、かつて葉月琴音が女将として活躍した際には、太后は心から喜び、公然と称賛されたのだった。さくらは言った。「有田先生、実のところ、親王様はずっと身を引き、耐え忍び、譲り続けてこられた。陛下はそれをしっかりと見ておられるわ。陛下は
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