玄武は眉を寄せながら佐賀玄白の供述書に目を通した。この御殿医は並外れて臆病なようで、実に詳細な供述をしていた。椎名青舞がどのような手段で彼に身を任せ、どのように小林鳳子を害するよう追い詰めたのか。使用した薬の種類、症状の進行具合、予想される死期まで、克明に供述していた。御典医は自分なりの推測も語っていた。椎名青舞は束縛から逃れたかったのだろう、大長公主邸から完全に自由になりたかったから、実の母を毒殺しようとしたのではないか、と。玄武は捜査経験こそ長くなかったが、すぐに矛盾点を見抜いた。「椎名青舞が大長公主の支配から逃れたいのなら、実母を殺しても無意味だ。大長公主が彼女を操るための手段が母親なのだから。もし母親の生死など気にしないのなら、以前、承恩伯爵家に入った時点で梁田孝浩を利用して自由な暮らしを手に入れられたはずだ。側室になりたくなければ、梁田孝浩から金を騙し取って逃げ出すこともできた。大長公主が彼女を見つけ出すのは難しかっただろう。それに......よくもまあ、あそこまで自分を投げ出せるものだ。佐賀玄白はもう還暦近いというのに」刑部で長年の経験を持つ今中具藤は、あらゆる人間を見てきた。「椎名青舞は幼い頃からそういう方面で育てられてきたのでしょう。自分の容姿や身体を取引の道具として扱うことに抵抗がないのも不思議ではありません」「彼女を連れて来て、尋問しろ」「すでに人を遣わしましたが」今中具藤は答えた。「東海林椎名は彼女のことについては素直に話しました。万葉家茶舗にいるはずだと。ですが、我々が到着した時にはすでに立ち去った後でした。人手が足りず......」通常の案件なら、刑部の人員は十分すぎるほどだった。しかし謀反の案件となると、関係者は雪だるま式に増えていく。しかも、迅速な対応で関係者を押さえられなければ、重要人物が逃亡してしまう恐れがあった。大長公主は都で長年にわたって勢力を築いてきた。これだけの銀を社交や付き合いに費やしていれば、朝廷の大臣たちを一人も味方につけられないはずがない。これほどの武器や鎧を公主邸に隠匿するには、相当数の人物が関わっているに違いなかった。玄武も人手不足は承知していた。「明日、陛下に上奏して、禁衛府から人員を借り出すことにする」一日中、目が回るほど忙しかったが、さくらの玄甲軍大将への任命のことも
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