「お兄様の非難は理不尽です!」涼子は涙ながらに叫んだ。「あなたが降格されなければ、私がこんなことをする必要があったでしょうか?」「俺の出世など、お前が気にすることではない!」守は声を荒げた。「俺は自分の力で這い上がる。お前は自分の欲望のためだろう。影森玄武に惚れたんだ。あの男のどこがいいというのだ?お前たちは争うように彼に近づこうとして......」それまで正義ぶっていた涼子だったが、兄に本心を見透かされ、さらに憧れの人を貶められ、怒りと恥ずかしさで顔を赤らめた。「玄武様は素晴らしい方よ!あなたなんかよりずっと!上原さくらだってあなたと離縁してまで親王様と結婚したでしょう?それが全てを物語っているわ。京の貴族の娘たちで、誰が北冥親王家の王妃になりたくないって言うの?」守の表情が一層険しくなった。「北冥親王妃になりたいと?笑わせるな。すでに正室がいるのを知らないのか?お前の夢など、叶うはずがない」涼子は涙を流しながら言った。「そんなこと、分かっているわ!でも私の計画は違ったの。まず側室として入り、親王様の寵愛を得て、いずれ上原さくらに取って代わることだったの。あなたたちだってさくらのことを恨んでいるでしょう?あの女は天皇の勅命で離縁して、将軍家の面目を踏みにじったのよ。私には私利私欲があったかもしれない。でも、将軍家の恥を雪ぎたかったの!」「もう十分だ!」老夫人は兄妹の言い争いを聞いていたが、我に返って叫んだ。「黙りなさい、お二人とも!」老夫人は深く息を吸い、涼子をじっと見つめた。「平陽侯爵があなたの体に触れたというのは本当なのか?」涼子は泣きながら答えた。「腰に手を回されました。すぐに離してくれましたけど、みんなが見ていました......」老夫人は冷ややかな表情で言った。「大勢の目の前でのことだったのだから。平陽侯爵家も由緒正しい名門で、京でも五指に入る家柄。そもそも儀姫があなたを助けると言い出したのだから、この失態の責任は儀姫にもある。明日にでも、この病身を押して平陽侯爵邸を訪れよう。今の平陽侯爵には儀姫という正室と、子供を産んだ側室が一人いるだけ。あなたが側室として嫁げば......平陽侯爵と儀姫の仲が良くないのは周知の事実。現在の側室も何人の子供を産んでいるが、あなたほど若くて魅力的ではない。侯爵様の寵愛を得られるはず」涼子
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